世界中から嫌われた少女と愛されていた少年の物語
私は世界中から嫌われ、恐れられ、家族も居なく、これまでの人生一人だった。
まぁそんな人生でも私は一人でやって来た。
寂しいなんて思わなかったな。
私はそれが当たり前だと思ってた。
そんな私は初めて不幸な人生を送って来たであろう人物に出会った。
そいつは顔は笑顔だがもの凄い不幸のオーラみたいなのが周りにある。
私はただ遠めに見ただけだ。
そいつが今後、私に関わってくるとは思っていなかっただろう。
その時の私は。
「何を笑ってるんだ?」
やや不機嫌そうに言うそいつ。
あの、不幸そうなオーラをまとっていた奴だ。
「別に」
私は今、そいつ―つまりラードイルと一緒に旅をしている。
私がラードイルと出会ったのは偶然が必然か。
そんな事は分からない。
ラードイルは神の仕業だというが、私はそんな幻想的な物を信じない。
「おい、ミエル。次の村に着いたぞ」
「ああ。まず宿を取ろう。ライル、絶対に顔を見せるな」
私はそう言う。ライルは短く返事をした後、フードを深く被る。
『ミエル』と『ライル』。
私は初め、それを偽名に使っているつもりだった。
なのに何故かライルが
「え?愛称じゃねぇーの?」
みたいに言ってきてから、これが当たり前の呼び方になってしまった様だ。
まぁ私達の正体がばれなければ何でもいいのだが。
宿を探す為、辺りをキョロキョロしているライルを引っ張り近くの宿に入る。
「2人だ。部屋は空いているか」
「はい。ですが、今の所一部屋しか・・・」
「別に構わない。頼む」
私が言うと今まで大人しくしていたライルが凄い勢いで文句を言ってきた。
「ちょっと待て!何で俺とお前が一緒の部屋なんだ!」
「・・・煩いぞ。耳元で喋らなくても分かる」
私が別の事で反論するとライルは何かを言いたそうにして少し考えて言った。
「お前、女だろ?」
「ああ」
「俺は?」
「男だな。それがどうした?」
私が言うとライルは少し私の顔をジッとみて溜息をついた。
私は何か、溜息をつくほどの事を言ったのだろうか?
「・・・お前には羞恥心というものが無いのか?」
「何を言ってるんだ?文句を言うなら野宿してもいいぞ?」
「・・・」
「その部屋を頼む。今すぐ入れるか?」
私はライルが黙ったのを見て受け付けであろう女に話しかける。
女は少しの間、呆然としていたものの直ぐに正気に戻り、部屋を案内した。
「おい、ミエル。何でベットが一つなんだ?」
「一人用の部屋なんじゃないか?ただそれだけだろう」
私はライルにそういうと、荷物を床に置き、ローブを脱いで顔を出す。
ライルも同じ行動をとった。
私達が着ているローブ。
頭から足の先まで隠してしまうほどの大きさだ。
ローブを着ている理由は、身分を隠すためだ。
私は魔王の証拠で目が銀色、髪が紺色をしている為直ぐにばれてしまう。
一方ライルの目は青、というより明るい青という例えの方があっているだろう。
そして髪は金に近い茶色だ。この2つは王族の証。
私達は旅をしている中でお互い以外の誰にも正体を知られてはいけない。
それは、自分達が生きていく中で重要な事だ。
「ライル、先にご飯食べるか?」
「そうだな。その方が人も少ないかもな」
そう言って脱いだローブを再び着る。
そして宿の一回にある食堂へと向かう。
が、予想以上に人が多い。
私達2人は何とか席を確保し、その席に座り、先ほど貰ったご飯を置いて食べ始める。
「ミエル、お前小食だな」
「・・・お前みたいな量を食べれるわけ無いだろう」
私は小食派だ。ライルは大食い派。そんなライルの量を私が食べれる筈が無い。
私が黙々とご飯を食べていると突然、横から声がかかって来た。
「おい、嬢ちゃんと坊ちゃんは魔法使いか?」
「・・・そんなところだ」
私は答える。多分、フードで顔は見えていないだろう。
というか、このおじさんは何でそんな事を聞くのか。次の瞬間、その疑問の答えが分かった。
「なら、この街に出る魔物を追っ払ってくれねぇーか?困ってんだよなぁあれのせいで」
私は少なくともちょっとは興味が出てきた。
私は魔王だ。
魔物の頂点だ。
悪さをする魔物には制裁を、それが私のルールだ。
何の罪も無い人間に、悪さをする事は私が許さない。
・・・私は世界中に嫌われているのにな
「で、その魔物とやらはどんな悪さをするんだ?」
「そこら中の畑を食い荒らすのは当たり前。その他にも人を襲ったりしてきやがる。これも何も魔王ってのがちゃんとしないからだろ。何やってんだ。ボスのくせに。だから嫌なんだよ、魔王ってのは」
そのボスが目の前にいるんだがな。
しかしこれ程、嫌われているとは。知っていても傷つくものだな。
「その魔物が来なくなればこの村は平和になるのだな?」
「ああ、そりゃもう」
「ライル、どうだ?お前さえ良ければ私は行くが。少なくともこの村は直ぐに出て行く事になるだろうがな」
目の前で無我夢中でご飯を食べてるライルに話しかける。
というかコイツ、話聞いてたか?
