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女児の脳を守るためプレイ時間制限とクールタイムがあります

「初めての配信はどうだった?」


「……すっごい緊張した」


 ヘッドギアで火照った顔を扇ぎながらセンサーを外していく。

 普段ひとりでゲームするときとは違った緊張感で余計に汗をかいたみたい。


「思ったより平気そうだったけど」


朱鷺(とき)ちゃんと一緒じゃなきゃ喋れなかったよ」


「こっちも助かったよ。最近配信がマンネリ化してたから新しいことやりたかったし」


 さっきまでの美少女アバターをそのまま小さく幼くしたような朱鷺ちゃんの微笑みに思わず胸が高鳴った。

 この前買い物へ行ったときに私が選んだセーラーカラーのワンピースが物凄く似合っている。

 夏の海に舞い降りた天使じゃん。


「ちょっと疲れたし良い時間だからおやつにしよー」


 若干天国を幻視していた私を呼び戻すように朱鷺ちゃんがそんな提案をする。

 確かにちょうどそんな時間だ。

 午前中に宿題やってお昼を食べてからプレイだったからそんなに時間経ってないような気がするけど。


 早速おやつを求めて階段を降りてキッチンに向かうと、仁王立ちをしたみーさんが私たちを待ち構えていた。


「読み通り朱鷺子(ときこ)(つむぎ)さんも降りてきた。おやつの準備は万全よ!」


「みーさんどうしてそんなポーズなの」


「ゲームの敵っぽく待ち構えてたら面白いかと思って」


「ママ配信見てたの?」


「そりゃ娘同然の紬さん初配信だもの。生で見られない貴子さんの代わりに私が見ておかないと」


 朱鷺ちゃんのママであるみーさんが貴子さんと呼ぶのはうちの母のことだ。

 確かに母は仕事中に配信は見ないだろうな。同じく仕事中である父は朱鷺ちゃんのパパであるくーさんと見ていたかもしれないが。

 (こう)ちゃんはどうだろう? 帰ってきてからアーカイブで見る気がする。


「ところで今日のおやつは?」


「フルーツゼリーよ。アイスやチェリーを乗せたかったら各自でどうぞ」


 ガラスの深鉢の中、賽の目切りのカラフルなゼリーがきらきらと涼しげに佇んでいる。

 アイスやチェリーでクリームソーダ風に盛り付けるのも美しいけれど、サイダーを注いでゼリーポンチにしようかな。

 サイダーの海にゼリーの魚を泳がせたら夏にぴったりだと思う。


 アレンジに思いを巡らせている私たちをみーさんはにこにこしながら眺めている。

 朱鷺ちゃんの成長予想図みたいなみーさんに見つめられているとちょっとどきどきしてしまう。

 顔が良すぎるのよこの母子。

 正直みーさんと鴻ちゃんと朱鷺ちゃんが並んでも姉妹にしか見えないし。


「さっき配信してたゲームはRPGなの?」


「RPGじゃなくて女児ゲーってやつだよ」


「女児ゲーって紬さんがモールのゲームコーナーで幼児とか小学生の女の子に混じって遊んでるゲームのことよね?」


「そう、それの家庭用。あれよりは対象年齢高めだけど」


 あまりゲームに詳しくない大人の人に客観的に語られるとやばい人みたいだな私。

 でもまだ義務教育中だからセーフだよ。


「童話をモチーフにした敵を倒して素材を手に入れて、素材からアイテムを作ってアバターを強化するんだよ」


「強化して他のプレイヤーと戦うの?」


「ううん、通常プレイだと他のプレイヤーには会わないよ。フレンド同士ならふたりプレイもできるけど」


 義務教育くらいまでの女子をターゲットにしているゲームだしオンラインでどんなに制限してもオフラインは制限できないから最初から知らない人とは知り合えない仕様にするのは正しいよね。

 他の女児ゲーでも外部の交流掲示板とかでちやほやされて大人しかいないオフ会に参加しちゃう女の子の話は聞くけれど。

 アリアドネが普及してから犯罪件数は減ったと母は言っていたけれど過信はしたらだめなんだって。

 あれはゲームだけじゃなくて社会のネットワーク全体に繋がってるから行動監視はできるけどそれでも隙間をつくような悪い大人はいくらでもいるからって。


「通常じゃないプレイもあるの?」


「まだ実装されてないけどそのうちコンテストイベントがあるみたい。そのときは専用サーバーで他のプレイヤーと遭遇しそう」


 みーさんがゲームをやっているところを見たことはないけれど何故か朱鷺ちゃんを質問責めにしている。

 ゲームに興味があるのだろうか?

 いやゲームを作る家族とゲームをやる家族に囲まれて全く興味を持っていないということはないだろうけれど。


「あ、そうだ朱鷺ちゃん。夏休みに入ったしフレバリームーン社のリアルイベントとかあるよね? 朱鷺ちゃん今年もゲストで出るの?」


「夏休みから別ゲーでプロリーグ始まるから毎週土曜はゲストで呼ばれてるよ」


「朱鷺ちゃんのメイン機種じゃないのに?」


「そこそこ触ってはいるから的外れなコメントはしないし、客寄せ要員として有用だと思われてるんでしょ。というわけで土曜は一緒にゲームできない」


「わかった」


 音ゲーで有名なフレバリームーン社は目を引く容姿のトッププレイヤーを手放す気はないらしい。

 朱鷺ちゃんが成績を残すメイン機種じゃなくてもどんどん顔を売らせようとしている。

 プロ契約する前からこうなら高校生になってプロ契約したらどうなるんだろう。

 みーさんも鴻ちゃんもとても豊かなバストをしているし、朱鷺ちゃんもその頃にはめちゃくちゃ育ってコスプレとかさせられてしまうかもしれない。


 それはちょっと阻止したい姉心。

 いや朱鷺ちゃんがやりたいなら止めないけれど。

ちょっと家族構成がわかりにくいので記載。

中古の完全分離型二世帯住宅に住んでます。

(分離型なのに中扉があり、建てた人は嫁姑問題で離婚して新築同然の綺麗な家を手放したようです)


◯紬父

◯紬母(貴子さん)

◯紬


朱鷺子父くーさん

朱鷺子母みーさん

◆朱鷺子姉(鴻子)

◆朱鷺子


血縁関係はありませんが、父同士が同僚、母同士が元同僚、紬と鴻子が同い年です。

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