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35/67

35:ヘルベルトとアイザックの光

私がやらかしたと思うのですが・・・

ラストから1000文字くらい消失していることに10/27に気付きました・・・


何を書いたか・・・思い出しながら修正してみましたが

この後も少々加筆する可能性があります。

ご了承ください・・・

ステラと初めて対面した日のことを、ヘルベルトは忘れはしない。

ステラは、アイザックの光となったが、ヘルベルトにとっても新たな光だったからだ。




長男ウィリアムの結婚を機にスタンレイ侯爵家の家督を早々に譲ったヘルベルトは、貴族社会に別れを告げ王立学院教授に就任すると、王都外郭のスタンレイ別邸に最愛の妻と共に居を移し静かに暮らしていた。


今思えば、あの頃が人生で一番の幸せな時期だったのかもしれない。


ウィリアムに長男アイザックが、その翌年には双子の次男三男が生まれ、アイザックが9歳になる年明けに奥方クロエが四男を身籠ったとの知らせが届いた。



嬉しい知らせではあった―――。

だが、その頃のヘルベルトは、暗闇の慟哭の中にいた。

世界にただ一人の最愛の妻が、年を越せずにその命を終えてしまったからだ………。



別邸に引き篭もり、誰とも会わずただひたすらに亡き妻との思い出に埋もれ自分を閉じていた秋の始まりの頃に、クロエが無事出産を終えたとの連絡を受けた。

新たな家族に逢いたいとの望みはあったが、未だ暗闇から抜け出ることが出来なかったヘルベルトの日々はするすると水のように流れていき、秋も終わりの10月初旬。




『侯爵家に養女を迎えた』との一報が、ウィリアムからヘルベルトに届いた。




長男家には4男が生まれたばかり。

アイツは一体何を考えているのか?


この理解しがたい長男からの一報には、さすがに動かざるを得なかった。

ヘルベルトは同時に連絡を受けたらしい王立学院騎士科に学ぶ次男レオナルドと共に、コトの真意を問いただす為、スタンレイ本邸に文字通り飛んだ。




そこで対面したのが、世を悟り切ったような6歳の子供(ステラ)だった。




「兄上は、何処の馬の骨ともわからない、貧民街のこんな子供を、何故養女に迎え入れようと?!」

次男レオナルドの言い分は正しい。

正しいが―――ヘルベルトは、ステラの全身から感じる何かに引き込まれ、目を離すことが出来なくなっていた。

「迎え入れる?間違えるな、レオ。もう正式に養子縁組済みで王陛下(クリス)の認可も受けたから、すでにステラは私の娘でスタンレイの長女だ」

な―――っ!っと、初めて出来た娘にめろめろのでろでろの顔を向ける長男に、次男が激高した。


本邸ダイニングには、本家一同のみならず本家臣下一同が会しており、長男夫婦と信賴する臣下一同は皆一様に、にこやかな顔をしてステラを見つめていた。

それに反比例する双子の次男三男は、納得していないのが丸わかりの膨れ顔でぶすくれている。

良かったなレオナルド。仲間がいるようだぞ。




その時、ヘルベルトは気付いた。




アイザックが、見たことも無い穏やかな顔をしている。

自らの膝の上にスタンレイの養女となったステラを座らせ、まるでこの世の全てから守るように、その小さな体を抱く。


「兄上?!何考えてるんですか?!」

「いやあ娘って可愛いな。と考えてる。な、クロエ?」

「ええ、本当に!私の娘を良くぞ見つけて連れ帰ってくれましたアイザック。お手柄です!」

「義姉上えええええ?!」


荒れに荒れまくる次男はさておき、ヘルベルトは静かにステラを見つめ続けていた。

養女はその視線に気付いたのかこちらをじっと見返してきたが、その目には、恐れも動揺も見て取れない。

ただ、静かに、ヘルベルトを見てくるその瞳は、彼が世界で一番大切だった、唯一の宝物と同じ輝きを秘めていた。




ああ、そうか―――。とヘルベルトはそれを悟った。




「―――見つけたのか。アイザック」

ヘルベルトの言葉に、アイザックは今まで見たこともない柔らかな笑顔を浮かべた。


アイザックの見つけた(ステラ)は、ヘルベルトの(つま)と同じ。

新たな光が、ヘルベルトをあたたかく照らしていた。






◇◇◇






「俺も!ステラの元に行かせて下さい、教授!!」

「王子殿下の護衛である俺もお願いします」

「わたくしも参ります!!」


ステラを射た閃光の様なあれは、古代空間転移術の魔術式に似ていたが、拙い。

この場で完全に解析は出来ないまでも、術式の残り香のような浮遊する魔素の流れから、おおよその転移先の予想がヘルベルトには可能だった。


瞬時にアイザックを送り込んだから、ステラの確保は何とかなるだろう。

その後、止める間もなく飛び込んだネイサンも、まあ、あの根性には見込みがある。


が、だ。


「お前たちはダメだ」

瞬時に飛んだ二人から鑑みれば、あとの人員には完全に無理がある。

どこともわからぬ場所に、どう落ちるかもしれない転移に飛び込ませるのは危険すぎる。

一刀両断でわあわあ集まる者たちから顔を背けて、ヘルベルトは魔王の風格で息を吐いた。


「お前たちは留守番だ。スタンレイのタウンハウスへ招待だけはしてやろう。セオドア殿下は、特例ですよ――――――まずは、ここの氷柱と、第二王子殿下の氷柱を移動させるか」


口答えは許されない魔王の言に、一同は青くなりながら口を噤んだ。

ここで口を挟めば、自分たちも間違いなく「氷柱」の仲間入りになるのは確実だ。




「俺は、行かせてください。というか、行かねばなりません」




いつの間に現れたステラの護衛であるネイトの姿に、ヘルベルトは眉を寄せた。

「――――――学院内には駐留していなかったはずだな?」

「お嬢の危機には対応します。俺は、お嬢の専属ですから」


宜しくお願い致します。

と深く頭を下げるネイトに、ヘルベルトは小さく口の端を上げた。


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