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73:【投稿一年記念閑話】アイザックの後悔と母最強説

プロローグを投稿した日から、本日でジャスト一年となりました。

進行中の本編が重いパートの最中の為、一年記念の今日は明るい話をお送りしよう!と思ったのに、このタイトル・・・。

アイザックが言いたいことがある。というので、自由に語らせたら、こうなりました(あれえ?おかしいなあ・・・笑)


アイザック15歳。

彼は今、深い後悔の念の中にいる。


その後悔を正すためには、ステラとの出会いから一年後の10歳まで遡らねばならない。

あの時の自分は幼く、人の世の(ことわり)など理解する気もなく構いもしていなかったが故に、ソレが最善と判断したのだが……。

今思えば……悔やむしかない。


彼は今、何を後悔しているか?

……ステラを「妹」としたことを、大いに後悔していたのだ。



・・・



アイザック―――10歳。

彼はこのところ、何とも言えないもやもやした思いと日々戦っていた。


「アイザック」


ステラが自分の名を呼ぶ声が好きだ。

生涯自分の側にステラを置くためには、家族にするのが一番の早道と、「妹にする」と父上に上申したのだが、自分への呼び名は「アイザック」のままにしておけばよかったと、もやもやする。


「「お前などが兄上の名を呼ぶなと言っている!!」」

「アイザックは、アイザックだろう?」

「「兄上を呼び捨てにするなど、頭が高すぎるぞ!浮浪児!!」」

「じゃあ、兄ちゃん」

「「大馬鹿か?!」」

「おにいちゃま、とか?」

「「あり得ん!!」」

「ん~~~。なら、お兄様?」

「「キモっ!!」

「じゃあ、あんたらと同じで、兄上ってことで」

「「あんたらだとおお?!」


面倒な双子により、ステラからの自分の呼び名は「兄上」で定着してしまった。

声を揃えてステラに喧嘩を売る双子弟を、再起不能にしても良いだろうか?


キライだ!汚い!妹にするなんて信じられない!と大騒ぎしている割に、双子は、ステラに好意を持ち、それを認めたくなくてワザと真逆の態度を取っているようにしか見えない。そんなこと、許すわけにはいかない。


ステラは、自分が見つけた自分だけの世界にただ一つの宝物である。

自分の唯一無二の宝を、アイザックは誰にも渡す気はなかった。


双子は自分の弟といえども、他の人間となんら変わることはない。アイザックにしてみたら、このまま殺してしまっても何の問題もない存在であるのだが、「家族」は大切にしなさいと、祖父に厳命を受けている。

命を奪わない程度に、完膚なきまでに叩き潰すには、どうしたらよいモノかと考えていたら、ステラが笑いかけてきて、ひとまず双子を生かすことにした。そうしたら、父母が安心したように息を吐いていた。



この時は、ステラを「妹」にして側に置くことが出来たのが嬉しくて、後悔などひと欠片もなかった。

だが、自分の胸に生まれた得体のしれないもやもやは、消えることはなかった



・・・



アイザック―――11歳。

何とも言えないもやもやは、消えるどころか、おかしな成長を遂げている。


レオナルド叔父上が、何を血迷ったかステラに求婚し始めた。

あんなにもステラを毛嫌いしていたというのに、なんという手の平返しだ。叔父上をぶち殺そうとしたのだが、祖父と父に止められ、母は大いに笑っていた。


腹が立って仕方がない。

(じぶん)(ステラ)は結婚できないというのに、叔父上は許されるだと?

結婚なんて、家門同士のただの契約で、自分とステラは兄妹となって同家門に生きる者となり、我らを分かつモノはないと安心していた。これでステラは誰にも取られることはないと考えていたのに、婚姻を結びステラを奪う手立てがあるなど、要らぬ落とし穴があったものである。


そもそも、結婚とはなんなのか?


一緒に住んで、共に長い時を過ごすのならば、兄と妹という立場で何の問題もないはずである。そこに互いを大切にすること以上に必要な事でも、あるというのだろうか?


ここ数年のもやもやが、不思議に悶々とした黒雲のように胸に溜まっていって、周囲にもそれが知られだしたころ、母が肩に手を置いて語り始めた。


「結婚の意味を知りたいの?」

「―――はい」

「う~ん。アイザックの()()が、もうちょっと育ったら教えてあげる」


とんっと自分の胸に手を当ててくる母に、意味は解らなかったがひとまず頷いておいた。

この母は、祖父程に強くはないのに、何故かとても鋭い所がある。母がもうちょっとというならば、もう少し待つしかないと、この時は考えた。


ステラはどんどん綺麗になっていく。

叔父どころか、誰の目からも隠したいと本気で考え始めるアイザックの中で、もやもやから悶々に変化した得体のしれないものが、そろそろ手に余りだしてきていた。

後悔。という文字が、頭をよぎって、意味が解らず首を傾げた。



・・・



アイザック―――12歳。

もやもやから悶々となった得体のしれないものは、確かな殺意に変化していた。


セオまでステラに求婚を始め、有り得ないことに、他の家門までもが続きだした。

スタンレイの威光の傘下に下らんと、ステラに手を伸ばす馬鹿どもを、全て滅してやりたい。


ステラに好意を抱きながらも何故かの排斥運動に終始していた双子弟は、ここ数年すっかり宗旨替えをし、腹が立つほどにステラにべったりの妹馬鹿に変貌している。猟犬とまではいかないが、危険を知らせる番犬位には成長しているので、防犯ブザー変わりにはなる。セオとレオ叔父上と、そこら辺の石ころみたいな男どもの露払いは、ある程度任せることにする。


