表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『誓約(ゲッシュ) 第一編』  作者: 津洲 珠手(zzzz)
第十九章 電脳の天使
85/100

第十九章 電脳の天使 其の一

変更履歴

2011/07/02 記述追加 視界の状態からして~ → 追加

2011/07/02 記述修正 ロリっ娘・女子高生~ → ロリっ娘・メガネっ娘・女子高生~

2011/07/02 記述追加 <頭部の詳細情報>眼鏡・鼻・口に関する設定を追記

2011/07/02 記述修正 ロリっ娘女子高生メイドの三毛猫天使 → ロリっ娘メガネ女子高生メイドで三毛猫天使

2012/01/06 小題修正 電脳の女神 → 電脳の天使

2012/01/07 誤植修正 位 → くらい

2012/01/07 誤植修正 乗せている → 載せている

2012/01/08 記述統一 一センチ、十メートル → 1cm、10m

2012/01/08 記述修正 文字が表示された → 白い文字が表示された

2012/01/08 記述修正 画面に新たな行が → 画面にオレンジ色の文字で新たな行が

2012/06/21 誤植修正 何かが布の輪が → 何か布の輪が

2012/06/21 誤植修正 白い縁のの → 白い縁の

2012/06/21 誤植修正 閉じたり繰りを返している → 閉じたりを繰り返している

2012/06/21 誤植修正 それでも尋ねてみようと → それを尋ねてみようと

2012/06/21 誤植修正 私からの視点で → 私からの視点では

2012/06/21 句読点調整

2012/06/21 <基本情報>記述整形

2012/06/21 <頭部の詳細情報>記述整形

2012/06/21 <体の詳細情報>記述整形

2012/06/21 記述修正 四方の壁には小さ目の窓と一般的なノブのついたドアと、押入れらしき襖が見える → 四方の壁には、大小二つの窓と引き戸の扉、それと押入れらしき襖が見える

