隕石消滅作戦 開始60秒前
皆さんこんにちは、倉本保志です。後編をお届けいたします。まあ、ベタと言われれば、ベタな展開になっているのですが、みなさんの予想はどうでしたでしょうか? 後編では私の大好きなD・TP氏にも
「天才脳外科医 Dr・勅使河原」以来再登場頂いております。バージョンアップしたリンゴ4号による、隕石消滅作戦の成否やいかに・・・
三島由紀夫の転生を自負する、倉本保志の新作短編小説(後編)ここに投稿です。
地球消滅に至った衝撃の事実 後編
パイナップル社が倒産し、小山内教授の世界的な発明品(リンゴ3号)が、
世に広まることはなかった。
教授は、好機を逸した格好になったが、本人は、さほど気にもとめることなく
元の研究機関である、T大学工学部の研究所に戻り、リンゴ4号の開発に専念
していた。
・・・・・・・・・
三年の月日が過ぎようとしていた。
最近になって完成した、リンゴ4号は、これまでの開発品(リンゴ3号)の
改良を目指したもので、利用空間域(物体を、移動させる空間)が、地球上
の、しかも、移動前の空間から、およそ、100キロメートルと限定されて
いた問題が、すでに克服されていた。
その移動距離は、大幅に拡大され、太陽を中心とした、地球の公転範囲内
の距離であれば、移動させることが、可能となった。
また移動させる物体も、地球上にあるモノにとどまらずに、宇宙空間に存在
するものも、遠隔操作で、移動可能という、かなり広い範囲での用途が
可能に(例えば、月を別の位置に、しかも元の大きさを変えて瞬間的に移動
できるように)なったのである。
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これだけでも、リンゴ4号は、3号よりもかなり、搭載スペックを上げたことに
なるのだが、小山内教授はさらに大きな成果を、あげていた。
この機械の生産コスト及び、稼働のためのランニングコストを、大幅に縮小でき、
リンゴ3号の場合の、10分の一程度に抑えることができたのである。
軍用機 1台分程度の価格となれば、需要も大幅に広がると期待できた。
実際、国家レベルでの問い合わせや、生産・販売を請負いたいという、世界的に
有名な、企業からのオファーもいくつか届いていた。
・・・・・・・・・
「リベンジのチャンスがやってきたぞ・・・ソンタ君(2号)・・」
小山内教授は、助手として、一台の思いやりアンドロイド・ソンタ君2号
(ソンタ君1号のバージョンアップ・モデル)を研究所においていた。
「はい、3年前は、あと少し、というところで残念な結果となりましたが、
今度はきっと大丈夫です、教授・・・」
「実はな、講演用の原稿も、もう既に出来ておるんじゃ・・・
「こんどは、失態を仕出かすことのないように、せんとな・・・」
「大丈夫です、もしもの時は、また、私がちゃんとフォローいたしますから」
「任せて下さい・・・」
「うん、頼むぞ・・わはははは・・・」
教授とソンタ君2号は、まるで人間どうしのように、会話をはずませた。
・・・・・・・
そんな中、世界が震撼する大きなニュースが飛び込んできた。
最初は、ネットを通じて、広がったため、人々は、これが、クオリティの低い、
フェイク・ニュースなのではないかと疑った。
しかし、時間が経つにつれ、このニュースが、信憑性をおび、そして、顕然たる
事実であることが、U国、宇宙航空局 NASAによって明らかにされた。
その内容は以下の通りである。
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20××年(本年)5月30日 未明
地球が、巨大隕石と衝突する
・・・・・・・・・・・・・
6000万年以上昔、地球に大衝突を起こし、恐竜を含む、多くの生物を
絶滅させたとされる隕石の衝突、これが、直近に差し迫っているのだという
・・・・・・・
この驚愕の事実は、連日連夜、世界中のメディアによって報道され、それ
以外のニュースは、殆ど、扱われなくなった。
BBC、CNNなど、世界的に有名な、放送局の報道によって、世界中の
人々が、隕石についての情報、(大きさ・速度・材質)そして、地球への
到達時間、具体的にどこに衝突する可能性が高いのか?)をネットや、TV
を通じて、知る事となった。
・・・・・・・・
そして、日を増すごとに、報道は、エスカレートしていく・・・、
我々が生き延びるには、どうすればいいのか・・・?
