第二十一話 人の話を聞かない奴ほど面倒なモノはない
いつもより少し長めです。
途中読むのが疲れるかもしれませんがお付き合いください。
気付けば目の前に大きな白い扉があった。
「――――え?」
『――なに!? どうなったの!?』
突然、景色が変化したことにイザナとツキは大いに戸惑っていた。目の前の光景に目を奪われていて、足下から出現した魔方陣に気付かなかったのだ。
そこは白い扉以外に床に魔方陣が描かれているだけの空間だった。それはその扉の中に入ることしか目的とされていない空間である。
「もしかして転移したのか?」
イザナは考えうる限りの可能性を口にした。そして、それは正しかった。第三者が視れば当たり前だと思うかもしれないが、当人たちにとってはいきなり景色が変わる大層なマジックを見せられた気持である。
『そうみたいね。ボスを倒したらここに転移するようになっていたのかしら』
「―――?」
イザナの呟きにリアが答える。
目の前で起きたことに驚いていたイザナはリアのその言葉に何か違和感のようなものを感じた。しかし、リアの方を見てもいつもと変わらないリアがそこにいたので、イザナは気のせいだと思い、その考えを隅に追いやった。
イザナたちはここにいてもしょうがないので早速扉の中に入ることにした。ここまで来て、ここに罠を仕掛けていることはまずないと思うが、念のためにツキに魔力感知をしてもらい、リアには扉の向こうに気配があるか確かめさせた。
確かめたところ特に何もなかったので、イザナは恐る恐る扉に手をかけてそっと押していく。
扉を開けてまず目に飛び込んできたのは社であった。扉からでは少し遠いがそれは白く美しかった。威厳に満ち、そして、なぜか月を思わせた。おそらくこの社を外で見たのならそんなことは考えなかっただろう。この辺りがほとんど白く見えるこの空間だからこそかもしれない。もしくは神聖な場所のように思ったからかもしれない。
その社まで一直線に白い道ができており、その道の両脇は何故か人が溺れそうなほど深い窪みになっている。その中心に道ができていて、窪みを2つに割っていた。イザナからはそこに何かがあるようには全く見えない。だから、イザナには床だけが変に感じる。
変と言えば、ここには火などの光が見当たらないのに明るいのだ。それはこの部屋全体を優しく包むように照らしているかのような輝きであった。それも社を月に思わせる原因かもしれない。
社の次に目を向けるのは窪みではない。その窪みよりも先に社と扉の一直線上にあるがために視界に入るものがある。白い道の丁度真ん中にこの場所にとてもじゃないが釣合いの取れていない豪華な宝箱がポツンと置かれている。それが視界に入るのは窪みよりも何かこことは違う雰囲気であり、この部屋の何かを色々とぶち壊しているからであろう。しかも、意外に横幅をとっており、道の妨げにもなっている。
イザナは宝箱がどこにあろうがその中に興味津々なので、何も社に続くただ一つの道の上に置かなくても良かったのではないだろうかと思う。これではする人もいないだろうが宝箱の横を通り過ぎて、そのまま社まで行けないではないか。
まあ、おそらくここが最奥だからこのまま何も手に入れずに地上に行ったら何しに来たんだという話にもなる。武者修行ように強者と戦うことを目的とした奴なら宝箱にも興味がないかもしれないが、こんな最奥まで来る奴のほとんどの理由は秘宝を手に入れるためだろう。
リアとツキも扉の中の神々しい光景に目を釘付けされている。そして、口を開けてなんとも言えない間抜け面をさらしている。一度鏡で今の自分たちの顔を見せたいものだ。しかし、ここには鏡がないので顔を見せることができないのが非常に残念だ。
そして、リアもツキも最終的にその空間をぶち壊している宝箱に目がいく。もしかしたら間抜け面は神々しい雰囲気にではなく、その宝箱に対してかもしれない。
『――あれは開けろということかしら』
『たぶんそうじゃない? あんな道のど真ん中に置いてあるんだしさ』
「―――とりあえず、あれを開けに行くか」
『そうね(だね)』