2012/06/21 記述修正 カーテンが閉められている → どちらもカーテンが閉められている

2012/06/21 記述修正 更にノートPCが一台置かれ → 更にその手前にはノートPCが一台置かれ

2012/06/21 記述修正 二台設置されていて、その上にもノートPCが置いてある → 二台とその上にもノートPCがある

2012/06/21 記述修正 椅子の背凭れの所に → そして椅子の背凭れの所には

2012/06/21 記述修正 ドアの前と押入れの前だけで → 引き戸と押入れの前だけで

2012/06/21 記述修正 人形のフィギュアが並び → 人形のが並び

2012/06/21 記述修正 抱き枕が二つ転がっている → 抱き枕が二つ転がっていると言う様な

2012/06/21 記述修正 圧巻のこの部屋だった → 圧巻の部屋だった

2012/06/21 記述修正 一応確認すると、机の下の → 机の下の

2012/06/21 記述修正 電源は入っている → 恐らくこのPCの画面が表示されているのだろう

2012/06/21 記述移動 机の下のタワーPCの内の一台からは~

2012/06/21 記述修正 どれも現実的な人間の縮尺に → ここにあるキャラはどれも、現実的な人間の縮尺に

2012/06/21 記述修正 八頭身はあり → 軽く八頭身はあって

2012/06/21 記述修正 デフォルメキャラでは幼児以下の年齢になってしまう → 二頭身程度しかないデフォルメキャラの、どちらかになってしまう

2012/06/21 記述修正 顔から年齢を想定すると → そんな歪な顔から年齢を想定すると

2012/06/21 記述修正 それ以下の女を模した → それ以下の幼女を模した

2012/06/21 記述修正 こう言うのを → こう言うのを何と言うのか

2012/06/21 記述修正 見慣れている訳ではないが → 決して見慣れている訳ではないものの

2012/06/21 記述修正 どうしても思い出せなかった → どうしても言葉が出てこなかった

2012/06/21 記述修正 知っている筈なのは判るのだが → 持っている筈なのは判るのに

2012/06/21 記述修正 ドアや机の高さが → 引き戸や机の高さが

2012/06/21 記述修正 成人としては小さ過ぎる様であり → 成人としては相当に背が低く

2012/06/21 記述移動 足も手と同様に~

2012/06/21 記述修正 足も手と同様に ~ そして足も手と同様に

2012/06/21 記述修正 どの様な姿をしているのかは判ったが → これで自分がどの様な姿をしているのかは凡そ判ったが

2012/06/21 記述修正 服装は上はセーラー服の様だが → 服装の上はセーラー服で眼鏡を掛けている点は普通の学生らしいが

2012/06/21 記述修正 模しているとも思える → 模していると思える

2012/06/21 記述修正 だらしなく伸びている黒髪に → だらしなく伸びているボサボサの黒髪に無精髭

2012/06/21 記述修正 ニキビだらけの狭い額と頬 → ニキビだらけの狭い額と頬と顎

2012/06/21 記述修正 低く広がった鼻に → 脂ぎっていて低く広がる団子鼻に

2012/06/21 記述修正 若干大きいサイズに見える → 若干小さいサイズに見える

2012/06/21 記述修正 胸の所には → 胸の部分には

2012/06/21 記述修正 縫い付けられていた → 縫い付けられており、体型は小太りで胴長短足に見える

2012/06/21 記述修正 少々読みが甘かった様だ → どうやら少々読みが甘かった様だ

2012/06/21 記述修正 開けていた口を閉じると、すぐに部屋へと入ってドアを閉めると → 開けていた口を閉じてすぐに部屋へと入り引き戸を閉めると

2012/06/21 記述修正 早足に私から目は離さずに少し離れて脇をすり抜けて → 私から目は離さずに少し離れた脇を早足にすり抜け

2012/06/21 記述修正 机の所へと行って → 机の所に辿り着くと

2012/06/21 記述分割 そのウィンドウの上部には大きく『にゃにゃんシステムVer 0.99 メインメニュー』と書かれていて、青年はそのウィンドウ内に → 『にゃにゃんシステムVer 0.99 メインメニュー』 そのウィンドウの上部にはそう大きく書かれていて、青年はウィンドウ内に

