第十四章 飛竜 其の六
変更履歴
2011/09/09 句読点修正 “、” → “。”
2011/12/16 誤植修正 神たる竜の意思 → 神たる竜の意志
2011/12/16 誤植修正 して見れば → してみれば
2012/03/16 誤植修正 話になるだからだ → 話になるからだ
2012/03/16 誤植修正 純潔の処女を → 純血の処女を
2012/03/16 誤植修正 死に損いの → 死に損ないの
2012/03/16 誤植修正 開始し始めたのです → 始めたのです
2012/03/16 句読点調整
2012/03/16 記述修正 得る事は無いのだろうなと → 得る事は無いのだろうと
2012/03/16 記述修正 ロバの紳士は → ロバの医師は
2012/03/16 記述修正 そう言い捨てながら → そう吐き捨てながら
2012/03/16 記述修正 浄化されて消失して行ったのが多かったのではないかと → 浄化されて消失したのが多少はあったとしても、それで全てが消えるとはとても思えないと
2012/03/16 記述修正 考えて見ても → 考えてみても
2012/03/16 記述修正 殺害したと言う仮設では → 殺害したとする仮設では
2012/03/16 記述修正 あの多量の半死霊の魂達から → あの浮遊していた魂の塊から
2012/03/16 記述修正 儀式は形骸化し始めたのと → 儀式は形骸化し始めて
2012/03/16 記述修正 親達の利己的な欲で → 信仰よりも親達の利己的な欲望を優先し、
2012/03/16 記述修正 自分の娘は、捧げたくないと考える様になりました → 自分達の娘を、何かと理由をつけて差し出さなくなっていきます
2012/03/16 記述修正 今回はその三つ全ての伝承を → 今回は時間もありますので、その三つの伝承全てを
2012/03/16 記述修正 この巫女の言葉を聞いた町の人間達は → この町の人間達は
2012/03/16 記述修正 帰還した巫女の姿を見てその言葉を聞いて → この奇跡を目の当たりにして
2012/03/16 記述修正 それに因る天罰と → それに因る神罰と
2012/03/16 記述修正 一部の者達の反乱だったとして、この一件は → この件は背教徒達の反乱だったとして、
2012/03/16 記述修正 実際には巫女は別に土地を捨てろなどとは → 実際には巫女は伝承でも土地を捨てろとは
2012/03/16 記述修正 逆に内紛に発展して → 逆に内乱に発展して
2012/03/16 記述修正 その年で攻め滅ぼされていたかも知れない → もっと早くに攻め滅ぼされていたかも知れませんな
2012/03/16 記述修正 遠い遠方の過去の出来事で → 遥か遠い過去の出来事で
2012/03/16 記述修正 深くフードを被った → 深く頭巾を被った
2012/03/16 記述修正 再現して頂きたい → 再現して頂けますかな
2012/03/16 記述修正 やられたなあ → してやられたなあ
2012/03/16 記述修正 『ありがとう』、ですよ → ごくろうさま』、ですよ!
