魔性の勇者 17.5
まえがき
この物語は『魔剣の勇者/血色の魔女』の17回と18回の中間の話として創作されたものです。
なので、本編を読まれていない場合、全く理解できない内容となっているのでご注意ください。
本編のURL:
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17.5
「おかえりなさいませ、愛しの貴方」
血が流れるような赤色の髪と瞳。深紅の唇を艶めかしく動かし、妖艶な美しさをたたえた美女。女の身でありながら、今や世界を支配するアースガルツ帝国の皇帝として君臨する覇者。全ての人間を統治する君主。
「我が后よ」
魔王ナイトメアは嫣然たる美貌の皇帝であり、そして今では后であるクレスティアに笑いかける。出迎えた后に、口づけをする。そのまま頭の後ろに手を回し、顔を舌で舐めまわしながら、徐々に首筋へと移動していく。
「ああっ」
首筋に甘くかみつくと、女は色っぽい声を出す。
「ククク、憂いやつよ」
「フフ、魔王様こそ意地悪ですわ」
そう言いながらも、女は魔王の足に、自分の足をからめてくる。滑らかな肌が足に吸いつくようにひっつき、そのまま足技だけで魔王に快楽を与えてくる。沸き上がる衝動を抑えることができなくなり、魔王はその場に跪いて、美女の足を両手で撫でる。
「フフフ」
と、女が笑いを浮かべると、魔王は美女の足を舌で舐めまわす。見る見るうちに足が唾液で濡れていく。
足を舐めまわしながら跪く魔王の顔を、女は両手で包む。魔王の髭のある顔を撫でまわす。髭の一本一本がその肌に触れるたびに、魔王はクフフという笑みを漏らしてその感触を楽しむ。
「魔王様、帝王たるあなたが跪いていいのですか?」
「何、お前にだけは跪こうぞ。そなたの美貌を持ってすれば、我が心さえも虜にしてしまう」
「そうですか。でも魔王様、いけませんわ」
「何がだ?」
美貌の女の目が怪しく煌めく。
「今日、女を連れて帰ったでしょう」
「それがどうかしたのか?」
「いけませんわよ。女は嫉妬深い生物なの。私の目の届くところで女を囲うおつもりなら、魔王様がどうなっても知りませんわよ」
――ガブリ
女の前で跪いていた魔王の後ろ首に、女が歯で噛みついた。
「ヌウッ!」
野太い声で小さく悲鳴を上げる魔王。
「安心しろ。あれはただのコマにすぎぬ。お前も知っているだろう。魔剣を持つ男を、呼ぶための餌にすぎぬ」
「本当ですの?でも、もしあの子に遊びでも手を出したら、私の嫉妬が魔王様を燃やしてしまいますわ」
「クフフフ、嫉妬深いお前も見ものだな。どのように顔を歪めるか実に楽しみだ」
跪いた姿勢のまま、下から遥か頭上にある女の顔を見上げる魔王。だが、女は容赦がない。魔王の口髭をツッと引っ張った。
「私より、魔王様が苦痛の顔を浮かべることになりますわ」
「…心しておこう」
女の心は魔王の術中にある。しかし、心の全てを乗っ取っているのではなく、所々手を緩める事で、性格の一部を残したまま操っている。その方が、完全に操って無感情にしてしまうより、悲鳴や苦しむ姿を浮かべるので、面白いのだ。
だが、その状態でこれだ。
――この女は、なんと恐ろしく、美しい奴だ。ますます我の興味をかきたてる。
魔王はニヤリと笑い、女の足のつま先に口づけをする。魔王の頭が地面につきそうなほど、その姿勢は低い。
「お前を裏切りなどしない」
「ええ、魔王様のためにもその方が賢明ですわ」
女は、ニヤリと笑う。
「ところで、一つお聞きしてもよろしいかしら」
「なんだ?」
「魔剣を持つあの子を、あなたはどうなさるおつもり?」
「無論決まっておろう。そなたの前で殺し、その血でそなたを真っ赤に染めてやろう。さぞや、美しい姿になるぞ」
「まあ、その時を楽しみにしていますわ」
女は嫣然と笑った
嫣然と笑いながら、心の中で呟いた。
――最低のクズ
と。
だが、人の心に入りこむ魔王は、その感情を敏感に読み取っていた。
「お前はあの男にご執心なのかな?」
「まさか、今も昔も私はただ一人の方しか心にありませんわ」
「ユウナスか、だが奴は死んだぞ」
「…」
微かに女が唇をかみしめた。
「その顔、見物だぞ。愛した男を失い、未来永劫苦しみ続けるお前の顔を愛でてくれよう」
魔王は両手を伸ばして、クレスティアを抱擁してきた。獣のように舌を動かしながら、その胸を撫でまわす。
――ユウ…
女は涙を一筋流した。
あとがき
どうも作者のエディです。
『魔性の勇者』で、一度くらいはエロシーンを書いてみたいと言う、作者のかなりどうでもいい思いがありました。
そこで今回このような話を作ってしまいました。
一応、露骨な性描写は避けてますが、ここまでやってしまうともう年齢制限したほうが確実だろう…ということで、本編から切り離した形で公開させていただきました。
それに、本編に入れなくても内容的には問題ない程度の話ですし。