フォームチェンジは女児ゲーの見せ場だよね
多くの女児ゲーに音ゲー要素があるのでなんとなくわかるけれど、どんな音ゲーのトッププレイヤーでも譜面を丸暗記する人は多くないらしい。要所要所でぼんやりと譜面傾向は覚えてるみたいだけど、女児ゲーと違ってものすごい曲数があるから全部を暗記なんて現実的ではなさそう。
殆どのプレイヤーはオブジェクトを見てから反応する。みんな反射神経がすごいよね。
そしてその中でトップに位置するプレイヤーとその他を分けるのは精度だ。
どれだけ正確にミスなくオブジェクトを処理できるか。
そうして自分自身を一番機械に近付けたプレイヤーが頂点に立つ。
大会となると初見力とか度胸とか譜面知識とか体力とかそういうのもあるみたいだけど。
トキちゃんは「心臓が剛毛か心臓の予備をいくつも用意できる人が勝つ」って言ってた。心臓の予備とは?
音ゲーの世界で培った反射神経、精度、心臓の強さ、それらを全て駆使してトキちゃんはラプンツェルの攻撃をかすらせながら回避している。
でも多分これ正解ルートじゃない。
一般的な女児はかすらせてゲージ溜めるとかしない気がするし。
正解はラプンツェルにゲージ技撃たせつつ耐えて倒す。もしくは弱体化アイテムを装備する、じゃないかな。
安全地帯に避難しつつ、踊るように回避し続けるトキちゃんに思わず見惚れてしまっていた。
コメントもかなり盛り上がっている。
『ゲージ溜まってきた』
『ゲージ技ってどんなの?』
「えっとゲージ技の種類はアバター作成時に決めていて、私の場合は全体回復です。トキちゃんは全体攻撃ですね」
表立って戦うのはトキちゃんということになっているので役割分担のためにゲージ技も変えてある。
「一定時間ダメージ無効とかデバフとかもあったはず」
『そっちのほうが回復より良くない?』
「そうですねえ。でもゲージを溜めるには攻撃を食らわないといけないわけで、ふたりプレイで一緒にゲージを溜めてる状態なら味方を全快できるというのは無意味ではないと思いますよ。この先のアップデートで増えるステージボスがゲージ技のみで倒せるという保証はないですし」
それにゲージ技の変更は今のところできないはずだ。
どうしても変えたかったらアバター作り直しだし。
ゲージが溜まりきったトキちゃんは発動の準備に入った。
さっきまでの縦横無尽な回避ではなく、最低限の動きで避けているのは準備中は動きが制限されるからだろう。
装備している着ぐるみに光の粒が集まってシルエットが変化していく。コズミック柄の……いやあれは星が瞬いたからきっと本物の星空を切り取って仕立てたドレスだ。
星空を纏い星光を冠にしたトキちゃんがドレスをひるがえし、晴れた昼の世界に夜を連れてきた。なんてきれいな景色だろう。
右手を真っ直ぐ天に伸ばし、断罪を行う女王のように振り下ろす。
「塔ごと潰れなさい! 『メテオストライク』!」
宣言とともに塔めがけて大きな星が落ちてくる。
隕石というかクリスマスツリーのてっぺんにあるファンシーな星の形だけど。
リアルな隕石はそんなに可愛くないしね。
重ね掛けしていたバフのお陰なのか塔にぶつかった星の勢いは衰えないまま猛スピードで地面まで到達し、傍若無人な三つ編みは崩れ落ちる塔と共に消滅しはじめる。
いやまあ普通に塔が崩れたら死ぬよね中のラプンツェル。
星空のドレスは元の着ぐるみに戻り、勝利を宣言するようにトキちゃんはVサインをきめた。
「一撃! 頑張った! ムギちゃんちゃんと見てた?」
「勿論。すっごくかっこよかったよ」
「えへへー」
『乙!』
『めちゃくちゃグラフィックきれいでびっくりした』
「ゲージ技撃つとすぐ元の装備に戻っちゃうからあとでじっくり見たいですね」
一連の専用グラフィックはあとで配信から切り抜いて保存しておこう。
細部までじっくり見るんだー。
可能なら雰囲気が似た感じのワンピース作ってトキちゃんに着せてみたい!
ステージの特性なのかラプンツェルが消滅して間もなく自動的に工房まで戻された。
帰りも迷路はちょっとめんどくさいもんね。
早速染料や妖精の粉を省きラプンツェルから得られた素材を確認していく。
◆ホワイトクロス
R 5
◆グリーンジェム
R 2
◆バラのつる
R 2
◆粘土
N 6
R 4
ん、粘土?
これ……多分攻略サイトにまだ載ってない素材だ。
塔から回収した素材かね?
デザイン機能も開放されたし、これは早速お面を作れということかもしれない。
自分に似ても似つかないアバターとはいえ顔を塞いでない状態は落ち着かなかったしね。
本日ワクチン接種2回目です。
同僚から「時間感覚なくなってやばい」などの話を聞いて怯えています。
昨夜日間VRゲーム8位まできました。
ありがとうございます!