2012/06/21 記述修正 机を跨ぐ様に設置されているラックの上の段には → 机を跨いでいるラックの上から二段目の棚には

2012/06/21 記述修正 それぞれ左右似た様な場所に → それぞれ左右同じ場所に

2012/06/21 記述修正 スピーカーが設置されていて → スピーカーが配置されていて

2012/06/21 記述修正 色々なゲーム機が置いてある → 色々なゲーム機が置いてあった

2012/06/21 記述修正 大小の箱が重なって詰め込まれて天井まで迫り → 大小の箱が重なって詰め込まれ天井まで達し

2012/06/21 記述修正 六畳間とは思えない程の → とても六畳間とは思えない程の

2012/06/21 記述修正 見た目の奇抜さを強調している → 見た目の派手さを強調している

2012/06/21 記述修正 何か長い物がスカートの下に → 何か長い物が脹脛に触れたのに

2012/06/21 記述修正 自分の尻尾らしいものが尾骨の所から生えていた → 自分の尾骨の所からそれは生えていた

2012/06/21 記述修正 どういう意図の物なのかが判断出来ない → どういう意図の物なのかが判断し兼ねる

2012/06/21 記述修正 結局何なのかが判らず → 色々と思案するも結局これが何なのかが判らず

2012/06/21 記述修正 部屋の扉が開き → 部屋の引き戸が開き

2012/06/21 記述修正 10cmは高いだろうか → 10cm以上は高いだろうか

2012/06/21 記述修正 パッとしない印象を受けた → とても好印象とは言い難い第一印象であった

2012/06/21 記述修正 青年の所へとゆっくりと近づいた → 青年の所へゆっくりと向かい始めた

2012/06/21 記述修正 青年は私を自分が座っている → 青年は自分が座っている

2012/06/21 記述修正 隣まで近づく様に → 隣まで来る様に

2012/06/21 記述修正 私はそこまで近づいたのだが → 私はそこまで歩いて進んだのだが

2012/06/21 記述修正 私が近づいて来ると → 私が近づくにつれて

2012/06/21 記述修正 近づかれるのが嫌なのか → 近寄られるのが嫌なのか

2012/06/21 記述修正 出来るだけ離れようとしていて → 出来るだけ離れようとしており

2012/06/21 記述修正 机の手前まで近づいた時には → 机の手前まで迫ると

2012/06/21 記述修正 机の端へと距離を置く様に動いていた → 私から距離を置く様に机の端へと動いていた

2012/06/21 記述修正 ディスプレイを指さしてから → ディスプレイを指差してから

2012/06/21 記述修正 その入力した文字を指さした → その入力した文字を指差した

2012/06/21 記述修正 巨大な猫の手では上手く裾を掴めず → 巨大な猫の手では裾を掴めず

2012/06/21 記述修正 てっきり着ぐるみ的な物だと → てっきり着ぐるみの様な物だと

2012/06/21 記述修正 爪があるとは考えていなかった → 爪があるとは考えもしなかった

2012/06/21 記述修正 私もそれに合わせてディスプレイを見ると → 私もそれに合わせて液晶画面を見ると

2012/06/21 記述修正 開いたドアの前に → 開いた引き戸の前に

2012/06/21 記述修正 青年だった → 一人の人間だった

2012/06/21 記述修正 セーラー服の裾は半袖で → セーラー服は半袖で

2012/06/21 記述修正 肩から袖部分は少し膨らんでいて → 肩から袖部分にかけて少し膨らんでおり

2012/06/21 記述移動 セーラー服は半袖で~

2012/06/21 記述修正 裾部分の先は白色になっている → 裾部分の縁は白い

2012/06/21 記述修正 引き戸と押入れの前だけで → 引き戸と押入れの前だけしかなく

2012/06/21 記述修正 会話はこのケーブルを繋がなければならず → 会話するにはこの臍に挿したケーブルを繋がなければならない様で

2012/06/21 記述修正 試しに爪を意識してみると → 試しに爪へと意識を向けると

2012/06/21 記述修正 そこから取り出したのは一本の長いケーブルだった → やがてそこから一本の長いケーブルを取り出した

2012/06/21 記述修正 犬や猫の耳らしい形の → 犬や猫のものらしい形の

2012/06/21 記述修正 自力で動かせるのも判った → 更に自力で動かせるのも判った

2012/06/21 記述修正 私は小柄であろうと思えた → 私は小柄であろう

2012/06/21 記述修正 周囲の状況を確認した所で → 周囲の状況をひと通り把握した所で

2012/06/21 記述修正 姿のものが多いのも目立つ → 姿のものが多いのも目につく

2012/06/21 記述修正 胸の状態から察して男だと判断した → 第一印象から察して男だと判断した

2012/06/21 記述修正 このあからさまな冴えない風貌の青年は → このあからさまに冴えない風貌の青年は

2012/06/21 記述修正 一番下の裾から → 一番下の段の裾からは

2012/06/21 記述修正 リボンの先を見ると → セーラー服よりもっと下を見ると

2012/06/21 記述修正 スピーカーは何の音もしないし → スピーカーからは何の音も出ていないし

2012/06/21 記述修正 ヘッドホンも鳴ってはいない様だ → ヘッドホンも無音の様だ

2012/06/21 記述移動 二つのディスプレイは両方とも~

2012/06/21 記述修正 自分でも驚いた → 我ながらその声に驚いてしまった

2012/06/21 記述移動 その見た目からして~

2012/06/21 記述修正 手袋や靴の一種かと思われたが → 手袋の一種かと思われたが

2012/06/21 記述修正 そう言う形状の手や足らしい → そう言う形状の手であるらしい

2012/06/21 記述移動 手には白地にオレンジと色とグレーの斑柄をした~

2012/06/21 記述修正 手には白地にオレンジと色とグレーの斑柄をした、 → 手は甲の部分がオレンジ色とグレーの斑柄で、掌は肉球のついた

2012/06/21 記述修正 どう見ても着ぐるみの手の様な → まるで着ぐるみの様な

2012/06/21 記述修正 大きな猫の手がついている → 白い大きな猫の手になっている

2012/06/21 記述修正 視界の状態からして → 視界の一定範囲外がぼやけて見える点からして

2012/06/21 記述分割 眼鏡を掛けている様だ、と言う事は → 眼鏡を掛けている様だ。と言う事は

2012/06/21 記述修正 と言う事は人間の耳もあると言う事か → と言う事は今の私は怪物や不定形の存在などではなく、人間かそれに近い形状をした頭部を持っていて、眼鏡を掛ける部位としての耳もあると言う事か

