第二十二話 3人の旅立ち
そこには美少女が2人立っていた。
1人は白――というよりは銀に近い髪をした少女で、その髪は腰辺りまで伸びている。目は金というよりは黄色と言った方が良いような金眼である。そして、肌は白い。真っ白という訳ではないが、誰もが言葉にするならやはり白だと答えるだろう。そこには不気味さなどなく、むしろ高貴で気品に溢れている感じすら漂わせている白さだ。身長至ってもイザナより少しだけ小さいくらいで女性にしては長身な方だろう。ちなみにイザナの身長は175ほどである。身長は高いがその顔つきは大人の女性というよりは少し幼く少女という言葉がピッタリとくる。それでいて、足はスラリと長く、まるでモデルのように見えなくもない。なので、スタイルの方はスレンダーとだけ言っておこう。
もう1人は銀髪少女よりも小柄で身長にしたらだいたい130辺りではないだろうか。褐色肌で黒いショートヘアに黒い目。一見すると男の子のように見えなくもないが、胸に大きな2つの果実を実らせていることから、それを否定せざるを得ない。隣にいる銀髪少女と比較しても、それを巨乳以外になんと称していいのか判らないほどだ。そもそも隣の銀髪少女のスタイルはスレンダーなのだから比べてはいけない。気のせいか、銀髪少女が自分の胸と褐色少女の胸を見比べて、絶望している。
「ねえねえ、お兄ちゃん。どう、ボク可愛い?」
褐色少女が体をクルリと回転しながら訊いてくる。
「…………。ウサギ、お前メスだったの?」
「――えぇ!? 今更!? というか、今までなんだと思ってたの!?」
「一人称ボクだったし、そもそもお前ウサギだったからオスかメスかなんて判断できないし………」
「見ても判らなかったの!? どっからどう見てもメスだったじゃん!!」
「いや、黒いウサギだった」
「ひどい!! あんまりだ!!」
「まあ、いいじゃないか。―――ほれ、お前の服」
「しかも、話をそらされた!? ボクまだ可愛いかどうか聞いてない!」
「ん? あぁ、可愛いんじゃない?」
「なんで疑問形!? そこは断定してよ!」
「そうだな。愛玩動物みたい」
「何か可愛いの意味が少し変わってない!? ――もういいよ。知らない!」
イザナから服を奪い取るとイザナから少し離れたところに行き、いそいそと服を着替え始めた。奪い取る時、小さな声で「リア姉ちゃんにはちゃんと言ってあげなよ」と言っていた。そして、今は服の着替え方を知らないのかかなり悪戦苦闘している。イザナは人間として服の着方ぐらいは知っているがツキを手伝おうとは微塵も考えていない。
「ほれ、これがリアの分」
残った方の服を少し裸であることに恥じらいを持っているリアに渡す。手で胸を隠しているのだから恥じらいを持っていると言うことでいいのだろうけど、隠すなら下も隠してほしい。
「――ありがとう。………ねぇ? わたし、どうかな?」
「ん? そうだな。とってもきれいだよ」
「~~~~~~っ! あ、ありがとう」
そして、リアもツキの方を見ながら、服を着始める。
することのなくなったイザナは2人が着替え終えるまで、バックの中にあるという武具を見ることにした。バックの中を漁って武具を取り出していくと、最初に出てきたのは杖である。それには緑色の水晶が付いて――少し浮いているような気もしなくはないが――おり、その周りに張り付くように2匹の蛇がお互いの尻尾を噛みながら環を作っている。2つ目は二刀一対の黒い刀である。普通の刀にしては短く、短刀にしては少し長い刀である。が、柄と鍔、刀身もすべてが黒一色の刀である。だが、なぜか鞘は白かった。そして、最後はローブ――いや、マントと言った方が適切かもしれない。青よりも濃く、紺よりも鮮やかな色をしたマント。これが武具なのかどうかは判断に困るが、これ以外にそれらしい物――この3種類しか――がバックの中に入っていなかった。
イザナはこれらを鑑定してみた。
