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下層

「この手に集え、風神の息吹よ!......」


この魔法は風魔法の上位魔法、ウィンドバーストか。

戦闘が起きている場所に足を運んでみると、大きなウルフと腕が4本生えた魔族と戦っていた。

2対2で戦っているのか。

人間側が若干押されている。

見た感じ男の方が戦士兼盾役で、女の方が後方支援系と補助魔法などを担っているのだろう。

それに対し、魔族側は、ウルフが妨害魔法をかけながら鋭い前足で薙ぎ払いをし、そこに魔族が地味な罠や強大な魔法を撃ちこんだりと、良い連携が取れている。


「おい、そこの覗いてるやつ!おまえも殺してやる!」


魔族が喋った。

ということは相当賢く、中位程度の魔族ということか。

8層は変わったところで9層への道が一本しかない。まっすぐな一本道ということだ。

適度に壁に穴が開いているので今はそこに身を隠しながら戦況を見てたが、目が良いと言われる魔族に見つかってしまった。

仕方が無く穴から出た。


「別におまえらと戦うだとか、こいつらを助けるなんて考えは持っていないからな。」

「うっ、俺たち、ちょいときついんだが...。」

「ちょっと魔力が...。」


とはいっても9層に行くにはここを通るしかないので無理やり通ることにした。


「俺の事は気にせず戦ってくれ。」

「あ!お、おい。何行こうとしているのだ!ウルフ、薙ぎ払え!」


大きな鋭い爪が向かってくる。

手で下からお手をしてやった。結構な重さだったがそれだけだ。


「な!」

「ば、馬鹿な!」


戦闘中だというのに俺のほうばかりに気をそらしていていいのだろうか。

それに男、おまえもだぞ。


「ウルフだろうが、要は犬だ。ペットのしつけはちゃんとすることをおすすめするぞ。」

「なに!こいつは...。」


お手した手をそのまま握りつぶした。

ウルフは感じたことのない苦痛に叫んでいた。

そのまま握り、ウルフの手のひらをえぐりとった。


「ありえない!なんだお前!!」

「見たことが無いあんな冒険者。」

「私もよ、そもそもあの重さの攻撃を片手で...。」


ウルフの手のひらからは大量の血がドバドバと溢れていた。

俺は自分の手に着いたウルフの血を舐め、ウルフを睨みつけた。


「なぁ、ウルフとやら。これは喰らったことがあるか?」


口から突然血を吐きウルフは倒れてしまった。

そしてダンジョン内で倒されたモンスターは霧散していく。

ウルフも同じく苦痛の表情を浮かべたまま霧散していった。

ありえないとでもいう表情を俺以外がしていた。


「あぁ、お前らのモンスターを奪って申し訳なかった。では。」


スタスタと歩いていこうとしたが後ろから魔族が魔法を放ってきた。


「この距離なら避けられまい!!死ね!レッドキャノン!!」


高温のレーザーが俺に飛んできた。


「死ぬのはおまえだ。」

「ひぇ?」


俺に向かって飛んできた魔法は俺の目の前で向きを変え魔族の方へと飛んでいった。

魔族が放った時よりも太く大きく、この通路を飲み込んでしまうほどの巨大なレーザーが反射された。

凄まじい轟音が響き渡り、一本道は静かになった。


「あっ、そういやあの男女は...。」


人間の事を考えずに反射してしまった。

煙が薄くなっていくと、俺がいる位置から前の壁、天井、床が黒く焦げ、ところどころ溶けていた。

やってしまったことはしょうがないので反省し、9層に向かった。

9層からはボスモンスターが複数で襲い掛かってくる。

ボス部屋に入り、大きな龍に話しかけた。


「なぁ、しばらく封鎖してくれないか?」

「それは何のことだ?」


長く生きた龍は知性もあり、魔族とは違う威圧感を持っている。


「そうだな、このダンジョンにいる人間を強制的に外に出してくれ。」

「そうしたら、貴様も外に行ってしまうのでは?」

「いいから、はやくしろ。」


龍はため息をつきながら魔法を行使した。