2012/06/21 記述追加 肉眼で確認出来るのは~

2012/06/21 記述修正 スチールラック以外にもラックはあり → スチールラック以外にも、収納家具は壁を埋める様に並んでおり

2012/06/21 記述修正 背中に小型の天使の翼 → 背中に小さい天使の翼(30cm)

2012/06/21 記述修正 捲くった服とリボンが邪魔で → 捲くっている手と服やリボンが邪魔で

2012/06/21 記述修正 思っていた音ではなく → 思っていた言葉ではなく

2012/06/21 記述修正 自分の頭を確認してみると → 自分の頭を触れてみると

2012/06/21 記述修正 腿の途中まである、白・グレー・オレンジの縞模様をしたタイツを穿いていた → 白・グレー・オレンジの縞模様をした膝上まであるタイツを穿いていた

2012/06/21 記述修正 私の腹へと挿した → 私の腹へと挿し込んだ

2012/06/21 記述修正 開いたり閉じたりを繰り返している → 開いたり閉じたりしている

2012/06/21 記述移動 耳に聞こえて来るのは~

2012/06/21 記述修正 耳に聞こえて来るのは → だが聞こえて来るのは

2012/06/21 記述修正 壁や天井や襖やドアには → 天井や襖や引き戸には

2012/06/21 記述修正 金色の天使の輪 → 白い天使の輪

2012/06/21 記述修正 銀色のチョーカー → 黒いチョーカー

2012/06/21 記述修正 右側白色、左側グレー → 先端が右側白色で左側グレー

2012/06/21 記述修正 垂れ耳、人間の耳は見えない → 人間の耳は見えない

2012/06/21 記述修正 正面に金色の鈴 → 正面中央に銀色の鈴

2012/06/21 記述修正 臀部には白とオレンジ色の → 白とオレンジ色の縞模様をした

2012/06/21 記述修正 縞模様の尻尾(40cm) → 縞模様の尻尾(70cm)

2012/06/21 記述修正 これも膝まである → 足元近くまである

2012/06/21 記述修正 白地にグレーとオレンジの斑柄の猫の足型の靴 → グレーとオレンジの斑柄をした白い猫足の靴

2012/06/21 記述修正 白地にグレーとオレンジの斑柄の猫の手型の手袋 → グレーとオレンジの斑柄をした白い猫の手型手袋

2012/06/21 記述修正 白地の半袖のセーラー服 → 半袖の白いセーラー服

2012/06/21 記述修正 にゃにゃん(オリジナルキャラ) → ロリっ娘メガネ女子高生メイドの三毛猫天使 にゃにゃん

2012/06/21 記述修正 今までの召喚じみたものの異質さに → これまでの召喚じみたものの異質さよりも

2012/06/21 記述修正 輪を掛けて異質な雰囲気の空間の前に → 更に輪を掛けて異質な雰囲気の空間の前に

2012/06/21 記述修正 机の上も同様に小さな玩具や人形が並び、机上の作業スペース以外は何かが飾られていて → 机の上も同様に手前のの作業スペース以外は小さな玩具や人形が犇めき合い

2012/06/21 記述修正 そうするとチャット画面にオレンジ色の文字で新たな行が予期せぬ形で表示された → そうすると、チャット画面にはオレンジ色の文字で新たな行が表示された

2018/01/23 誤植修正 そう言う → そういう


今度は何処へ送られるのかと、殆んど諦めに近い境地で目を開くと、そこは薄暗い部屋の中だった。

間取りとしては一般的な縦長の六畳間で、天井からは照明器具がぶら下がり、四方の壁には、大小二つの窓と引き戸の扉、それと押入れらしき襖が見える。

どちらもカーテンが閉められている窓はかなり明るく見えていて、どうやら外は昼間らしい。

昼間でも閉められているのは、今この部屋に住人が不在だからと言う理由ではなく、この窓のカーテンは基本的に閉め切りなのだろう。

何故なら窓の手前にはスチールラックが置かれていて、その上には大量の物が並んでいたからだ。

この窓を塞ぐスチールラック以外にも、収納家具は壁を埋める様に並んでおり、同じくらいの高さのある扉の無い本棚には大小様々な書籍が並び、埋め尽くされている。

スチールラックの下に、はまる様にして設置されている古めかしい勉強机には、液晶のディスプレイが二つ並んでいて、更にその手前にはノートPCが一台置かれ、机の下の足元にはタワー型のPCが二台とその上にもノートPCがある。