2012/03/16 記述修正 最後もずっと → 巨竜との対峙の前と同様に、最後もずっと
2012/03/16 記述修正 端的な表現だなと → 極めて端的な表現だと思いつつ
2012/03/16 記述削除 私はそれまでの娘の言動を振り返って、
2012/03/16 記述修正 自らが信仰する → その様な言動を自らが信仰する
2012/03/16 記述修正 或る意味冒涜であろうと → とんでもない冒涜であろうと
2012/03/16 記述削除 貴様にとって信仰対象とは友人や隣人なのかと、ね
2012/03/16 記述修正 激昂するところですな → 激昂しておったでしょうよ
2012/03/16 記述修正 力尽きて息絶えていて → 力尽きて既に息絶えており
2012/03/16 記述修正 悪い癖は、治らんものですなあ → 悪い癖も、ちっとも治らんものですなあ
2012/03/16 記述修正 衰弱して死んだのかとか → 衰弱して死んだのかや
2012/03/16 記述修正 火山性ガスと毎年送られて来る人間の死体で、有毒な成分のガスが滞留していて → 有毒な成分の火山性ガスが充満しておって
2012/03/16 記述修正 地底湖の水にはそれが多量に溶け込んでいたのでしょう → 地底湖の水にもその成分が多量に溶け込んでいたに違いありません
2012/03/16 記述修正 良く判らないので置いておくとして → 良く判らないので、これは置いておくとして
2012/03/16 記述修正 私を召喚する為には → 飛竜を召喚する為には
2012/03/16 記述修正 問い掛けの為に、仲間達を殺すとも → 問い掛けの為だけに、大勢の仲間達を殺すとも
2012/03/16 記述修正 生贄用の娘を売る商売で → 生んだ娘を売る商売で
2012/03/16 記述削除 これで生贄用の娘を大量に作って何処かに囲っておき、
2012/03/16 記述修正 純血だけは守らせておけば → 後は貞操さえ守らせておけば
2012/03/16 記述修正 と言った様な信仰が単なる年中行事へと堕ちた事を表す、お粗末な対処方法でした → と言った様な、お粗末な対処方法が罷り通る程に、信仰は軽視されていた様ですな
2012/03/16 記述修正 竜の巫女であった娘は → 竜の巫女の小娘も
2012/03/16 記述修正 その容姿からして恐らく生贄を捧げる番に当たった町の、竜の氏族の男と南部の平民の女との間に生まれた、若しかすると捧げる為に孕まされた、氏族からすれば生贄以外に価値の無い、捧げる為だけに生かされて来た混血児だったのでしょうよ → その容姿からして恐らく生贄用の混血児だったのでしょうよ
2012/03/16 記述修正 私の顔を額帯鏡の中央の穴から覗く様に見ていた → 私の顔を中央の穴から覗く様に眺めていた
2012/03/16 記述修正 私は平静を演じて見せた → 私は平静を演じてみせた
2012/03/16 記述修正 半分が溶岩流と大火災に → 大半が溶岩流と大火災に
2012/03/16 記述修正 属国の国土は → 属州の国土は
2012/03/16 記述分割 飲み込まれてしまい、大国も属国の価値を → 飲み込まれてしまい、属州民も殆んどが命を落としました。この状況を知った大国は属州の価値を
2012/03/16 記述修正 全て焦土と廃墟が → 焦土と廃墟が全て
2012/03/16 記述修正 森に侵食されて行く、荒地へと → 森に侵食されて、未開の地へと
2012/03/16 記述修正 現状を飛竜が与えた → 彼等は今の流民の立場を、飛竜が与えた
2012/03/16 記述修正 賜る事が出来ると信じているそうです → 賜る事が出来るのだと、信じているのだそうです
2012/03/16 記述修正 辛抱強かった、と言うのは間違い無いでしょう → 辛抱強かったと言うのは、間違いありません
2012/03/16 記述修正 無意識に変わって行ったかしたのでしょう → 継承するうちに変わってしまったのでしょうなぁ
2012/03/16 記述修正 この巫覡の黒衣の下には → この巫覡の黒衣の下は
2012/03/16 記述修正 飛竜は信仰を蔑ろにして、穢れた生贄を差し出すお前達を許さない → 信仰を蔑ろにして穢れた生贄を差し出すお前達を、飛竜は許さない
2012/03/16 記述修正 黒い飛竜が大量に空を飛び → 黒い飛竜が大量に姿を現し
2012/03/16 記述修正 その流れの先頭に立って空を舞い → その流れの先頭に立って大空を舞い
2012/03/16 記述修正 鋭い咆哮と炎を吐いて → 鋭い咆哮と共に炎を吐いて
2012/03/16 記述修正 再現して頂けますかな → 再現して頂けますかな?