イザナは宝箱を開けに歩き出す。だが、その足取りは重い。なぜか開けたくないと感じさせているのだ。何か開けたら面倒くさそうな気がビシビシと肌を突き刺す。それは逆に宝箱が|そんなところ(道のど真ん中)にあるからかなのか。
そして、イザナは宝箱のところまで行き、宝箱に手をかけて開けようと―――
『ヤッホー! おひさ~! 二人とも元気~?』
したところで、宝箱から一人の女性が手を振りながら浮上してきた。その女性は長い金の髪を靡かせて、ひとたび見れば老若男女が振り返るであろう美貌。しかし、その口調が彼女のすべてを台無しにしていた。
しかし、イザナにはその人に見とれるより先に聞き逃せない部分があった。
「おい、2人ともコイツの知り合いか?」
『知らないわ』
『ボクも~!』
つまり、そうことである。これはまるでこの宝箱を誰が開けるのを知っていて、そいつに宛てて話しているように聞こえる。しかし、この女性が言っているのは2人であり、ここにはイザナも含めて3人いる。それでは数が合わないし、何より久しぶりという言葉とどことなく親しさを感じる声はその誰かがこの女性にとって懐かしい相手でもあると言うことだ。
『あ! 言っておくけど、これは唯の立体映像の記録だからこっちからは何にも答えることはできないよ~。もしかして、さっき私に向かって「誰だよお前」とか言っちゃった? わぁ、恥かし~! でもでも、そんなイタイ子でも質問されれば私はな~んでも君たちに答えてあげるよ! え? さっきこれは記録だと言ったじゃないかって? 大丈~夫! こう見えて私は天才だからそんなことポッポイのポッイとできるよ~! あ~! 疑ってるな~!? そんな子には宝箱の中身あげないんだから! 私、もう激おこぷんぷん丸だよ! ぷんぷん!』
イザナたちをよそに女性は口を開くと一気に喋りだした。それはもう蛇口を捻った水のように。最後の方はなんかおかしくなっている。そんな彼女にイザナたちが持つ感想は。
「――何コイツ?」
『さあ?』
ツキに至っては苦笑いをする始末である。何か本当に残念な人である。
『あ~!? 今何コイツとか思ったでしょ!? ――なら答えて進ぜよう! 私の名前はメルクリア=ブルランス。気軽にメルって呼んでね。スリーサイズは上から89、58、84! 今ウソとか思ったでしょ~!? こう見えて、私着やせするタイプなの!? 脱げば凄いんだから! ほれほれ、あっ、今本当に脱ぐと思ったでしょ!? 君もスケベなんだから~、きゃっ、エッチ!! でもでも、私見られていると思うと興奮してね、ハアハア。――あ、ちょっと濡れてきちゃった』
――プツン。
「あ、映像が消えた」
『え? まさかこれだけ? というか何だったのアレ?』
『何だったんだろうね、本当に―――。あ、また出てきたよ。何かすっきりした顔つきになってる……』
本当に何かすっきりとした顔になってまた姿を現した。
『ごめんね~。話の途中で切ったりしちゃって。待った~? あぁ、これ映像だったね。だったら、もうちょっと彼とイチャイチャしてれば良かった。――え? さっきまで何してたかって? そんなのナニに決まってるじゃない。もう、彼ったら激しくてね。この映像は後で編集するから時間的に短かったと思うけど、もう何時間も彼としちゃっててね。まあ、そのうちの2時間程度は私が気絶しちゃてたんだけど――――って、こんなこと話す必要もないね。まあ、あとでここのところだけカットすればいいか。そいう訳であとで編集よろしくね、イー君。………ごっほん、では。えーと、どこまで話したっけ? え? まだ、名前しか名乗ってない? え? ウソ!? まだそれしか話してなかったの!? どうして!? ………そうだった。私が欲情しちゃって襲ったんだっけ? でも、イー君もノリノリだったじゃない! 私だけのせいにするのはどうかと思うよ! ――――――――――――――――――――――――――』
とりあえず、痴話喧嘩が長いので中略します。
「っていうかさ、編集したんじゃなかったのか?」
『そんなことわたしに訊かないでよ』