地下核シェルターは使えるか・・?
原子力潜水艦で、深海に逃げ込めないか、・・・?
ICBMを隕石にぶち込んではどうか・(その際、D・トランペット U国
大統領を、弾頭にくくりつけるのはどうか・・?)
この期に便乗して、牛丼屋で、アルマゲ丼なるものを販売してはどうか?
ハルマゲドンとアルマゲドンはどちらが正しいのか?
「マルはげ~、ドーン」が今年の流行語大賞になるのではないか?
ブルース・ウィリスを授賞式の司会に抜擢してはどうか?
そもそも、人類は大賞発表の、年末まで生存できるのか・・?
なかには、訳の判らない、ウケ狙いのものも、混じっていたが、そういった
市民の様々な疑問を、喧々諤々と話し合う討論番組が、その後テレビのスク
リーンを席捲した。
・・・・・・・・・・・・
20××年 5月28日 (衝突三日前)
とある討論番組で、SF評論家の一人が言った。
「そういえば、数年前に、瞬間移動を可能にする、機械が開発されたと
言っていましたよね・・・」
「ああ、あれは、たしか・・・」
「T大の物理学の教授・・・ええと、」
「小山内・・・? 」
「そうだ、確か、小山内 薫 教授・・・」
・・・・・・・・
討論のパネラーが、それぞれ顔を見合わせた。
「あれって、使えないんですかね・・・?」
ざわわわわっ・・・
会場がざわめいた。
「まさか、巨大隕石を・・・無理でしょう・・」
「地上の物質を移動できるだけだと、発表会では、聞きましたが」
「そう、・・・確か・・・100キロメートル以内の」
・・・・・・
記憶をたどりながら、パネラー達が発言をする
「月を瞬時に移動できるようになったと、先月、ある情報誌に載っていた
のですが・・・」
「月を・・・? 」
「本当ですか、それは・・・」
「ええ、最近開発された、ええと、リンゴ4号・・でしたか、・・・」
「確か、遠隔操作で可能であるとか・・・」
おおおおお・・・・
おおきなざわめきが、再び、会場に起こった。
・・・・・・・・
「すぐに、その教授に連絡を取ってみましょう・・・」
司会者は、そう言うと、番組を即座に終了させた。
・・・・・・・・・
20××年 5月29日 午前10時 (衝突 18時間前)
100名を超える世界中の報道陣、その関係者、我がN国の総理、国連
事務総長、U国大統領、その他大勢の世界的に有名な要人が、T大学
工学部にある、小山内教授のラボ(研究室)に来ていた。
いや、研究室には入りきらず、T大学の大講義室によって、リンゴ4号の
説明会、そして、巨大隕石から地球を救えるのかが、問いただされた。
・・・・・・・
「・・・説明なんかはいい、要は この機械で地球を救えるのか? という
ことだ。」
威勢良くU国の大統領が、小山内教授に訊いた。
不躾な質問に、教授は、むっとしたが、すぐに答えた。
「おそらく…可能です。」
おおおおおお
「事態は一刻を争うんだ、今すぐにでも取りかかってもらおう・・
・・・・・・・・・・・・
「一兆ドル・・・」
教授は静かに言った。
「一兆ドル、費用を、U国が出してください。」
「それで地球が救われるのだ、決して高い金額じゃない・・・」
「・・・・・・・」
「うむ、確かにそうだが・・」
「わがU国に、その費用全額を払えというのか・・」
U国大統領、D・トランプは唖然とした。
小山内教授は、続けざまにまくし立てた。
「大統領、・・・」
「あなたが、あなたが、この地球を救うのです・・・」
ソンタ君2号が、教授を援護する。
「あなたは、地球の危機を救った大統領として、未来永劫、代々まで、
その、勇気ある決断に、世界中の、いや地球上すべての生命から、賞賛を
贈られるのです。」
「・・・・地球上の、すべての・・・」
大統領の顔が、俄かに赤くなった。
国連事務総長、各国の要人、記者たちが、一斉に大統領のほうを見た。
N国の首相は隅で、「いいね・」を呟くと、すぐに大統領から、視線を
反らせた。
「・・・・・・・」
「一刻を争うのです・・・大統領・・・」
小山内教授、彼は、もし、政治の世界で活躍していたとしても、大きな
成果を、その雄弁さ故に、もたらしたのではないだろうか?
