第六話
見張りの声がする前にシノは気づいた。立ち上がり、光って浮く。そして目には強い意志の光が。
部屋の中には母とエイタル。メガロは砦にいる者達へ事情を説明する為出ていっている。
「敵……ですか?」
「はい。どうやら元凶も来ているらしいです。これで終わりに出来るかもしれませんね」
微笑む。安心させてくれる力強い笑み。それでもエイタルは聞かずにはいられなかった。
「何か私に出来る事はないでしょうか?」
「そうですね……」
嬉しそうにシノは考え込む。
「この戦いが終わったら私を出迎えて下さい」
砦の皆が見つめる中シノは出陣する。砦の前の平原トカゲで埋まっていた。両の手を前へ。
風が唸る。
次々とトカゲ達は裂け消えていく。あっと言う間に平原からトカゲの姿は一体残さず消えてしまった。一人の男を残して。
長髪で黒衣をまとった男。
シノの顔に緊張が走る。
男は薄く笑うと両の腕を横にかかげ、手の平を下に向けた。トカゲが地面から湧いてくる。後から後から。それは止まらない。男を持ち上げながら盛り上がり、男を包み込みながら山のようになる。その固まりの輪郭がぼやけたかと思うと、次の瞬間一匹の巨大なトカゲとなっていた。
シノは両手を前に。風が飛ぶ。トカゲの皮膚の表面に傷が出来た。それだけだった。
トカゲは拳を握りしめシノに振り下ろす。シノはかわす。しかし、次々と繰り出される攻撃。シノはかわすばかりで防戦一方だった。このままではいつかやられてしまうだろう。
シノは空高く飛びあがった。トカゲは見上げる。手が届かない所に逃げられているというのにひどく余裕がありそうに見えた。
シノは見下ろす。その顔に浮かぶのは決意の表情。
シノは両手を上げ集中する。両の手の平から光が空へ伸びる。
空が割れた。轟音とともに何かが落ちてきた。
鉄の巨人。
白銀に輝くそれは目の前のトカゲと同じぐらいの大きさだった。
胸の辺りが開き、シノを迎え入れる。
巨大トカゲの顔が引き締まったかのように見えた。息を吸い込むと巨人に向かって炎を吐いた。巨人は、シノは左腕についている盾でふせぐ。防ぎながら腰から剣を抜いた。炎が途切れた。瞬間、シノはトカゲを頭のてっぺんから真っ二つにした。