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第5章 生駒戦

早朝、暗闇の中、日向軍は力自慢の久米隊を上陸させた。小動物が目の前を横切り藪に消えた。季節は春、緑が濃い中で草を掻き分け斜面を登る。

見上げると空が白みはじめてきた。

先制攻撃は敵からだった。右から、左から銅鐸をたたく音が鳴り響く。上空ではつぎつぎと野鳥が飛び立つ。敵に囲まれていた。石弾攻撃を受けた。石つぶては草むらから飛んで来る。敵の姿は見えない。日向軍は防御ばかりで反撃ができない。

日向軍が足止めされる中、いくつものナガスネ軍の陣地からときの声が上がった。一人ふたりと草むらから敵が甲高い奇声をあげながら飛び出して来る。敵は身動きが速い。石斤をふりまわし日向軍兵士の膝を打ち抜き、一撃で草むらに飛び込む。

日向軍兵士も次第に抜き身の鉄剣で応戦するのだが、木の枝が生い茂るなか取り回しが効かない。

あっという間に半数が戦闘不能となり、オオクメ隊長は撤退を命じた。

「歩ける者、船まで戻るぞ。カヤ、本陣へ救助隊を要請!走れ!」

「矢が飛んで来た。上体を低くしろ。」


こちらはイツセ隊長率いる日向軍本陣。伝令が走り、救助隊が出動した。

「弓矢隊前へ、戦闘体制!」

救助隊に導かれ先発隊の帰還を見てイツセが号令する。

「矢を放て」

生駒山頂から朝日が差し込んだ。敵に向かう日向軍は逆光の位置に立つ、弓矢隊は視力を失った。

「眩しか」

「見えよらんと」

日向軍の弓矢攻撃はナガスネ軍に対して効果無しだった。

至近距離から敵の矢が飛んで来た。飛距離こそ日向軍の弓矢より短いものの、山の中で取り回しやすく、毎日獣を射ぬいている強力な武器である。

「先発隊を収容せよ。」

盾を持った兵士が前に出て先発隊と怪我人を収容した。

本陣ではイワレが声をあげる。

「矛隊前へ」

敵の矢の攻撃が激しさを増し、盾に身を隠してイツセ隊が後退、海岸線まで戻るというところで敵歩兵が駆け出して来る。

「矛隊進め」

現在の東大阪市盾津のあたりで混戦となった。

「近衛兵進撃」

鉄剣抜刀隊が応戦、平地での肉弾戦となれば、鉄製最新兵器が威力を発揮する。ナガスネ軍を押し返し始めた。

平地に銅剣をかかげた大男が現れた。顔面に刺青をしている。大男が声をあげる。

「撤収!」

大男の側近が異様なリズムで銅鐸をたたく。

ナガスネ軍が山へと退却を始めた。

「追うな、引き上げだ。」

海岸でイツセが号令する。

両軍の間に空間が出来た。イツセが司令船に手をかけ乗船しようとしたとき、背後からナガスネ軍の矢が飛んで来た。矢はイツセの腕に突き刺さり、イツセは海に落ちた。

「兄者!すぐにまいりまする」

 イワレ自ら海に降りて、イツセを救出した。


 生駒戦は半日で敗戦が明らかになった。日向軍は船を大坂湾に進め、休息をとった。出血の激しいイツセは青い顔で水をもとめた。

「愚かであった。われわれは日の(ひのもと)の武者ではないか。母なるお日様に矢を放つことはならぬのだ。」

 イワレが続く

「高千穂での訓練も我らは必ず東からの登りだった。母なるお日様の後押しを受けて戦わねばいけないのだ。野蛮な者どもをこらしめ、幸せに暮らせる世をつくるため、天と地と海とそれぞれ我らの味方につけなければならぬ。進もう。サオネツを呼んでくれ」

 サオネツは波乗り板に乗って司令船までやってきた。

「このまま南へ進めば、夜には紀州にまいります。紀の国の民にはナガスネ退治に協力いただけます。そこで武具や食べ物を積み込みさらに進めば、しばらくして南の端を超えます。」

イツセを横たえ、船は南へと進んだ。

 

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