白ずきんちゃん
イメージは『絵本』です
書いてみてなかなか納得の作品になりました
冬の童話祭への投稿作品です
白ずきんちゃんが住んでいるのは、地図にも載らない小さな小さな山奥の村でした。
その村は一年中溶けることのない真っ白な雪に覆われていて、『雪在村』と呼ばれていました。
そんな村で生まれた白ずきんちゃんには、ある特別な力がありました。
白ずきんちゃんは、なんと雪を降らせることが出来たのです。
でも、白ずきんちゃんはこの力が嫌いでした。
この力のせいで友達が出来ないと思っていたのです。
白ずきんちゃんは毎日泣いていました。
雪を降らせる自分が大嫌いだったからです。
今日も白ずきんちゃんは、いつもと同じように泣きながら歩いていました。
真っ白な雪の上を、お気に入りの真っ白な長靴を履いて歩いていました。
白ずきんちゃんの小さな足跡は、静かに舞い降りる雪にすぐに消されていきます。
白ずきんちゃんは、後ろを振り返りません。
そこには何もないと知っていたので振り返りません。
白ずきんちゃんは、下ばかり見ています。
前を見ても良いことは何もないと思っていたので、下ばかり見ています。
そんな白ずきんちゃんに誰かが近付いてきました。
それは猫さんでした。
綺麗な青い目をした猫さんでした。
猫さんは言いました。
「白ずきんちゃん、雪を降らせるのをやめてくれないかい? ボクは寒いのがとても苦手なんだ」
白ずきんちゃんが前を向くと、猫さんは震えながら困った顔をしていました。
「猫さん、ごめんなさい」
白ずきんちゃんは猫さんに一言謝って、また泣きながら歩き出しました。
猫さんに出会った後も、白ずきんちゃんは泣きながら歩いていました。
真っ白な雪が降る中を、いつも着けている愛用の真っ白なずきんを被って歩いていました。
白ずきんちゃんのちっちゃな頭の上には、とても冷たくて真っ白な雪が積もっていました。
白ずきんちゃんは、頭に積もった雪を落とそうとしません。
落としても落としても、また直ぐに積もってしまうと知っていたので落とそうとしません。
白ずきんちゃんは、上を見ようとしません。
冷たい雪が降るだけで、他に何もないと気付いていたので上を見ようとしません。
そんな白ずきんちゃんに、また誰かが近付いてきました。
それはおばあさんでした。
とても優しい顔をしたおばあさんでした。
おばあさんは言いました。
「白ずきんちゃん、雪を降らせるのをやめてくれないかい? 寒いと体が痛くて辛いんだよ」
白ずきんちゃんが前を向くと、おばあさんは眉を寄せて痛そうな顔をしていました。
「おばあさん、ごめんなさい」
白ずきんちゃんはおばあさんに一言謝って、また泣きながら歩き出しました。
おばあさんに出会った後も、白ずきんちゃんは泣きながら歩いていました。
冷たい風の吹く中を、一番大好きな真っ白な手袋をはめて歩いていました。
白ずきんちゃんの手袋の中の小さな手は、冷え冷えとした風に吹かれて赤くなっていました。
白ずきんちゃんは、手を温めようとはしません。
意地悪な冷たい風がまた冷やしてしまうから意味がないと知っているので、温めようとはしません。
白ずきんちゃんは、風を防ごうとしません。
そんなことは出来ないと気付いているので防ごうとしません。
そんな白ずきんちゃんに、また誰かが近付いてきました。
それはキツネさんでした。
金色に輝く美しい毛皮のキツネさんでした。
キツネさんは言いました。
「白ずきんちゃん、雪を降らせるのをやめてくれないかい? うちには小さな子共がいて、その子が凍えてしまうんだよ」
白ずきんちゃんが前を向くと、キツネさんは申し訳なさそうにしながらも少し怒った顔をしていました。
「キツネさん、ごめんなさい」
白ずきんちゃんはキツネさんに一言謝ると、また泣きながら歩き出しました。
キツネさんに出会った後も、白ずきんちゃんは泣きながら歩いていました。
震える寒さの中を、とっても大切にしている真っ白なマフラーを巻いて歩いていました。
白ずきんちゃんのほっぺたは、凍える程の冷たさで赤くなっていました。
白ずきんちゃんはマフラーを巻き直したりしません。
この厳しい寒さは自分のせいだと思い込んでいるので、巻き直したりしません。
白ずきんちゃんは、決して涙を拭いません。
皆に迷惑をかけている自分にはそんな資格はないと決め付けているので拭いません。
そんな白ずきんちゃんに、また誰かが近付いてきました。
