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親友ポジの勉強会(前)

ゆっくり地道に更新です。そしてブックマーク20件超えた!嬉しい!

 



【~♪】


『はーい』



 呼び鈴を鳴らした直後、聞き慣れた声が帰ってくる。場所はどこの街にもありそうな住宅地の一軒家。この家で誠は1人で住んでいる。


 誠の両親は、仕事の都合で海外を転々としており、家を空ける事が多い。俺も昔からの付き合いではあるが、誠の親と会った事はほとんど無かったりする。なんの仕事をしているかも詳しく聞いていないし、近所の人ともそもそも関わり合いが少なく、情報も揃わない為どこか全体的に謎に包まれているような印象をうける。悪い噂とかは全く聞かないけど。


 金銭面については、毎月結構な量の仕送りが送られてくるらしいのだが、当の誠本人が「高校生にもなって、全部が全部甘えるのは悪いから」と言っており、生活費の一部や自分が遊ぶ分の資金は花屋のバイトで賄っている。


 さてと、話は現在に戻って時間は一時半前、元々駅前から誠の家までは遠く、且つ村藩に合わせて自転車を押して来たので、予定より少し遅くなってしまった。……いや、正直女の子と2人で歩くのに悪い気はしないので、はい。



「ぅ……ど、どうしよう……」


「ん、どうした? 何か忘れ物とかあったのか?」


「ぁっ……その……男の人の……おうち、初めてで……」


「うそん……」


 そう言ったきり俯いてしまう所を見ると、どうやら本当らしい。確かについ最近出来た付き合いではあるが、彼女の性格を知りうる限り男性の家に上がるなんてのは少ないだろうと勝手に予感していたが、まさかそんなイベントさえ初めての出来事であろうとは予想できず。……なんか、それが一応、告白された俺じゃなくて誠の家ってのが少し複雑とか、そういうのでは無い。無いったら無い。



「よっ、思ったより遅かったな。それと、いらっしゃい村本さん。事情はさっき杏奈に聞いたよ。迷惑かけて悪いね。まぁ、話は置いておいて、何も無い家だけど上がっ……どうしたユウ、変な顔して」


「……いや、なんも。それとこれ、飲み物と菓子買ってきたから、後で食うぞ」



 不思議そうな顔をする誠に向かって、手に持っている飲み物が入った袋を見せる。するとさっきまでの顔が一転、笑顔は笑顔なのだが、少し口元が引きつっている。



「お、おう……なぁ、嬉しいんだが、前買ってきて貰ったジュースまだ結構残ってるんだけど……」


「固いこと言うなよ。っていうかまだ残ってんのか。春休み最後の時のだろ、あれ」



「1人で消費しきれるわけ無いだろあんな量……まぁ、有り難く頂いとく。あぁ、村本さんも上がって。中でみんな待ってるから」


「お、お邪魔、します……」


「それと、だ。はい村本、今の内に鞄返しとくよ」


「あ、ぁりがとう……ごめんなさい。荷物、持って、くれて……」


「さっきも言ったけど、気にするなって。菓子持つぞ?」


「う、ううん。これ、最後まで……持つ、から……その」


「そうか? 悪いな、助かるよ。……なんだよ誠、なんか言いたそうだな」


「……いーや? 何でもないさ」



 なんだ、その如何にもわかってます。って言いたそうな顔は。ハッキリ言え、ハッキリ。まさかあの鈍感誠君にそんな顔される日が来ようとは。


 ……わかってるよ。柄じゃない、だろ?


 あと、ちゃんと家に入る前に誠にクリーナーを借りて村本の服についた猫の毛は取らせてもらいました。


 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽




「うえええぇん!! ごめん歩美ぃぃ!!!!」


「ぇ、あっゎぷっ」



 居間に入った瞬間。とんでもない速度で隣を通過した薄紅の弾丸が後ろにいる村本にヒット。



「ごめっ、ごめえええええん!!!」


「その……大丈夫、だから……」


「あ、杏奈ちゃん。村本さん、ちょっと引いてるから、もうその辺に……」



 泣きながら縋り付く杏奈の姿に、半歩後ろに下がる村本。その様子を見てテーブルに座っていたいずみが引き離そうと声をかけるが、効果は無い。というかこれもう最悪近所迷惑なレベルでは?