「んあ?」
「・・・何でもない。ご飯を食べていろ。おじさん魔物がどれくらいに現れるか分かるか?」
「ああ!現れるのは今から丁度、半刻くらいだ」
それからおじさんに話を聞いて私とライルは魔物を退治する事になった。
・・・ライルは半ば強制だ。
そして私達は荷物を持ち、宿を出て魔物が現れる場所で待つ。
丁度、半刻程たった時だ。森の中から何か分からない物が出てきた。
『ギャアアアアアアア!!!!』
「・・・鬼か」
鬼、それは醜い魔物だ。
自分の目の前に現れたものは皆餌。
そういう事しか考える頭が無い奴だ。
私は鬼に言いながら少しずつ魔力を開放していく。
「オーガよ。今すぐこの場から立ち去れ。そしてこの村には二度と近づくな」
『ギョエ?ギャアアアアアアアアア!!!!』
「・・・聞かぬ様だな」
どうやら今ので仲間を数匹呼んだらしい。厄介な。
私は群れが来た事を確認してからそいつを・・・殺す。
その光景に他の鬼達は驚きを隠せていない。
「もう一度言う。今すぐこの場から立ち去れ。そしてこの村には二度と近づくな」
それでも向かってくる鬼に私は魔力を半分解放する。
これで私が誰か分かるだろう。
「どうした?来るのか、帰るのか。どちらにせよ、二度と近づいたらお前達の命は無いぞ」
どうやら私が誰だか分かった様だ。
鬼達にざわめきが起こる。
だが、帰る気はなさそうだ。
「ライル」
「何だ」
「私と鬼の周りに結界を張って、亜空間にほってくれないか?」
「了解」
その声と共に私と鬼の周りに結界が張られ亜空間に入れられる。
そしてその数十秒後、もといた場所に私は立っていた。
「終わった。おじさんに報告してからこの村を出るぞ」
「ああ」
それから私達は魔物を倒してくれと言われたおじさんの元へ向かい、結果を報告する。
するとおじさんは喜びと同時に不安も出てきた様だ。
「それでだ。まだ、魔物がこの村を襲ってくるかもしれない。その予防にこれを村の東西南北それぞれの入り口に置いておけ」
私が取り出したのは自動的に結界を作り出す装置。
しかも私、魔王の紋章入りだ。
これで近づいては来ないだろう。
「何だこれは?」
「魔除けだ。少なくても今回の魔物以外にも効くだろう。必ず置くんだぞ」
「ああ!礼を言う嬢ちゃん!それにしてももう出て行くのか?」
「ああ。もうこの村には用は無いのでな。では行くぞ」
「ありがとう嬢ちゃん!」
私とライルはおじさんにそう言われながらこの村を去った。
「なぁミエル」
「何だ」
「俺疲れたんだけど」
「私もだ。だが我慢しろ。野宿したくないと言ったのはお前だろう」
「もー野宿でも何でもいいから早く寝よーぜ!!」
「後悔するなよ」
文句を言うライルに私はそう言い、私達は野宿する事になった。
次の日、ライルは
「もう、野宿なんて絶対しねぇー!!!」
っと叫んでいた。
これからも続く私とライルの旅。
私達はどの様な結末をむかえるのだろうか。