『ジェイドの蛇環』………伝説級武具。かつて《夢現の魔女》が使っていたとされる杖。所有者は自身の血を翡翠の水晶に垂らすことでこの杖の所有者となる契約を結ばなければならない。常に空気中から魔力を吸収して、所有者に魔力が全快になるまで分け与える。また、所有者の全方位に対して自動的に防御および追撃を行う。ただし、魔法発動中は防御のみ機能するが、2つ以上の魔法の使用中は発動しない。さらに、所有者はスキル《多数展開》を習得できる。
『黒狼刃』………神話級武具。かつて北の大地の英雄が使っていたとされる黒刀。この刀は二刀で一振りであり、片方が刀折れ、もしくは消失しても、こう片方を所持していればすぐに復元される。ただし、喪失した場合は片方の刀が番の居場所を指し示す。所有者のステータスを3つだけ2倍にする。これは常時発動しているが、選んだステータスを変更することはできない。また、斬りつけた相手の体力か魔力を奪うことができるが、これを所有者に還元することはない。斬りつけた場所にもう片方の刀でもう一度斬りつけるとその傷は魔法で治すことができなくなる。
『宵に紛れし絶影たる者が織り成す祭杯を刻みし混沌たる宴の歓びを識る哉』………神話級防具。製作者、メルクリア=ブルランス。所有者自身に影響を及ぼすスキルを無効化できる。ただし、所有者が許可した場合のみスキルを有効にすることも可能。分身を5体作ることができる。この分身体は意志を持っており、自由に行動する可能性があるが、ちょっとした衝撃で消滅してしまう。また、分身体とはいつでも居場所を交換できる。空中を飛ぶことができる。速さは俊敏に依存するが最低でも時速10キロメートルは出る。ただし、1日1時間が限度である。マントの大きさや長さ、そして、硬度も自由に変えることができる。慣れてくればマントを手足のように操ることもできるようになる。
(一番最後の奴長いし、何このネーミング!? しかも、創ってるのがあいつだし………! しかも、武具じゃなくて防具だし!? でも、確かにかなりすごい物ではあるけどさ!!)
イザナが珍しく心の中でツッコミをした。表に出さないだけで、いつも心ではツッコんでいるのかもしれない。だが、珍しいことには変わりないので記念写真でも1枚撮りたい気分だ。けど、表面上はいつもと変わらないので写真を撮ったところでイザナの仏頂面が写るだけで面白味は全くと言っていいほどない。
武器の鑑定で○○級と出ていたが、その説明も一応しておこう。
『一般級』………一般的に多く普及されている特に特殊な性能もないごく普通の武器。店等でも普通に購入できる。イザナが王宮で支給されたのはこの級に該当する。
『特別級』………言うなれば業物。特殊な性能があるわけではないが、武器本来の性能としてはどの級よりもすばらしい至高の品。店等でも販売されているが値段が高く、おいそれとは手出しができない。
『稀少級』………何かしらの特殊な性能が1つから2つまで付与されている。制限や代償が多ければ、それに応じて性能もより強いものとなる。店等でも偶に見かけることはあるが、その性能によって値段も変動する。
『伝説級』………伝説に謳われる武器。それ以外の分類としては特殊な性能が3つある武器。
『神話級』………神話に登場する今なお現存する武器。それ以外の分類としては特殊な性能が4つある武器。
『夢幻級』………神話にしか登場していない武器。それが本当にあるかどうかは誰も知らない。それ以外の分類は特殊な性能が5つある武器。
伝説や神話に登場するなどと書いたが、稀少級以降はどちらかと言えば、特殊性能の数でその級が決まっているようなもので、確かに伝説級や神話級の中には本当に神話の時代から残っている武器はある。それはほんの僅かであるのだが、それでも特殊な性能を有していることは有している。そして、それは他の特殊性能と比べるまでもないほどの強力無比な性能ではあるが、そこ数は他と違い1、2つあるだけである。
