『僕のルームメイトは猫耳少女』 【なろうラジオ大賞6】
僕は妖怪がたくさん暮らしているこの町に最近引っ越してきた。
雨の日、仕事から帰宅中に一匹の猫を見つける。猫は雨で濡れていた。
僕はさしていた傘を猫が濡れないようにそっと置いて、そのまま走って帰った。
カリカリカリ。
数日後、玄関から物音がしてドアを開けると、少女が立っていた。猫耳が特徴的な可愛らしい少女。
「…か、借りてた傘を返しに」
??
僕に猫耳の知り合いはいないし、この子に貸した覚えも…。
「これなら…わかるかも」
ッッ!!?
少女が消えた。
「にゃ〜」
咄嗟に足もとを見る。猫だ。
「にゃ」
次の瞬間、少女が再び現れる。
「あの時はありがとう、お兄さん」
カリカリカリ。
その日から少女が遊びにくるようになった。
一緒にご飯を食べて、一緒にアニメを見て、一緒にゴロゴロして。
毎日来るわけではないけれど、いつしか遊びにくるのを心待ちにしている自分がいた。
カリカリカリ。
「…コ、コタツ??」
少女は戸惑った顔で呟く。
今時コタツを見る機会なんてないだろう。僕は昔から古くさい物が好きで、よく変人扱いされたっけ。
少女は恐る恐るコタツに入る。…うん、丸くなってる。
「ねぇ…お兄さんは、私のこと気味が悪いって思わないの?」
??
「だって…姿を変えれる妖怪だから」
???
僕は戸惑う。確かに姿を変えれることには驚いたが、気味が悪いとは思わない。むしろ羨ましい。細い道とか通る時に凄く便利そう。
「なにそれ…変なの、お兄さん。ふふ」
少女の笑った顔を見て、僕も一緒に笑った。
その日の夜、会社から急な出張の連絡が…一週間帰ってこれない。ため息をつきつつ、準備をした。
僕は置き手紙を書いて、玄関のドアの隙間に挟んだ。
…ッ!!
風が強くて、冷たい。震えながら家を出る。
カリカリカリ。
カリカリカリ。
カリカリカリ。
ようやく帰ってこれた。
早くあの少女に会いたい。伝えたいこともある。はやる思いで家に向かった。すると…
ッッ!!?
玄関前で猫が丸まってぐったりしていた。
急いで家の中へ。暖かくしてベットに寝かせる。
「お、にぃさん…?」
しばらくして少女が目を覚ます。
外で待たせてしまったことを僕は謝り続けた。
「私のこと、嫌いになったわけじゃないんだ…よかった」
そう言うと少女は涙を流し始める。
僕は優しく抱きしめた。
泣き止んだあと、伝えたかった言葉を伝える。
「えっ、いいの?」
僕は頷く。
「うん、わかった。こちらこそよろしく」
この日から、猫耳少女が僕のルームメイトになった。
【なろうラジオ大賞6】
読んでくれてありがとうございます。
今後、この二人がどのような生活を送っていくのか?
この話は、『二人の物語』のちょっとしたプロローグ。そんな思いで作ってみました。
いかがだったでしょうか?
あと、『猫耳少女』視点の作品も書いてるので、そちらもぜひ読んでみてください。
ありがとうございました。