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幻想乙女工房 〜普通の女子中学生ですが幼馴染の美少女小学生とVR女児ゲー配信していきます!〜  作者: 春無夏無


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思わぬ珍客

 気が付けば病室のカレンダーが9月の始まりを告げていた。

 本来であれば終わらせた宿題を抱えて登校していたはずだけど今日もひとり暇を持て余している。

 不可抗力とはいえこれって提出遅れ扱いになるのかな。

 なんかそれはちょっと悔しい。

 体重はかなり戻ってきたけれどいつ退院できるかとかは濁されてるんだよね。

 原因らしい原因がわかってないとかそんなことを言っていたけれど。

 ただそう遠くないうちに退院できそうな気配はあるので夏休み延長戦だと思って過ごすしかない。


 昼を過ぎた辺りで思いもよらない来客があった。まさかここで見るとは思ってなかった顔だ。


「宮山さんってそういう顔だったのね」


「伊藤さん、なんでここに」


 開口一番にそんなことを言う。

 お見舞いされるような間柄ではないはずだけど……私に病院行けと言った本人だから多少気にされていたのだろうか。


「クラス委員として今日配られたプリントを渡しにきただけであってお見舞いとかじゃないから」


「それはどうも」


「……本当に傷があったのね」


「そりゃなかったら顔を隠せるサイズのゴーグルなんて要らないでしょ」


「見たことなかったんだから真偽なんてわからないし……そこまで傷跡気にならないからゴーグルなんでしなくてもいいんじゃない?」


「嫌」


 今は仕方なく晒しているだけで隠さないという選択肢はない。

 受け取ったプリントに目を通す。この時代にこういうところがアナログって変なの。


「宿題の提出が遅れるのはやっぱり気になるな」


 思わず出た独り言に伊藤さんが妙な反応をした。


「宿題? 夏休みの? 今日提出してたわよ」


「……私の夏休みの宿題を誰が? 母?」


「いや湖出さんを名乗る人が。湖出さんって宮山さんと同居してるあの湖出さんよね?」


 鴻ちゃんが?

 中学に籍はあっても一度も登校してないあの鴻ちゃんが私の宿題の為に?


「どうしてそんなに困惑しているの? まさかなにも知らなかった?」


「聞いてない……そもそも今、家族の面会もやりとりも制限されてるから」


「その状況でどうして私がすんなりここまで来られたのか疑問よ」


「多分ただのクラスメイトだからだと思う」


「全く理解できない」


 親密でないからこそ私のストレスにならないと判断されたのだろう。

 いやある意味ストレス源だけど。


 それにしても鴻ちゃんは大丈夫だったのだろうか。

 知らない人ばかりの場所にひとりで行くなんて。

 具合悪くなってたらどうしよう。


「あなたって案外窮屈なのね」


「え」


「自由に見えて家族に縛られていて、誰にでも友好的だけど友達の誰にも傷を見せるつもりがないんでしょう?」


「そんな家族に縛られてなんか」


「湖出さん、宮山さんと親しいらしい子たちに対して随分威嚇してたわよ。すごい執着ね」


「鴻ちゃんがそんなことを……?」


「……怒らないの? 自分の友達に対して家族が勝手なことをするって怒っていい場面だと思うけれど」


 怒る?

 私が鴻ちゃんに?


 そんなこと考えなかった。

 だっていつまでも家族に心配や面倒をかける私より鴻ちゃんのほうがいい子だし。


 あ、でも鴻ちゃんに遠慮してクラスの友達と距離ができたらちょっと困るか。


「……家庭環境に同情するわ」


「いらない憐憫をどうも」


 私の返答を聞いて伊藤さんは気の抜けたように笑い声をもらした。

 初めて見る表情だなこれ。


「私相手に毒づいてるときのほうが良い表情してるってウケる。学校でもずっとその表情が見えるようにしててよ。私も喧嘩するなら顔が見えたほうがやりやすいし」


「なんで」


「だって隠す必要ないじゃない。そんなにきれいな顔しといてさ」


「は?」


 突拍子もないことを言う。私の顔のどこに美しさなんて存在するのか。


「そりゃ今日見た湖出さんみたいな浮世離れした美人には及ばないけど傷跡があっても普通に美人でしょ」


「目がついてないの?」


「自己評価低過ぎ。自縄自縛で目が曇ってるのはそっちじゃない?」


 小さい頃から思い知らされている私を前にしてこの女はなにを言うのか。

 鴻ちゃんや朱鷺ちゃんの容姿を褒めた大人が私を見て気遣うような当たり障りのない言葉を続ける。そんなことを何度も経験している私が美人なわけないじゃない。


 そんなの認められない。


 私が間違ってたなんて認めたくない。


「少なくとも私の目には精巧なお人形さんみたいな美人よりは表情をころころ変える宮山さんのほうが魅力的に映るってだけよ。あ、別に私が宮山さんを好きとかそういうのじゃないからね」


「それは知ってる」


「でも……前ほど嫌いではないと思う」


「やめてよ気色悪い」


「私も言ってて怖気が立ったわ」


 だけど前ほど苦手じゃないというのは心の中で少し同意する。

 融通がきかないウザったいだけの人というわけではないようだから。


「またプリント届けに来ると思うし、今度は一緒に勉強でもしてみる?」


「絶対その前に退院しなきゃ」


「いいから成績上位者として勉強法を晒しなさい。地頭がいいだけとかそんなことはないんでしょ」


「普通のことしかしてないから」


 伊藤さんからの提案も口では拒否しつつそんなに悪く思ってないのだけど。

 それを素直に受け入れると負けたような気分になるからね。

お久し振りです。

異動でばたばた→PC使えなくなった→PC買ったという経緯で久し振りの更新です。

書き溜めしてないし小説自体を書くのが久し振りすぎてまめに書けるかわかりませんが。

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