ゲームは遊ぶより作る派お姉ちゃん
早速のブクマや評価ありがとうございます!
おかげさまで日間VRゲームにも入れましたよ。
配信を終えヘッドギアを片付けながら自室へ戻ろうとしていると、朱鷺ちゃんの部屋を覗き込むように確認したあと鴻ちゃんが入ってきた。
「紬、朱鷺子配信おつかれ。見てたよ」
「ありがとう鴻ちゃん。どうだった?」
「……ちょっと気になることがあった」
なんだろう?
うっかり変なことを口走ってしまったのだろうか。
「朱鷺子、紬との距離が近過ぎない?」
「えーいつもこんなもんだよ」
「もう高学年なんだからいつまでも紬にべたべたしない」
「そんなことないよねムギちゃん?」
確かに距離は近いけれど昔からこんなものだったし今更かなあという気がする。鴻ちゃんは同じ建物に住んでいても一緒に過ごす時間はそう多くないから遊んでるときの私たちに見慣れてないかもしれないけど。
でも朱鷺ちゃんももう高学年だし人との距離感がこのままだと良くないかもしれない。ただでさえ美少女なのに勘違いした人が出てきたら大変だ。
「いくら可愛い妹でも私の嫁に手を出すのは許さないよ」
「はあ? いくら大好きなお姉ちゃんでも盗人猛々しくない? ムギちゃんは私と結婚するんだけど?」
「諦めて。私と紬は運命だから」
なんだ私が朱鷺ちゃんを独占してたから寂しくなって絡みにきただけか。
鴻ちゃんはちょっと斜に構えているというか素直じゃないから私をダシにしないと朱鷺ちゃんと戯れあえないみたい。お互い大切に思い合っているんだからそのまま出せばいいのにね。
ダシにされるのが私だからいいようなものの、この美少女姉妹のやりとりは他の人には刺激が強過ぎる。
「いつも仲良しだねえ。私はそろそろ部屋に戻るけどふたりも夜更かししたら美少女が台無しになっちゃうよ」
「え、ちょっと待って。用事終わってない」
「朱鷺ちゃんと戯れにきたんじゃないの?」
「えっと、明日も配信するなら私も横で見学していい?」
確かプレイはふたりまでだけど近くにいればVRに接続してゲームの世界を見るのはできるはず。
もしかして鴻ちゃんも女児ゲーに興味を?
いやそれはないか。ゲームは遊ぶより作るほうが好きだと言っていたし。
「私は構わないけど、いいの? 夏休みだからくーさんの職場で見習いやるって張り切ってたのにいきなり休んじゃって」
「明日は来なくてもいいって父さんに言われたんだ。今日自作のテストツール走らせてたらうっかりやばめのバグを見つけちゃって明日はチームでその対応するから。報告したとき紬の父さんの顔色が死んでたよ」
「確かに夕飯のときお父さんちょっと元気なかったかな?」
鴻ちゃんは義務教育中は使用できないアリアドネの使用を特例で認められた同級生だ。
同級生だけど普段は登校せず自宅で大学生がやるような勉強をしている。中学の勉強は必要ないからだ。
天才とか麒麟児とか持て囃されているけれど、本人はやりたいことをマイペースにやっているだけの感覚なのであまりそういう扱いはされたくないっぽい。
興味の方向はプログラミング。特にゲームを作ることに強い関心を抱いていて、長期休みになる度にくーさんと父が働くゲーム会社にちょくちょく修行しにいっている。
つまりプレイヤーと製作という差はあれど朱鷺ちゃんも鴻ちゃんもゲームの才能に溢れているということだ。
すごいね。
「私も構わないよ。お姉ちゃんも声だけ配信一緒に出る?」
「そんなに話さなくていいなら」
翌朝、妙に早起きしてしまったので攻略サイトで幻想乙女工房の情報を漁っていく。
アレンジで作れるケモノシリーズで装備を固めて行くと赤ずきんの名前表記が『希死念慮の赤ずきん』に変わるらしい。
死にたいって思ってるわりにステータスが強化されて殺される気は全くなさそうだ。
というか女児ゲーだが?
対象年齢は女児ゲーにしては高いけれど死にたがりなんて出して怒られなかったのだろうか。
アバター作成時の選択パーツの少なさとか変なところで女児ゲーっぽさを出してくるわりに全体の雰囲気はちょっと暗めな気がするし。
そうだアバターパーツの取得条件も確認していこう。
朱鷺ちゃんのアバターは本人スキャンでほぼそのままだけど私のアバターはデフォルトの選択パーツで作っていて個性があまりないから、髪色や髪型のパーツは欲しい。
パーツが増えれば都度変更できるし、条件が厳しくないものから狙っていったほうがいいだろう。
今日は鴻ちゃんが見学するけど、なにからしようかな?
折角だし鴻ちゃんになにを見たいかリクエストしてもらうのがいいかも。
なにか作るならケモノシリーズの靴を作りたい。
赤ずきんドロップの素材はまだ使うレシピがなかったからゲームを進めないと解禁されなさそう。ボス周回が必要なのか別のステージ攻略が必要なのか。
まだ発売したばかりだし攻略サイトでもそこまでの記載はされてない。書いてないだけで解禁してる人はいるだろうけど。
とはいえ、VRMMOでよく聞くようなユニークモンスターとかワールドシナリオとかレアスキルとかは存在しない女児ゲーなのだし情報は徐々に補完されていくはずだ。
夏休み中にゆっくり楽しむ予定だし、攻略サイトはそこまで気にせずにいくか。
鴻子さんはかなりマイペース。