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1話 フィアラは毎日が奴隷生活

今作も、よろしくお願いいたします。


 私フィアラは十四歳になった。

 貴族界ではすでに婚約者は決まっていてもおかしくない年齢ではあるが、あいにく毎日が家事三昧。

 お父様が不倫をして再婚してからというもの、私は奴隷として働く生活である。

 だが、今日はまだ楽なほうだ。

 両親がなにかの用事で外出していて、義妹のミミしかいないからである。


「ねぇーーー、おねえちゃん。ごはんまだー? 私の部屋綺麗にしてー! 遊んでー! 早く!!」

「ごめんね。義母様に頼まれている掃除を終わらせてから、すぐに作るからね」

「やだー! 今すぐ食べたいの!」

「はいはい……、先に作るよ。なに食べたい?」

「おいしいもの♪」


 私のお母様は小さいころにどこかへ行ってしまったそうで、お父様は別の女性と再婚した。

 私とミミは腹違いの姉妹だが、この子は天使だと思っている。

 文句とワガママは絶えないものの、両親の命令と比べればマシなのだ。

 両親とは違い、暴力は振るってこないし可愛げもある。


「すぐに食べられそうなもの作るからね」

「うん、さっさと作ってー」


 ミミは十二歳になったばかりだ。

 そろそろ婚約相手を紹介してもらって花嫁修行と社交界デビューへ向けての勉強があってもいいとは思うのだが、放任状態である。

 とはいえ、私も同じくその手の勉強は一切習ったことがない。

 言っちゃ悪いが、デジョレーン子爵家は貧乏貴族なのだ。

 教育にお金をかける余裕はないらしい。


 さっき庭の小さな自家農園で収穫した野菜とニワトリの産みたてのタマゴを使って料理をした。

 ミミは好き嫌いなくなんでも食べてくれるから、作りがいはある。

 ごはんができたことを報告したら、ミミはすごい勢いで食卓テーブルに来てバクバクと食べはじめた。


「美味しいんだけど、もっと高級なものが食べたい」

「うーん……、今月の食費じゃ厳しいかな……」

「お母さまたちもいないんだし、コッソリ作ってくれてもいいじゃん!」

「そんなことしたら大目玉だよ……」


 私はミミがなんとか我慢してもらうよう説得する。

 ようやく私の作った料理に再び手をつけてくれた。


「冷めちゃってまずいー! 温め直して!」

「はいはい……」


 これで火を使えば材料費が増えてしまう。

 また金の使いすぎだと怒られてしまうだろうから、そうなる前にどこかで節約しなければ……。


 ♢


 日も暮れようとしていたころ、お父様と義母様が帰ってきた。

 大急ぎで玄関前まで行き、出迎える。


「おかえりなさいませ。お風呂にされますか? お食事にされますか?」

「フィアラよ。それよりも頼んでいた仕事は終わっているのだろうな?」

「申し訳ありません。書類のチェックは現在進行中です」

「このノロマめ! 明日王宮に提出しなければならないのだぞ!!」

「はい、本日中には終わらせますので……」

「当たりまえだ! 俺はメシを食う」


 良かった……殴られなかった。

 今日のお父様はそうとうご機嫌なのだろう。

 だが、その後ろで待機していた義母様はものすごく機嫌が悪そうだった。


「まったく……。なんで私が王宮なんかに行かなきゃいけなかったのよ……。それもこれもアンタのせいよ!!」

「はい? いったいどういうことでしょうか?」

「ふん、今にわかるわよ! そんなことより、掃除は? 私の部屋は綺麗に片付けたんでしょうね?」

「は、はい。散らかっていたゴミは全て処分し、ホウキがけと雑巾磨きも徹底しました」

「今のうちにできる限り綺麗にしときなさいよ! 少しの間、掃除できる人間がいないって考えるだけでもムシャクシャしているっていうのに!!」

「え……? 毎日掃除はしますが……」

「おだまり! 口出しすんじゃないわよ!」

 ――パァァァアアアアン!


 私は義母様から頬を勢いよく叩かれた。

 もう身体が慣れすぎてしまって痛みはそこまで感じない。

 それが気に食わなかったようで、さらにもう一回ビンタが飛んできた。


「とっととアンタなんか消えちゃいなさい!」


 義母様はそう言いながら自分の部屋へ戻っていった。

 私には落ち込んだりしている暇などない。

 急いでお父様の書類チェックを終わらせなければ……。

 今日も徹夜になってしまいそうだ。

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