小山内教授は、返事を迫った。
「大統領・・・」
「・・・・・・」
「判った。すぐに準備をしてくれ・・・」
大統領は言った。
こうして、巨大隕石消滅作戦は、直ちに開始されることとなった。
・・・・・・・・・・・・
20××年 5月29日 午後6時 (衝突まであと10時間)
世界中の要人たちが、見守るなか、T大・小山内教授の研究所では、
リンゴ4号による、巨大隕石消滅作戦の準備が、着々と進んでいた。
前方の巨大なスクリーンに目標である隕石が映し出される。
「直径は、いったいどれくらいあるのかね・・?」
隕石消滅作戦・司令長官となった、U国の大統領が、研究室中央に設け
られた特別席から、言った。
「1684キロメートル、およそ月の直径の半分です。」
「月の半分、なんだ、その程度の大きさなのか、」
「はい、ですが、N国が、すっぽりとこの隕石の中に納まるほどの大きさです。
「・・・・・・」
「隕石の落下場所は・・?」
「計算によると、おそらく北、太平洋上になるのではないかと?
「ふん、U国の直撃は免れるという訳だな・・・」
「大統領、」
「なんだね、」
「直撃するとか、しないとか、そんなことは関係ありません、この大きさの
隕石が、かつて地球に落ちたことは一度もないのです。」
「もしかすると、衝撃で地球が完全に、破壊されてしまうかも知れないのです」
「・・・・・・」
「運命は、すべて、この作戦に掛かっているという訳だ。
「はい、・・・・」
「スーパーコンピュータの計算で、リンゴ4号が、目標物(隕石)を捉えら
れるのは、5月30日、午前0時・(衝突予定、4時間前)ということが明ら
かとなった。
方法はいたってシンプルで、予め、隕石の通過する地点に網を張り、そこに
隕石が来た瞬間に、空間を縮小させ、軌道をはずして、再度、出現させるという
ものであった。
・・・・・・・・・・・
「うまくいくのか・・・?」
「記者のひとりが、呟いた」
「うまくいくのか、だと、・・・?」
「絶対に、成功させるんだ・・・」
「絶対に・・・」
U国の大統領D・トランペットは、記者を睨んで力強く言った。
こういう状況では、天下の無法者と評されているあの、U国の大統領が、
なぜだか、頼もしい存在に思われた
(なるほど・・・彼にまだ多数の支持者がいるのは、おそらく、こういう点
なのかもしれない・・・?)
小山内教授は、彼の傍らで、そう思った。
・・・・・・・・・・・・・・
それから、数時間が経過した。
いよいよ、隕石を捕獲する、ポイントが近づいてくる。
「隕石が、目標地点に、あと60秒で入ります。」
研究員の一人が声高に言った。
「・・・・・・」
現場にいる、すべてのものが、スクリーンにくぎ付けになる。
そんな中、小山内教授は、浮かない表情で、事態を見守っていた
「・・・・・」
「小山内教授・・どうされましたか・・・?」
「計画はきっと成功しますよ」
「思いやり機能世界一を誇る、アンドロイド・ソンタ君2号が、教授の
顔色が冴えないことを、慮って問いかけた。
「・・・・・・・」
(おそらくは、大丈夫だと思うが・・・)
全くの、未知の状況である ・・・
隕石は、かなりの速度で地球に接近している。
タイミングを外すことなく、確実に、捉えられるのか?
