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幻想乙女工房 〜普通の女子中学生ですが幼馴染の美少女小学生とVR女児ゲー配信していきます!〜  作者: 春無夏無


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保護者反省会

 大人4人が顔を突き合わせてため息を吐く。

 妊娠初期の貴子さんに夜更かしさせるのは気が進まないけれど、これは2家庭の重大な問題なので貴子さんに後から知らせるという意見は本人に却下されてしまった。


 昼間紬さんに付き添って病院へ行き、内視鏡検査をした結果を私以外の保護者へ共有したことでリビングは重い空気に包まれていた。


「摂食障害の可能性と栄養失調、か」


「紬さん本人は全く記憶にないようだけど、軽い逆流性食道炎が見られたから恐らく継続的に嘔吐しているだろうって」


 そのことに同居している大人が全員気付けてなかったというのは由々しき事態だ。

 確かに病み上がりの後に随分やつれたな、とは思っていた。

 ただご飯は食べているし成長期なので使うカロリーも多いから見た目が戻るのはゆっくりなのだろうと思い込んでいた。


「栄養失調自体は通院で点滴すれば入院するほどではないけれど、無意識に嘔吐しているなら入院したほうがいいというのがお医者さんの意見なんだね?」


「ええ」


「それなら入院させたほうがいいんだろうなあ……紬さんの意志を無視してでも。気付けなかった保護者しかいない家にいるよりも回復が早いだろうし」


「学校はしばらく休んでも紬なら問題ないけれどきっと嫌がるわ。表面上に出したりはしないでしょうけど」


 貴子さんの言う通り、紬さんは私たちが入院を決めたら素直に従うだろう。

 だけど言えなかった言葉を心の奥に溜め込んでしまう。

 この家で私たちが求めていた普通のいい子を演じたまま壊れてしまう。


 うちの子たちはみんないい子だけど、鴻子と朱鷺子は早熟というか少し変わった子に育った。

 もっとゆっくりでいいのに2人ともガツガツと早く大人になろうとしている。

 だから年齢相応に見えて空気を読むのが上手い紬さんに普通のいい子像を押し付けてしまっていたのかもしれない。


「話し合っても紬は自分の本心を言わない気がする。というか感情の言語化が苦手かもしれない」


 ああ昔からそうだ。

 甘えるのが下手で寂しいとか辛いとか口に出したりしない子だった。

 今思えば空気を読んで、言っても私たちを困らせるだけだと理解していたのだろう。

 だからネガティブな感情を言語化する能力が育たなかった。


 この家の中で一番敏感で壊れやすい心を持った繊細な女の子が紬さんだ。

 いい子だから問題が全くないなんてことはないのに誰もそのことに気付いてなかった。


「……嫌な思いをさせても入院するのが一番確実な回復方法ならそうしましょう。成長期に必要な栄養が摂取できないと後々困るのは紬さん本人よ」


 まずは体を元気にして、心はそれから。体調が良くないと気持ちも弱るし。

 それに夏休みに入ってから貴子さんの妊娠を知らされたり朱鷺子に付き合ったりして紬さんのキャパシティを超えてしまった可能性がある。

 一旦ストレスになっているかもしれないものから物理的に離してみたほうがいいだろう。


 場合によっては来年とか言ってないで早めに昔の私の部屋に住んでもらってもいい。

 鴻子が自宅学習で登校していなくても問題ないのだから紬さんだってリモートで授業を受ければ登校しなくてもいい筈だ。

 大人の目が届かないという心配はあるけれど私たちの目は節穴だったようだから今と大して変わらない。


 一方で紬さんに対し家族以上の感情を抱いているっぽい鴻子と朱鷺子は黙っていないだろう。

 ふたりとも紬さんに依存しているところがあるし。

 こっちのほうも気にしておかないと。




「うん入院するよ。準備はパジャマとタオルとあとなにが必要?」


 紬さんに通院するか入院するか尋ねたところ入院すると即答してくれた。

 内心不本意だろうにおくびにも出さない。


「紬さんは不安じゃない? 入院なんて初めてだし」


「もう子供じゃないし心配し過ぎだよ、みーさん」


「まだ子供でいいのに」


 子育てに正解はないなあ。

 同じ言葉をかけても、同じように接していても、子供の個性や性格によって受け取り方が変わってしまう。


 子供が入院となったら確実に貴子さんは時短勤務になるだろう。

 あそこは繁忙期でも仕事より家族を推奨する会社だし。今は繁忙期でもないし。

 そうしたらお見舞いは私じゃなくて貴子さんに行ってもらおう。

 私も紬さんが心配だけど、まずは血の繋がった母子の関係を見直す時間が必要だ。


 まだ子供でいてほしいなんて思うことも私たちのエゴかもしれない。

 だけど嫌なことを嫌と言えずに押し込めてしまう子をそのまま大人にするわけにはいかない。


「入院期間は体調を見ながらお医者様と相談しよう。でも焦らずゆっくり治してほしいな。病室から授業受けたっていいわけだし」


 私がそういうと紬さんにしては珍しく困ったような表情を見せた。


「夏休みは潰れちゃうんだね」


「そうね。残念だけど」


「ゲーム持って行ってもいい?」


「VRじゃなければ」


「……そっか。宿題ももう終わってるし暇だろうからお父さんから本を借りていこうかな」


 そこで不満を言ってくれてもいいのにやっぱり抑え込んでしまうんだね。

 心を閉ざしているわけではないけれど心の底から頼ったり甘えたりしていい存在だと思われてないのだろう。


 本当に子育ては難しい。

 今更ながら私と折り合いの悪かった両親が接し方を間違えていてもこうやって私のことで悩んでいたのかもしれないと思い至った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 35と今回でかなりの闇深案件? 少女を自分好みに洗脳とか教育は良いと思います。
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