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九つの極罪  作者: 阿志乃トモ
第一章 クシャトリア大迷宮編
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第十五話 空竜 Vs イザナ

もともとノリでスカイドラゴン書いたけど、無計画にポンポンと適当なことを書くんじゃなかった・・・。

少し遅れたのもそれが原因です。計画はちゃんと立てないとね

 イザナはあの老人に化けたスカイドラゴンと別れてから、老人に殺してくれと頼まれたスカイドラゴンを探そうと思っていた。


 そう思っていた。だが、探すまでもなくそいつは上空にいた。老人が言うには他のスカイドラゴンのほとんどが死んでしまったのだから、おそらく飛んでいるあのスカイドラゴンがそうなのだろうと勝手に予想した。


 イザナはそのスカイドラゴンを見て思う。


(あれってどうやって飛んでるだ?)


 飛んでいる姿を見れば、どういう原理で飛んでいるのか解るかもと思ったが、あのスカイドラゴンは身体を広げているだけだ。ちょっとモモンガのように見えて、面白かった。しかし、飛んでいる姿を見てもどうやって飛んでいるのか解らないだろう。理解するにはスカイドラゴンが飛ぶのを最初から見るか、ツキのように魔力感知があればわかったかもしれない。


 探す手間が省けたが、問題があるとすればスカイドラゴンとの距離が遠いってことだろう。それに今何やら魔法による攻撃をしている。つまり、誰かと戦っているということだ。この階層であのスカイドラゴンと戦える奴がいるとはイザナには思えなかった。


 スカイドラゴン レベル3007


 こんな高レベルな魔物と戦うだろうか? それにあの老人はスカイドラゴンの中で一番弱かったと言っていたのに何でこんなにレベルが高いんだとツッコミたくなる。だが、すぐに思い直す。


(そういえば、ほとんどのスカイドラゴンを殺したんだっけ)


 レベルが低い奴が高いレベルの奴を殺せばどうなるか。もちろん、レベルが上がるに決まっている。なら、こんなに強いのも納得だ。けど、病に侵されていなければ、あの老人が勝てただろう。強くなっていると言っても理性を失っていれば、動きも単調になる。それにきっとあの老人の方が実戦経験も豊富であろう。だからこそ、リアでも避けることができたのだ。しかし、あの老人が負けることがあるなら、それは自分の息子を殺す時の躊躇ためらいの表れだろう。誰だって憎んでもいない自分の家族を殺すのを躊躇ちゅうちょしない訳がない。


 イザナはある考えに思い至った。あのスカイドラゴンは一体誰と戦っているのかと。少し考えれば解ることだ。イザナはスピードを上げ、1秒でも早くそこに辿りつこうとする。


(リアのレベルじゃ、到底あのドラゴンに勝てない―――!!)


 現在リアのレベルは180である。あの重力階層で高レベルの魔物を一度に全滅させたことで一気に100以上レベルが上がったのだ。それでも、今戦っているスカイドラゴンには届かない。


 このまま戦えば、リアが殺される。これは純然たる事実である。


 だからこそ、1秒でも早く走る。このまま死なれては目覚めが悪い。何よりリリーシャに会わす顔がない。


 向こうの方の音が止んだ。どうやら、スカイドラゴンの魔法が尽きたようだ。イザナもあと少しでリアの許に辿り着く。走っている途中、スカイドラゴンの姿が目に飛び込んできた。スカイドラゴンは口元に巨大な風の弾を作っていた。風を集めて今なお大きくなっている。


 イザナは直観的にあれが地面に直撃すれば、ここら辺一体がただでは済まないことを理解した。それは直撃するであろうリアだけではなく、ここにいるイザナもただでは済まないと言うことだ。虹色の玉を今握りしめているが、それは魔法を消せるのであって、魔法よって生まれた衝撃波などの二次災害を防げるものではない。ステータスが1のイザナにとっては致命傷になりかけないほどの衝撃波を生むだろう。


