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6話 フィアラはダイン次期侯爵に挨拶する

 思っていたとおり、屋敷内の使用人は私以外にいないことがわかった。

 やはり私一人で今後全てをまかわなければならないということだろう……。

 だが、やる気は十分あるため、なんとか頑張っていきたい。


 改めて元執事長のジェガルトさんにまず挨拶をした。

 そして、残るはただ一人。

 この屋敷には親子二人でしか生活していないらしい。


 子息の部屋のドアをノックしようとしたら、急にドアが開いた。


「ひゃ!」


 姿を見せてきた男は、私と同い年くらいかちょっと上か。

 ピシッとした顔立ちはまるで彫刻を彫ったかのように整っている。

 身長も私より顔ひとつ分ほど高めで、金髪の綺麗な髪が印象的だ。

 さぞモテそうな外見だ。


「おっと、脅かしてしまったか、すまない。聞き慣れない足音が聞こえてきたのでな」

「お初にお目にかかります。本日より使用人としてお世話になりますフィアラと申します。よろしくお願いいたします」

「そうか、キミが話に聞いていた新しい使用人か。俺はダイン=ガルディックだ。よろしく」


 そう言いながら手を差し伸べてくださったため、私も手を伸ばし握手を交わす。

 今のところ、次期 (たぶん)侯爵様の印象は悪くない。

 デジョレーン子爵は彼のことを悪く言っていたが、実際はどうなのだろうか。


「たしか父上の話では、今日は料理を頼むと言っていたが」

「はい。これだけしか働かず良いのでしょうか……」

「別にサボっているとは思わんが。ところで、もし可能なら食事のメニュー、リクエストしても良いか?」

「はい、作れるものでしたらなんでも引き受けます」

「タマゴがゆ」

「はい?」


 一瞬、聞き間違えたかと思ってしまった。

 タマゴがゆは、貴族界ではあまり口にしない食べ物だと教えてもらったことがある。

 私が間違って作ってしまったときは、デジョレーン子爵からおもいっきり怒鳴られてしまったことがあるくらいだ。


「タマゴがゆが食べたいんだ」

「承知しました……。しかし、侯爵様にもタマゴがゆを提供してしまって大丈夫かどうか……」

「父上は食べ物に対して文句は決して言わない。むろんタマゴがゆが庶民の食べ物だから作って良いのか聞いていることも理解できる。だが、俺はむしろ庶民の食べ物を食べたいのだよ」

「そういうことでしたら、作らせていただきます!」

「よろしく頼む」


 頼まれてしまった……。

 しかも彼が一瞬ニコリと微笑んだ表情は、まるでサファイアがこぼれ落ちたかと思うほど美しい。

 ごはんを作るやる気がみなぎってきた。

 仕事でこんなにやる気が入ったのは初めてかもしれない。

 今までより気合いをいれて美味しくなるよう精一杯作った。

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