【tp4】 願いの続きはコネクティッド、そして
電池切れになったEAPを無理やり稼働させていた頭から、締め付けるような切羽詰まった感覚が突然消えた。
それに気がついたころには、俺は、イグサの匂いのする真新しい畳の上に頰を擦り付ける姿勢のまま倒れ伏していた。
ぐっと右手に力を込めて、顔を上げ、首をもたげる。左膝に置いたもう片方の拳を、テコの支点がわりにして腰から上の体を起こした俺は、とりあえず、意識が明瞭であることに安堵した。
どうやら、最後に縋るしかなかった「顕し」――宮代家の血に宿るもう一つの魔法――は、初めてにしては上手くいったようである。
全然痛くもかゆくもないこの体が、その証左。
暴走状態にあった爆弾を、EAPの機能をアテにした総当たりの「読み」で、安全に解体できる状態まで復帰させようとして、見事に失敗した俺は――
そう言えば、あの爆弾はどうなった!?
爆発したら、俺と俺の大切な人たちごとレセプション会場のホテルを消し飛ばしていたに違いない、危険物が手もとにないことに気が付いて、俺は弾かれたように立ち上がった。
魔法を起動させるために差し出した“強い願い”の中身が、うわっと音を立ててどこかに飛び去るのと同時に、胸いっぱいに広がる焦燥感。
ひどく苦いその想いに突き動かされて、あてどもなく部屋を見渡した俺は、先生や母さん、小鳥を始めとした宮代家の皆がどうなったかを確かめる術があったとしても、もう手遅れに違いないぞ、と頭の中の冷えた部分が告げて来る事実を、なにがなんでも無視することに决めた。
俺が失敗した現場の惨状を、この目で直接確かめるまでは希望はあるはずと、根拠もない気持ちだけを頼りに、現状把握を焦る俺の目が、この部屋と外とを隔てる窓ガラスに留まった。
とにかく、外だ。
ここがどこなのか確かめないことには、何も始まらない。早く外に――
反射的に湧き上がった急き立てるような思惑が命じるままに、外の様子を伺おうとする、対面側の開口部からの西日の熱を背に受けた俺の姿が、目の前の窓ガラスに映り込んでいる。
何の気なしにその姿を見た俺は、
妙だな。
一度だけ目を瞬かせた。
思惑が、当惑を経て困惑に変わる。
窓ガラスの中の半透明な俺の鏡像――なんとも結わえにくそうな、夕焼け色のふわふわな長い髪を背中に下ろした、小学生にもなっていなさそうな西洋人の、少しだけ痩せぎすの女の子――が、おんなじように返してきた瞬きに、俺は高い声で出来た悲鳴をあげながら、目の前のガラスに勢いよく両手をついたのだった。
俺が、女の子になってる⋯⋯!!?