 そして、そのスカイドラゴンの下を見ればリアの姿が見えた。なぜか逃げずにツキと向かい合っていた。もしかした、逃げるほどの力がないのかもしれない。スカイドラゴンから風の弾が放たれた時、リアの声が聞こえてきた。


『―――――、一緒に死のうか』


 イザナは心の中で溜め息をつく。それと同時に何かいつものリアと違う気がした。リアの心が良い方に傾いていたのかもしれない。それはきっとツキのおかげなのだろう。それなら、少しはツキの存在を認めても良いかも知れないな、と思った。


「いや、死ぬなよ」


 虹色の玉を棒の形にし、虹棒を風の弾に思いっ切り叩きつける。


 風の弾は音も立てずに跡形もなく消え去った。そして、スカイドラゴンはどこか憎らしげにイザナを睨むように見下ろす。


『イ、イザナ………?』

「そうだ。他に誰に見えんだよ」

『―――そ、そうよね』

「まあ、いい。とりあえず、ここからなるべく離れろ」


 それだけ言うとイザナはスカイドラゴンの方に意識を向けた。その瞬間、スキル<働かざるニート者>が発動する。それにより、イザナのステータスは今知られている最大の単位である無量大数を遥かに超えた値になった。これだったら、全部∞で良いんじゃね、と思わなくもないが、ステータス上ではイザナのステータスは1なのだから酷いものだ。


 イザナは虹棒を左手で持ち、右には召喚された王国から手配された剣を携える。イザナは不用意には動かない。なぜならイザナの今のステータスでは動いただけで先程のスカイドラゴンが放った風の弾の何倍もの威力の衝撃波を撒き散らすことになる。力加減に関しては今までずっと訓練してきたが、それはあくまでレベル1000未満の魔物とだけだ。レベルが1000を超えるような相手と今まで相対したことはない。


 なので、今この階層で一番の危険人物は空を飛んでいるスカイドラゴンではなく、イザナに他ならない。これではリアを助けに来たつもりが、下手をするとイザナがリアを殺してしまいかねない。だからこそ、リアにここを離れろと言う。


 リアも自分がここいると足手まといにしかならないと理解しているのか、ツキを連れ添ってフラフラと歩いている。だが、イザナは待っていてもスカイドラゴンまでそれを待っている訳がない。


 スカイドラゴンはイザナに向かって再び風の大弾をさっきの倍の大きさにして解き放つ。


 イザナは魔法による攻撃が来て安堵していた。当然だ。魔法なら対処に手間取らない。イザナにとって厄介だったのはスカイドラゴンが脇目も振らずに突っ込んできた場合だろう。今イザナにとって一番の懸念はリアなのだから。


 イザナにとってこれは虹棒を風の大弾に向けるだけの簡単なお仕事だ。イザナにとって楽なものでもスカイドラゴンにとってはかなりの大技であり、それに伴い魔力の方もかなり減ってきている。なにより、自分の必殺技とも言える魔法を軽々と何度も消されれば、頭にくるだろう。


 普段のスカイドラゴンなら冷静に状況を判断し、その対処を考えたかもしれないが、目の前にいるスカイドラゴンは冷静とは程遠い状態であり、それはまるで子供がおもちゃを取られないように喚き散らしているかのように何度も同じ魔法を放ってくる。


 イザナは何度も襲ってくる魔法を何度も消す。イザナにとってこの状況は好都合だった。なぜなら、リアが遠くにできるだけ行くだけの時間稼ぎになるからに他ならない。反対にスカイドラゴンの方はこの状況にイライラしてきたらしい。


「グォォオオオオオオオオ――――ッ!!!」


 スカイドラゴンは雄叫びを上げると、魔法による攻撃を止めてイザナに一直線に突っ込んでくる。


 それを見たイザナはリアの姿が見えなくなった方を一度見て、大丈夫そうだなと思い軽く飛び跳ねる。そして、そのまま突っ込んでくるスカイドラゴンに向かって、大きく剣を振りかぶって迎撃しようとする。


 イザナは軽く飛び跳ねたつもりだが、踏み込んだ時の衝撃で半径50メートルに及ぶ地割れができていた。もちろんリアも50メートル圏内にいた。そのせいで足を地面にとられてしまい、身動きができない状態になってしまった。だが、何が起きたのかイザナの方を見ると、イザナがスカイドラゴンに向かって剣を振り下すところだった。そして、その剣はスカイドラゴンの頭とぶつかり―――――、



 ――――パキン!



