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僕の終わりを告げる秋  作者: 霧雨桜花
1/4

秋の終わり際に

第二作目です。

大変長らくお待たせし申し訳ございません。


Twitterやってます↓↓

@kirisame_ouka

「おい、お前。金寄越せよ。」

僕はカツアゲに会っていた。カツアゲしているのは学校で一番の不良。一輪涼香。なんでもここら辺の地域の番長を素手でねじ伏せ新しい番長に高校一年生にしてなったとか、友達のヤクザがいるだとか色々な噂が立っている逆らってはいけないとされている女だった。

「そうだ。そうだ。とっとと姉貴に金を渡せ。」

そしてそんな涼香の周りにくっついている腰巾着たち。僕が財布を出すのを渋っていると。

「どうした。とっとと出せ。」

こちらに凄んでくる。

「殴られたくなかったらわかるよな?」

その言葉に行動に怯え僕は懐から財布を取り出す。僕は涼香が出している手にも財布を乗っけた。

「もし、警察や他の奴に言ったらわかってるよな?」

「はい。分かっています。」

僕は涼香の問いに答えるとその答えに満足したのか涼香は去っていった。金を奪われる放心している僕に涼香の腰巾着が僕の近くに来て。

「これ返せって姉貴が。」

僕の財布を置いていった。中には小銭とお札が無くなっていたが、ポイントカードやクレジットカード。学生証は残っていた。そして。

「よかった。ちゃんと残ってた。」

財布の横ポケットからは小さい僕と父親と母親が写っている焼き焦げた写真が入っていることに安堵を覚える。この写真は僕の記憶にはないが父親と母親の姿が載っている唯一の写真。僕はこれを日々の生きる活力にしている。

プルルルルッ

スマホが鳴る。僕はなんだろうと画面を覗くと店長からの着信だった。僕はそれに慌てて出る。

「はい、もしもし。」

「お前。今どこにいる。もうバイトの10分前だぞ。」

僕はその声に急いでスマホで時計を見る。17:50。店長の言う通りバイト10分前だ。

「今急いで行きます。」

僕はその場を立って急いでバイト先へ向かう。



「はぁ。散々な日だった。」

無事にバイトも終え家への帰宅路へと僕はついていた。今日は本当についてない。涼香に金を取られるし、バイトに遅刻するし、なんならバイト中にやらかしたし。本当に散々な1日だった。家から1km地点へ着くと何やら怪しい物影が電柱の背後にある。何かと思い目を向けるとただの猫だった。

「にゃー。」

猫は僕に擦り寄ってくる。なんだ気のせいか。それはそうか。僕みたいな男誰も気にしないか。今日は1日が酷すぎて変な被害妄想に走ってしまったらしい。

「かわいいな。お前。」

僕は擦り寄ってきた猫を撫でる。

「にゃー。」

猫は頭を僕の手に押し付け、甘えた声を出す。猫は暗闇で姿がよく見えない。体毛は黒なのだろうか?僕はそんなくだらないことを考えながら一心に猫を撫で続ける。

「にゃー。」

しばらくすると僕に撫でられるのに飽きたのか猫は立ち上がりどこかへ去っていってしまった。僕は猫は去って行くのを見届けると立ち上がり家への帰宅を再開する。今日の晩ご飯は何にしようかな?そんなことを考えながら家へと帰った。




家に帰りドアを開ける。そのまま冷蔵庫を開け中を物色する。中には沢山のお弁当が所狭しと詰め込まれており、その中の1つを取り出し、食事を始める。

「いただきます。」

粛々と弁当を食べ進める。今日は1日が最悪と言っても過言じゃなかったが猫と食事の時間で中和できているような気がする。至福の時間はすぐに過ぎ去ってしまうもであっという間も弁当を食べ終えてしまう。僕は食べ終えた弁当をゴミ袋に乱雑に投げ入れ、パソコンを立ち上げる。パソコンに保存されているオンラインゲームをひとつ立ち上げログインしプレイを始める。