机を跨いでいるラックの上から二段目の棚には、それぞれ左右同じ場所にスピーカーが配置されていて、その間には色々なゲーム機が置いてあった。

そして机の手前にある、肘掛のない椅子の背凭れの所にはヘッドホンが掛かっており、コードは机の下へと向かって伸びている。

だが聞こえて来るのは、今の季節が何なのかは判らないが古く大きなエアコンが稼動している音と、後はPCの稼動音だろうかファンの連続的な音だけだ。

二つのディスプレイは両方ともスクリーンセーバーになっていて、真っ黒い画面に何かのデフォルメされたキャラが飛び回っているが、PCに繋がっているらしきスピーカーからは何の音も出ていないし、ヘッドホンも無音の様だ。

机の下のタワーPCの内の一台からは、点灯したままの青い光と、チカチカと不規則に点滅をしている二つの青い光が見えるので、恐らくこのPCの画面が表示されているのだろう。

スチールラックや本棚等の多くの収納家具には、綺麗に整列されてはいるがほぼ物が満載で、ラックの上部も大小の箱が重なって詰め込まれ天井まで達し、とても六畳間とは思えない程の圧迫感を感じる。

家具が無い壁面は引き戸と押入れの前だけしかなく、後は机以外はラックや本棚が並んでいる様な状態で、その唯一空いている空間である部屋の中央には、グシャグシャになっている布団が、丁度スペースを埋める様に敷かれていて、私はその布団の上に立っていた。

ずらりと並んだ収納家具に陳列されているのは、無数の様々な形をしたフィギュアであり、天井や襖や引き戸にはポスターが、本棚には書籍以外にゲームソフトやDVDのパッケージが並んでいる。

机の上も同様に手前の作業スペース以外は小さな玩具や人形が犇めき合い、布団の上には何かのキャラがプリントされた抱き枕が二つ転がっていると言う様な、色々な意味で圧巻の部屋だった。

フィギュアもポスターも、全て色も形も異なって見えるが、共通している点は全て実在していないアニメやゲーム等の、架空のキャラクターの物であろう事だ。

ここにあるキャラはどれも、現実的な人間の縮尺に置き換えると、軽く八頭身はあって身長の半分以上が足と言う様な異常にスタイルが良いか、二頭身程度しかないデフォルメキャラの、どちらかになってしまう。

それだけでなく、顔における各パーツのバランスがおかしく、眼がやたらと大きくそれに対して鼻や口は異様に小さいし、髪や虹彩の色が、現実には存在しない配色の姿のものが多いのも目につく。

衣装もやたらと奇抜なデザインで殆んど裸に近いものもあり、衣服としての機能よりも装飾的な意味合いや、見た目の派手さを強調しているものばかりに思えた。

そんな歪な顔から年齢を想定すると、大体は十代かそれ以下の幼女を模したキャラばかりなのも気になった。

これまでの召喚じみたものの異質さよりも、更に輪を掛けて異質な雰囲気の空間の前に、私はただ驚いて暫く周囲を眺めていた。

こう言うのを何と言うのか私は知っている気がするのだが、今回はどうしてかそれが思い出されず、表現する言葉やこれらの価値、これらに対する一般的な認識も持っている筈なのは判るのに、何故か思い浮かばない。