 折れて柄だけになってしまった。折れた方の刃はクルクルと空中を飛んでいる。


 イザナにとっても予想外なことであり、折れた剣を見ながら驚きのあまり目を見開いている。そして、スカイドラゴンとすれ違った瞬間、()()()()()()()()


「あ? ―――ごふッ」


 口から血が流れてくる。口の中に鉄の味が充満している。


(なんだ………これ?)


 胸に生えてきた「ソレ」が背中から抜けようといている。イザナは後ろを振り返ると「ソレ」はスカイドラゴンの尻尾だった。血が付いているからまず間違いない。遠くからリアの悲鳴にも似た声が響いてくる。そして、意識が消えそうなとき今度は違う女の声が頭に響いてくる。



『解放条件を確認。これより[暴食]を解放します。―――――――生命に係わる傷を確認。これにより<喰わず嫌い(ノウ・カイロス)>を自動発動します』



 すると、イザナの身体は劇的に変化した。ぽっかりと空いていた胸が一瞬で閉じたのだ。それはまるで自己再生したかのように―――。


 イザナの消えそうになっていた意識がはっきりと覚醒した。そして、自分の胸を何度も触る。


 イザナ自身何が起きたのか全く解らなかった。ただ[暴食]のスキルが発動したことだけは確かなことだ。あの声はいつもお馴染みのスキルが解放された時の声だ。空中にいるがそんなことお構いなしに、急いでステータスプレートを確認する。


 朝霧誘 男 16歳 レベル1

 種族:人間

 天職:魔従師

 体力:1/1

 魔力:1/1

 筋力:1

 耐久:1

 俊敏:1

 魔耐:1

【称号】

 異世界人 孤独な旅人 道化の見習い 狂科学者

【スキル】

 全言語理解 鑑定 詐偽

【ユニークスキル】

 『七つの大罪』

 [???](未解放)

 [強欲]<無知の智(ディクタソクラテス)

 [色欲]<約束されし生存者>

 [嫉妬]<剥奪されし強者>

 [怠惰]<働かざるニート者>

 [憤怒]<我を忘れし者(オーディン)

 [暴食]<喰わず嫌い(ノウ・カイロス)


喰わず嫌い(ノウ・カイロス)>……①触れた対象を10秒前の状態にすることができる。②5秒間だけ周囲の意識を消し飛ばすことができる。③①、②共にそれぞれインターバルは2時間である。

 詠唱①【(とき)を喰らえ】 ②【刻を奪え】

 発動条件、身体のどこかに致命傷となるような傷を負った場合。


 イザナはこれを見て最初に頭の中に浮かんだことは、紅の王に腕時計の針戻しである。何とは言わない。これにタロットの21番と神の思し召しによるという意味を持つモノとレクイエムがあれば完璧な………はず。


(ただ、インターバルがそれぞれ2時間か………)


 それは使いどころを間違えられないと言うことだ。さらに言えば、①はすでにさっき自分自身におそらく使ってしまったから、あと2時間は使えないということだろう。②の方も使ってみないとどういう風になるのか解らない。もしかしたら、敵の意識を消し飛ばしている間、その敵が動いているのか止まっているのかもわかっていない。いや、意識を消し飛ばすのだから、身体の方は動いている可能性の方が高い。しかし、本人的には消し飛ばす前と後が繋がっているのだから、たとえば会話をしているときだったら、消し飛ばす前と後の会話が繋がっている可能性もある。なにせ会話は意識的に行うものだからだ。