『syoようやくきたか。狩り行こうぜ。』

『syo今日はどこに行くんだい?』

『syo待ちくたびれたぜ。』

いつも絡んでいるフレンド達とオンラインゲームの狩りを始める。

「そうだね。今日はグランドドラゴンの狩りに行こうっと。」

僕はチャットに書き込む。フレンド達は口を揃えそれがいいと僕の意見に賛成する。そして僕らは約2時間に渡る狩りへと向かった。



『syo今日はありがとな。』

『syoまた今度な。』

『俺そろそろ落ちるわ。』

フレンド達は2時間にも及ぶ狩りに疲れたのかみんな落ちて行き、僕はロビーで1人になってしまう。こうなってしまったら楽しくないので僕もゲームを落とす。

「はぁ、僕も現実の世界でゲームのような力が手に入ったらな。」

僕は叶いもしない願いを口にしながらネットサーフィンを始める。『type-Ω症候群の特効薬開発成功‼︎天才紫藤颯汰氏へ迫る。』そんなタイトルの記事を見つけたのはの1時間ぐらいしてからだろうか?読み進めていくと年齢は15歳と書かれていた。天才とは本当にいるものだ。僕はその記事を見ながらそう感心する上で劣等感も抱く。天才と凡才の埋められない差がはっきり見せつけられる気がするのと自分が凡才側という自覚があるからだ。世の中は理不尽だそんなことを考えているうちに。

がさっ

後ろで物音が鳴る。後ろを振り向くと見知らぬ男がいた。

「お前は誰だ。」

ここで焦ると逆に危険だと冷静を保ちつつ男の質問を投げかける。すると男は隠れていた顔をあげ口角を上げる。

「秋が終わったら死ぬがそのかわり全能に等しい力をお前にやろう。」

男はそう言った。僕の質問にまるで答えていない。それはこの際いいだろう。しかし、男は1つ僕からしたら魅力的な提案を言い渡す。秋が終わったら死ぬ。その代わり全能に等しい力をくれると。今は11月22日。あと一週間弱で秋は終わってしまう。しかし僕はやり残したことも悲しませる家族もいない。なんなら今すぐ死んでもいい。しかし目の前の男は勝手に殺してくれる薬をくれる上になんでもできる力を使わせてくれる。僕にはこれ以上美味しい取引はなかった。

「僕の質問に答えないことは正直ムカつくがそれはこの際水に流そう。しかし、さっき行っていた力の件は本当か?」

「えぇ、勿論です。」

男は予想通りと言った顔をしていた。目の前の男の思い通りに入っているのは癪だがそれでも十二分にメリットがある。

「欲しい。」

僕は力強く答えた。

「ではどうぞ。」

男は懐から一本の試験管を取り出し、それをこちらに近づける。飲め。そう行動で示された。僕は試験管をひったくり中身を一気飲みする。

「いい飲みっぷりだな。」

「そりゃどうも。でこれで何が手に入るんだ?」

俺は男へ質問する。しかし相変わらず男は質問に答えず沈黙をしている。僕は痺れを切らし、男へつかみかかろうとする。すると突然視界がぐらついた。

「薬は効いているようだな。」

男はこちらを覗く。

「目が覚めたら力が身についている。良い眠りを。」

男は窓へ近づき窓から飛び降りる。

「ま…て…。」

僕は男を捕まえようとし手を伸ばすが意識が追いつかずそのまま倒れてしまった。




「っ。」

窓から差し込む日差しと涼しげな風に目が覚める。僕はその事実に飛び起きる。そして昨日の出来事を思い出す。

「全能に近い力を手に入れる代わりに秋が終わると死ぬか。」

僕は本当に力が手に入っているのか確認するために力を使ってみることにする。

「百万現ナマで今手元に。」

死ぬほどくだらない願い。それを口にした次の瞬間右手に重みを感じる。慌てて右手を確認すると百万分の札束があった。本当だ。あの話は夢じゃなかった。僕は今全能感に包まれていた。なんでも出来る。僕は今まできなかった事をするために行動に移す。僕は凡才じゃなく天才でもなく神になったのだと本当に思っていた。




今まで忙しくて一度も来れなかった墓参り。僕はこの機会にいく事にした。しかし、親戚もましては祖父母がいない僕はお墓の維持費が払えず取り壊してしまい墓と言っても元々あった家の近くにあった河川敷に石を積み上げているだけのものだ。そこに人生で初めて花を添える。

「僕、あと一週間したらそっちにいくけど怒らないでね。」

先に若くして死ぬことを謝っておく。あの世に行って怒られたくないから。そして僕は河川敷から離れ道路へ歩みを進める。なんでも出来る。僕はそのことだけをずっと考えていた。何をしよう。それだけを考えていた。




何をしようか考え続けて1時間が経っていた。そして僕は今別にやりたい事はないことに気づいた。あの青年が言うにはこの力は全能に等しい。なら簡単に死ねるのではないか?その考えにたどり着いた。別にやりたいことも無いならとっとと死のう。そう思い僕は願いを口にする。