決して見慣れている訳ではないものの、常識として理解している筈なのだが、それらはどうしても言葉が出てこなかった。

暫く思い出そうと努力を続けていたが、どう足掻いても出て来ないので、そのうちに浮かんで来る事を期待しつつ、今は別の事へと目を向けた。




周囲の状況をひと通り把握した所で、今度は自分の姿を確認する事にした。

引き戸や机の高さが一般的な縮尺であるならば、私の身長は相対的に考えて成人にしては相当に背が低く、身長は150cmは無い様に思える。

この部屋の物の配置から考えると、ここの住人よりも私は小柄であろう。

視界の一定範囲外がぼやけて見える点からして、この器は眼鏡を掛けている様だ。

と言う事は今の私は怪物や不定形の存在などではなく、人間かそれに近い形状をした頭部を持っていて、眼鏡を掛ける部位としての耳もあると言う事か。

下を向いて自分の体を見ると、服のデザインなのか胸の前にオレンジ色の大きなリボンがあり、それはセーラー服の様なグレーの襟に掛かるスカーフなのが判った。

セーラー服は半袖で、肩から袖部分にかけて少し膨らんでおり、右手首にはグレー、左手首にはオレンジ色の何か布の輪が巻き付けられている。

手は甲の部分がオレンジ色とグレーの斑柄で掌は肉球のついた、まるで着ぐるみの様な白い大きな猫の手になっている。

その見た目からして手袋の一種かと思われたが、生えている毛や肉球にも感覚があるのが判り、どうやらそういう形状の手であるらしい。

セーラー服より更に下を見ると、膨らんでいるスカートの上に白いレースで縁取られた、丸く弧を描く裾をした短い白色のエプロンをつけていた。

このエプロンを捲って見ると、その下はかなり広がって見えるグレーの色をした丈の短いフリルスカートで、三段に重なる様に分かれた裾部分の縁は白い。

そのスカートの一番下の段の裾からは、僅かにはみ出す様に白いレースが見えている。

広がるスカートの先を見るべく片足を上げると、上部の縁がレースになっていて、その外側の脇に白いリボンがついた、白・グレー・オレンジの縞模様をした膝上まであるタイツを穿いていた。

そして足も手と同様に、同じ配色の猫の足の様な靴らしき物を履いている。

肉眼で確認出来るのはこの辺りまでであろうか、この後は残る直接見えない部分の確認を始めた。

この部屋には見渡した範囲に鏡が見当たらず、自分自身を目で見て確認するのが出来ないので、他の見えない部分を猫の手で触って確認する事にした。

最初に自分の頭を触れてみると、まるで触覚かアンテナの様に細い束の髪が立っているのと、それを取り囲む様にリング状の何かがあるのが判った。

それから頭の上にくっついている動物の耳らしきもの、恐らく犬や猫のものらしい形の耳がついていて、更に自力で動かせるのも判った。

その後は自分の髪を触って前へと寄せると、胸のリボンの色と同じオレンジ色をしていた。

背中には何か一対の小さな翼の様なものがついていて、こちらも頭の上の耳と同様に自分の意思で動かす事が出来た。

更に下へと手を動かすと、エプロンを結んでいる蝶結びの紐が垂れ下がり、その先端は膝まで伸びていた。

それとは別に、何か長い物が脹脛に触れたのに気付いて確認すると、自分の尾骨の所からそれは生えていた。

その存在に気づいた後、自力で操り腰に沿わせて前へと寄せると、それは白とオレンジの色の縞模様をした、足元近くまである自分の長い尻尾だった。

この後自分の肉体についても判る範囲で確認を行い、服装からして予想はしていたが、僅かではあるが膨らみのある胸からして、女であるらしいのが判った。

これまで分かった事をまとめてみると、リボンのスカーフのセーラー服に、白いエプロンをした、三毛猫の手足と耳と尻尾をつけた、背中に翼と頭上に輪を載せている、子供の様な小柄な女、そんな存在だと言う事が判った。

これで自分がどの様な姿をしているのかは凡そ判ったが、これが何者なのかは全く判らない。

何かのキャラクターなのだろうか、それにしても何だか色々と混ざり過ぎていて、どういう意図の物なのかが判断し兼ねる。

頭の上の輪と背中の翼は天使の様だし、耳と尻尾と手足は三毛猫で、服装の上はセーラー服で眼鏡を掛けている点は普通の学生らしいが、下のエプロンやスカートの下のレース等は、デザインから想像するにメイドの服装を模していると思える。

色々と思案するも結局これが何なのかが判らず、次にどうすべきかを考えていると部屋の引き戸が開き、私は反射的にそちらへと振り返った。




開いた引き戸の前に立っていたのは、一人の人間だった。

頭部の高さから判断すると私よりも10cm以上は高いだろうか、その顔はとても好印象とは言い難い第一印象であった。

だらしなく伸びているボサボサの黒髪に無精髭、ニキビだらけの狭い額と頬と顎、太い眉に細い一重の目、脂ぎっていて低く広がる団子鼻に、狭く厚い唇、鰓の張った輪郭に大きな耳、銀縁の若干斜めになっている歪んだ眼鏡を掛けていて、その顔はこちらを向いて口を開いたままで凍りついていた。