龍言語の魔法は何を言っているのか聞き取ることができなかった。

龍は目を開けると俺がまだそこに立っていることに驚いていた。


「貴様は人間ではないのか?その見た目で魔族なのか?」

「魔族と一緒にしないでくれ。俺の種族が何であろうとおまえには関係ない。」

「ふむ、そうか。それで貴様はこの後どうするのだ。」

「今から会議を開く。」

「会議?」

「もしかして、おまえは新人か?」

「私はここの9層を担当している龍だ。まぁ最近就いたがな。」

「そうか、じゃあこのダンジョンのコアを呼んで来い。」

「!?」


龍が威圧してきた。

気温は急に下がり、周りにいた他のボスモンスターたちが動き出した。


「俺と戦うつもりか。」

「あのお方はこの私を倒すことができたならの話だ。」

「このダンジョンはモンスターが少ないと聞いていたのに、もっと少なくなってしまうことになるとは。かわいそうに。」

「ふん、何を。」


龍は大きく飛びたち、遥か上に行ってしまった。

中程度のボスモンスターが襲い掛かってきた。

その攻撃が俺に当たるかと思った瞬間。


「あ、あっぶな!!!!」


攻撃が来ることはなかった。


「これはこれはゼントさんじゃないですか。」

「お久しぶりとでも言っておこうか、久しいなルト。」


丁寧なお辞儀をしてきた鎧を着たモンスターは、ルトという。

ルトはここの初代モンスターであり、普段は力を隠している。

この状況を不思議に思ったのか、上から龍が降りてきた。


「何をしているのだ。」

「龍さん、どもっす。」

「どもじゃない!なぜ攻撃をしないのだ。それにお前らもだ!」


そういわれて他のボスモンスターたちはお互い顔を見合わせるが次々にこういった。


「なぜと言われてもな。」

「だってゼントさんだからとしか。」

「だよなぁ。」


龍は気に食わなかったのかさらに怒り暴れだした。

これでは知性が無いそこら辺のモンスターと同じではないか。


「私が一番強いのだぞ!私の言うことを聞くのが筋ちうわけではないのか!?」

「まぁ隠してはいたんですが、この中で一番弱いのは龍さんっすね。」

「図体がでかいだけであんだけ暴れられちゃ困ったもんよね。」

「それほどプライドが高いんだろ。」

「最近の若者は...。」


なんて言われ龍は炎を噴き出していた。


「なぁもういいか?ルト悪いけど売られた喧嘩は全部買うと決めているんだ。」

「ちなみにいつから?」

「今からこの戦闘が終わるまでの間だ。」

「いいっすよ、うちとしてもあんなのがずっといられちゃ困りますからね。」


俺は龍に向けさっきの魔族が使ってきたレッドキャノンとやらを撃ってみた。

龍は魔法耐性に長けていると聞くが、俺の無詠唱かつ段違いの威力をもろに受けた龍は跡形も無く消え去ってしまった。


「もーう、少ないってわかってるんだったら、少しは協力してよね!ゼント。」


上からスーッと降りてきた女は俺に優しく怒った。


「悪い、悪い、部下たちの意見も含めての事だ。」

「え、ちょちょ。」

「まぁ、私もちょっと問題だとは思っていたからいいか。」


白く若干青がかったサラサラな髪、全てを見透かされそうな金色の瞳、水色のワンピースを着ている女の子、ミントはこのダンジョンと初心者ダンジョンのコアモンスターだ。


「いつものごとくここで会議を開くが、いいな?」

「いいよーん。この龍の代わり貰てもいいかな?」

「あぁ会議が終わったら選ばせてやる。」

「やったぁー。」


俺は指から血を出し、床に模様を描いた。


「ミント、お前もだぞ。」

「えぇ~、私もぉ?」


しぶしぶと言った表情で腕から血を流し、俺が描いた模様を埋めるように円く血が満たされていった。


「よし、いいぞ。」

「うん。」

「円環の理から、この場に集え給え、全ダンジョンの、同胞よ!」


眩しい光と共に総勢49人の人が召喚された。


「では各々、席に着き、会議を始める。」



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