 こんなことをタラタラと書いたが、要するにイザナは新しいスキルを使いたくてうずうずしているのだ。誰だっておニューの物を使いたくなる。


 イザナは地面に着地すると、ステータスプレートをしまった後、再び折れた剣を見る。別に剣がなくともイザナ自身は困らない。パンチでも十分すぎるほどの力が今のイザナにはある。むしろ、あのスカイドラゴンには剣や魔法などより、打撃技の方が効く気がする。


 イザナは小さくつぶやくように[嫉妬]のスキルを発動させる。


「【天より堕ちろ】」


 貫かれた時にあの尻尾に触れていたのが、それが意外にも役に立った。別に[嫉妬]のスキルを使わなくてもこのスカイドラゴンは倒せそうだが、イザナはもしもの時の保険として発動させている。もし、自分が負けてもリアが少しでも勝てるように。


 スカイドラゴンの方は落ちたとき、顔から地面に突っ込んだようで首がイザナの作った地割れの中に埋まってしまい、尻尾をばたつかせている。しかし、すぐに無理矢理頭を引っこ抜いて、声にならない雄叫びを上げて起き上がる。


 そして、イザナの方を振り向くとそこには貫いたはずのイザナがピンピンしていた。それを見たスカイドラゴンは再び怒りに任せた雄叫びを上げる。そして、イザナに向かって一直線に突っ走ってくる。


 イザナはスカイドラゴンが突っ込んでくるのを確認すると、ファイティングポーズをとり、イザナは動く気がないのでスカイドラゴンがここまで来るまでの時間を計算する。そして、新しく手に入ったおもちゃで遊ぶかのようにスキルを詠唱する。


「【刻を奪え】」


 しかし、スカイドラゴンは変わらず突っ走ってくる。どうやら相手も動けるらしい。スカイドラゴンがイザナのところまで来るのに約3秒ほどかかるところで詠唱をした。おそらく今相手に意識はない。ただ突っ込んでくるだけの能無しに成り下がっている。なので、イザナは心臓に近いだろう場所に思いっ切りアッパーをした。それはもう竜座の戦士の如く本当の意味で昇龍させる。


 5秒たった頃、スカイドラゴンは空を舞っている。そして、雄叫びを上げることなく墜落する。それと同時に、イザナの身体が重くなったのを感じる。これは<働かざるニート者>の効果が切れたということだ。つまり、あのスカイドラゴンは死んだと言うことだろう。何だか少しあっけない気もするが、イザナはリアの方へ向かって歩き出す。


 あっけないというよりイザナの攻撃がすさまじ過ぎるのが原因なのだが、イザナは自覚していない。


 リアのところに行くと元気そうにしていた。


「…………。元気そうだな」

『ツキがね、回復魔法を使えるらしくって、ずっとワタシにかけてくれたのよ』

「そうか―――」


 ツキにそんな力があったとは驚きである。ツキはリアに褒めて褒めてと言わんばかりの良い顔をしている。リアもそれが解っているのか何度もツキのことを褒めている。


『それにしてもさっきのすごかったわね』

「さっき?」

『あんたがあのドラゴンを斃したときのことよ。あの傷が完全に治っていることもそうだけど、あの突進してきたドラゴンが気付いたら空飛んでいるのよ。一体なにしたのよ』


 どうやら②は紅の王ではなくて擬似タロットの21番と同じ効果があるらしい。こっちは止まっているんじゃなくて動いているんだけどな。それでも周囲から見たら何が起きたか解らなかったらしい。


「俺の新しいスキルだよ」

『あんたまた増えたの?』

「増えたんじゃない。元々あったのがようやく解放されただけだ」

『ふ~ん』


 ツキを交えて、イザナとリアはずっと会話をし続けた。意図的にある話題を触れないようにしながら、和気藹々と続けた。


無量大数は10の68乗だと言われています。今回イザナのステータスは10の904乗でした。なんだこの数値・・・!?

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