そんなとき、母が宣った。


「あなたがステラを妹にしたのは、英断だったと思うわ」


あなたとステラには血の繋がりはない。

だから、紙だけの契約による家族の契約などいつでも破棄することが出来るのだから、必要に応じ、家族の形を変えればいい。そう言って母はコロコロと笑った。


「―――家族の、形を変える?」


それって、なんだ?


自分の顔には「はてなマーク」が前面に出ていたのだろう。母は更にコロコロと笑い。「もうちょっと育たないとダメね」と胸を指で突いてきた。


「最初からステラをスタンレイが客人として庇護していたら、要らぬ魔の手がステラを襲ったでしょう。まあ、間違いなく、あなたとウィルと、お義父様が薙ぎ払うでしょうけど。あなたの妹にしてしまえば、あなたはいつでもどこでも、ステラの側を離れず、汚れた手からステラを守り抜くことが出来る。今のところはひとまず、ソコに甘んじておきなさい」


さっぱり意味は解らない。

だが、母に言われなくとも、自分はステラの傍らから離れる気など毛頭ない。

もやもやから悶々にそして殺意に変化した得体のしれないものが、ちょっとだけ薄れてきたような気がした。

後悔。という文字が、この頃、ゆっくりと頭をもたげて来ていた。



・・・



アイザック―――13歳。

ステラは10歳となり、綺麗になりすぎて、益々目が離せなくなってきた。


目障りな叔父上とセオと男どもに加え、令嬢たちが、ステラを害しながらも羨望の眼差しを向けてくるのが、大変にうざったい。


団体になると、目障りの真骨頂ともいえる第二王子とウィスラー公爵家の小娘と一緒に、ステラを虐め害しまくってくるくせに、単体になると、誰もがステラをただただ見つめ、胸を押さえて溜息を零しているのを知っている。


俺のステラは雪の女王の娘のように、冬の光を編んで作り上げたように美しいが、あんな奴らの目に等触れさせたくはない。

どれだけこの手で守って隠しても、ステラの光は周囲に零れ、辺りを照らしてしまう。


いったい、どうしたらよいのだろうか?


「お義父様と、ウィルと同じね~」


血は争えないわね。と、母が悶絶して笑っている。

あの二人と自分が同じ?何を指しての言葉なのだろうか。


「お義父様はお義母様と出会った瞬間に求婚したそうですし、ウィルと私は、家門同士で決めた婚約者だったけれど、ウィルが私に初めて会った時の第一声は『俺の娘を産んでくれ』よ?馬鹿にするなって、横っ面を殴りつけたのに、あの人……諦めなくてねえ」


母が何を言いたいのか意味はまるで解らないが、それが何を指すかということだけは、すとんと理解した。


「一撃必殺。ということですね?」

「う~ん。惜しい。あと一息ね」


母が自分の胸を撫でて、「大分成長したわね」と微笑んできた。

そういわれて気付く。ステラを見ると、最近―――胸が熱くなる。昔は、あたたかくなったものだが、これが母の言う「成長」なのだとしたら、この先は、どうなってしまうのだろうか。

後悔。の二文字が、遂に視界に現れた。



・・・



アイザック―――14歳。

遂に最近、自覚症状が出てきた。


俺は絶対に何があろうと何であろうと、たとえ、ステラ本人が拒否したとしても(それはないと思うが)ステラを誰にも渡す気はなく、世界で一番、いや、この世界よりも、ステラが大切で、愛しいのだ。


「自覚が遅い」

祖父が呆れ返って吐き捨ててきた。


「―――うちの息子がポンコツだ」

父が涙ながらに項垂れた。


祖父と父には謂れのない低評価を貰ったものだが、構うことなどない。

自分は自分である。

この頃になると、物理的にも、精神的にも、あらゆる力と家門の力をも駆使し、ステラに近寄る「虫」を薙ぎ払い、排除することがアイザックの日課となっていた。


男も女も年齢も爵位も王位も何も関係はない。

ステラは、自分のモノである。

自分のモノに手を出してくる愚か者(セオと叔父上)が悪いのであって、俺は何も悪いことはしていない。



自分のモノを守って、何が悪いというのだろうか?



