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第9章 高倉下
台風一過、青空の下、一人の男が駆けてきた。
「殿下ぁぁぁぁ、殿下ぁぁぁ」
イワレ一行を見つけて声をかける。
「殿下、ご無事ですか。タカクラジです。お迎えに参りました。」
タカクラジが両手で持参した鉄剣をイワレに差し出す。
「フツノミタマノツルギでございます。」
イワレは目を明け、鉄剣の輝きに覚醒した。剣を受け取ると立ち上がり、鞘から抜きはたった。
「この剣を手にすると力がみなぎる。」
イワレは剣の舞を始める。
ケヤ、カヤ、シマと順に起き上がり、剣の舞にあわせて合唱する。
剣の舞いの終わりにタカクラジ。
「熱中症でしたぞ。荒れた海の航海で体力消耗していたのでしょう。」
イワレが問う。
「タカクラジよ、何ゆえ鉄剣を我に。」
「私、筑紫で殿下の父君に使えておりました。筑紫から情報戦力として紀伊半島に派遣され、熊野の地に潜伏しながら、ナガスネとニギハヤヒを見張って、殿下をお待ちしておりました。このフツノミタマノツルギはタケミカズチノ神に由来する、天下平定の尊い霊剣にございます。さあ、鉄剣の封印が解かれました。ヤマトに秩序と平和をもたらしましょう。」