『いつまで、続くんだろうねこれ………』
「でもなんか、この人の話だけで相手が何言ってるのかが何となく解るな」
『確かにね』
『いつまで続くんだろうねこの惚気』
この女性――メルクリア=ブルランスの独り言を眺めながらイザナたちはどこか遠い目をしながら会話している。ツキは同じようなことを繰り返すだけの人形と化している。
3人が考えていることはおそらく同じだろう。そして、イザナの面倒くさそうという予感は的中したのである。
『――――――――――――――――――だいたいいつもイー君はエルちゃんともクーちゃんともイチャイチャしてるじゃない!? 私だってイー君ともっとイチャイチャしたいんだよ!? エルちゃんのように子供も欲しいしさ!―――――っていうか、何でまだ撮ってんの!? え? さっきからこれ撮りっ放し!? まあ、あと編集を―――え? そんな機能はない? ―――そうだった!! 創ったときにそんな機能つけなかったんだ! どうしてもっと早く教えてくれなかったの!? ――――まあ、創ったのは私だけどさ。それでも、気付いたときに教えてくれてもよかったじゃない!! この魔道具、私まだ一つしか創れてないんだよ!! 今から新しいのを創っている時間もないんだからさ。―――って、いつまで撮ってるのよ! 早く止めてよ、それ撮れる時間が限られているんだからさ!』
―――プツン。
メルクリア=ブルランスの2度目の消失である。
「………ようやく終わったな」
『そうね』
『………………』
『ん? ツキどうしたの?』
『…………Zzzz』
「こいつ寝てるぞ。―――まあ、解らんでもないが」
『確かにね。―――ほら、終わったから起きなさい、ツキ』
『………ん、ん、うん、リア姉ちゃん? どうしたの?』
『おはようツキ。さっきの惚気ようやく終わったわよ』
『そうなん――ふぁあ』
ツキは今も眠たそうにしている。人間でいえば首をカクン、カクンと揺らしている状態だ。話は唯の惚気だったが、どこか嵐の様でイザナには寝ている余裕などなかった。嵐というか急すぎて付いていけなかっただけなのだが、それでもイザナとリアはツキのように寝られるほど神経は持ち合わせていなかった。
『―――さっきはごめんね~。ここからは真面目にやるから聞いてくれると嬉しいな!』
身体をクネクネしながら、謝ってくる。全く反省の色が見えないのは気のせいだろうか。イザナたちももうなんか慣れたのか、それとも諦めたのかもう何も言わない。
『もう一度言うけど、私の名前はメルクリア=ブルランス。こう見えて魔道具の開発や創作をやってるんだ。私、その分野だと天才って言われるほどでね。それでね、それでね。私が面白い魔道具を創ったりするとね。イー君が―――ひぃ! そんなに睨まないでよ! 解った。解ったから今度は真面目にちゃんと脱線しないでやるから。―――え~と、何言えばいいんだっけ? あっ! そうそう、これを聴いているってことはここまで来れたってことだよね? おめでとう! 解っていると思うけどこの宝箱の中に私が残した宝物が眠っています! ふふふ、何が入っているかは―――え! もう言っちゃっていいの!? それじゃつまらないじゃない!? ――っ! それは卑怯だよ! ――――――わ、解ったちゃんと言うから! ―――コホン、この中には服と〈人化の実〉――それと3種類の武具が入ってるから確認してね? 武具に関しては見てからのお楽しみだけど期待していいよ。全部、伝説級以上だから性能もかなり良いはずだよ。〈人化の実〉に関してはスー君に会ってるはずだから知ってるよね? あぁ、スー君っていうのはね、ここに来る途中の階層に住んでいるスカイドラゴンのことよ。私魔物使いだから彼と契約してるのよ。だから、〈人化の実〉のことは知っていると思うけど、私からも言っておくよ? 〈人化の実〉は文字通り魔物が食べると人間になることができる実よ。正確には人族になれる実だから亜人になることはないよ。その構造も完全に人間のそれと同じだから人間と交配してもちゃんと子供を作ることができるから、ガンバ! ちなみに〈人化の実〉を食べても自由に魔物と人族になれることはスー君を見てるから知っていると思うけど、それは生まれてきた子供も同じだからね。