ケイドロ前半戦
4月の春風が強く吹き荒れる中、
ホイッスルが鳴った。
制限時間は20分。
解き放たれた警官30人のうち半分以上が真っ先にキャプテンの元へ向かう。
「はっはっは!スターにでもなった気分だぜ!」
笑いながら逃げようとするキャプテンだが、多勢に無勢。
あっさりと捕らえられた。
「お前らぁ!必ず助けてくれよー!」
キャプテンはそう言い残すとニコニコと連行されていった。
「ちっ、使えねえデブだな」
また光が毒吐く。
「まあ、あれだけの人数が来たら無理だろうよ」
キャプテンのフォローを入れるが舌打ちし、去って行った。
なんて女だ。
開始から3分程で早くも1つ目の牢屋が埋まった。
さらに番人が7人と強固である。
敵チームのキャプテン南雲を筆頭に年中の越中、更には俺と同じ年少の桜田兄弟が泥棒を乱獲している。
「そろそろ狙われる回数も増えてきたな…。やっくんはどこに行っちまったんだ」
年少という事もあって今のところ執拗に追いかけられることはない。
ただ数的不利になりつつあるこの状況を打破しなければこのまま全滅となる可能性は高い。
攻めるかこのまま逃げるか悩みながら牢屋を眺めていると牢屋の中にやっくんの姿を見つけた。
「やっくん、捕まってんのか…」運動は不得意なやっくんだ。無理もない。
そのやっくんが俺を見つけ指をくるくる回した。
「なるほどな」
やっくんの合図を汲み取り牢屋に走り出した。
「おい、突っ込んできたぞ!」
「迎え撃て迎え撃て!」
牢屋の周りにいた警官が次々と向かってくる。
俺はすかさず進路を変え、ずり足で逃げる。
「砂がやべえぞ!」
「痛てぇ!目に入った!」
ずり足によって巻き起こした砂嵐が牢屋周辺を覆い、警官を惑わす。
「一旦牢屋の守りに入れ!解放を許すんじゃねえぞ!」
白キャプテン南雲が慌てて統率する。
「キャプテン!!牢屋に人がいません!!」
「馬鹿なっ…!ずり足野郎はあそこにいるぞ!」
白チームに動揺が走る。
「牢人の中に鍵を持っている人間がいただけさ」
解き放たれたやっくんが種を明かす。
「ど、どういうことだ…!!」
「僕は最初から捕まってないんですよ。どさくさに紛れて侵入しちゃいました」
「クソがぁぁぁぁぁ!!!」
南雲が吠えた。
残り時間10分に差し掛かるところで遊戯は振り出しに戻る。