アイザックのアイディンティーが確立された瞬間であった。



・・・



そうして、15歳になったアイザックは、後悔の真っただ中にあった。


セオが煩いことをいう。

「お前は『兄』だろう?妹の幸せを祈り、幸せな結婚を見届けることが『兄』という存在ではないのか?」


そんなこと知ったことか。

自分は、ステラを誰よりも愛しており(遂に完全に自覚した)、ステラを誰かに嫁がせる気など毛頭ない。


叔父上も煩い。

「そろそろステラと婚約式を上げたいのだが、お前はどっかに消えてくれないか?」


俺が消えるのではなく、叔父上を消して良いだろうか?

ステラを嫁にするのは、他ならぬ自分である。


憤然と顔を顰めていたら、母がいつものコロコロ笑いで盛大に自分の背を叩いてきた。


「いいわ~!アイザック!!ステラを欲するのであれば、まずあなたを倒してから!要らぬコバエにそれをすべて理解させてから、あなたがステラに求婚し結婚しても遅くはないのよ」


自分が自覚したばかりのステラへのこの想いは、母にはすっかりお見通しだったらしい。しかし、母上……。第一王子と叔父をコバエ扱いとは、素晴らしすぎて頭が上がりません。


母上―――流石です。

しかしですね。どうしてそこまで?いつからご存じでいらっしゃったのか?


「決まってるじゃない。最初っからよ」

「最初……と申しますと?」

「あなたが、ステラをうちに連れてきた、あの時からよ」


言われて気付けば、その通りである。


自分は、初めてステラを見つけた、あの時から―――ステラに、恋をしていた。


ステラが一刀両断で首を刎ねて、ディトーの返り血を頭から被って目を覚まされたとばかり思っていたが、アレは、目が覚めたのではなくて、恋に落ちた……ただ、それだけのことだったのだと、今やっと気付いた。



だから、連れて帰ってきた。

だから、自分の元から離せなかった。

だから、自分だけのモノに、したかったのだ。



「あなたの顔を見たら、すぐに分かったけれど、あなたは自分で気付くまで、時間がかかったわね」

「母上の、おっしゃる通りです……」


敗北です。

この自分が、白旗を上げるしかありません。


「ふふふ。あの子は()()()だもの。誰にも、どこの馬の骨にも、渡すわけがありません。ず~~~っと、私の娘として手元で可愛がるのです!息子は可愛くないですからね、娘は別物です」


今まで……ステラに群がる様々な「虫」を薙ぎ払い排除してきたが、初めて気付く事実であるが、本物のラスボスは、どうやら目の前に君臨していたと、アイザックは初めて気付くことが出来た。


「あなただから、ステラを手にすることを許すのよ?でも、もしも、ステラを泣かせでもしたら、ジョシュにステラを任せますからね!肝に銘じなさいよ、アイザック!!」




母最強―――。




「……肝に銘じます」




当時15歳のアイザックは、そうして、母の前にひれ伏すしかなかったのである。


思い起こせば去年の今日。・・・先に書いていた竜がたくさん出てくるお話に詰まった時に、「あれ?」って感じで生まれたのが、アイザックとステラでした。

当初は、そう長くはならないかな?なんてWeb小説初心者が怖いもの知らずで二本同時進行で投稿を始めたものの、一年たっても書いているとは、思ってもみませんでした。(それも両方とも・・・更に一本追加で三本・・・)


他でも書きましたが、5日間連続で読み手様からのアクセスが0だったら、そこで書くのは止めると自分ルールを決めて始めたので、まさか、一年間それをクリアできるとは、本当に考えておりませんでした(こっちもいいとこ1か月で終わるかと・・・)


読み手の皆様のアクセスのお陰で、このお話を書き続けられています。

読み手の皆様は、本当に偉大です。

本当に本当にありがとうございます。


投稿三作目の某皇帝陛下のお話がミラクルで(読み手様のお陰で)ありえないことに書籍化していただけて、そっちの方が話数は盛大に多くなっておりますが、こちらも完結に向け頑張ります。


あちらの方の兼ね合い(追加やら改稿やら校正)で、こちらの投稿間隔が初期よりかなり空いてしまったりもしましたが、お付き合い頂いている読み手様には、本当に本当に感謝しております。このようなを微妙な下剋上令嬢モノのお話を読んで頂いて本当にありがとうございます。


誤字脱字までお知らせただいて感謝しかありません。

書いている本人より真面目に読んでもらって、本当に有難く思っております。

誤字脱字をお知らせ頂くレギュラーメンバーの読み手様も、単話メンバーの読み手様も、いつも本当に本当にありがとうございます(本当に助かっております T T )


お話自体は大分佳境に入ってきておりまして、もう少々で決着をつけて、エンディングに持っていけたらな。とは思っております。


ハッピーエンドで終わります。

私の書くお話は基本、ハッピーエンドしかないとご理解くださると嬉しいです(笑)


ひっそりと最後まで、頑張って書く所存でございますので、最後まで見届けて頂けましたら、大変に嬉しゅうございます。


最後に、ここまでお付き合い頂いている読み手の皆様に、感謝の意を捧げさせて頂きます。


2025/6/5

MINORI 拝

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