――――あっ、そうそう、スー君に会ったっていうことは白い本持ってるよね? その白い本は私が創った魔道具なんだ。ふふふ、世界にたった一つしかない貴重なものだから大切にした方が良いよ。売っても大したお金にならないと思うから売らない方が良いよ。というか、お願いだから売らないでね? それでね、その白い本の効果はね、『今』と『過去』の縁をつなぐ本なんだ。何言ってるのかよく解らないかもしれないけど、今はそれで良いよ。そもそも、それを持っていても機能しない可能性の方が高いしね。何だったらメモ帳として使ってもいいよ。その本に文字書いても大切なのはそこに書かれていることではなくて、誰かの強い想いだからね。その想いがその魔道具の開くためのきっかけなんだから。―――いつかあなたと私の縁が繋がればいいね?』
「…………」
『さて、最後にこの天才の私に何か聞きたいことはない? ――あっー、その顔。さては私が天才だってこと疑ってるな~。私が創った魔道具がたくさんあるんだからねっ。ほら、君もステータスプレートは持ってるでしょ? それ創ったの私なんだから―――あ、そういえば、宝箱の中にステータスプレートを入れておくの忘れてた。でも大丈夫。ちゃんと入れといてあげるから。あと、『偽装』のスキルもプレゼントであげるよ。これがないと後々困るからね~。長寿の種族ならともかく人族がレベル300まで達したって話は普通聞かないからね。私の仲間には人族なのにレベル500の奴は居たけど、人外って呼ばれてたし。私が知る限り、人間――あぁ、人間って人族、亜人族の総称のことね。人族はそのままだけど、亜人は獣人やエルフ、ドワーフに魚人に魔人などのことを指す言葉よ。その人間でも最高でレベルが1000ってとこだったかしら。まあ、君たちで言う所の昔のことだからね。彼長寿だから、彼が修行を毎日続けてたらきっとレベル3000は軽く越しているかも。軽く化け物ね。まあ、レベルが5000を超えることはないから大丈夫だよ。レベルの限界を5000にして創ったから。魔物の中にもレベルが5000の奴なんていないから今は大丈夫なんだけど、このステータスプレートは魔物には適用されてないから、ひょっとすると、レベル5000以上の魔物がどっかにいるかも。もともと、ステータスプレートって魔物が基に創られているようなものだからなんだけどね。――――う~ん、どこから話そうかな。そうだね………。昔々、この星に一つの隕石が落ちてきたんだ。その隕石はここから遠い遠い場所から来たもので、この星には持ってなかったあるモノを有していたんだ。―――それは魔力と言われているモノ。そして、その魔力は全ての生命に影響を及ぼしたの。人間にしても今までなかった魔法を使うことができるようになったんだ。さらに、スキルとのちに呼ばれる力もその頃から使えたそうだよ。そして、それは魔物たちも同じだったの。けど、魔物たちは人間が持っていなかった力も有していた。それがレベルやステータス。つまり、レベルが上がることで強くなることができる力を持っていた。―――ううん、人間にも一応持っていたんだけど、それを上げることができなかったの。何をしても上げることができなくてね。けど、偉大な発明家が魔物を倒したりするとレベルが上がる魔道具を創ったの。それを私が改良に改良を重ねて創り出したのがステータスプレートなんだよ。―――あ! 今私のこと大したことないとか思ったでしょ!? 私がいなかったらね、体力とか魔力とかを数値化できなかったんだよ!! それに【称号】の機能も私が創った物なんだから! あとあと、スキルなんかも誰にでも習得できるようにしたのも私なんだよ!! まあ、その分呪いのように身体がその数値に依存しちゃうんだけどね。ステータス10が50メートル走でだいたい10秒ぐらいかな。ステータス100がその10倍の速度ってところ。と言っても、さすがに数値がありえないほど高くても光の速度を超えることはないから、安心してね。―――つまり、私が言いたいことはこれからの戦いはステータスの数値やレベルなんかじゃないってこと。ここに来る前にボスと戦ったでしょ? レベル1でもかなり苦戦したはず。どうやって倒した? おそらくユニーク魔法かスキルを使ったんじゃない? まあ、あのヤラハクに魔法もスキルも通用しないから、自分に対して使ったはず。―――これからの戦いは如何にして魔法やスキルを使うかがポイントだよ。自分より低いレベルだと思って侮ると痛い目見ちゃうんだから。あと―――え? もう切れる? ま、まだ伝えてな――』
