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九つの極罪  作者: 阿志乃トモ
第一章 クシャトリア大迷宮編
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第六話 クシャトリア大迷宮

ステータスを一部修正しました。

 ダンジョンと呼ばれる大迷宮は発見されているだけで、90ヵ所も存在している。その半分程度はすでに攻略されて機能していないが、それでもバルハット王国が知る過去2000年に及ぶ歴史の間に40ヵ所ほどしか攻略されていないのだ。


 ダンジョンと言う存在が何なのか研究者たちが何度も研究を行っているが、判っていることは少ない。まず、ダンジョンには階層と呼ばれる空間ごとにそれぞれ自然環境が違ってきている。


 イザナたちが行く《クシャトリア大迷宮》は今攻略されている階層は70階層である。誰が書いたのかは知らないがある文献によると全部で120階層あるらしい。そして、始めは唯の薄暗い遺跡の中と言うか洞窟みたいなところみたいな造りになっているのだが、50階層を超えるとそれがガラリと変わる。


 51階層に足を踏み入れて初めに驚くことは太陽が昇っていることだろう。ダンジョンの中でどうやって擬似的太陽を創り出しているのか解っていない。おそらく、ダンジョンの最深部にある魔力石と呼ばれる魔力を溜めて放出する石が神代の時代の魔法を発動し続けることによって自然が生まれているのではないかと考えられている。実際、攻略され魔力石を奪われたダンジョンは機能を停止し、自然環境の方も動かなくなる。それによって、魔物たちも自然環境に付いていけずに全滅してしまう。中には進化してさらに強力な魔物になることもあるのだが、それは少数だろう。


 ダンジョン攻略が難航しているのも魔物が強くなっていることもあるのだろうが、この自然環境が著しく変わることも原因に違いない。せめてもの救いは自然環境が大きく変化するのは5階層ごとだと言うことだろう。まだ、20階層分しか知ってはいないが、それでも大きな自然環境の変化は4回しかない。


 イザナたちの予定は20階層までとなっている。生徒たちの実力を考えてみれば、そんなところだろう。


 別にダンジョンから魔物が生まれている訳ではない。ただ、ずっと棲みついているだけである。それほどまでに魔物にとってダンジョンと言う場所は居心地の良いところなのだ。そんなところに自分たちを殺す敵が現れたのだから、殺そうとするのは道理なのかもしれない。


 それでも多くの者がダンジョンに挑むのは一番レベルを上げるのに手っ取り早いと言うのもあるだろうが、そこに眠る秘宝を手に入れようと考えているからだ。秘宝と言っても様々だ。宝石だったり、武器だったり、お金だったり、中には魔法やスキルなんかも習得できたりする。そして、それはどれも強力で特殊な効果を持ったモノばかりである。ハズレなんかもあるが、それは手に入れた時のお楽しみだ。


 そもそもダンジョンとは何か誰も知らない。生まれた時からそこにある強化場所であり宝島でもある。誰がどういう理由で宝を置いたのかは知らないが、ダンジョンについて確実に解っていることが一つだけある。それはどのダンジョンも人の手で創られた人工物だと言うことだ。


 イザナたちが行くダンジョンは《クシャトリア大迷宮》だが、関係しているかどうか知らないが、かの〈獣王〉の名前もクシャトリアと言う。


 バルハット王国の首都の周辺――近いとは言わないが――には《クシャトリア大迷宮》も含めて9ヵ所のダンジョンがある。何を言いたいのかと言うと、イザナたちは人数がかなり多いので、だいたい学年ごとになるようにそれぞれのダンジョンに行く予定だった。その人数は一つのダンジョンに約70人ほどである。しかし、だれだれと一緒が好いとか、言う人が現れそれに同意した奴らが騒いだことによって、一度好きにパーティーを組ませそこから約70人になるように調整した。むろんイザナは誰ともパーティを組まなかった。宮本に一度誘われたが即決でお断りした。


 だが、奇しくも宮本たち――正輝に未央、加奈子、咲楽、麻衣に俊作――のいつもと同じメンバーで組まれたパーティと同じダンジョンに行くことになってしまった。ちなみに俊作とは加奈子の弟である。


 マッピングはされてあるので、すでにイザナたちは《クシャトリア大迷宮》に足を踏み入れてから、すでに8階層まで来ていた。みんなのステータスを考えれば、20階層辺りまでは安全に行けるはずなので順当だともいえる。


 イザナは何をしているか言えば、邪魔にならないように一番後ろに並んでみんなの後に付いていっている。ダンジョンにはアクラス団長は来ていないので、一番後ろでイザナたちを見守っている騎士とは会話もせず、無言で歩き続けている。騎士の方もイザナに極力関わろうともしていないので、こういう状態になっている。


