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奴隷生活……?

「ん……?」


 次の日、私は陽の光で目を覚ます。


 久しぶりにぐっすりと眠れた。


 部屋を出て、ご主人様を探す。


 でも、家からは人の気配がしない。


 台所に行くと置手紙をあった。



『いろはさん、おはようございます。仕事へ行ってきます。朝食を用意してあります。昼食は鍋の中です。もし足りなかったら、干し肉とかも食べて構いません』


 台所にはパンとハム、チーズが置いてあった。


 鍋を確認すると肉と野菜のスープが作ってある。


「私って奴隷…………なんだよね?」


 想像していた奴隷生活と違い過ぎて困惑してしまう。


 酷い目に遭わないのは嬉しいけど、ご主人様の意図が分からない。


 私は朝食をテーブルに運んで、食べ始める。


「美味しい……。昨日の晩御飯も美味しかったし、ご主人様って料理が得意なのかな?」


 朝食を食べ終わり、自室でゆっくりする。


 首輪をされている以外は自由だ。


 拘束も、監禁もされていないし……


「あれ、これってもしかして……」


 私はあることを思って、玄関へ向かった。


「…………」


 玄関のドアは簡単に開いた。


 これなら簡単に外へ出られる。

 逃げて、本当の意味で自由になることが可能だ。


「……って、そんな選択、出来るわけない」


 私はドアを閉めた。


 もしも私が誘拐され、ここへ居るなら外に出て、助けを求めるべきだろう。


 でも、違う。

 私は奴隷だ。


 外に出たって誰も助けてくれない。


 それにここが最悪の場所なら、一か八かで逃走する選択肢もあるかもしれないが、食住は保証されている。


 今の私にとってこれ以上の好条件はない。


 私は自室へ戻った。




 ボーっとしていると時間が長く感じる。


 しばらくして、昼食を食べた。


 でも、他に何もやることが思いつかず、再び自室へ戻る。


 この世界にはスマホもゲームも漫画もアニメも無い。


「暇だなぁ……」


 ベッドでゴロゴロとしてみるが、大して面白くない。


「本当にやることがないなぁ」


 体力は回復した。

 精神も安定している。

 食欲は満たされた。


 そして、現在……


「この服、ご主人様の匂い…………男の人ってこういう匂いなんだ…………」


 人の服、まして男の人の服を着るなんて初めてだった。


 意識してしまうと、なんだか体がムズムズしてきた。


 食欲が満たしたせいで、今度は性欲が強くなったみたいで……


「ん…………!」


 私はズボンを脱いで、右手を下半身へ伸ばし、動かし始める。


 それから癖で左手の人差し指を噛んだ。


 体が熱いし、呼吸は乱れる。


「…………!」


 一瞬、全身に力が入って、直後、全てから解放されたような気分になった。


「ふぅ…………」と大きく息を吐いた。


 不安も寂しさも消える。


 でも、すぐに虚無感とか罪悪感に襲われた。


「――――って、なに昼間から《《自家発電》》なんてしちゃっているのかな!?」


 私は下半身丸出しのかなり間抜けな格好で頭を抱え、自分自身に突っ込みを入れる。


「うん、深く考えるのはやめよう。余計に虚無りそう……。それに眠くなっちゃった……」


 食欲と性欲を満たしたら、今度は睡眠欲に襲われた。


「なんだか、欲望に流されているなぁ……」


 私はいつの間にか寝てしまう。



「あれ……?」


 起きたら、もう夕方だった。


「まだご主人様は帰って来てないみたい」


 ベッドから立ち上がった。


 手とかを洗う為に浴室へ向かう。


 洗い終え、浴室から出ると外はすでに暗かった。


「ご主人様はまだ帰って来ないのかな?」


 私は居間の椅子に座って、ご主人様を待つ。




 しばらくして、玄関のドアが開くのが分かった。


 私は早足で玄関へ向かう。


「おかえりなさい」


 私はご主人様に頭を下げた。


「た、ただいま、です。わざわざ、出迎えなんてしなくも良いですよ」


 ご主人様は申し訳なさそうに言う。


「いえ、これくらいはさせてください」


 それに一人でいるのは苦痛だった。


 この世界に来て、初めて私を人間扱いしてくれる人に出会い、ホッとしている気持ちはある。


 自分がチョロい、という自覚はあるが、極限状態で絶望していた私にとって、ご主人様は希望の光だ。


 だから、感謝をするし、媚も売るし、好意も寄せる。

 私はこの人がいないとこの世界で生きることが出来ない。


「すぐに夕食を作りますね。でも、その前に……」


 ご主人様は私に袋を渡した。


「これは何でしょうか?」


「いろはさんの服とか……その……し、下着とかです」


 ご主人様は恥ずかしそうに言った。


「あ、ありがとうございます。でも、サイズは大丈夫でしょうか?」


 ご主人様に服のサイズを聞かれた記憶はない。


「多分着られると思います。いろはさんを売っていた奴隷商人の方から、いろはさんの身長とかを聞きましたから」


「あのデブ……じゃなくて、奴隷商人からですか?」


 私が嫌そうに確認するとご主人様は焦ったようで、

「す、すいません。でも、服を買いに行った時に服のサイズを確認していなかったことに気が付いて、奴隷商人さんの商店が近かったので、勝手に確認してしまいました」


 そういえば、売られる前に体の隅々まで確認されたっけ。


 あの時は虚無ってたから、何にも感じなかったけど、思い返すと恥ずかしいというか、本当に人間扱いをされていなかったな。


「謝らないでください。服をもらえて、嬉しいです」


 私は笑顔で言うと、ご主人様は安心したようだった。


「着替えて来てください。僕はその間に食事の準備をしますから。あっ、脱いだ服は脱衣所へ持って行ってもらえますか。あとで僕が洗濯します」


 洗濯しておいて、じゃなくて、ご主人様が洗濯をするの?


 本当に私には何も要求して来ない。

 

 こんなに色々してもらったら、さらに申し訳無い、という気持ちが強くなってきた。

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