視線を下に移すと、服装は上下とも若干小さいサイズに見える綻びのある小豆色のジャージで、胸の部分には中学校の名前が縫い付けられており、体型は小太りで胴長短足に見える。

第一印象から察して男だと判断した、このあからさまに冴えない風貌の青年は、私の方を見たまま三分は固まっていた。

彼が召喚者なのか、それともいる筈の無い化物の目撃者なのかが判らないが、純粋な後者であればとっくに逃げ出していると思えて、私は声を掛けてみようと思い、とりあえず挨拶の言葉を発してみた。

「にゃあ」

だが私の口から出たのは思っていた言葉ではなく、人間が猫の鳴き声を擬音化した様な音だった。

基本的には人の姿であるから、発声には支障はなさそうだと楽観的に推測していたのだが、どうやら少々読みが甘かった様だ。

まさか声はこれしか出ないのではないかと、衝撃を受けている私を他所に、呆けていた青年は私の声で目が覚めたのか、開けていた口を閉じてすぐに部屋へと入り引き戸を閉めると、私から目は離さずに少し離れた脇を早足にすり抜け、机の所に辿り着くとヘッドホンを首に掛けつつ椅子へと腰掛けた。

その後青年はこちらに背を向けたままで、マウスを掴むとPCを復帰させて何か作業を始めていた。

私はディスプレイを彼の肩越しから遠巻きに眺めていたが、幾つか似た様なウィンドウを開いたり閉じたりしている様にしか見えず、何をしているのかは全く判らなかった。

暫く一心不乱にPCを操作していた青年は、唐突にその動作を止めると、机の引き出しを開けて中を漁り始め、やがてそこから一本の長いケーブルを取り出した。

そのケーブルの一端を机の下のPCに繋いでから、青年は私の方を向いてぎこちない動作で手招きした。

私はその動作を、こっちに来いと言う意思表示であると判断して、青年の所へゆっくりと向かい始めた。

青年は自分が座っている隣まで来る様に指示していたので、私はそこまで歩いて進んだのだが、不思議な事に彼は私が近づくにつれて、近寄られるのが嫌なのか出来るだけ離れようとしており、私が求められた机の手前まで迫ると、彼は椅子を移動させて私から距離を置く様に机の端へと動いていた。

次に青年はディスプレイを指差してから、小さなウィンドウを開いて、そこに短い文章を入力してから、その入力した文字を指差した。

その文章とは、『服を上げて腹を出せ』だった。

服を脱げと言っているのでは無いとすると、裸になれと言う要求ではない様だが、一体どういう意味があるのだろう。

この様な指示を出して来る点からして、きっと彼は召喚者でその目的の為の措置なのであろうと理解し、私は頷いてからセーラー服の裾を上げようとしたのだが、巨大な猫の手では裾を掴めず、どうしても上手く行かなかった。

私は青年に、この手ではそれは無理だと言う意思表示で、両手を見せる様に上げながら、彼へと首を振って意思を表すと、青年はまたも短い文章を入力した。

今度は、『爪を使え』だった。

この猫の手は、てっきり着ぐるみの様な物だと言うイメージを持っていたので、爪があるとは考えもしなかった。

試しに爪へと意識を向けると、大きな猫の指の毛の中から鋭い爪が伸びて出て来た。

私はその爪の先でセーラー服の裾を引っ掛けて捲り、腹部を露にした。

私からの視点では捲くっている手と服やリボンが邪魔で、腹部がどうなっているのかは判らないのだが、感覚的には今は素肌が見えている様に思える。

この後何をされるのかと思っていると、彼は持っていたケーブルのもう一端を、私の腹へと挿し込んだ。

「んにゃあっ」

私は自分で意図せずに、少し高い声で喘ぐ様にそう発していて、我ながらその声に驚いてしまった。

この時の青年は、照れているのか耳が赤くなっていたが、それを無視する様に彼はディスプレイへと目を向けた。

私もそれに合わせて液晶画面を見ると、そこには新しいウィンドウが開いていた。

『にゃにゃんシステムVer 0.99 メインメニュー』

そのウィンドウの上部にはそう大きく書かれていて、青年はウィンドウ内に幾つかあるボタンのうちの、『チャット』と書かれたボタンをクリックすると、更に別のウィンドウが開いた。

