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九つの極罪  作者: 阿志乃トモ
第二章 ジュウオウデンライ編
33/33

第三十三話 少女とミーちゃん

更新が遅くなりました。

テストにレポートに新作をちょこちょこと・・・。

あれ? 何をしているんだろう?

あ、いつもより短いです。


指摘があったので少々書き直しました。

 カリナ村。


 そこはカイゼル帝国の東端に位置し、《カルマナ大森林》に最も近い村である。村と言ってもここを訪れるのは冒険者や《カルマナ大森林》を迂回するためか、もしくは迂回してきた商人たちが大半であり、カイゼル帝国でも有数の商業都市となっている。


 商人たちが多く行き交うこの村には必然的に人口が多くなる。すると、ちょっとした困り事や村の周りで被害を及ぼす魔物の退治といった一般市民では普通できないことをしてくれる者。つまり、冒険者たちも多く滞在している。むろん商人が護衛として雇っていたりもしているが、その多くがこの村に住み着いていたりもする。中には冒険者を引退してから、この村に永住する者までいるほどだ。


 しかも、この村は特殊な成り立ちである故に、帝国領内では商業組合連盟と冒険者組合の自治区域にもなっている。


 商業組合連盟と冒険者組合とは、いわゆる『ギルド』と言われるものだ。しかし、ギルドと言うと何のギルドなのか判らないので、ギルドの前に冒険者や商業、魔導士などの前置きが必要となる。


 ちなみに言うと、このカリナ村では商業ギルドではなく商業ギルド連盟と言われている。この連盟には工業、漁業など様々なギルドから成っているからである。


 そして、ここは商業都市故にこの村には多くの宿屋が存在している。貴族や大商人が泊まるような高級なホテルのような宿屋に一部屋で多くの人が寝るだけの場所を提供するような宿屋など様々である。


 村から少し外れた場所にある宿屋の井戸のところに一人の少女が水汲みしている。年頃は8歳から10歳程度であり、輝かんばかりの綺麗な金色の髪を揺らしながら、せっせと紐を引っ張って水を汲み上げる。


 その宿は村の外れ、しかも、≪カルマナ大森林≫のすぐ近くにあることからなかなか広い敷地にしては他の同じ大きさの宿屋と比較すると4割も安くなっている。商人などは寄ってこないが冒険者などの荒くれ共が少し中心街――冒険者ギルドがあるところ――からは離れているが安く朝晩の二食付きで質の高い宿屋に泊まれることから金にあまり困っていない冒険者たちの間では人気の宿屋である。もし、魔物が現れても大抵は彼らが撃退してくれる。


 そんな宿の娘である彼女の朝は井戸の水汲みから始まる。


 親にしろと言われた訳ではなく、まだ4、5歳頃に彼女の方から手伝いを申し出たのだ。しかし、最初の頃は彼女にできることはあまりなかったが、手伝いを始めてからおよそ5年。今では宿の看板娘となっている。


 宿のほとんどが未だ眠りについている。昨日は宿の中にあるお食事処で何人かが宴会をやっており、それに宿に居るほとんどの人が便乗していたため夜遅くまで騒いでいた。そのため起きてくるのはまだ先だろう。


 少女は汲み終えた水を宿に運ぼうとバケツを持ち上げる。手に伝わってくる重さは年々軽くなっていく。そして、これを続けていってこのままマッチョになったらどうしようと、まずならないであろう妄想を日課のように続けている。少女も年頃なのだろう。


「うんしょ、うんしょ」と声を出しながら、水を運んでいると、ガサガサと茂みの方から物音が聞こえた。また、小動物でも現れたのかと思いながら宿に水を運んでいく。


(そういえば、今日はまだミーちゃんにご飯あげてなかったな)


 先ほどの小動物で自分が親に内緒で飼っている子猫のミーちゃんの餌やりを思い出し、とっとと水を運んでしまおうと精を出す。


 しかし、すぐに水汲みをあと数回しなければならないことを思い出し、げんなりした。


 だが、すぐに気合を入れなおして、すぐにそれらを終えると宿にあったパンをこっそり一つ貰い、お腹を空かせているだろうミーちゃんのところへと急いだ。


 ミーちゃんは宿からほんの少し離れた森の中で生活している。


 しかし、少女は親から危険だからこの森に入るなと言われている。理由は解らないが両親がそういうのだから危険なのだろうと思ってはいるが、ミーちゃんを見つけてからはよくこの森に向かっている。しかし、森の中には入っていない。丁度森との境目のところでミーちゃんと触れ合っているからだ。つまり、ちゃんと両親の言いつけは守っていると言える。


