お化け
「マリア、情報集めてきたよ」懇親のため、河原での洗濯を手伝っているマリアにミケーラは声をかけた。
「ミケーラさん、今日はお休みなのにわざわざ?ありがとうございます!」マリアは手を止めてお礼を言った。
「いいよ、気にしなくて。あんた時間があるとここに来て手伝ってくれるから皆んなあんたの姿を見て協力したいって言っているんだよ。それにあんたって、元気で面白いじゃないか!」
「あははは、ありがとうございます!それだけが取り柄で!」
「これ、ここに情報が書いてあるから持っていきな!」
ミケーラはそう言って束になった紙をマリアに渡した。
「これ、すごいですね。本当にありがたい、、。ミケーラさん、、本当にありがとうございます。。」
マリアは半泣きになってお礼を言った。
「何言ってんだい!みんなマリアがスキなんだよ。あんた一生懸命だしいい子だよ。」
ミケーラはそう言ってマリアを抱きしめてくれた。
「ありがとう,ありがとう、、」
マリアは何度もお礼を言った。自分がソフィじゃないと信じてもらえるだけで十分なのに、、忙しい中協力までしてくれて、、。この世界に来て初めての善意に触れてマリアは気持ちが暖かくなった。
早速部屋に帰り一枚一枚内容を確認し始めた。二百枚ほどある紙を一枚一枚確認するのは時間がかかるが、自分の命がかかっている隅から隅まで読んで行った。
そして夜になり監視塔行った。ボニートが申し送りをし、マリアと雑談を始めた。
「最近北側にの部屋、メイド達何も行ってこないか?」
すっかり忘れていた。あの日、エリゼと会った日確認し忘れてる!マリアは正直に話した。
「ボニートさん、言いづらいですが少し前にメイドさんから言われて確認に行く途中にエリゼ様に会ってそれから確認するのを忘れてしまいました。。。今、思い出しました。どうしよう。。」
「ハハハ!!マリア気にすんな!一回くらい大丈夫だよ!実際行っても何もないしな。。本当に幽霊かもなぁ」
「いや、ボニートさん、今言う?私今から勤務なんだけど、めちゃくちゃ怖いですよ!」
「マリア、お前異世界の人間だろ?お化けより強そうだぜ!」
「えー?関係あります?それ!」
「ないな。」
「アハハハ!」
散々笑ってボニートは帰って行った。
すっかり忘れていた。あの時エリゼに会って話しててそのあと確認することをすっかり忘れてた。。
あの日の会話を思い出すとエリゼの発言を否定したくなる。
エリゼは好きな人は居ないのかな、、本当に好きな人がいたらその他の人なんて要らないと思えるほどの恋。。
そんな恋をしたらあんなこと言えないよきっと。。。
「コンコン」誰かが訪ねてきた。「どうされました?」マリアがドアを開けるとメイドが二人立っていた。
「どうぞ中に」二人は中に入るや否や「東側の奥,一階で音がするんです!」「あと、女の人?の声がして、、、」メイド達は怖くて震えている。
「北側の幽霊が移動したとか噂されてて、、見に行ってもらえますか?私たちあの二つ隣の部屋の執務室にクロード様の明日着る上着を取りに行って帰る途中だったんです。。」
「……わかりました。確認しますのでお任せください。結果は明日報告致しますね」メイド達は帰って行った。
「はぁ。きちゃったきちゃった。怖いやつ。。もーーー本当に怖いけど、見に行くか,,,,」
マリアは意を決して東側に行った。
不思議と北側より怖く感じていない。
日中でも北側は日が当たらない暗い雰囲気のある場所で、そのイメージなのか怖く感じるが、東側は日中は明るく暖かい場所で幽霊のイメージがないからなのかそこまで怖くないのかもしれない。
マリアは問題の部屋の前に立った。そっとドアに耳をつけて目を閉じて集中した。
「ギシギシ」と音がする。これは空耳ではなく現実的な音だ。
その音はほぼ一定のリズムだが時々リズムが変わったり、止まったりする。
「うーん、このリズム、、」さらに耳を澄ますと荒い息づかいが聞こえる。
「あーもう!!これってアレじゃない。。迷惑千万!」
マリアはそっと鍵を差し込み出来るだけ音をさせないようにロック外した。そしてそぉ〜とドアを開けて
「わたしも交ぜて!ベイビー!」
と言ってまんべんの笑顔で部屋の中で愛し合う人達を指差した。
「うわー!!」「キャー」
その二人は慌てて離れ服を手にマリアの方を見た。その顔に見覚えがあった。クロードだ。
「あ!あなたはクロード様??」
マリアは驚いたが、まさかクロードがいると思っていなかったので
「す,すみません!!!戻ります!!あ、誰にも言いません」
と言って走って管理棟に帰った。
「ハアハア、まさかこのオチとは!!」マリアは驚いたがこんなオチなら歓迎だと思った。
幽霊よりも生きている感があって良い。
人間の生きるための行動だから前向きだわ!そう考えたら笑えてきた。クロード様驚いただろうなぁ!あはは