稀少級以上の武器は少しでも伝説や神話に謳われる本物の神秘に近づけようと昔の人が作り上げた魔道具である。今も稀少級の武器を作っている者もいるが世界で20人にも満たない。まあ、作っているというか武器に特殊性能を付与しているだけなのだが。中には武器も手製で作る真の匠もいることにはいる。しかし、その多くが国によって管理されていたりする。そんな彼らが言うには性能を付与するのは難しく、5つも特殊性能が付与されることは奇跡に近いそうだ。だからこそ、自分たちの目標として夢幻級が絶対に必要であるのだとか。確かに今の彼らではせいぜい何十年もかけて伝説級を一つ作るのが精一杯なのである。稀少級なら1年に100個以上は作れる。が、消耗が激しくすぐに破損する可能性がある。対して、ダンジョンなどで手に入る古人作の稀少級はすぐに壊れることもなく非常に長持ちする。
そう考えると、あのなんとも言えないメルクリア=ブルランスは確かに認めるのはなんか癪ではあるが、神話級を作れる程などで魔道具の天才と言っても差しつかえないだろう。なんとも遺憾なことである。
貰った武器を鑑定していたイザナに後ろからツキの声が聞こえてきた。どうやらツキの着替えは終わったらしいが、まだリアの方はあたふたしており、後ろを向いていてもその声がイザナの耳に届いてくる。それを見かねたツキがリアの方にしょうがないなと言いたそうな感じで手伝いに行く。
それを聞いていたイザナはまだ掛かりそうだなと思い、まだ宝箱の中に何かあるかなと探してみると何やら瓶が1つ隅っこの方にあり一体何に使うのか全く解らないが宝箱に入っていたのだから何かすごいものかと思って鑑定するとただの瓶だった。
期待外れとばかりにそれを宝箱に戻して、その次に目が行ったのはその宝箱が置いてある道の両脇にある人が2人入ってようやく一人が頭を出せそうな感じの深い溝。一体何のためにあるのかイザナにはあまり理解できていない。ここを造った奴の顔を見てみたいものだ。
イザナはこの溝の奥に何かあるのかと思って、膝を着き、両手を道の端に引っ掛けて下を覗こう――――、
「―――う、うぉおおおおおおおお!!!!」
―――としたら、両手が溶けた。正確には道の端に手を引っ掛けた時、人差し指、中指、薬指の第2関節までを溝の中に入れていた部分がぐつぐつと崩れ落ちてきたのだ。つまり、溶けたのだ。
「―――【刻を喰らえ】!!」
それを見た瞬間にイザナは[暴食]のスキル<喰わず嫌い>を発動させた。
すると、今度は一瞬にして両指が元通りになった。まさか、ボス戦の時リアのために残して使わなかったこのスキルを自分のために使うなどと夢にも思わなかった。これはこれであの時使わなかったが、結果オーライだと言えなくもない。
「お兄ちゃん!? さっきの叫びは何!?」
「ど、どうしたの!?」
着替えをしていた2人――というか着替えをしていたのはリアだけ――がさっきのイザナの叫び声を聞いて、慌ててイザナの方へ向かってきた。
イザナとしてはスキルのおかげでなんともないのだが、実体験として2人にこの溝のことを話した。話したと言っても溝に近づくな、中に入ったらきっと死ぬぞ程度のものだが。そして、2人はこの溝に対してそれなりの恐怖心は抱いたようだ。
イザナはこの溝に向かって鑑定を発動させた。
『極療水』………どんな傷でもすぐに治療することができる不思議な水である療水の最上位版。療水に比べ、あまりにも効果があり過ぎてしまい、細胞が活性化し過ぎて逆に細胞が崩れ始めてしまう程である。使う際は怪我したところに一滴垂らすべし。または、10倍~100倍に薄めたら、療水や超療水として使えるのでそちらがお薦め。極療水は余りにも透明で透き通っており、どういう訳か光が反射・屈折現象を起こさない。そのためか何もないように目には映ってしまう。
薬のはずが猛毒と化してしまっていた。2人にもその説明をすると、信じられないといった風な顔をする。
だが、薄めれば安全に使えそうなのでイザナとしては持っていきたいところなのだが、どうやってこれを持ち出すのかが判らない。こんな触れただけで危険な代物を容器もなしに持っていけるはずがないし、イザナはそんな容器類を持っていない。しかし、少し悩んだ後、ついさっき何の意味があるのか解らなかった瓶が宝箱の中にあるのを思い出した。もしかしなくても、このためにその瓶があるに違いない。
