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40:男性陣による第一回酒盛り大会

季節外れのガーデンパーティ―というよりかは、確実に、「肉祭り」だったバーベキューを終え、男性陣はスタンレイ本邸の客用サロンで今度は酒盛りを始めていた。



どうしてこうなったのかな?と、先のステラの疑問を、今度はウィリアムが持つことと相成った。



父であるヘルベルトは、今日中に本邸に戻ると言い残し魔塔に飛んだ。

父上は言ったことは確実に守るので、帰宅されるまで弟と久しぶりに酒でも―――とサロンに移動したのだが、なんで皆ついてきたのだろうね?


声を掛けたレオナルドと、護衛任のクザンとネイトは良しとしよう。

百歩譲って、イーサンとネイサンも良しとするか?って、お前達はまだ一応未成年だぞ。

ぱかぱか酒を飲むんじゃありません。

セオとヴィクターも呑み過ぎない様に、若者グループに交ざるネイトに注意喚起を頼まねばならぬようだ。



「兄上、ひとつ伺いたいことがあります」

レオナルドがグラスの中のワインを飲み干してから、意を決したように言葉を切った。



「父上が魔塔に赴かれたのは、禁呪解除の名目もあり理解はできますが―――。アイザックを教皇猊下の、神聖神殿に行かせたのは………」


レオナルドの言葉が切れた。

ああ、レオは学院入学前ではあったが、王兄派と王弟派の国を二分しての対立を見ているのだったな。

「――――父上の見立てによると、黒装束がステラを転移させようとしたポイントが、今や廃墟の黒神殿跡だった」


あの時は、国に一教だったはずの神聖神殿までもが、二派に分かれた。

唯一神であった信仰すべき神を「白」と「黒」の解釈に分けた神殿神官達は、それぞれに王兄派と王弟派の後ろ盾となり、国を興したとされるステイビア英雄王の後継の血を争った。




―人間の勝手で二つに分けられる神ってなんなんだろうね?―




そう言って寂しく笑ったリアムの顔を、ウィリアムは今もなお忘れることが出来ない。


「っあそこは―――例え神官であっても司祭以上でなければ、立入りは禁止のはずでは?」

「だから、アイザックに許可を取りに行かせた。許可を取るまで帰ってくるなと言い含めてある」

はっはっは。と笑うウィリアムに、レオは「ああ……」と同意した。


「ステラが関わっていれば、兄上を嫌う教皇猊下がどう出ようとも、アイザックは世界が破壊されても引きませんね。適材適所ですか」

「そういうことだ」


確かにレオの言う通り、適材がアイザックだった為、神殿へのお使いを頼んだのだが―――別の意味でもその選択は正解だったと言わざるを得ない。




ここにアイザックが居たら。と考えるだけで肝が冷える。




「―――このような見解から、ステラはきっと、アイザックという壁がなければ俺の元に来てくれるはず。という結論に達した」


セオドアの演説はすでに10分を超えている。この短時間に一体どれだけ呑んだのか?顔が真っ赤だぞ。


「「正式な勝負に負けておいて、なんでその結論に行きつくんですか。ありえないくらい酔ってますね、セオ殿下」」

セオと同じペースで吞んでいる双子は顔色も変えずに次のボトルを空けだして、一応セオドアの側近であるヴィクターが一生懸命水のグラスを差し出している。

「殿下―――水呑んでください!」

「水などいらん!俺は酔ってない!」

「「酔っぱらいは総じてそう言います。殿下の話はあり得なさすぎです、そもそもステラは殿下の事を何とも思ってませんって」」

「黙れ双子!!揃いも揃って、アイザックと同じことを言うな!!俺がステラに惚れているのは真実だ!!ステラだって―――」

「ヴィクター殿は突如として9馬身程一気に上り詰めて来ましたが、お嬢のどこにやられたんですか?」



ネイト。爆弾を投下して若者を煽るな。

お前の役割は若者グループのストッパーであって、燃料投下が役割ではないぞ。

クザンがウィリアムの横で頭を抱えた。



「俺は、初めてお嬢に会った時の肉祭りで衝撃を受けて、その後にノックアウトされる事態があったんスけど、ヴィクター殿は凄い速度で、落ちたでショ?」

珍しくまじめな顔をしたネイトの質問に、赤毛の下の耳が真っ赤になったヴィクターが、ぼそぼそと呟きを返す。

「この前見た―――アイザックとの真剣での打合いに、ヤラれました」

「「一発で?」」

「―――――――一発で。です………あの剣技っ――――自分の理想そのものでっ」

ヴィクターが全身赤に染まっている。



「クレセント家は代々武門の家ですから、ステラ様の剣技は目に毒だったでしょうね」

ぼそりと呟くクザンに、ウィリアムとレオナルドは顔を見合わせて苦笑いした。

「―――ステラの剣技は、剣舞と見まごう程に美しいですからね」

ため息交じりのレオナルドの弁に、ウィリアムも頷く。


ステラの師匠であるリアムの剣技も、本当に見惚れる程に美しかった。

記憶に残るリアムの剣技に思いを馳せていたウィリアムだったが、即時現実に引き戻される。



「わかります!!お嬢の剣技!!ああ~~~!見たい!!もっかい見たい!!王子殿下、もっかい勝負してもらえませんか―――って、王子殿下じゃ相手にならないか、やっぱり若様でないと―――」

「なんだと?!」

「「殿下じゃステラの相手は無理無理だよ。ネイト」」

「一回でいいから、手合わせをお願いできたら―――俺死ねるかも………」

「俺もです………」

双子の弁にネイトとヴィクターが天を仰ぐと、二人の胸倉を掴み上げ、王子殿下が怒りの咆哮をあげる。

「――――――――お前ら!!一体俺を誰だと~~~~!!」



本格的に収拾が付かなくなってきたな。



ネイト。お前、もしかしなくとも大分飲んだな?

部下が不始末を……。と頭を下げてくるクザンに、ウィリアムは笑い、レオナルドが事態の収拾に向け若者グループに突入していった。


が、軽くあしらわれている………。

セオドアの次位に、集中砲火を浴びて、「ムッキー!」という擬音が聞こえそうな位に地団太を踏んで怒り狂い始めた。

レオナルド。若者にいじられて、近衛騎士団長の面目が消えているぞ。


さて、この事態をどう治めるか。

腕を組んで事態の収拾の目算を立て始めたウィリアムの視界に、小さな影が動いた。



「父上」

若者グループ外周のソファーに座って大人しくココアを飲んでいたジョシュが、とことこと歩み寄りウィリアムを見上げた。



「今後の対策の為にお邪魔していましたが、問題がないことがわかりましたので、僕は姉上の所に就寝しに行きます」


てんやわんやの大騒ぎが一瞬にして音を無くした。

「「「「「は??」」」」」

全員の声が揃った。




「今日は()()()()()約束を姉上としています。女性陣の会合中でも入室の許可は得ておりますので、ここで失礼致します。皆様、お休みなさいませ」




綺麗な一礼と共に、扉の向こうに消えた末っ子4男ジョシュの姿を見送り、全員が全員魂が抜けたように真っ白な顔をして立ち尽くした。




末っ子―――恐るべし。




ウィリアムは末っ子ジョシュの大物ぶりに内心手を叩くしかなかった。

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