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【Side】デジョレーン子爵家に大金が手に入ったが……

 フィアラをデジョレーン子爵家から正式に除名した日の夕方。

 契約どおりの大金が手に入った。

 今まで貧乏生活をしてきたボルブ、マルレット、ミミの三人にとっては夢のような出来事である。

 そのうえ、フィアラがいなくなったことでボルブとマルレットはさらに大喜びだった。


「ようやくこの家の邪魔者がいなくなってスッキリしたわ。おまけにこれだけお金が手に入れば私のスローライフももっと充実できることでしょう。ボルブ様にはこのお金を上手く使ってほしいですわ」

「俺が前の妻を捨ててマルレットと再婚できたとはいえ、マルレットには迷惑をかけっぱなしだったな。フィアラがいなくなったことだし、これからが本当のデジョレーン一家の有意義な毎日の始まりだ」


 二人が浮かれているなか、ミミだけは素直に喜べていなかった。


「私はお姉ちゃんがいないと困るんですけど……」

「ミミよ、そう心配することもない。この金で早急に使用人を雇う。今後はその者に好きに命じるが良い」

「その人って、おいしいものとか作ってくれるんですか?」

「当然だ。むしろ、今までよりもおいしいものが食べられるだろう」

「やったーーーー! じゃあフィアラはもういらないです!」


 ミミはおいしいものが食べられればそれで良かったのだ。

 フィアラが作った料理しか食べてこなかったため、フィアラのことをごはんを作る道具だと思っていたのである。


「ところで、使用人の目処はたっているのかしら? ボルブ様が任せておけと言うから期待していますが、いつになったらこの家に来るのですか?」

「明日から働いてもらうことになっている。住み込みではないが、二人雇っているから今までとそう変わらず問題はないはずだ」

「どこの使用人です?」

「フィアラを引き取った侯爵家の元使用人たちだ。ガルディック侯爵も仕事がしっかりとできる者たちだとのお墨付きだから心配はない」


 ボルブは自信満々に言って二人を安心させようとした。

 マルレットもこれでようやく本格的なダラダラとした生活ができると思い、ワクワクしていた。


 いっぽう、ミミだけは心配していたのだ。


「その使用人って、厳しい人ですか?」

「なにを心配しているのだ?」

「だって、お姉ちゃんがいなくなったら私に勉強させるって言っていましたよね……。せめて勉強は優しい人に教わりたい……やりたくないけど」

「残念だが、ミミは立派になってもらいたいのだよ。今は金が入ったからようやく勉強できる環境にもなった。もちろん、ミミの教育に関しても優しく指導するよう命じておこう。だから、頑張るのだ」

「はぁ……。お姉ちゃんに全部任せられなくなっちゃった……」


 ミミは大きくため息をはいた。


「あんな邪魔者が消えたんだから、もっと喜びなさい。これからは、この大金でのんびりとした毎日が送れるのよ」

「はぁい。おいしいものが食べれて、おこづかいも増えるなら、もうお姉ちゃんはいらない」

「大丈夫だ。使用人に美味いものを作ってもらうし、ミミのこづかいも倍にしよう」

「やったーーーーー!!」


 三人の気持ちがようやくひとつにまとまった。

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