否、機械の操作という、技術的な問題も然ることながら、教授には、もっと
核心的なところでの不安があった。
・・・・・・・・・・・・
これまでの実験では、当然、このような巨大な物質を移動(縮小)させ
たことはない。
「ブラックホールが・・」
小山内教授は、何かを言おうとして、そのまま押し黙ってしまった。
「秒読みに入ります。5秒前、4,3、2・・・
カッ・・・・
閃光とともに、ドオオオオオン、という大きな音がした。
この場にいる皆が、唖然とした。
地球上から、かなりの距離でも、衝撃音が聞こえるのだ。
しかし、わざわざ、音響を拾わなくても・・・?
「あ、いまのドオオオオンというのは、私の演出です・・・」
ソンタ君が変に気をまわして、演出していたことが判った。
・・・・・・・・・・・
一瞬、皆の気が、殺がれてしまって、ことの結果を知るのに、数秒
遅れてしまった。
「どうなった・・・?」
「成功したのか・・・?」
現場にいる者たちが、口ぐちに呟いた。
隕石が、スクリーンから、消え去っている。
「やった、成功だ・・・」
おおおおおお
会場に大きなどよめきが起こった。
皆は、近くにいる者同士、それぞれに握手を求め、喜びを分かち合った。
その直後である
・・・・・・・・・・・・・
ピキイイイイィ・・
ガラスに大きなひびが入る音がした、今度は、ソンタ君の演出などでは
ない。
宇宙空間全域に歪が、走ったようなそんな衝撃が、なぜか、自分の体の
中心部から発せられるような、そんな違和感を、皆が感じていた。
・・・・・・・
「おわりだ・・・」
小山内教授が小さく、呟いた
「・・・えっ・・?」
ざわわわわわ
大きなざわめきが、会場を包み込んだ。
スクリーンの端に、つまり、隕石が消滅した場所から離れたところに、
黒い点が表出したかと思うと、その点は徐々に大きさを増して言った。
・・・・・・・・・
「何だこれは・・?」
U国の大統領が、大声で訊いた。
「・・・・・・」
「だれも答えられなかった」
小山内教授も、目を閉じたまま押し黙っていた。
・・・・・・・
これはあくまでも予測に過ぎないが、巨大な質量をもつ物質を、極度に
縮小させたため、隕石は、自己の重さに耐えかね、内部に押しつぶされる
現象が起こったのではないか?・・・そして、ついに特異点が生じ、大きな
重力を発することとなり、やがて、それは、ブラックホールを発生させる
ことと、なったのかも・・・知れない
・・・・・・・・・・
呆然と立ち尽くす、要人たちの気持ちを慮ってか、ソンタ君2号は、手足を
左右に交差させ、「しぇー 」と声を発しながら、場を和ませようとしていた。
おそ松君という漫画をしらないU国の大統領には、それが、何を意味するのか
まったく、判らないのだったが、ここN国の記者が、笑ったのを見て、自分も、
笑いながら、真似をして見せた
おわり
ホーキンス博士が、ブラックホールについて新説をとなえ世間を騒がせました、ブラックホールは存在しないのではないか・・?と勘違いされて伝わったとも言われていますが、実際にホーキンス博士が言ったのは、ブラックホールの重力に光が抜け出せない といった過去の理論を覆すというものだそうです・・
まあ、ブラックホールがあろうが、なかろうが、実際の日常にはほとんど影響がないのは事実です。あ、でもブラック(企業)のホール(落とし穴)には、気をつけた方がいいですよね。




