第4章 瀬戸内
安芸(広島県)、吉備(岡山県)に複数年をかけて補給基地を設営し筑紫から精鋭を招き入れた日向軍。淡路島を超えて大坂に迫ったところで海の情報戦力が加わった。サオネツである。イワレビコ殿下とともに司令船である戦艦ヤマトに乗船している。
「大きな入り江に入ったな。」
「殿下、生駒の山が見えてきました。生駒を超えるとナガスネの館がある登美が丘です。」
「サオネツは海で頼りになる。」
「ナニワの地でサエ様を送り出してから何年も経ってしまいました。ヤマトはナガスネの暗黒支配ですっかり民は恐怖しています。日向軍を待っておりました。殿下に合流できて光栄です。」
「吉備を出て、サオネツに会ったときはびっくりしたぞ。亀に乗っているぞ、ウラシマか!?ってな。」
「波乗りの技です。2020年の予言ではミヤコで五輪競技会が開かれて我が子孫が波乗りで天下一」
「えっ?何と言った?」
「波乗り板にしがみついていれば海でも呼吸ができますから。上に立って竿であやつるのです。」
「タエさまを取り戻して、ナニワを回復しよう。いよいよだ、頼むぞ。」
竿をつかんでサオネツは船室に消えた。
イツセ隊長が甲板に現れた。舟の上イワレビコ殿下とイツセ隊長の二人。
「イワレよ吉備の地ではよき味方を得たものだ。ここまで物資を積み舟を進めてくれた。武器も充分確保した。」
「いくさが終わったら、吉備の民は瀬戸内の交易で大きな役割を果たしてくれるだろう。」
「吉備の地で鉄を扱えるのは大いに助かる。鉄剣をそろえれた我が軍団を見れば戦わずして従う勢力ばかりだ。しかし、ナガスネは違う。ナガスネは登美の地をドグーの呪いで支配している。古き世の狩人が人まで狩るようになった鬼だ。話は通じない、叩き潰す。」
「兄じゃ、生駒を越えてナガスネ本隊を急襲すればいくさは終わる。ヤマトの開放だ。」
「ところでサオネツが大坂の城といっていたのは何のことだ。」
「先ほど通り過ぎた後の小さな島だと。ナニワの予言では冬のいくさと夏のいくさを経て200年の平和が来ると言う。」
「イワレよ、前を見ろ、生駒の山だ。夕日を受けている。ふもとまで舟で進める。生駒の先がナガスネの館のある登美が丘だ。いよいよ高千穂で鍛えた足腰が活きて来る。攻撃は明日の日の出だ。」