スキル行使
目覚めるとともに感じたのは強烈な寒さだった。
寒さをまぎらわそうと体を動かそうとするが体は動いてくれない...。
なんで?そう考えながら辛うじて顔を横に向けると赤色が目に映る....どうやらその赤は自分を中心に流れているようだ。
顔をもとの位置に戻すともう暗くなり始めた夕暮れの空と六メートルほど上に崖になっているところを見つけた。そこではじめて自分は仰向けになっていることを理解した。
考えをまとめようとするが先程から寒さが勝り集中できず、なおかつ頭の回転もかなり遅い...まるで頭の中に靄でもかかっているようだ
そうしているうちになぜか昔の情景が頭の中で再生されていく...楽しかった時うれしかった時などの記憶を映画のワンシーンのように見ていた。
そして一つの言葉が思い浮かんできた 走馬燈 その言葉がこの状況に当てはまる...
俺は死ぬのか?なぜこんなことになっているのかということすらも理解できないままに?
....嫌だ...まだ死にたくない...死にたくない....
遠のいていく生に必死にしがみつきながら打開策を考える...考えていても解決などできるはずもなく次第にしがみついていようとする気力もなくなっていく。だが彼は堪え続けた。
どのくらいたったのだろうか、もはや彼の身体は血を失いすぎており、とうの昔に限界を超えていた。なぜそこまで生にしがみつくのかと問われれば彼自身にもわからないだろう。
なぜ?それを答えられるものはここにはいない、だが今の彼にあるのは自分にも理解することのできないほどの生への渇望...それをかなえられる存在などいないはずだったが....
『許容値を超えました...条件を満たしました。これによりスキル名【絵描き】を行使します』
薄れ行く中で聞こえてきた違和感のある声を気にしながらも彼の意識は遠のいていった...
-------村の狩人------
私のところに山で遊んでいた子供達が息も絶え絶えに駆け込んで来たのは、日もほとんど沈み夕ご飯を食べてようとしているところだった。
「おじさん!...イルが!...落ちて!...血もいっぱい!...はやく...」
急いできたのだろう息を切らしながらも伝えたいことを伝えると赤毛の少女は床に倒れ込んでしまった
私はその子を介抱しながらほかの子に事情を詳しく聞くと同時に私は飛び出した。
飛び出した私は村長や村の者たちがいる集会時に使われている建物に向かった、この時間なら訳の分からない集まりをしている男たちがいるはずだ₍村長なども含む₎。
もう日もほとんど沈んでしまっているため他の人にも手伝ってもらわないと広い森の中で子供を探し出すのは困難だからだ...それにどうやらひどい怪我をしているらしい...一刻も早く助けなければいけない。
「村長!」
私が乱暴に開けたせいで扉が壊れたが気にしている暇はない、そんなことよりも皆に伝えなくては!
そうは思うが中の異様な光景を見て言葉が詰まってしまう
「......何を......なさっているのですか?」
私の目の前には村の屈強な男や年老いた老人が裁縫道具を持ち明らかに子供用と思われる服を制作しているところだった.....
「これダラド!集会中に何の用じゃ!」
とつぜん現れた私に驚いているようだったのだが我に返った村長から叱責がとぶ。それで用を思い出した私は早口になりながらも子供が崖から落ちひどいけがをしていることを伝えた
「なんじゃとっ!イルた...じゃなくてイルミリアが!?いそいで準備をするのじゃ!」
村長が言った瞬間男たちは建物から飛び出していった。
松明などの捜索に必要と思われるものと治療用の薬草などを準備していく、その手際の良さに驚いた。いつもだらだらとして覇気のない陰気な若者でさえ他の人を呼びに走り回っていて別人のようだった....正直言って訳の分からない集まりだとおもっていたが実は意味のある集まりだったのか?
なぜなら明らかに集まりに参加したものとそうでないものとの差がありすぎるのだ...そんな事を考えていると準備が終わったのか村長から号令がかかる
「皆の者行くぞ!」
森に入ってからというものそれはすごいとしか言えなっかった...森に潜んでいる動物や魔物でさえ怯えて逃げていき、行く手を邪魔しようものなら集会をしていた者たちが率先して魔物に立ちむっかて行き瞬殺されて捜索は順調に進んでいきその子は見つかった。
見つかったのだが、その少女に間違われるほどの愛らしい外見をした少年には怪我どころかかすり傷も見当たらない...呼びに来た子供たちによると落ちた衝撃で骨折や大量の血が出ているということだったが それにあたりの様子もおかしい。どういうことだ?そう考えていると脇からものすごい速さで何かが横を通り過ぎて行った。
「うおおおおおお!イルたーーーん!!!!!」
村長が叫びながらイルミリアにむかっていきその子を抱きかかえると満面の笑みでくるくると回りだす...先ほど魔物相手に剣一本で大立ち回りをしていたとは思えないほどの変わりようである。そんな村長に対して一部の者が殺気とも呼べるような物を放っていたが、なぜだろう?
とにかく無事に見つかったので私たちは村に帰りイルミリアを離そうとしない村長を説得しその子の家で待っていた子供たちに無事だということを確認させて帰らせた。
その際こどもたちは怪我していないことが気になっていたが目覚めてからまた話をすることにした。
そうしてやることが終わった私は遅めの夕食をとり明日に備えて床に入ったが、気になることがあり目がさえてしまっていた。
あのあたりにあそこまで開けたところなんてあっただろうか?
狩人として森にはよく獲物を捕りに行っているので大体の地形は把握しているはずだったが、あの子を見つけたところはあの子から半径1メートルくらいに木や草が一切なかった。まるであの子が消し去った様な...
そんなことあるわけないな、あの子はまだ3歳だ。魔力に目覚めているはずもない。仮に目覚めていたとしても自分の周りの物だけきれいに消し去るなどそんな魔法あるはずない。
そう決めつけ今度こそ眠りについた。
全然進まなくてすいません