 そして何より、イザナはダンジョンに入ってからいたたまれない気持ちになっていた。ダンジョンに興味があったので来てみたが少しそれを後悔していた。


 前方では勇者たちがゴブリン相手に無双しているが、イザナには虐殺しているようにしか見えない。良くも悪くも魔従師としてのスキルがこの状況を作り出していた。


『オノレ人間ドモメ! オレタチノ棲ミヲ荒ラシテクレタナ! ユルサ―――ギャアアアアア! ……無念』

『ヨ、ヨクモセバスチャンヲ! 人間―――グッハ!』

『マ、待ッテクレ! 財宝ナラ好キナダケヤル! ダ、ダカラ、命ダケハッ―――』

『ママーッ、ママーッ! ドコ行ッタノ!? 一人ニシナイデ!』

『オ願イデス。ドウカ子供タチダケデモ――――――』


 イザナも魔物たちの声が判らなければこんな事にはならなかったのだろうが、声が解るだけに悲惨な光景にしか見えない。ここに入った時からずっとこんな感じである。


 他のみんなはこれまで魔物を無双してきたからなのか、少し、調子に乗っている。


「この調子ならすぐに目標の20階層に着いちゃうんじゃない?」

「あ、それ言えてる。俺たちなら楽勝だよな、なんと言っても俺らチートなんだしさ」

「そうよそうよ。私たちにかかればこんなダンジョン簡単よ!」


 等々そこら中から聞こえてくる。しかし、先頭にいる第一騎士団副団長はそんな彼らを叱責する。そのことをまともに相手にしている奴らは少なかったが。


 そんなこんなですでに10階層にある大きな扉の前にいた。


「この先はボス部屋だ! 今まで以上に気を引き締めろ! ちょっとした油断が命取りになるぞ!」


 10階層ごとにボス部屋が存在する。先程、ダンジョンは魔物を生まないと言ったが、その唯一の例外がこのボス部屋である。ボスが倒されても次に挑戦者が扉を開けた瞬間に再び生み落される。魔物たちがこの中に入っても生み落されることはない。これによって魔物たちは下の階層に棲みつくようになるのだ。


 副団長は扉を開けると中に入る。それに続いて、イザナたちも中に入った。入った感想としては意外にボス部屋って広いんだなぐらいだったが、その中央で佇んでいる巨漢はすごい存在感を放っていた。


 レッドオーク レベル20


 鑑定のスキルを使っても判るのは種族とレベルだけである。流石にステータス値がどうなっているかまでは判らないが、筋力と耐久がすごそうだ。


 レッドオークと書かれているが、別にどこも赤くなっていないのでどの辺がレッドなのかと疑問に思ったが、正輝たちがレッドオークに向かって行ったので、考えるのを中断した。


 今の正輝たちのステータスはこうなっている。


 草津正輝 男 17歳 レベル15

 種族:人族

 天職:勇者

 体力:550/580

 魔力:400/600

 筋力:550

 耐久:520

 俊敏:570

 魔耐:540

【称号】

 異世界人 勇者

【スキル】

 言語理解 先読み 剣術 体術 気配察知 縮地 物理耐性・強 高速魔力回復 鑑定

【ユニークスキル】

 『輝く聖騎士』『聖剣を持つ者』

【魔法】

 光魔法・下 火魔法・下 水魔法・下 雷魔法・下 風魔法・下 回復魔法・下


 宮本剛 男 16歳 レベル13

 種族:人族 

 天職:守護騎士

 体力:490/500

 魔力:350/370

 筋力:500

 耐久:550

 俊敏:400

 魔耐:430

【称号】

 異世界人

【スキル】

 言語理解 体術 楯術 剣術 槍術 剛力 硬化 鑑定

【ユニークスキル】

 『一騎当千』

【魔法】

 無魔法・下



 水島加奈子 女 17歳 レベル14

 種族:人族

 天職:侍

 体力:360/480

 魔力:370/490

 筋力:450

 耐久:450

 俊敏:500

 魔耐:480

【称号】

 異世界人

【スキル】

 言語理解 剣術 気配察知 縮地 鑑定

【ユニークスキル】

『大和魂』『居合の達人』

【魔法】

 氷魔法・下



 弓立未央 女 16歳 レベル13

 種族:人族

 天職:魔法使い

 体力:350/350

 魔力:700/900

 筋力:340

 耐久:340

 俊敏:310

 魔耐:500

【称号】

 異世界人 魔導の見習い

【スキル】

 言語理解 高速魔力回復 鑑定

【ユニークスキル】

 『魔導の極致』

【魔法】

 光魔法・下 火魔法・下 水魔法・下 風魔法・下 雷魔法・下 闇魔法・下 土魔法・下 回復魔法・下


 咲楽と麻衣と俊作のステータスを書くのがめんど―――疲れるので割愛しようと思う。


 こちらのレベルが低くてもおそらくステータスがレッドオークを上まっているだろうからすぐに決着がつく予想した。


 イザナはこのダンジョンに入ってから、まだ一度も戦闘行為を行っていない。魔物たちの声が聞こえてくるのも理由の一つだが、何より自分が出るまでもなくすぐに戦闘そのものが終了してしまうのだ。最後尾にいるのが悪いのだろうが、イザナにとっては幸いだっただろう。おかげでレベルは一つも上がっていない。