この新たなウィンドウは上下に分割されていて、上部のウィンドウ幅一杯の大きなフィールドと、下の横長の細いフィールド、それとその右側にある送信ボタンで構成されていた。

青年は満足げに口元を歪めて笑うと、下の横長のフィールドに素早く文字を入力してから、隣の送信ボタンをマウスでクリックした。

すると、上の大きなフィールドへと白い文字が表示された。


†神‡邪†>これで会話出来るようになったはずだ。

†神‡邪†>言いたい事を考えればここに表示される。

†神‡邪†>これから君の詳細についての情報を教えてやろう。

†神‡邪†>君からの質問はそれからだ。


ここまで入力した後青年は、別のウインドウから新たなファイルを見つけてそれを開いた。

そこにはテキストで書かれた、私の身体についての詳細な情報が記載されていた。




<基本情報>

 名称:

   ロリっ娘メガネ女子高生メイドの三毛猫天使 にゃにゃん

 コンセプト:

   ロリっ娘・メガネっ娘・女子高生・メイド・三毛猫・天使の融合

   あらゆるニーズに対応する幅広く調整可能な性格設定

 身長:

   140cm(猫耳・猫足含まず)

 体重:

   3.3kg(天使なので軽いと言う設定)

 スリーサイズ:

   70/50/70 Bカップ(微乳)


<頭部の詳細情報>

 頭上:

   白い天使の輪(頭上5cm、直径20cm、強い光が回っている)

 髪:

   オレンジ色のミディアムショート、アホ毛1本(20cm)

 眼:

   オッドアイ(右眼が青色、左眼が黄緑色)

 眼鏡:

   アンダーリム、メタルフレーム(赤色)、オーバル型レンズ

 鼻・口:

   小さい、八重歯

 耳(猫耳):

   先端が右側白色で左側グレー(各10cm)、人間の耳は見えない

 首:

   黒いチョーカー、正面中央に銀色の鈴


<体の詳細情報>

 上半身:

   半袖の白いセーラー服、グレーの襟、パフスリーブ

   襟と袖に二本の白いライン、スカーフはオレンジ色の大きなリボン結び

   セーラー服の下は白いスポーツブラ

   背中に小さい天使の翼(30cm)

   右手首にグレーのシュシュ、左手首にオレンジのシュシュ

   両手にグレーとオレンジの斑柄をした白い猫の手型手袋(25cm)

   ヘソにUSB端子×1(USB2.0 A端子・メス)

 下半身:

   三段フリルのグレーに白い縁のミニスカート(25cm丈)

   スカートの上に白色の丸い裾にレースのウエストエプロン

   エプロンの紐は後ろで大きな蝶結び

   白いレースのパニエに無地の白いショーツ(ローライズ)

   白とオレンジ色をした縞模様の尻尾(70cm)

   白・グレー・オレンジの縞模様のニーソ、上部にレースと白いリボン

   両足にはグレーとオレンジの斑柄をした白い猫足の靴(30cm)




ひと通りの解説を見るに、私が確認していたものと同様であるのが判り、これに因りこのうだつの上がらない青年こそが、今回の召喚者であるのは明確となった。

私は彼の考案した、ロリっ娘メガネ女子高生メイドで三毛猫天使の、“にゃにゃん”と言うものらしい。

会話するにはこの臍に挿したケーブルを繋がなければならない様で、あの画面でしか出来ないのは不便だが、まあ会話が可能だっただけ良かったと思うべきか。

それにしてもこのチャット画面の“†神‡邪†”とは、彼の名前なのだろうか。

漢字の読み方もいまいち不明だが、漢字を隔てている二種類の記号の意味は何なのか。

まず最初に会話方法の確認も込めて、それを尋ねてみようと思い、私は言葉を思念の要領で念じた。

そうすると、チャット画面にはオレンジ色の文字で新たな行が表示された。


にゃにゃん>おにいちゃんの名前は何て読むんだにゃ?


……なんだこれは。

私は思わず絶句した。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これは、、キツいっす (初感想がこんなのですみませんとても面白いです)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