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ショッピングモール

 おやつを食べたあと今日はゲームしないで宿題を進めようかと思っていたらみーさんに買い物を頼まれた。

 急に近所の人が来ることになったから家を空けられないらしい。

 駅前のショッピングモールまでは自転車ですぐだから大した手間ではない。

 暗くなる前に帰るならちょっと遊んできてもいいとのことなので久し振りに外で女児ゲーを遊ぼう。


 鞄に女児ゲーで使うカードが入ったデッキケースを入れて早速モールへ向かう。

 おつかいはパン粉とマヨネーズなので先にスーパーへ買いに行く。今夜はエビフライかな?


 今日はかわいめの兎半面にダボっとしたチュニックなので不審者感は多分薄い。

 モールの店員さんなんかは私を見慣れているだろうけれど夏休みだと学生バイトさんとか普段モールに来ない女児とかいるから大人しめに。

 来月の後半くらいになったら客層が元に戻って自重しなくても大丈夫になるけれど。


 スーパーを出てゲームコーナーへ向かう途中にシネコンがあるので公開予定の映画チラシなどをチェックする。

 プロが作ったチラシは色彩や配置の勉強にもなるし。純粋に家族と休日に映画を見たい気持ちもあるし。

 夏休みだからなのかアニメ映画多いね。VRゲームを題材にした作品もふたつくらいある。

 アリアドネが普及したのはここ5年くらいの話だけどあっという間に生活に馴染んであって当たり前のものになったからなあ。

 VRもARももう特別なものではない。


 とはいえ肉体をコールドスリープして仮想空間で生活するなんて古いSFみたいなVRファンタジー作品も存在するけれど。

 それはそれでフィクションとして楽しい。



「宮山さん?」


 シネコンからもう少し行ったところ、進学塾が入っているテナントの前であまり聞きたくない声を聞いた。

 ああそうか夏期講習の終わり時間とかぶってしまったか。


「こんにちは伊藤さん。夏休み前以来ね。それじゃ」


 向こうに用があろうとも私に用はない。

 さっさと振り切るに限る。


「ちょっと! 相変わらずの失礼な態度じゃない?」


 夏期講習なのにきっちりと制服のセーラー服を着て、校則通りの髪形をしているクラスメイトと会いたい人がいるだろうか?

 もっと気を抜いても勉強なんてできるでしょ。


「だって私は用がないもの」


「いいからこれを見なさい!」


 目の前に大きめの紙を突き出される。

 ああ、模試の結果の紙。県内にある進学校の名前と並んだBの文字。


「どこも合格圏内よ。夏休みが終わったらもっと力をつけて宮山さんなんかに大きな顔をさせないんだから」


 失礼というのはどちらの話だろう?

 こんなくだらない内容で他人を引き留めるほうが失礼では?


「……ここに載ってる高校、私は全部A判定出てるから伊藤さんも頑張ってね」


 これらは進学校とはいえ私の志望校よりはランクが下がる。

 だから模試の結果を突き付けられても、ふーんそう、くらいの感想しかない。


「嘘よ!」


「今回じゃなくて春の模試だから比べることはないと思うけど」


「今に見てなさい! 私が学力で上回ったらあなたが校則違反の変なゴーグルで登校するのをやめさせてあげるんだから」


 学力が上回っても権力が手に入るわけではない。

 伊藤さんは夢見がちだな。

 本人がやりたがったからクラスで学級委員してるけれど周囲からの人望だってそんなにない。


 憐れむというかひたすら面倒くさい。

 この先に女児ゲーが私が待っているのだから早く解放してほしい。


「湖出さんにも伝えといてちょうだい。天才児とか言うけど不登校のくせに成績いいからって大きな顔をしてられるのは今だけよ、って」


 大きな顔、ねえ?

 会ったことも話したこともない人が鴻ちゃんを勝手に語るのか。


 鴻ちゃんはなにを言われても気にしなさそうだけど私はちょっと不愉快だ。

 かといってここで怒りをあらわにするのは品がない。


「くだらないことばかりしてないで、もっと今しかない夏を楽しんだほうがいいよ?」


「はあ?」


 お面があるので私の目の表情は見えないだろうから、口だけでにこやかに笑って見せる。

 どうにも私のことが気に食わない人にとってはただの愛想笑いも嘲笑に見えるからしい。


「来年の今頃も多分私のほうが成績いいし……来年になったら遊べないから今年は遊んだら?」


 売られた喧嘩はツケで買えとみーさんと母から言われている。

 私はそのツケを払う気はないし勝手に迷走して勝手に自滅すればいい。


「そんなことないわ。私はちゃんと努力して追い抜かすもの」


「そう思いたいなら頑張ってね。それじゃ」


 対抗心がありすぎる人は煽られると目的を見失いやすいんだよ。

 私を追い抜かすと思いつつも希望の高校に入るための勉強が私を追い抜かすためだけの勉強になってしまい、それに慣れてしまったらどこの高校に受かってもとても空虚な新生活になってしまうと思うの。

 だってそこに絶対私はいないもん。

 私の志望校なんて成績さえキープしてれば服装自由よ?

 要求される成績はえげつないけれど。

 校則を守ることに誇りを持つ伊藤さんが同じ高校を受けることはないだろう。


 なんだか背後で金切り声が聞こえる気がするし、女児ゲーの気分じゃなくなっちゃったからまっすぐ帰ろう。

 みーさんにパン粉とマヨネーズを届けて部屋でゆっくり読書でもしてよ。

 そういえばさっきチラシをチェックした映画の原作本を父が持っていた気がする。ちょっと借りて読んでみるか。

ようやく回復しました。副反応きつい……

熱出しながらBPLセミファイナルをリアタイして心臓の残機を減らしていたのが良くなかったかもしれない。

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