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第14章 忍阪


紀州、伊勢、伊賀と味方を増やしナガスネ包囲網が完成しつつある日向軍。いよいよヤマト盆地入りを目指し、宇陀の駐屯地から進軍する。

峠を超え桜井を目指す主力はオオクメ率いる久米隊。日向軍の士気は高い。唄いながら行進する。


  みつみつし 久米の子らが

  粟生には かみら一本

  そ根がもと そ根芽つなぎて 

  撃ちてし止まむ


  みつみつし 久米の子らが

  垣下に 植ゑしはじかみ

  口ひびく われは忘れじ 

  撃ちてし止まむ


  神風の 伊勢の海の

  大石に 這ひもとほろふ

  細螺の い這ひもとほり 

  撃ちてし止まむ


峠を下りヤマト盆地の入り口にあたる忍阪(おっさか)の地にて敵が待ち構えていた。

敵の先頭には大男が2人、エシキ、オトウシキの兄弟が率いる土蜘蛛軍団が日向軍のヤマト進行を阻止するべく道を塞いでいる。


エシキが叫ぶ。

「筑紫の船乗りがどうして山からやってくるんだ。舟歌だったら聴いてやるぞ、一曲うたったらさっさと帰りやがれ。」

オオクメが言い返す。

「おまえたちはヤマトでひどいことやっているではないか。民は苦しんでいるぞ。」

こんどはオトウシキが返す。

「俺たちにも家族や子供がいるんだ。子供たちの食料確保はあたりまえのことだ。」

オトウシキは鏑矢を弓につがえて引き放った。音をたてて鏑矢が飛ぶ。

オオクメ「攻撃開始!!」



狭い道である、両軍とも長い隊列が後ろに続いているものの一挙に全軍攻撃は不可能だ。実際の戦闘は前線のみで時間のかかる消耗戦になる。


次から次へと戦士が入れ替わり肉弾戦が繰り広げられる。エウカシ軍の銅剣と筑紫軍の鉄剣がぶつかり合う。鉄剣は細身で銅剣より取り回しに有利で、しかも切れ味も優れているのだが、さすがにに山道行軍直後の日向軍に対して待ち構えていたエウカシ軍がスタミナで勝る。戦闘が長引くと日向軍が不利になる。


シマとカヤが後方に移動しつつお互いに声をかける。

「敵は手ごわい。怪力軍団だ。」

「我が軍の消耗が激しい、援軍はまだか。」

以前にヤマト入りを阻まれた生駒戦の悪夢が頭によぎる。

その瞬間にエシキ隊の背後からときの声が聞こえてきた。ミチノオミ率いる連合戦隊が別ルートから忍阪に到着した。

ミチノオミが言う。

「山道は厳しいのう。大変お待たせした、これで敵を挟み撃ちだ。」

オオクメも士気が高まる。

「新戦力の合流だ。総攻撃行くぞ。」

戦闘が続く。敵は一人ひとり戦力を失う。最後は大将のエウカシと副将のオトウカシの二人にだけになった。

二人は筑紫軍に囲まれ地面に腰を落とす。

エシキ「ここで勝ったと思うな。ドグーの呪いが米食人間を跳ね返す。」

オオクメ「悪あがきはよせ、我らには八百万の神の後押しがある。」

筑紫軍の鉄剣がエシキ、オトウシキの体を切り裂き、2人は絶命した。


戦士たちはぐったりして、膝をついている者も多い。イワレが戦士たちの背後から近寄り静かに唄う。

楯並めて 伊那佐の山の  

木の間よも い行きまもらひ  

戦へば われはや飢ぬ  

島つ鳥 鵜養が伴 今助けに来ね

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