表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/43

外注

CGI> お世話になっております。お問い合わせいただいた件についてチェックが完了しました。

オニゴ細田> 早々のご対応ありがとうございます。


CGI> まず未確認のエネミーですが先のステージ難易度を調整する際にテスト実装したものが特定条件下で出現するバグでした。こちらは元データは残したまま出現しないように修正済みですのでアナウンスお願いします。

オニゴ細田> わかりました。そのテスト時に立ち会った社員はいますか?

CGI> ログでは吉川さんが立ち合いしています。グラフィックと名称はテスト時と異なるのですがAIが自己判断で補完したとのことです。

オニゴ細田> ありがとうございます。吉川に確認します。


CGI> 一緒に送ってもらったユーザーアンケートの件ですがユーザーからアシスタント機能追加要望を多く見ましたので、サポートマスコットを用意してみました。AIがユーザーのプレイングから分析して苦手を補うようサポートマスコットを作成します。

オニゴ細田> あとでチームメンバーと確認します。CGIさんのプログラムであれば全く問題ないと思いますが。

CGI> 恐縮です。次回メジャーアップデートはいつ頃の予定でしょうか?

オニゴ細田> 予定では来月中旬を予定しています。

CGI> 個人的に僕の交友範囲内の幻想乙女工房プレイヤーに確認したのですが、夏休み期間中の新規プレイヤー参入が見込めるうちはアップデート間隔を狭めたほうがいいかもしれません。既に最終チェック済のプログラムは半年分納品してますし。

オニゴ細田> ユーザーアンケートにも次回アップデートについての要望がありましたからね。こちらもメンバーと共有しておきます。

CGI> よろしくお願いします。



「よっしかーわさーん。CGIさんから修正報告きましたー」


「相変わらずレスポンスはやいな」


「例のエネミー、テスト時に吉川さんが立ち合いしてたらしいですけど覚えてなかったんです?」


「えっ? それいつだろ……」


 細田はため息をつきながら先程の会話をチーム内共有した。

 確認した社員たちがにわかにざわめきだす。


「あーこれはあれか。何体か難易度の違うボスエネミーを用意してもらって比較したときのやつ。吉川がテストプレイして悲鳴あげてたな」


「あいつのデータが残ってたんですか?」


「これは見落としというか、今後のアップデートに流用できそうだから雛形だけ残してたみたいですね。元データは残ってるみたいなのでいずれ実装してもいいかもしれません。勿体ないし」


 社員全員プログラマーやプログラム経験者であり小規模ゆえか外注であっても身内感覚のため、バグに対し「出るときは誰であっても出てしまうよね」と寛容だ。

 世の中にはどう見ても破綻しているのに何故か正常に動いているプログラムや、魔法でも使ったのではないかと疑うようなプログラムが溢れている。

 完璧なプログラムは存在しないし完璧なプログラマーも存在しない。それがオニゴ社全体の共通意識だ。


「すぐにアナウンスして修正を適用してもいいが、再現はどうする?」


 ディレクターが問いかけられ細田は少々考える。


「再現についてはアプデ後でもテスト環境でできると思います。まだプレイヤーへの連絡がついていませんが……先に修正できるなら早めにしてしまったほうがいいかと」


「そうだな。幸い大きな騒ぎにはなっていない今のうちに行ったほうがいいだろう」


「では明日の深夜早朝帯にメンテナンスします」


 細田にとってもともと明日は夜勤だ。メインプレイヤーが小中学生であり深夜帯の接続者数はごく少数なので作業を入れても問題ない。


「メンテナンス後にサポートマスコットの実装やアプデ間隔の見直しについてミーティングを行おう。実際思ったより販売数が伸びてない。人目に付くようアナウンスを増やすのは有効だろうから」



◆◆◆



 夕飯は鮭のパン粉焼きだった。惜しい。でも美味しい。

 そして今日はずっと部屋にこもっていた鴻ちゃんが夕飯後妙に引っ付いてくる。


「今日は作業で疲れたから紬補給」


「なにそれ? あ、でも私も鴻ちゃん補給したいからちょうどいいかも」


 夕方すごく嫌なことがあったけどこうして家族の近くにいると心が落ち着く。


「私も対戦会疲れたからムギちゃん補給するー」


 理由はそれぞれ違うけれどみんなちょっと疲れた日になったんだね。

 そんな私たちを見て母が笑う。


「あなたたちそんなに固まって暑くないの? アイス持ってこようか?」


 空調は効いてるけど密集していると確かにちょっと暑い。


「お母さんお願い」


「はいはい。えっと紬がストロベリー、朱鷺子ちゃんがチョコ、鴻子ちゃんがバニラよね」


 夏はいつも冷蔵庫に入っている3種入り棒アイスをそれぞれ好きな種類だけ食べられるので我が家の3人娘はバランスがいい。

 好みの味を食べられてもけんかなんてしないけれど。


「紬はなにして疲れたの?」


「えーと」


 なんとなくクラスメイトのことは言いたくない。

 登校全くしてない鴻ちゃんだからそんなに把握してないと思うし。


「配信しなかったけれどひとりで戦ってみたりしたからかも」


「それは配信で見たかったな」


「リプレイならあるよ。あとで見る?」


「うん」


「私も見るー」


 映ってるの私のアバターだけだしそんなに楽しめるようなことはないんじゃないかな。

 見栄えも地味だし。


 ただ幻想乙女工房と配信を始めてから同じゲームの話ができるのはなんとなく楽しい。

 音ゲーの朱鷺ちゃんとゲーム作りたい鴻ちゃんと私だとゲームに対する好きの方向がそれぞれ違ってるから共通の話題がなかったし。

 私が好きそうなゲームだからと幻想乙女工房の初報を教えてくれた鴻ちゃんと、配信を提案してくれた朱鷺ちゃんには感謝だ。


「ん? なんかムギちゃん嬉しそうにしてる」


「今は鴻ちゃんと朱鷺ちゃんと同じゲームの話ができるようになって嬉しいなあって思ってた」


「ああっ。ムギちゃんが可愛くて抱きつきたいのに手にアイス持ってて邪魔!」


「そこで理性を働かせてくれて助かる」


 それでも抱きつかれるのはびっくりするけど。


「朱鷺子は食べ終わったら私に抱きついてなさい。私のことも大好きでしょう?」


「お姉ちゃんには毎日抱きついてるし」


 うーん、姉妹だとハグに抵抗ないみたいだね。

 私も下の子が生まれたらハグに抵抗なくなるのかな?

 まだ想像つかないや。

今日誕生日なので評価ポイントとブックマークください(おねだり)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