親友ポジの勉強会(後)
前回書けなかった各キャラの服装(あくまで個人的なイメージ)。もしお気にめさなければ、それぞれをお気に入りのコーデで脳内変換お願いします。マジで。
そして多分服装の紹介、今後歩美以外やらないと思います。野郎には苦しい作業です。
いずみ.白のブラウス、上から深緑のジャンパースカート
クリス.黒のデニムジャケット、灰色のTシャツ、青のジーンズ
杏奈.髪型:サイドテール、紺色と青のスタジアムジャンパー、白のカットソー、黄色のデニムミニ、黒のキャップ
あと、今回途中から初の三人称使ってます。慣れないことしました。でも楽しい。
「ぁ、あの……朱坂さん、そこ……少し、違う」
「えっ、ほんとう? ……ごめん村本さん。ちょっとそれ、教えてもらっても大丈夫かな?」
「う、うん。この計算だと、こっちのページにある公式を使って……」
「ちょっとそこでストップ。一度問題を読み直してみなさい。それだと文章がおかしくなって……」
「ちょ、ちょっと待ちなさいって!? 読み返せって言われても、そもそもどこが間違ってるのか全然わかんないんですけどっ!?」
「精が出るねぇ……」
「雄介? さっきから手が止まってるんだけど」
「ウーッス」
勉強会開始からしばらく、周りがほぼ休みなく手と頭を働かせる中、1人その様子を眺めながら注ぎ直したジュースを飲む。勿論、そんなサボりは許されない訳だが。
「……誠、どこかわからない所は無い?」
「あぁ、大丈夫。あるにはあるけど、もう少し一人で集中してやってみるさ! 本当にどうしようもなくなったら聞きに言ってもいいか?」
「……そう。えぇ、大丈夫よ。頑張って」
「ありがとう、悪いな」
そしてみんな大好き誠君も勿論勉強中。一年の時につまづいた英語の復習に取り組んでいる。様子を見てくれたクリスの好意にも甘えず、1人黙々と問題に目を通している。
クリスとしてはここでアドバイスの一つや二つを言って好感度を少しでも上げたいんだろうが、鈍感ハーレムフラグ男にはそんな遠回しのパス等全く無意味。しかも当の本人がやる気だからこそ、その邪魔など尚更出来ない。正に鉄壁(無自覚)、付け入る隙など1ミリも無い。
いや、でもなんかありがとうって言われてちょっと満足してるぞこの優等生。チョロいなおい。
それにしても全員、よく飽きもせずやり続けられるもんだ。杏奈はまぁ、嫌々というかやむを得ずというかわからない所だが。
……それにしても、だ。
教科書で顔のほとんどを覆いながら、座っている面々に目を配る。
いずみ、クリスに杏奈。タイプは違えど全員もれなく人の目を引く美人揃い。毎度思うがその三人が一堂に揃うのって、普通に考えたらすごい事なんだろうな。毎度過ぎてなんかもう慣れたけど。
そして、もう一人。最近までここに居なかった村本。いずみに教えている真剣な表情を横目で見ながらふと思う。
(……やっぱりどう見ても可愛いよな、この子)
普段俯きがちで影の薄いほうだからなのか、割とその手の話題に上がらない村本だが、こうして関わりが多くなった事で、というより始業式の時から強く印象づけられた事で、良くも悪くも視界の端で捉えるようになってしまった。
手入れの行き届いた艶のあるフワリとした黒髪のミディアムヘア。いつもなら俯いてよく見れない長い睫毛や、吸い込まれそうな黒の瞳も、この距離だとはっきり見える。七分丈の袖から覗かせるシミや曇りを感じさせない透き通った肌も、彼女の魅力に一役買っているだろう。同年代からすれば小柄な体型も、その容姿からすればプラスな部分だ。スタイルは……うん、スレンダーな感じだ。いいと思う。
「……あ、の……どう、したの? 日野君もわからない所とか、大丈夫……?」
「ぇ? あ、あぁ! 大丈夫大丈夫! 悪いな、邪魔して!」
「そ、そう……?」
