ファンタジーショートショート:「この装備はのろわれています」
別世界に召喚という形で訪れる事になった俺は、その国の王から「魔王を倒してくれ」と依頼を受ける。「倒すことが出来なければ元の世界へは帰れない」と言う脅し文句に仕方なく依頼を受けたのだった。
「おぉよくぞ引き受けてくれた!流石は勇者様だ」
と褒め称えるがこいつが脅した張本人の王であったりする。そしてそれに賛同しているのが側近達であった。
「だが行くにしても俺は何にも武器なんて持ってないぞ?このまま行けってのか?」
若干うんざりしながらも王に話しかけると、王は待ってましたとばかりの笑顔をこちらに向ける。
「安心したまえ!先代勇者の持ち物に装備一式があってな。それを勇者殿に差し上げよう」
そう言いながら王が指を鳴らすと、奥から鎧と剣と盾が現れた。
「なんか随分ごつい装備みたいだけどこれ着れるのか?」
その装備一式すべて豪華な装飾が施されており本当に実用的なのか疑問な所があった。しかも鎧なんて着たことも無い俺からしてみるとまともに着る事すら困難に思えたのだ。
「安心した前!それは魔法によって装備することが出来るのだよ」
更に笑みを深くした王が、隣に居た魔法使い風のローブを来た男に指示する。男は何やら呪文のようなものを唱えた。すると先ほどまで目の前にあった装備がいつの間にか自分に装備されていたのだ。鎧をしっかり着込み、盾と剣を持っていたのだ。
「おぉ!すごいな・・・ん?」
装備した瞬間驚きと共に妙な声が頭の中に響いてきた。
『この装備はのろわれています』
その言葉の意味を理解した俺は一気に青褪める。そしてこの格好に喜んでいた王達に呪われている事を伝えたのだ。
「馬鹿な!この装備は先代勇者からの物だぞ!どこでどうなれば呪いが付くのだ!」
「だがしっかり呪われていますとさっきから頭の中に声がするんだが?」
「そうだ!先代勇者が残した書物があるはずだ!それをすぐ調べるのだ!」
慌てふためく王は側近達にそう命じると直ぐに分厚い書物が運ばれてきた。
「おぉここにその装備の事が書かれておる!」
「何で最初に見なかった・・・?」
俺の呟きは無視される。
「何?まずその鎧についてだが・・・装備すると歩くごとに体力と魔力が失われ最後には立ち上がることすら出来なくなる」
「何そのきっつい呪い」
「そして盾だが・・・防御した際に与えられるはずのダメージを2倍にして装備者に与える」
「え、防御した方がダメージでかいとかドM装備なの?」
「最後にその剣だが・・・斬られた相手に回復と各種の補助+強化を行う」
「斬れば斬るほど相手が強くなるとか嫌過ぎるだろ・・・」
俺の呟きは悉く無視されたが、その呪いの強さに全員絶句する。
そして最後に一言添えられていた。
『この装備は呪われている。魔王に装備させて戦況を有利にすべし』
「この鎧。魔王用じゃないか!」
俺の怒りが爆発する。
「どうすんだこれ!このままじゃ歩く事もままならないじゃないか!と言うかそんな書物あるなら始めから目くらい通しておけよ!」
「うーむ。魔王に使う鎧だったとは・・・なるほどだから無理やり着させる為に魔法が必要だったのだなぁ」
等としみじみ呟く王に更に怒りが湧く。
「くそ!こんな鎧!」
がちゃがちゃと無理やりにでも脱ごうとする俺に再び頭の中に声が響いた。
『呪われています。装備を外すことができません』
「本当にどうすんだこれ・・・」