 いつもミーちゃんと遊んでいる場所まで来ると、少女はミーちゃんの名前を呼んであげる。


「ミーちゃ~ん、出ておいで~。ミーちゃ~ん」


 しかし、少女がいくら呼んでも出てこない。いつもなら最初の一回で元気な姿を見せるのだがこの日は姿を見せなかった。


 このとき少女はもしかしてミーちゃんの身に何かが起きたのではないのかと思い立ってしまった。勿論、それは悪いことではない。素晴らしい精神だ。どうか腐らずにいてほしいものだ。


 ただこの時ばかりは悪い判断だった、と言わざるを得ない。親から言いつけられていた約束を破って森の中に入って行ってしまったのだ。


 まだ早朝だったため森の中は暗く見通しが悪かった。さらに、それが少女には不気味な雰囲気に感じられ、恐る恐る歩いていく少女は早くももと来た道を帰りたくなった。


(うぅ~、怖いな~。こんなとこ早くミーちゃん見つけて抜け出さなきゃ)


 そう自分を鼓舞するがやはり怖いのかその足取りは遅い。


 しかし、早く帰らねば少女の姿が見当たらないことを彼女の両親たちが気づき少女を探しに来る可能性がある。いや、少しならば見当たらなくても問題ないだろうが、それが一時間、二時間ともなれば話は変わってくる。


 少女を捜索中に家に帰れば、確実にどこに行っていたのかを訊かれ、もし森の中に入っていたことがバレたら叱られること間違いない。


 故に早くミーちゃんを探して、帰る必要がある。


 少女の足取りは遅いままだが、小さな声でミーちゃんの名前を呼ぶことにした。声を小さくした理由は魔物たちに気づかれないようにという配慮ではもちろんなく、森の雰囲気が少女に大声を出させるのを躊躇(ためら)わせたからだ。


 少女はミーちゃんの名前を呼びながら歩いていたら意外と奥まで入っており、振り返ると最初少女が入ってきた場所はすでに見えなくなっていた。


 俯き、少女の心が今日は諦めてお家に帰ろうかな、へかなり傾いていたところで、どこからともなくみー、みーという小動物の鳴き声のような音が聞こえてきた。


「ミーちゃん!?」


 少女は顔を上げて、目を閉じてその鳴き声がする方向を探ろうと耳を傾けた。しばらく、耳を澄ました後、閉じていた目をパッと開き、「あっち!!」と言いながら、走っていく。


 依然として鳴き声は響いていたが、徐々に鳴き声の音が大きくなっている気がした。


 少女は鳴き声が大きくなっていくにつれ、森の所々で木漏れ日があることに気づいた。その光景はどこか幻想的であったが、少女はそれに気づくほどの余裕はなかった。普段だったら、感嘆の声を上げていたことだろう。


 そして、その木漏れ日の中で一番大きい場所を目指して走っていく。そこから鳴き声が聞こえてくるから。


 そこへ行くとみーみーと鳴く子猫のような小動物が確かに居た。


 少女がその子猫のような小動物を認めると「ミーちゃん!!」と目をキラキラさせながら声を出す。


 そして、駆け寄ろうとしたところでミーちゃんが何かに前足を押し付けているのが見えた。みーみーと鳴きながら左足で何かをポフポフしている。その何かは全体的に黒く小ぶりな岩のようにも見える。ただ、少女は黒い岩など見たことがなかった。


 故に、それを見た少女はミーちゃんの傍に寄るのを躊躇った。


「ミーちゃん、おいで~」


 なので、その黒い何かには近づかずに今立っている場所から腕を広げてミーちゃんを呼ぶ。しかし、相も変わらずミーちゃんは黒い何かをポフポフしている。時折、カプという音が聞こえてきそうな噛み付きを披露したりもしている。