それはタヌキさんでした。
ふんわりと柔らかそうな尻尾のタヌキさんでした。
タヌキさんは言いました。
「白ずきんちゃん、雪を降らせるのをやめてくれないかい? 食べるものが見付けられなくて困っているんだ」
白ずきんちゃんが前を向くと、タヌキさんはひもじさでとても泣きそうな顔をしていました。
「タヌキさん、ごめんなさい」
白ずきんちゃんはタヌキさんに一言謝ると、また泣きながら歩き出しました。
タヌキさんと出会った後も、白ずきんちゃんは泣きながら歩いていました。
真っ白な世界を、大嫌いな雪と同じ色なのにどうしても嫌いになれない真っ白な洋服を着て歩いていました。
白ずきんちゃんは、泣き止みません。
人に迷惑をかける自分は人に嫌われていると信じ込んでいるので、泣き止みません。
白ずきんちゃんは笑いません。
人に迷惑をかけている自分にはそんな資格がないと思い詰めているので、笑いません。
そんな白ずきんちゃんに、また誰かが近付いてきました。
それは男の子でした。
とても明るくて元気そうな男の子でした。
男の子は言いました。
「白ずきんちゃん、雪を降らせてくれないかい? 僕の村は一度も雪が降ったことがないから、皆にも見せてあげたいんだ」
白ずきんちゃんが驚いて前を向くと、男の子は笑っていてとても楽しそうな顔をしていました。
白ずきんちゃんは泣きました。
嬉しくて、でも悲しくて泣きました。
男の子は目を丸くして、白ずきんちゃんに訊きました。
「白ずきんちゃん、どうして泣くんだい?」
白ずきんちゃんは答えます。
「初めてこの力を認めてもらったのが嬉しくて泣いてるの。でも、あなたのお願いを叶えてあげられないから悲しくて泣いてるの」
男の子は聞き返します。
「どうして叶えられないの?」
白ずきんちゃんも答えます。
「私が雪を降らせると、皆が迷惑するから。だからあなたの村には行けないの」
男の子はきょとんとしていました。
白ずきんちゃんは、そんな男の子に重ねて言います。
「私が雪を降らせると、皆、私のことを嫌いになるの」
その言葉を聞いて、男の子はにっこり笑いました。
「白ずきんちゃん、そんなことはないよ。後ろを見てごらん」
白ずきんちゃんは、男の子の言葉で初めて後ろを振り返りました。
そこには綺麗な青い目の猫さんがいました。
猫さんは言います。
「白ずきんちゃん。僕は寒いのは苦手だけど、家の中から綺麗な雪景色を眺めるのは大好きなんだ」
猫さんの後ろには、とても優しそうなおばあさんもいました。
おばあさんは言います。
「白ずきんちゃん。私は痛いのは辛いけど、窓の外を静かに降る雪たちを見るのはとても好きなんだよ」
おばあさんの後ろには、金色に輝く美しい毛皮のキツネさんもいました。
キツネさんは言います。
「白ずきんちゃん。あたしは子供が凍えるのは耐えられないけど、冷たい風が吹く中を駆け回って遊ぶのはお気に入りなんだよ」
キツネさんの後ろには、ふんわりと柔らかそうな尻尾をしたタヌキさんもいました。
タヌキさんは言います。
「白ずきんちゃん。ボクは食べるものが見付けられないのは困るけど、真っ白な世界で皆が楽しそうにしているのはとても嬉しいんだ」
白ずきんちゃんが再び前を向くと、男の子は嬉しそうに笑っていました。
「ね? 白ずきんちゃん。皆、君のことを大好きなんだよ」
その言葉を聞いて、白ずきんちゃんは泣き出してしまいました。
嬉しくて、とても嬉しくて泣き出してしまいました。
白ずきんちゃんは、初めて笑いました。
嬉しくて、とても嬉しくて笑いました。
そして言いました。
「猫さん、おばあさん、キツネさん、タヌキさん、ありがとう。私、雪を降らせに行ってきます」
皆は言いました。
「白ずきんちゃん、いってらっしゃい。気をつけてね。待ってるから」
そして皆は笑って、声を揃えて言いました。
「白ずきんちゃん、君は一人じゃないよ!」
白ずきんちゃんは皆に手を降りながら、大好きな真っ白な世界を笑いながら歩いていきました。
いやぁ、くどい。くどいなぁ
でも絵本って繰り返し技法使いますもんね
それが3000文字になるとこんなにしつこくなるもんなんですね
まぁとにかくこの作品のテーマはもちろん皆の最後のセリフ『君は一人じゃないよ!』です
前振りが大分長くなりましたがね(笑)
以上、しかうさぎでした!
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