―――プツン。
メルクリア=ブルランスの3度目の消失。
『これで終りかしら?』
『そうじゃない? あの感じからすると』
『イザナ、とっとと宝箱開けてここから出ましょう』
「…………」
『イザナ?』
「――うん? あぁ、これ開ければいいんだろ?」
イザナは今度こそ宝箱に手をかけて、開ける。ぎぃと音を立てながらゆっくりと開いていく。ゆっくりなのは意外に重くて持ち上げるのに一苦労しているからだ。何もリアとツキを焦らしているからではない。
宝箱を完全に開けると、そこにはメロンほどの大きさの黄色い実が2つ入っている。それを取り出すと、その下に女物の服が2人分入っていた。なぜ2人分と判断したのかというと、明らかにカップの大きさが違うブラジャーが2つあったからだ。それに、よく見ると2枚ある服の大きさも大きいのとひと回り小さいのが揃っている。どう考えても一人分ではない。さらに、ステータスプレートがこれまた2枚ある。
「……………」
だが、武具だけが見つからない。その代りに黒というか灰色っぽいカバンがそこにある。黄色い実――おそらく〈人化の実〉だろうが――を床に置いて、そのカバンを持ち上げるとその下に紙が置いてあった。その紙には文字が書かれており、それを読んでみると。
―――ごめんね~。さっきの映像じゃ入り切れなかったから手紙に書くよ。宝箱開けたから解ると思うけど、武具が見当たらないでしょ? でもでも、大丈夫だよ! 約束はちゃんと守るから。見当たらない代わりに、バックがあったと思うんだけど、それは私からのプレゼントだよ! それは私が創った魔道具の一つで何でも色々入れることのできるバックなんだ。君にも解るように言えば、〈アイテムボックス〉ってところかな? その中に武具が入ってるから、確認してね。本当なら映像で伝えなきゃいけないことがあったんだけど、その前に映像が撮れなくなっちゃったから、ここに書くよ。最後にこれからの戦いについて話したでしょ? それとは少し違うんだけど、ステータスが余りに高すぎると歩くだけで周りにも被害が及んじゃうよね? でも安心して、それを解消できる大迷宮があるの。その名前は《アールス大迷宮》。どこにあるかは自分で確かめてね。それじゃあ、ば~い!
「…………」
イザナは何度もこの手紙を読む。何か言い知れない変な感じがするのだ。それ以前に映像を見ていた時から感じていた違和感。それが、何なのか解らなくてモヤモヤしている。
『イザナ?』
「―――どうした、リア?」
『それはこっちのセリフよ。さっきからどうしたのよ?』
「いや、なんでもない。別に大したことじゃないからな。―――それより、たぶんこれが〈人化の実〉だろ? 食べるか?」
『―――あっ! ボク食べてみたい!!』
『本当に大丈夫なの、その実?』
『でも、リア姉ちゃん?』
『何よ』
ツキはイザナに聞こえないようにリアの耳の傍に口を近づける。何やらイザナには聞かれたくないことらしくリアも小さい声でツキと話している。
「――――で? お前らこれ食べるの?」
『うん! ――ほら、リア姉ちゃんも』
『わ、解かったわよ。食べればいいんでしょ!』
「別に無理することはないが………」
そして、2人は〈人化の実〉を食べる。モグモグと口を動かし、飲み込んだ後、2人が光出した。身体が光り出すと光によって身体が陰で見えなくなり、シルエットが動物から人の形をとり始める。
光が治まるとそこには美少女が2人、裸で立っていた。
ようやく、リアとツキが人化した!