イザナは早速宝箱から瓶を取り出すと、極療水を汲もうと溝の近くまで寄ったがそこでこの極療水に触れずに掬い出す必要があることを思い出した。この液体に触れればツキの回復魔法でも手を元に戻すのは難しいだろう。だったら、[暴食]のスキルを使えるまで――2時間待てばいい話なのだが、今のイザナはその考えを頭の隅っこに追い払ってしまっていて忘れてしまっている。
どうしようか悩んでいると、イザナの方を見ていたリアの姿が目に映った。その姿は服を完全に着替え終わっておらず、もう少しで胸が見えてしまいそうになっていた。それを指摘してやると、自分が着替え中だったのを思い出したのか、可愛らしい叫びをあげてイザナから離れていった。ツキもそんなリアの後を追って行く。
そんなリアを見た後、イザナは再び悩み始めた。そして、今度目に入ってきたのは、宝箱に入っていた――さらにそのバックの中に入っていた――武具である。3つある中の黒刀を手にした。理由としてはその刀が2振りあったからだ。
イザナはその2振りを器用に使い、刀で瓶を挟みながら落っこちないように慎重に極療水の中に入れていく。コポコポと音を立てながら極療水が瓶の中に入っていく。こうして音がすると確かにそこにあるんだな、という安心感が出て来る。ただ、何もない空中から水の音がするのは何とも言い難い違和感を与えることは間違いなかった。
「終わったよ~」
極療水を瓶の中に入れ終わった後、タイミングを見計らったかのようにツキが声をかけてきた。ツキの声が聞こえた方を振り返ると、そこにはツキに引っ張ってもらいながら恥かしそうにしているリアがいた。
服を渡したのはイザナだが、服を着た2人を見て、自然と小さな声が漏れた。ツキが白色をベースにした服を着て、リアが黒色をベースにした服を着ている。リアに関しては本当にどこぞの貴族の令嬢のようである。
「2人とも、似合ってるな」
「えへへへ………。そう?」
ツキはそういうとその場でくるりと1回転した。そこにいるのはお兄ちゃんに褒められて嬉しい元気いっぱいな少女のそれだった。リアの方は下に俯いている以外に特にリアクションをとってはいなかったが、その顔がほんのり赤く染まっている。リアの肌が白いのでそれが顕著に見て取れた。
イザナがツキにもう少しリアを褒めろと目で言われたので、リアを中心として2人を何度も褒めた。そのせいかリアが顔を手で隠しながら蹲ってしまった。イザナはどうすんだよとツキに目で語ると、ツキはそっと視線を外された。その時、少し顔が赤かったのは気のせいだろうか?
リアのことを少しほっといてイザナはステータスプレートを2人に渡した。リアは顔を隠しながら手だけを出してきたのでその手に握らせたのだが、今度はその状態から動かなくなってしまった。しかし、イザナは気にすることなくステータスプレートの使い方を説明する。
ステータスプレートにはその人の血が必要だが、ここには黒刀があるのですぐに血を垂らすことができる。さすがにリアが今の状態でそれをさせるのは危険なので顔を上げさせたが、イザナの方を見ることはなかった。そして、2人が血を垂らすとステータスがそこには出てきた。
クシャトリア 女 15歳 レベル569
種族:人族 (スノーウルフ)
天職:氷の王者
体力:9600/9600
魔力:100/6000
筋力:9496
耐久:8897
俊敏:12000
魔耐:7000
【称号】
気高き白銀の狼 妹大好き姉 魔物から人になった者 氷の女王
【スキル】
全言語理解 人化 魔物化 気配察知 気配遮断 透明化 略詠唱 偽装
【ユニーク魔法】
無属性【絶対零度】
【魔法】
氷魔法・最上
ツキ 女 13歳 レベル12
種族:人族 (ラフラビ)
天職:大地の巫女
体力:100/100
魔力:130/300
筋力:120
耐久:140