「村本さん、急に呼び出しておいてこんな目に合わせて本当にごめんなさい。杏奈にはさっきみんなできつく言っておいたから、出来れば、あまり攻めないであげて? 見ての通り、引くほど後悔してるみたいだし」


「ぁ、はい……も、桃川さんっ……き、気にしてないから、その……いい、事も、あったから……」


「ぅぇえ…………え?」


「ヒッ…………」


 さっきまでの号泣は何処へやら。ポツリと村本の口から漏れた言葉を拾った瞬間、涙で濡らした顔を上げて至近距離で村本を見つめる杏奈。


 先程まで引っ付かれていた人間が急に泣き止んで見上げてくる変わり身の速さ、もしくは聞こえないように言った言葉を聞かれた驚き、もしかしてその両方の影響か、村本の顔がちょっと強張っているようにも見える。


 周りにいる誠達は急に泣き止んだ杏奈を見て不思議がっている様子。それぐらい小さな声だったらしく。



 ……すみません。自分、聞こえてしまいました。



「ちょっと、それ詳しく」


「ぇっと、その……」


「何があったか。説明、お願い」



 そう言って、迫る杏奈から顔を逸らすように……時折、自分の顔をチラッと、見る村本を見て。……ちょっと、その『いい事』が自分絡みだと、1人勝手に思ってどこか嬉しかったり、ちょっと恥ずかしかったり。


 だが、今日の予定はあくまで勉強会。さっきもクリスが言っていたが、なぜこの場に知り合って少ししか経っていない村本を急に呼んだかはわからないが、このまま話が縺れるとどこまで続くかわからないので、ちょっと村本に助け船。



「あぁ、そう言えばさっき村本見つけた時にな。結構な数の猫に絡まれてたんだよ。ほらこれ、その写真」


「っね、ねこ……!?」



 スマホを取り出し、さっき駅前で撮影した猫と村本の写った写真をみんなに見せる。


 すると、後ろでいずみがちょっと興奮した声で椅子から立ち上がる。いずみは昔から犬や猫とかいう類に目がないからな。杏奈に見せていたスマホの正面に立ち、画面を見ようと必至にジャンプ。心なしか頭部のアホ毛まで小刻みに揺れているようにも見える。



「うわぁ、膝の上にもいる! すごいなぁ、うらやましいなぁ……」


「よく見れば前にいるのと別に、他にも村本さんの足で隠れたところにもう一匹いるわね。村本さん、猫に好かれる体質なのかしら……」


「そ、そのっ……猫さん、遊んでくれて……」



「……ねぇ、歩美? 本当に、それ、だけ?」


「ぇっ……その、だから……」



 話題変更をしようとしたら矢先、本当にそれだけか。と言わんばかりに鋭く指摘する杏奈。っていうか細かい! こういう時の女子ってマジですごいな!?