「とっとと僕を殺。」

そこまで行った後の言葉が出なかった。何故かと思いもう一度自分を殺してと願いを口にしようとする。しかし、今度は願い自体を口にする事はできなかった。口にしようとする瞬間体中に悪寒が走り、吐き気を感じる。

「ウップ。」

懲りずにもう一度願いを口にしようとする。今度は吐き気だけでは治まらずその場に嘔吐をする。死のうとする度に走る悪寒と吐き気に自分はもしかしてとても恐ろしい事をしているのでは無いかと思い始める。そして、秋が終わると死ぬ。言い換えればあと一週間の命。僕は先ほどまではどこか遠くにしかし歓喜していたその状況にどこか不安感を抱き始めた。そして一度抱いた不安感はどうしても拭いきれず体から力が抜けていく。僕の目の前は暗くなった。




視界が良くなるとそこは処刑台だった。僕は磔にされ目の前に黒服の男がいる。その男は銃をこちらに向ける。

「いやだ。やめてくれお願いします。」

しかし黒服の男は僕の言うことには耳も聞かず銃を発砲した。そのあと意識が暗転した。

次に目が覚めると僕の首には縄まわされており、床には切れ目が入っている。警察服を着ている3人の手元にボタンがある。そのボタンが同時に押されその途端首が絞まる。首の全体重がかかり下が見える。さっきまであった床が開いていた。僕は苦しいけど声が出ずだんだん意識がフェードアウトしていった。

体に窮屈さを感じ目が覚める。僕の体は椅子に括り付けられていた。足元には無数のコードが走っている。そのコードは目の前の装置に繋がっている。その装置に1人の男が現れスイッチを押す。すると体に電流が走る。

「ガァァァァァ。」

僕の口からおよそ人のものでは無い声が出る。いや声ではなくただの咆哮かもしれない。電流は僕の体に絶えず流し込まれ僕の体の全てを破壊していく。その余りの激痛意識が暗転した。




目が覚める。また僕は殺されると思い身構える。しかし1分経っても何も起きなかった。恐る恐る目を開けると人が立っていた。数は1人だけのようだ。誰かと顔を確認すると上を見て固まる。目の前の人間は一輪涼香だった。そして何故か少し困った顔をしていた。

「怖らがせてしまったか?いやそうかそうだよな。昨日あんなことをしたんだからな。」

涼香は1人で小言で何かを考え込んでいる。その光景に僕は殺されると思い吐き気を覚える。

「ウップ。」

「おいどうしたんだよ。おい大丈夫か。おい。」

涼香は必死に僕に声をかける。しかし僕は吐いている間もずっと疑問に思っていた。何故殺されるのが怖いのかと。

しばらくして吐き気がおさまり、落ち着いたタイミングで涼香が僕に話かける。

「お前今大丈夫か?」

「あぁ、大丈夫だけど。」

涼香は懐から財布を取り出し中から紙幣を取り出す。それを僕の手のひらに置く。

「これは?」

「昨日お前から金むしり取ったろ?それの謝礼だ。受け取れ。」

涼香はそっぽをむきお金を私と理由を言う。

「じゃあなんであの時僕からカツアゲしたんだ?」

その質問に涼香は苦い顔をして。

「うちの親ギャンブル中毒なんだ。私はバイトしてるんだけどそれだけじゃ足りなくて闇金から金を借りたんだ。あの取り巻きはヤクザの手のやつであいつらの言うことを聞かないと殺されちゃうんだ。」

涼香は理由を話終えると下を向く。

「でもそれは言い訳にならないことになるのは分かってるからこうして金を返したんだ。」

僕は涼香の話を聞き少し同情してしまった。手の内にあるお金を返そうとする。しかし嘘を言っているかもしれない。そう思い願いを口にする。

「涼香が嘘を言っていたか知りたい。」

もちろん涼香には聞こえないように呟いた。すると涼香は嘘を言っていなかった。だから僕は。

「返すよ。」

涼香にお金を渡す。

「私が嘘ついてるかもしれないぞ。」

涼香は渡されたお金を返そうとする。

「いいよ。君が嘘ついて無い事はわかるから。」

その言葉を聞いた涼香は涙を流し。

「ありがとう。ありがとう。」

僕に感謝の言葉を述べた。僕はその言葉を初めてかけられた。目元から少し涙が流れていた。

感想やコメント。誤字・脱字報告をしていただけると幸いです。

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