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滅びた王国

 シンデレラのステージである『朽ちた大演舞場』道中に出てくる敵は魔法を使うシャドウだった。

 クリノリンかパニエかわからないけど裾が広がったドレスのシルエットだから舞踏会の出席者の影なのだろう。

 なんで朽ちているのかはわからない。

 無人なだけで建物はきれいだし。


「正当な嫡子を虐げていたとはいえ重大な罪は犯していない王子妃の義家族を残虐な方法で公開処刑したから人心が離れて国の滅びに繋がったんですかね?」


「お父さん殺したのが義母たちだったのかな?」


「そうだとしても首切る程度で良かった気はしますが」


 シャドウは魔法を使うがトキちゃんは素早く避けられるので苦戦するようなこともない。

 むしろみだれひっかきの属性攻撃が過剰過ぎるかもしれない。


「前の銀狼みたいにシャドウばかり倒してると出てくる敵もいるのかな」


「シンデレラを狙ってもいいかもしれません。通常形態なら魔法なしでもトキちゃんの攻撃力で押し通せるから」


 下手に装備を整えてパワーアップされる前に予行演習はしたほうがいい。

 赤ずきんのよくわからない第2形態はともかく『希死念慮の赤ずきん』に関しては『赤ずきん』から攻撃などは変わってなかった気がする。


「じゃあ行っちゃおうかシンデレラ」



 その判断は間違いではなかったけれど、正しくもなかった。

 魔法に対する抵抗力を全く持たない私たちと、物理攻撃に対して防御力の低過ぎるシンデレラ。

 お互い攻撃を避けるばかりで埒があかない。

 こちらの攻撃が当たってないのでゲージ技の危険がないことが救いか。


 そんな重たそうで豪奢なドレスを身に纏って防御が紙とかよくわからないけれど。

 避けるときもひらりひらりと舞っているから見た目ほどは重くないのか。

 道中の敵がシャドウでここが廃墟ならシンデレラだって幽霊かもしれないし。


「トキちゃん、私が囮になるからとにかく一発入れよう」


 死んでも特にペナルティはないし、ふたりで生き残る必要もそんなにない。

 シンデレラの持つ扇から放たれる吹雪のような魔法はプレイヤーを即死させる類のものではない気がする。

 耐性ないからそれほど経たずに死ぬだろうけど。


「ムギちゃん囮にするのはちょっと……」


「だって攻撃力高いのはトキちゃんだし、私じゃトキちゃんが10秒稼いでくれたところでなにもできないよ」


「ムギちゃんだってちゃんと攻撃避けられてるし、言うほど反射神経悪くないと思うの」


「反射神経あっても運動能力がねえ……というわけで頼んだ」


「もう! 頼まれるけどなるべく死なないでね」


「なるべくねー」


 シンデレラの攻撃モーションにタイミングを合わせ、発動した瞬間に扇へ向かって飛び込んでいく。

 一瞬怯みつつも発動された吹雪が私の体力をガシガシ削っていく。

 このペースなら死ぬまで15秒ってところか。


 それだけあれば私の突進とともに高く跳躍したトキちゃんがシンデレラの頭上から攻撃を通すことができるだろう。

 私の体力をほんの僅か残し、荒れ狂うような吹雪はやんだ。


「おお一撃」


「よかった! ムギちゃん生きてた!」


 消えていくシンデレラを無視してトキちゃんは私に抱き着いた。

 いやそこまで喜ばなくても。


「素材出たら工房に帰ろうか。流石にこの体力でうろつくのは怖いし」


「帰り道は私がお姫様抱っこでムギちゃん運んでもいいよ?」


「それは遠慮する」



◆シャドウの灰

N 20

R 15

SR 2


◆シャドウの魂

N 25

R 7


◆魔法石

N 6

R 2


◆アンティークレース

R 2


◆ブルージェム

R 2


◆オーク材

R 2


「レシピ通りだと魔法石とブルージェムとオーク材で氷のワンドが作れるみたいですね」


「念願の魔法攻撃だね」


「アレンジで足すとしたらシャドウの魂かな……」


「ラタンは?」


「ああ赤ずきんドロップの……装飾として面白いかも」


 イメージとしては籐籠状の杖頭の中に青い石が収められて網目から淡く光が漏れる間接照明みたいな杖だな。

 短杖では恰好がつかないので長杖のほうがいいだろう。


 しかし今まで使っていた針ではなくハンマーでのクラフトになる。

 まだ熟練度が上がってないので先に他のものを作ってハンマーを青くしておきたい。

 しかし都合よく今ある素材でハンマーの熟練度を上げるようなレシピは見当たらない。


「とりあえずレアリティは無視してレシピ通りの氷のワンド作ってシンデレラ周回で素材集めかしら」


「レッドジェムまだ残ってるなら炎のワンドでもいいんじゃない? ほら次ページのレシピにあるやつ」


「そうだね。シンデレラ相手ならこっちのほうがいいのかも」


 攻撃の属性かぶらないほうがいいのかなって思ったけれど序盤は複数属性の敵なんて出てこないみたいだしそこまで心配しなくてもいいか。


「もしくは氷のワンドを作った上で先にラプンツェルに会いに行く、とか?」


 序盤に選べる本の最後のひとつ。赤ずきんやシンデレラより難易度が高いから多分どのプレイヤーも最初には選ばない童話。

 このゲームは女児ゲーなのでいつどのタイミングでなんのステージを選んでもいいし、同じステージだけを延々とやっていてもいい。

 ラプンツェルは後回しにしたけれどアップデートでステージが追加されるまで周回しようと決めていたステージだ。


「もう行ってもいいのかな?」


「戦力は問題ないよ」


 多分アップデートされても周回されるステージになるんじゃないかな?

 道中の敵ドロップでクラフトに有用な染料と布が手に入るステージなのだし。

 つまり革製ではない服が作れる。

 チロリアンテープもアンティークレースもここで使うのが本来の用途だ。


 染料があれば好きな色に染められる。

 そして染料を手に入れることによりデザイン機能も解放される筈だ。

 デザイン機能があればトキちゃんが今装備している着ぐるみも性能はそのままにもっと可愛いデザインにすることができる。

 いつまでもトキちゃんの可愛い顔が隠れてるのは世界の損失だからね。


「よし、ラプンツェル倒して初期3ステージ通常を埋めてしまおう」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です(◍•ω•◍) [一言] 最初こそいきなり戦闘で説明が最低限すぎて驚いたけどよく考えると小説って基本そんなものだった事を思い出しましたの。 やっと見れてここまで一気見したん…
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