しまった、ジロジロ見ていた事に気付かれたか。なんか本当に、最近こんな事で気を取られてばかりな気がする。……駄目だ、俺も勉強しよう。
「…………ふーん」
「こら、ウサギ。貴方も手が止まってるわよ。集中しなさい」
「イタッ……こ、こんっのアホネコ! なにもノートなんかで叩かなくてもいいでしょ!これ以上馬鹿になったらどうすんのよ!」
「……貴方、自覚はあるのね」
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
「……あれ、もうこんな時間か」
「ほんとうだ。もう四時……集中してると、時間の流れって早く感じるね、村本さん?」
「う、ぅん……」
「もう無理。無理ヤダ、勉強キライ……」
「あーっ、駄目だこりゃ。相当頭酷使してるわ」
「進むスピード、この子が1番遅かった筈なんだけど……」
「ははっ……そうだな、勉強もそろそろこの辺にして置こうか」
時間が過ぎ、時計の針が四時を少し超えた頃。そろそろ集中力が無くなるであろう時間を見計らい、誠が勉強の切り上げを宣言する。それを聞いてそれぞれ広げていた筆記用具をしまう。
「……ぅやったぁー! 終わり! おしまい! あぁそぶぞー!!」
「……終わった途端にこの元気、一体どこに隠し持ってたのよ」
「いや、この様子だと隠してたっていうより溜め込んでたって言った方が正しいかもな」
「どっちでもいいじゃーん! さ、そんなことより早くあそぼう、すぐ遊ぼう! トランプやウノ、ボードゲームなんかもあるわよ!」
「いや、それ全部誠の家の奴だろ。っていうかそのボドゲに至っては俺のだし」
机に倒れ込み、小声で不満を漏らしていた杏奈もその一言を聞くや否や、勢いよく立ち上がり遊ぶ為の準備をテキパキと進める。先程までとの変わりように、雄介とクリスも呆れ顔。
「あぁ、前に置いていったやつか。……っ思い出した! お前そういうのちゃんと持って帰れよ! それ以外にもまだ二、三個残ってるぞ!?」
「え、いや。普段集まるのは誠の家だから、置いとくと便利かなって」
「それ、絶対持って帰るの面倒くさいだけだろ……いや、もういい。それと今のうちにみんなに聞いておきたいんだけど、夕飯はどうするかとか決めてるのか?」
茶を自分のコップに注ぎながらふと、思い出したように質問を投げかける誠。突然の事に全員が不思議そうな顔で誠を見ると、慌てて言葉を続ける。
「いや、ほら。もし良かったらそろそろいい時間だし、一緒にどうかなって。勿論みんなが無理じゃなければ、だけど」
「お前が良ければそうさせてもらうけど、いいのか?」
「あぁ、これだけ人がいると賑やかで楽しそうだし、何より飯はみんなで食べた方がうまいだろ? 時間も時間だから、店の方の予約とかむずかしそうだし、ここでなにか作る事になるけど」
「じゃ、俺は賛成で。他はどうする?」
「右にさんせー。あたしも元々外で食べる予定だったし、そういう事なら願ったり叶ったりかなー」
「それじゃあ私も呼ばれようかしら……」
「うーん……だったら私もそうしちゃおうかな。晩御飯大丈夫ってお母さんに伝えなきゃ。村本さんはどうする?」
二つ返事で皆、夕食に参加を決めていく。気心の知れた仲という事で、この手の話は慣れている為か、突然の提案にしては乗り気だ。
「そ、その……お母さんに聞いてみないと……ちょ、ちょっと電話、してきますっ……」
「……困らせちゃったかな?」
「かもなー」
「そう言って、実は居てくれた方が嬉しいくせにー」
「……うるせぇよ、このバカ」
スマホを持って部屋を出て行く歩美から目をそらして、横でにやけながら茶化しにくる杏奈に余計なことを、と言いたげな表情で雄介はそう小さく呟いた。
歩美ちゃんべた褒めタイム。最初からやればよかったと実は後悔してる部分です。
次回、1話2話の歩美視点です。