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第8章 熊野
日向軍の船はが紀伊半島南端を越えるころ、季節は夏、台風シーズンの走りだった。日向軍の船団は散り散りになり、イワレビコ殿下の乗船する戦艦ヤマトは熊野の海岸に打ち上げた。イワレビコ殿下と筑紫少年隊のケヤ、カヤ、シマが船を降りて進む。
イワレが声をかける。
「大丈夫か、怪我は無いか。」
ケヤが応じる。
「殿下、熊野でございますか。」
「暗くてよく判らん、海から離れよう。」
カヤが不安を口にする。
「他の舟が見えません。我らだけです。」
「突然に日が落ちたように真っ暗になったな。」
シマが続く。
「恐ろしい高波でした。」
イワレが前に進む。
「我らが先遣隊として、基地をつくる場所を探そう。」
大音響とともに強風が一行を襲う。
「木の葉や枝が飛んできて目を開けられません。」
イワレが一同を励ます。
「腰を落としてしっかり進め。」
暗い色の大型動物が前を通りすぎた。
声をあげたのはカヤ。
「何か通り過ぎたか。」
シマがつぶやく。
「熊野にクマモ・・・・エッ・」
「アー」
全員目の前が真っ暗になり倒れこんだ。