「……だ、だから……だ、から……」



「……ごめん、ちょっとデリカシー無かった」



 次第に俯いていく村本を見て、さっきまでの行いを謝罪する杏奈。



「……さて!それじゃあ切り替えてバッチリ遊……」


「そうね、切り替えて勉強、しましょうか。偶にはいい事言うじゃない。 ウサギなのに」


「ぐっ……い、いやほら! 歩美とこうやって遊ぶのって初めてだから、ここは親睦会も込めてやっぱり」


「そうね、勿論それも後で出来ればと思ってるわ。でもそ・れ・よ・り……まずは、勉強、でしょ? 不真面目ウサギさん……?」


「ぐ、ぐぐぐ…………は、はい……」



「はははっ……じゃあ、とりあえず座ろうか。飲み物出すよ。ユウ、コップだすの手伝ってくれ」



 何はともあれ勉強開始。各自自分のノートや抑える科目の教科書を出して席に座る。の、だが……



「ちょっと」


「なに? どこかわからないところでもあるの?」


「……なんであたしの隣がアンタなのよ」


「あぁ、言ってなかったかしら。実は私、昨日の段階である程度は予習を済ませてるの。だから今日はみんなのサポートに回ろうかと思って。教えるのも逆に勉強になったりするのよ?」


「いやだから、それでなんであたしの隣にくるのよ」


「それは貴方が1番良くわかってるでしょ?」



 そうお淑やかに微笑むクリス。……クリスは、俺たちの中では1番頭がいい。それこそ全教科ほぼパーフェクトを取れるくらいに。そして教え方も教師顔負けだ。それもあって、俺達もクリスには何度も助けられたものだ。


 打って変わって、杏奈は正直お世辞にもいいとは言えない。中学までの勉強に関してはほぼ問題ないらしいが、高校に上がってからの学力は残念ながら学年で見ても下の方だ。一年の後半からは良くて平均、ヤバイと赤点を取るギリギリのラインを行ったり来たりと、割と凄まじい。



「……あ、歩美ぃ? わ、わからない所とかあるんじゃない? 席、変わってあげよ……」


「村本さんなら大丈夫。金曜にあらかじめ見せてもらったけど、全然問題なかったわ。むしろノートの取り方はこっちが参考にさせて貰いたい程よ」


「そ、そんな……私なんか、全然……」


「あっ、本当だ! 村本さんのノート、とってもみやすい!字、きれい!」


 杏奈の渾身のパスも余裕のブロック。退路は断たれ、残された道は1つのみ。

 っていうかクリスがそこまで褒めるとは。俺も後で英語と現代文見せてもらおう。



「や、やっぱりあたしばっかり見てもらうのも悪いから、他の人の勉強も見てあげたらいいんじゃないかなーっなんて……」


「大丈夫、誠やいずみも抑えるポイントは朝のうちに教えておいたから、後は自分1人でもなんとかなるはずよ。それこそ、わからない所はみんなで教え合えばいい訳だし。雄介はわからない所があれば、村本さんから教えて貰いなさい? きっとためになるはずよ」


「お、おう……ら、らしいわ村本、その時は頼む」


「ぁ、はっはい……よろしく、お願いします……」


「ありがとう村本さん。何度も無理言ってごめんなさい。さて、もういいかしら。そう不安にならなくても大丈夫よ。今日一日、私が貴方とマンツーマンでみっっっちり教えてあげるから、覚悟しなさい」


「は、はいぃ……」


 余りの気迫に言い返す気さえ消し飛んだのか。涙目で項垂れる杏奈を見ながらオレンジジュースを飲む。猫に睨まれたウサギ、哀れなり。


親友ポジの特性、耳がいい。残念歩美ちゃん、その程度の小声では雄介の前では無意味なのです。

そしていつも誠の家に集まると増え続ける誠君家の冷蔵庫の中身。他にもいずみが買ってきたデザートやらなんやらとかも入ってるので、中々充実のラインナップだったりしてます。


そして前書きでも書かせて頂いた通り、皆様のおかげでブックマーク登録が20件を超える事が出来ました。評価などもいただけて嬉しい限りです。この場を借りて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。


あと、私事ですがツイッター始めました。活動報告にも書いているので、よかったらフォローください。そしてこの小説の感想も下さい。生きる糧になります。


本編で言うほどのことでもないコーナーその4

6人の学力ランキング

1.クリス

2.歩美

3.誠、雄介

4.いずみ

6.杏奈

※杏奈は昔頭が良かったのだが、高校に入ってから下がりだしたぞ! その辺の話も追い追いさせていただきます。

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