神木の木刀を操る少女Ⅳ
快く引き受けてくれたが、木の実を砕くと白い粉をこねだし
温まったフライパンに垂らすと円形に焼く
パンパンと手を叩きながら急かされる
「はいはい、弟子もっと細かくね、上手いじゃん!
違うんだよね、もう少し大きく切らないと口に入れた時に
果実の美味しさが広がらない、残念なものになっちゃう」
「私はなんの訓練をさせられているんだ?」
「え!えー、考えるんじゃないの、感じるの」
「何を、感じろと?」
「程よい手首の動きを理解して欲しいの」
目をあわせない・・・適当に言ってるんじゃないのか
神木の木刀をあれほど見事に操っていた、日々の生活にも鍛錬をこの桃1つにしても生命力を感じ取っているのか?
焼きあがるのを我慢できないのか桃を豪快に丸かじりしていた
「はい、召し上がれ」
「気のせいか、焦げていないか?」
「え!酷くないですか、おこげが美味しんだよ」
「そうなのか、美味しところは師匠に」
「え!困るんですけど、違う、一番美味しいところは辛い訓練に入る前にひと時でも楽しんでほしいの」
「確かに香ばしくて苦みが癖になりそうだ」
「そうでしょうとも、大人の味、分かってる」
気分よく稽古をつけてくれるのならこの試練甘んじて受け入れよう
随分多めに作っていたけど、数日分の作り置きではなかったのか・・
どんだけ食べるんだ?細い体からは想像できない食欲だった
「もう食べられない」と言うと背中にもたれかかる
緩やかに漂い流れてくる食べ物とは違う甘い香りに少女の髪が躍る
ドキドキしてくる完全に振り回されているな
「どういうつもりなのかな?」
「眠いから、そこの山の麓まで運んでちょうだい」
並ぶ山々の中でもひときわ高い山を指さしていた
「え!ふざけているのか?」
「酷くないですか?鍛錬のために無理して食べたのよ」
「急に何の話をしているんだ?」
「少しでも重いほうがいいの」
担ぐ重しなら、水でも食料でも、食べる必要はないと言いたいが教えを乞う立場だし黙って歩くことにした
細く軽い少女だし楽勝だなと考えていたが、眠ったのか急に重くなる
起こさないように歩くことで疲れが増すが、穏やかな吐息を聞いていると不思議と癒されていた
傾斜に足が悲鳴をあげる はぁはぁ、喉が渇きキツイ
「くしし 早く、肩車してよ」
「お姫様、お目覚めですか?」
「寝てなんていないんだからね」
「いやいや、寝言をいっていたよ」
「ウソ!酷くない!乙女の寝言を聞くなんて趣味悪くないですか」
「あははは、冗談だよ、認めたね」
「何の事かな、ねぇ、見て見て、リスがいるよ」
「お腹空いたのかな?捕まえようか?」
「あなたには情緒的はないのかしら」
「訓練がきつくて風景を愉しむ余裕がないようだ」
「もう少しで頂上よ頑張って」
ふらふらになりながら頂上に到着すと崩れ落ち、青儲けに転がり呼吸を整えながら眺める雲は美しかった
「私の技、教えてあげるから、強く握って、あっ
身長高いな・・・胸の位置だがらって触ったら駄目なんだからね
ほら、しゃがんでお腹辺りを、強く握ってよ」
「何をするつもりだい」絶壁まで進むと飛び降りた!
「ヒィィィィ、この高さは即死する」
「大丈夫だから、よく観察して覚えるのよ くししし」
怖くてとても目を開けていられない、教えを乞う相手を間違えた
必死で握る体は細く、後悔しながら落ちていく
だが、少女は木刀を地面に刺し衝撃を無効化して怪我無く降りていた
木刀を支点に逆立ちしているが、バランスが崩れるとドスンと背中から地面に押し付けられた
廻の上に乗る少女は起き上がり「分かったよね?同じことするんだよ」
「できるわけないだろう、殺す気か?」
「生きているじゃん?しかたがないな、あの木でいいや」
指さす先にある大木は10メートルを超えている
「いや、無理だろう、骨折れるぞ」
「もう、教えて欲しいんでしょう?感じるの」
無茶苦茶な訓練が開始された
木の上から飛び降りるが怖くて頭から飛び降りることなんてできない足で着地する
怪我するんじゃないかと怖かったが足の裏が痺れる程度ですんでいた
「なんとかなるもんだな」怒った顔で近寄る
「本気で覚える気あるの?」
「同じような事はできない・・・かな」
「私を信じて光雷で受け止めてあげるから、信じてないな?見ていてよ」
不思議な光景だった・・・木のてっぺんをめがけ木刀を投げると少女も引っ張られるように飛んでいく
一瞬で登ると体の周りを木刀をまわりなが落下してくる
地面すれすれで木刀で全ての衝撃を吸収して着地をした
「人とは思えない・・・」
「まさか、猿とでもいいたいの?酷くないですか?」
「まるで天使のようだよ」
「そっちか!ま、許して進ぜよう」
こうして早朝から日が暮れるまで訓練を繰り返した