俊敏:190
魔耐:200
【称号】
生命の兎 世話焼き妹 魔物から人になった者
【スキル】
全言語理解 人化 魔物化 魔力感知 魔力操作 略詠唱 偽装
【ユニークスキル】
『自己修復』『???』
【魔法】
土魔法・無 回復魔法・中
リアとツキを比較するとリアの凄まじさが解ってしまう。ツキのレベルとステータスはだいたい一般兵と同じぐらいだが、天職に関して言えば2人のそれはイザナにとっても初めて見る。
このスキルの中にある『略詠唱』というのは、呪文破棄のことである。魔法を発動させるには本来魔法名を呪文として唱える必要がある。このスキルはそれを破棄することができるのだ。しかし、無詠唱とは違ってリアがしていたように詠唱が必要な魔法は詠唱だけは唱えなければならない。無詠唱なら詠唱も破棄することができる。
ステータスもお互い確認し合ったところでイザナたちは貰った武器をどれにしようか決めることにした。なにせちょうど3人分あるのだからここは平等に配分するのが当たり前なのである。この中で魔法オンリーなのはツキだけ――というか、リアが前衛の戦いに出させない――なので、ツキには『ジェイドの蛇環』が与えられることになった。
問題なのはイザナとリアである。どちらとも『黒狼刃』を使いたいと言い張っているのだ。理由としては彼女が創った作を使いたくないという子供じみた理由なのだが、それでも何か使いたくないのだから仕方がない。結局、ジャンケンによる勝負でどちらにするか決めることになったのだが、
「ちっくしょー!」
「やったー!」
イザナの敗北で決まった。イザナは負けをしっかりと認める男なので仕方なしにこのマントを着ることとなった。最後までブツブツと何かを言っていたがそれは決して負け惜しみではない。
そして、宝箱にはもう用はないので、カバンの中に極療水が入った瓶をこぼれないようにしっかりと蓋をしたことを確認した上で入れて、早速3人は社の方に向かった。
社の中には何もなかった。ただ淋しい空間がそこにはあるだけ。あるとすれば真正面に壁に赤く輝く宝石があることだけだろう。ちょうどその宝石がある床には魔法陣が描かれている。イザナはリアとツキと共にその宝石を壁から取り外す。すると、思った通り床の魔方陣が輝きを持って発動し始めた。
次の瞬間、3人はその社から姿を消した。
それはすなわち完全に《クシャトリア大迷宮》を攻略したと言うことだ。つまり、このダンジョンが完全に機能を停止すると言うこと。このことから解ることはこのダンジョンにいた多くの魔物たちが新しい住処を探しに地上に現れると言うこと。そうなれば、魔物たちが民家などを襲い大変な混乱になると言うこと。そして、誰とも知らない者がダンジョンを攻略したことが多くの人間に伝わってしまうと言うことだ。しかも、国が管理しているはずのダンジョンで国の知らない者がクリアしてしまったという大問題でもある。国王がブチ切れるかもしれない。
なんだかんだ書いたが、ようやく3人の旅が始まったと言うことだ。
◯◎◎◯
王宮内の敷地にある召喚された生徒や教師が住んでいる建物の一室。そこには凛とした顔つきであり、それでいて大和撫子という言葉がピッタリと合いそうな女性がその部屋に与えられたベットに腰掛けていた。
彼女は召喚された生徒たちが通っていた学校で生徒会長を務めていた。生徒、教師、男女問わずして慕われており、そんなみんなからも信頼が厚い彼女だが、いつも受け取る所謂ラブレターが女性からしか貰わないことに少し戸惑いを覚えている。
「―――会長」
そんな彼女の部屋の窓から女性の声が聞こえてきた。
「――お前か。入って来い」
すると窓が開いてもいないのに生徒会長の目の前に同じ制服を着た一人の女生徒が立っていた。
「―――例の件、もう調べてきたのか?」
「会長のご命令でしたらなんでも」
「では、早速聞かせてくれ――――」
次の話が終わったら、新章に突入です。
たぶん……
召喚されたのが千人とか多すぎて、ちょっと後悔している。




