第8話 漆黒の闇
ランスロット大佐に、魔王だってばれた??
「私は幼い頃から多くの戦いに身を投じてきました。戦いでは相手の実力を見極めることが肝要です。私は次第に相手の力をある程度見極められるようになりました。そして、属性視というスキルを得たのです」
「属性視……ですか」
俺は、心臓が早鐘を打つのを感じながらも、表情には出さないよう細心の注意を払う。
「その人に最も適した属性が色となって見えるのです。勇者様方は皆、光を表す黄色が見えます。1名、黄色だけでなく、多くの色持っている方がいらっしゃいましたが」
多くの魔法スキルを持っていた征木のことだろう。
「ですが、人間が誰も持たない色があります。闇を表す黒です。それをあなたは持っている」
そういえば、俺が唯一持っている属性魔法が闇魔法だった。
「黒色を持っているのを確認できたのは、魔物だけ。そしてその色は高位の魔物である程に、濃い黒色になります。そして、あなたの色は、何もかも吸い込んでしまいそうな程に漆黒だ」
話が見えてきた。
本来魔物しか適正を持たない闇属性を持っている俺を、怪しんでいるってことか。
しかもそれが、めちゃくちゃ濃いってんだから、怪しいと思わない方がおかしい。
さすがに魔王だとは、ばれていないだろうけど……
「あなたのスキルを教えていただけますでしょうか」
どうしようか……
鑑定石の例もあるし、嘘はつかない方がいいだろう。
ここは異世界だ。
元の世界の常識は通用しない。
正直に何もかも話す必要はないし、そんな選択肢は選べないが、ついてしまった嘘がどう跳ね返ってくるかが読めない。
俺はまだこの世界のことを何も知らないのだ。
どんな人がいて、どんなスキルがあるのか、そもそも魔王や魔物というのは何なのかさえ知らない。
何が墓穴を掘るのかわからない。
だから……
「確かに私が使える属性魔法は、闇魔法のみです。といってもLV1ですし、闇魔法がどういったものなのかもわかりませんが……」
俺は、正直に言うことにした。
「なるほど……前例がないことですね、人間が闇魔法を使えるなんて……どう判断していいものか」
「闇魔法というのは何なのですか?」
「詳しいことはまだわかっていません。使える人間が過去に1人もいないのですから。わかっているのは、知性ある高位の魔物が使ってくることだけ。確認できている闇魔法と思われる魔法は、全ての補助魔法の効果をなくす闇を発生させる魔法、魔法攻撃を一定時間吸収する闇を発生させる魔法、そして闇でできた槍くらいですね」
「使っていたら性格も暗くなりそうですね……」
判明している魔法のうち2つが闇を発生させる魔法って、どうなの?
暗い部屋にいると、わけもなく落ち込んでくるもんなんだからね?
「確かに元の世界でも、友達は少なかったし、クラスの闇抱えてそうな人ランキングでぶっちぎり1位でした……こっちの神様も、『こいつ闇深そうだな』って思って、こんな仕打ちをしたんですかね……?」
別に魔王だってことを、ごまかそうとしてこんなこと言っているわけではない。
なんか、魔王だから闇魔法持ってるんじゃなくて、本当に闇抱えてそうだから闇魔法使えるような気がしてきたんだよね……
友達少ないやつが光魔法とか絶対使えそうにないよね。
3人組が光魔法使えて、俺が闇魔法使えるって、なんか当たり前じゃんって気がしてきた……
「なんかよくわからないが、落ち込ませてしまったようですまない……落ち込ませたくて言ったわけじゃなく、初めて黒を持つ人間を見たから驚いて話しかけてしまっただけなのだ。決して、なんか暗そうなやつがいるなとか、負のオーラ出てるなとか思っていたわけではない。魔物が化けているか、魔王に召喚された者なのでは、と疑ってしまったのだ」
やっぱり疑われてた。
そして、なぜか全力でフォローされてて、よけいに悲しい気持ちになる。
そんなに一生懸命弁明されると、本当は暗そうなやつだと思われてたんじゃないかって疑ってしまうよ。
勇者じゃないから誰も話しかけてこないんじゃなくて、負のオーラ出てるから皆話しかけてこなかったのかな?
「しかし、よく考えたら異世界から来た勇者たちの知り合いに、魔物が化けられるわけがないし、魔王が勇者と一緒に君みたいな弱者を召喚するメリットがない。疑ってすまなかった」
弱者って言ったよ、この人。
ひどすぎない??
初対面だよ??
もう、俺は魔王だって、言いたくなってきたんですけど。
まぁ、疑い晴れたようだし、闇魔法が使えることはあまり口外しない方がいいってことがわかったので、良しとするか……
根暗弱者って思われてるとかめっちゃ凹むけど。
別に根にもったわけじゃないけど、こいつとはもう口を利くのはやめよう。
遅くても明後日までには、プロローグを終えたい……と思っています。
プロローグ丁寧にやりたいとは思っていましたが、まさかこんなにプロローグが続くとは予想できませんでした……
あとは修行の話と、魔王スキルに関する話が終われば、旅に出ますので!
もう少しだけプロローグにお付き合いください。