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第91話 決戦の地へ

「ステラが”勇者狩り”?」


 京太郎は顎のちょっとだけそり残しになった部分を撫でながら、


「ああ。……旦那はどう思う?」

「………………」


 押し黙る。


――確かにあの娘が”勇者狩り”なら、祖父の復讐って線で動機もある。何より、私に術を調べさせなかった理由にもなる……か。


 サイモンはそれを肯定的に捕らえたらしく、


「女ってぇのはほんと、よくわからん生き物だよなァ」

「まあ、それには同感だな」


 二人が”冒険者の宿”の前に着くと、全身を竜の鎧で覆った四人の男がいた。

 迎えの馬車のうち、一台には数人の”探索者”と思しき者たちがすでに座っていて、席にあぶれたものが一人、屋根の上であぐらをかいている。

 そこにシム、サイモン、京太郎を加えて、今回の”クエスト”参加者はこの場にいるだけで十一人。

 今は”国民保護隊”の連中が今後の方針について話し合っているところらしい。

 どうにかシムと一対一で話したかったが、どうもそれができる雰囲気ではなかった。


 他を寄せ付けない雰囲気の保護隊員に近づくと、うち二人は兜を脱いだ状態で話していて、一人はアル・アームズマン、そしてもう一人はあの――カーク・ヴィクトリアだとわかった。

 カークの鎧はアルのそれと比べて機動力を重視しているらしい。その足下に幾重にも装着されている足枷の如きものの正体は、今になればよくわかる。”フリー・ジャンパー”と言って、ジャンプ力を一時的に強化する”マジック・アイテム”のはずだ。

 

「――アル。すでに本隊の斥候班は捜索を進めています。我々も動くべきかと」


 その様子を見るに、彼は原隊に復帰できたらしい。あるいは人手不足のため無理矢理駆り出されたか。

 カークは一瞬だけ複雑な視線をこちらに向けたが、すぐに目の前の話題に集中する。


「では、ステラとかいう娘の人相書きを」


 それに応えるべく、京太郎は一歩前に歩み出た。

 そして奇しくも、アル・アームズマンと同様のタイミングで、同じ言葉を発する。


「「論外だ」」


 竜の鎧を身にまとった四人の視線がこちらに集中した。


「おはよう、坂本京太郎。ぐっすり眠れたかね?」


 それが嫌味であることは承知の上だったが、京太郎は気にしない。


「昨夜は少し深酒でね」

「なんだ、女にでも振られたか」

「そんなとこだ」

「今からでも遅くない。その女の尻を追いかけた方がいいんじゃないか?」

「いいんだ。それより仕事の話をしよう。私の仲間が迷惑を掛けたと聞いた」

「ああ」


 アル・アームズマンが嘆息して、


「では、聞こう。なぜ君は、あのステラとかいう跳ねっ返りが”勇者狩り”でないと思う?」

「”論外”なんだろ。そっちから先に言えよ」

「ふむ……」


 アルは数秒だけ思索し、そして応えた。


「勘だ」

「はあ?」


 京太郎は眼を丸くする。


「勘? ――それだけかい」

「ただの勘ではない。何千人もの悪党を屠り、磨き上げた勘だ。この手の悪事を働く連中は、およそ似たような性格をしてるのさ。彼女はぼくの悪党像に当てはまらない。だから違う」

「へえ」


 京太郎は唸った。


「実を言うと、私も同じく。……ただの勘なんだよ」

「そうか。気が合うねえ」


 アハハハハハ、アハハハハハという、乾いた笑い声が夜明け前の街に響いた。

 その場にいる誰もが二人を不気味そうに眺める中、カーク・ヴィクトリアが、どこか皮肉げに口を挟む。


「それで? 結局我々は誰を捜索するのです?」


 するとアルは、まだカークがそこにいたことが意外だったみたいに眉を上げ、


「誰か、などと見当をつける必要はない。怪しいもの、何もかもだ。早く行け。すぐ行け。街が起き出す前に」


 瞬間、アルを除く三人が三方向へ散った。

 何のサインもなしに綺麗に分かれるものだな、と、京太郎は感心する。


 残されたのは、アルと七人の”探索者”たち。

 京太郎とシムを除いて、その二の腕に巻かれた帯は茶か黒。そのほとんどが何らかの”マジック・アイテム”使いだと予測できた。

 そんな彼ら全員が、アル・アームズマンと対等に話している冴えない外国人に好奇の視線を向けている。後で聞くと、シムですらこの時はちょっとはらはらしていたらしい。そもそも両者の間には、世が世なら無礼打ちにされても文句さえ言えないくらいの身分差が横たわっている。


 ちなみに京太郎たちは帯を巻いていない。この場で黄帯など巻いていたら馬鹿にされるから……とかそういう理由でなく、単純に忘れてきたのだ。


「それで? 私たちは何をすればいい?」

「いまは、探索区域を割り当てられた隊員と、その子飼いの”探索者”がグラブダブドリップ中を走り回っている状況だ。ぼくたちは遊撃を命ぜられている。今からとある区域へと向かい、そこの隊員と合流するぞ」

「君の子飼いに……なったつもりはないのだが」

「なったほうが得だぞ」

「じゃあ、それでいいや。で、どこへ?」

「みんなが大好きなところさ」


 アルはくくく、と笑って、


「遊廓へ向かうぞ。昨日までの下調べが正しければ、決戦の地はそこ(・・)だ」


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