「むぅ~」


 そんなミーちゃんに少女は遺憾にも不服であった。


 しかし、何度呼びかけてもこちらには来てくれなかった。何度か少女の方をチラ見していたことから気づいていないことはないはずである。それにどちらに行こうか迷っている素振りすらしていた。


 だが、ミーちゃんはそれから離れようとしない。


 少女は不満に思いながらもほんの少し寄って行きながらミーちゃんを呼び続ける。そして、いつの間にかミーちゃんに触れ合うことができるほど近づいていた。なので、ミーちゃんを抱っこしてあげて撫でまわすことにする。


 それにミーちゃんも嬉しそうな声を出す。


 だが、ミーちゃんの泣き声とは別に「う、うっ」とうめき声が聞こえてくる。一瞬少女の空耳かなと思ったが、耳を澄ませば確かに聞こえてくる。


 周囲を見渡すも、それらしい生き物は周りにはいなかった。しかし、うめき声はかなり近いところから聞こえてくる。


 ミーちゃんをギュッと抱きしめてそのうめき声の発生源を恐る恐る探す。だが、見つけることは叶わない。


 少女の目には涙がたまっており、それが今にも溢れてしまいそうだった。


 周りを見ればさっきまであった木漏れ日もいつの間にかなくなっており、ザワザワと森が少女を嘲笑っているかのように揺れている。少女が不安で今にも崩れ落ちそうになったところで、『ぐぅ~』という場違いな音が少女の不安を断ち切った。


 よくよく聞いてみれば、その音は目の前にある黒い何かから聞こえてくる。ついでに言うとそこからうめき声も聞こえる。


 少女が恐る恐るミーちゃんを抱いたままそれにツンツンと触ると何やらそれが動いて横向きになる。それを覗き見ると人の顔みたいな形をしている。それによくよく見れば、黒い髪に何やら紺色の布を纏っている。周りが暗く、それが黒色に見えていたようだった。それにどうやら人がここで寝てしまっているようだ。その顔からは魔物の様には見えない。


 所謂、行き倒れという奴であろう。


 少女は助けなきゃと思いそれを抱えて家である宿まで持って行こうとした。だが、バケツの水は運べても1人の人間を運ぶのは難しかった。


 大いに引きずりながらもその黒い人を少しだけだが運んだ。否、それが少女の限界だった。一旦、その人をそこへ置いて、少女は家まで戻ることにした。


 来たであろう道をまっすぐに進むが立ち止まって辺りを見渡す。


「ここ、どこ?」


 完全な迷子になっていた。その黒い人の場所へ戻ろうとしたがどちらへ向かえば良いのかさえ分からなくなっていた。少女の目には再び涙が溢れてくる。


 みーみー、という音と共に未だに抱っこしていたミーちゃんが少女の腕から抜け出し、テクテクと歩き出す。

 少女はミーちゃんにも見捨てられたのではないかと思い、蹲り泣き出す寸前まで来ていた。


「ひ、ひっぐ」


 というか、若干泣いていた。


 嗚咽を漏らす少女の膝に何かが何度も当たる。そこを見てみるとミーちゃんが相変わらずみーみーと鳴きながら少女の膝をポフポフしていた。


「……ミーちゃん?」


 すると、ミーちゃんは再びテクテクと歩き出す。少し歩いたら後ろを振り返り少女に向かってみーみーと鳴く。そして、またテクテクと歩き出す。そして、しばらくするとまた振り返る。


「……ミーちゃん? 付いて行けばいいのかな?」


 少女が立ち上がって、ミーちゃんの方へゆっくりと歩いていく。すると、ミーちゃんは後ろを振り返ることなくスタスタと歩いていく。


 しばらく、ミーちゃんの後を歩いていくと、森から光が漏れてくる。どうやら出口が近いらしい。歩いていた少女が駆け足でその出口に向かうとようやく森を抜け出すことができた。ただ、最初入った場所から少し離れているが問題はない。


 振り返るとミーちゃんの姿が見えないが、少女は気にすることなく急いで家の方へと急いだのだった。


 これにより、森へ入ったことをこってり怒られるのだが、それはまた別のお話。


さて、少女の名前どうしようか。


ちなみに新作の方は出すか出さないか悩み中

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