 予想通り、あっけなくレッドオークは倒されてしまった。そのままの調子で次の階層へと足を踏み入れると、破竹の勢いのまま、20階層のボス部屋の前まで来てしまった。そして、扉を開けた瞬間、地面から魔方陣が出現して、イザナたちは10階層のボス部屋の10倍ほどの空間に飛ばされた。が20階層のボス部屋かと考えた。


「なっ、バカな! 今までこんなトラップはなかったぞ!」


 副団長の声によってその考えは否定された。そしてこれが、不測の事態だろうことも予測が付いた。


「何が起こるか解らない気を引き締めろ! これが転移系のトラップなら、必ず帰る方法が存在する。ここのどこかに魔方陣があるはずだ!それを見つけたら、騎士の誰かに言ってくれ! それから、お前たちは何としてもこの子たちを守り切れ!」


 副団長が言うと同時に、周囲の壁から蜘蛛型の魔物が最低50匹ほど出現し始めた。それと同時に、先頭がいる方向の壁に魔方陣が出現する。


「―――!! あそこに魔方陣が出現した。お前たちはあそこまで走れ! ―――俺たちはこの子たちの道を作るぞ! 俺に付いて来い」


 副団長が叫ぶと騎士たちが蜘蛛を蹴散らし始めた。だが、蜘蛛たちはこちらを獲物としてみているようだ。


『久しぶりの人間だ! 肉だ! 肉が食えるぞ!』

『ここにいる魔物は食い飽きたからな、久しぶりのごちそうだ』

『ケッ、ナカナカ強イ奴モイルジャナイか!』

『もっともっと僕を傷つけてー! ハアハア』

『アノ子ト犯リタイ』

『黙れ変態ども!』


 最後の方に変なのがいた気がするが気のせいだ。


 イザナは最後尾にいたので、魔方陣までの距離が離れすぎている。それに、他の奴らと比べるとステータスが劣るのでそんなに足も速くない。あと半分の距離になるころにはみんな魔方陣の中に入っていた。


 そして、それを見ていた騎士たちがイザナを置いて、魔方陣の中に入りだした。魔物の数は半分ほどになったところで、最後に残った副団長も魔法陣の中に入ろうとした。


「ちょ、ちょっと待て、まだ俺が残ってる!」


 イザナが叫ぶように言うが、副団長は汚物を見るような目でこちらを見る。そして一言。


「―――魔従師がっ」

「―――っ!!」


 イザナはそれを聞いて足を止めそうになった。それは誰が教えたのか。もしかして、アクラス団長が言ったのかと思ったが、もう一人イザナが魔従師だと知っている騎士がいた。


「化け物はここで朽ちるのがお似合いだ」


 そして、魔方陣の中に入る。そこにプレゼントを残して。


 石だった。赤い石。それはニトロ石と呼ばれる魔力を込めた後、落としたり、ちょっとした振動を与えると込めた魔力に比例して爆発を起こす特殊な石だった。


 それは地面に落ちたことで爆発した。それによって起きた爆風により、後ろに吹き飛ばされる。そして、立ち上がって、魔方陣の方を見ると、魔方陣は消えていた。


「うそ、だろ」


 タランタラン レベル124


 魔方陣が消えたことと一番大きな蜘蛛の鑑定をして出た表示に対して出た言葉だ。ちなみに周りにいる他のタランタランはレベル40ほどだ。レベル124はアクラス団長に匹敵するほどのレベルだ。少し仲良くなったのでステータスを見せてもらったことがある。ステータスを見せるというのはこの世界では親しい間柄の人のみだ。門番は仕事だから見るがほとんどが名前しか見ておらず、よっぽどのことがない限り気にしない。


 現状を見れば、アクラス団長が率いる騎士団を相手にしているようなものだ。どのみち今のイザナでは相手にならない。


 なんとかここから生き残る方法を頭に思い浮かべるが、どれも途中で頓挫してしまう。ああでもないこうでもないと考えている間にもタランタランは近づいてくる。


 剣を抜いて戦おうと構えると、あの声が響いてきた。



『解放条件を確認。これより[強欲]と[嫉妬]を開放します。――—―これにより、ユニークスキル『七つの大罪』を解放しました』


次回、ヒロイン(?)が出る予定……のはず。

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