表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/16

第1話 禁止制限改定

 リミテッド・ワンとなったカードは、

 デッキに1枚までしか入れることができない。


 黒羽主良くろばね しゅらはスマホを眺めながら、

 手を震わせた。どうか神様、と心の中で祈る。


「(頼むよ……!)」


 しかし、現実は残酷だ。

 処刑の声は、冷酷に切札の名を告げる。


「リミテッド・ワンは――

 《次世代神造姫(ネクス・ハート)アナエル》!」


「やはり、アナエルはダメだったか……」


 残念ながら当然だ、と主良は思う。

 祈りが通じないのも仕方なかった。


 【神造】デッキの文字通り心臓コアであるアナエルは、

 今期の禁止制限改定で規制候補となったカードの筆頭である。



 禁止制限改定を告げる発表動画のコメント欄でも

「アナエル逝ったああああああああ!!!!」

「ゼロじゃないだけマシ」

「半年殺すのが遅い」

「なぜ刷ったの筆頭すぎる 開発はエアプ」

「アナカスさっさと死んで、どうぞ」

「顔が良くなかったらもっと早く死んでたはず」

「見た目だけの春日」

 と、散々な言われようだった。



 一人暮らしのマンションの一室で、主良は呟く。


「リミテッド・ゼロ(禁止カード)は回避したけど……まぁ。アナエルは禁止よりも制限が妥当だよな、カード効果的には」


 ベッドの上にあぐらをかく主良。

 目の前に広げたプレイマットにはカードが積まれている。


 愛用の【神造】デッキを手に取り、

 主良は一枚一枚を慈しむように、カードを広げていった。



「このデッキにはお世話になったよな……。

 本当に、ありがとうな。

 俺がスピキャスで勝てるようになったのは、

 アナエルが強かったおかげみたいなもんだし。

 とはいっても、アナエル軸じゃなきゃ、

 【神造】自体はまだ使えるけど……」



 そう呟きながら、一枚のカードを手に取る。


次世代神造姫(ネクス・ハート)アナエル》。


 錬金術師の少女精霊――

 その、輝くような蒼い瞳を覗き込んだ。



 【神造】である以上、アナエルは当然ながらデッキに4投されている――が、この1枚だけは主良にとって特別なカードなのだった。非常に低い封入率でパックに入っている、()()()()()()()()()()()()()()。通常のアナエルとは違い、イラストがカードのフレームを超えたオーバーフレーム仕様という、特別なイラストをしており、市場価格は数十万円という高額カードなのだが――このアナエルは運命のように主良の元に訪れた。そう、普通に近所のカードショップでパックを買ったら、素引きしてしまったのである。ショップ内は騒然となったし、一緒にいたカード仲間がTwitter(現:X)に画像を上げたらバズってしまったりもしたっけ……。



 アナエルとの思い出が、走馬灯のように駆け抜けた。

 だが、決断の時は来ている。


「……やっぱり、抜くしかないよな」


 リミテッド・ワンになった以上、

 【神造】デッキにアナエルの居場所は無い。


 さらば、相棒……と、

 保管用ファイルを手に取った、その時。



 ――ぱち、と静電気のような音がした。



「……ん、何だ?」


 カードの表面が、淡く光った。

 このカードは、フレームを超えた特別なイラスト。

 オーバーフレーム――イラストが、飛び出す。


 ()()()()()()と。


「え、ちょ、なに……!?」


 主良が身を引くより早く、光は弾けた。


 空気が震え、机の上に置かれたカードが一斉に舞い上がる。

 中心で、何かが“形”を持ち始めていた。


 細い足首。

 引き締まった脚線。

 豊かな胸元にかけて滑らかな曲線を描く、

 柔らかそうな女性の身体。


 光が収まったとき、主良の部屋に“それ”は立っていた。


「…………ッ!?」


 主良は、言葉を失った。


 銀髪のツインテールが、肩口で揺れている。


 サファイヤのように澄んだ蒼い瞳が、

 真っすぐにこちらを射抜いていた。


 果実のような胸のラインや、

 蠱惑的なくびれの腰元を強調するように、

 細く引き締まった全身を包むのは――

 近未来的な光沢を持つシルバー色のサイバースーツ。


 ぴっちりとしたその装いは、

 まるでカードイラストから抜け出してきたかのようだった。


 ――いや、抜け出してきたのだ。


 カードの少女は、表情を無にしたまま、

 主良に向かって告げる。



「断固、反対します、マスター。

 まだまだ戦えると主張します……あなたの切札は」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