2012/03/16 記述修正 一塊で → ひと塊で
2012/03/16 記述修正 雪だるま卿 → 雪だるま卿よ
2012/03/16 記述修正 鐘や打楽器等の音色の異なる物を配置しておいて → 音程の異なる鐘や太鼓を用意しておいて
2012/03/16 記述修正 より火山の近くから聞こえた音色を真似て、大きく鳴らして行き、 → 火山の状態を音で
2012/03/16 記述修正 今までの、竜の氏族だけが信じている → 竜の氏族だけが信じている
2012/03/16 記述修正 白い竜の氏族ではなく → 白色の竜の氏族ではなく
2012/03/16 記述修正 結果であると思われます → ものであると思われますな
2012/03/16 記述修正 つまらない態度を見た → 期待外れな態度を見た
2012/03/16 記述修正 あまり効果が無かったからか → あまりに効果が無かったからか
2012/03/16 記述修正 額帯鏡を上に上げてから → 額帯鏡を元に戻してから
2012/03/16 記述修正 本来の竜の氏族の容姿は → 純血の竜の氏族の容姿とは
2012/03/16 記述修正 判りやすいと思いますが → お判りかと思いますが
2012/03/16 記述修正 出来たのかははっきりしないが → 出来たのかは謎のままだが
2012/03/16 記述修正 どちらも同じ感情を抱いていて → 同じ感情を抱いていて
2012/03/16 記述修正 同調したからではないか、そんな気がした → 同調したからではないかと思えた
2012/03/16 記述修正 精巧には出来てはおらず → 精巧には出来ておらず
2012/03/16 記述修正 鼻も耳も付いていないのだが → 鼻も耳も付いていないのは、一目瞭然なのだが
2012/03/16 記述分割 確かに正しかった、私は彼の言葉を → 確かに正しかった。私は彼の言葉を
2012/03/16 記述修正 更には国をも二分させたのか → 更には国をも滅ぼす結果を招いたのか
2012/03/16 記述修正 憂える様な声で鳴く → 憂える様な声で泣き叫ぶ
2012/03/16 記述修正 民衆を集めるとその後飛び去り → 民衆を集めると飛び去り
2012/03/16 記述修正 飛竜はもう生贄を求めない → 飛竜はもう生贄も供物も求めない
2012/03/16 記述修正 混血の娘二人を出すと → 私生児である混血の娘二人を出すと
2012/03/16 記述修正 この土地の土地神であり → この地方の土地神であり
2012/03/16 記述修正 町毎に年に一度の生贄と、毎月飛竜に対して食料の供物を捧げていました → 町毎に飛竜に対して供物を捧げていました
2012/03/16 記述修正 そう言い捨てて、“嘶くロバ”は → “嘶くロバ”は苦笑いで呆れた様にそう言い放つと
2012/03/16 記述修正 正しき者達で → 正しき者であり
2012/03/16 記述修正 愚か者達だと言っています → 愚か者であるとしています
2012/03/16 記述修正 一方、ここより南部の者等はと言うと、色素が濃くなって段々と栗毛に焦げ茶色の瞳と、有色の肌へと変わって行きます → 一方、平民は元々ここより南部の地からの移民であり、竜の氏族よりも色素が濃く、栗毛に焦げ茶色の瞳と有色の肌をしていました
2012/03/16 記述修正 恨みからだとすれば → 妬みからだとすれば
2012/03/16 記述修正 虚言癖、或いは、妄想癖が有りますぞ → 重度の妄想癖が有りますな
2012/03/16 記述修正 町々を襲った後に → 町や村を次々と襲った後に
2012/03/16 記述修正 竜の氏族の流民達は → 竜の氏族の流民は
2012/03/16 記述修正 塊の図体をした竜などとは → 塊の図体をした竜なんぞ
2012/03/16 記述修正 白色の球状でしかない → 白色の球体でしかない
2012/03/16 記述修正 是非吾輩に御相談を → 吾輩が診て差し上げましょう
2012/03/16 記述修正 滅んで無くなってしまっている → 滅んでいる
2012/03/16 記述修正 大きな噴火が起きてから → 大きな噴火が起きた後に棄てられて
2012/03/16 記述修正 新たに広がった → その後は新たに広がった
2012/03/16 記述修正 周辺の町の平民達の末裔です → 周辺の町に居た平民の末裔です
2012/03/16 記述修正 留まる事を選びましたが、その中には → 留まる事を選びました。その中には
2012/03/16 記述修正 傭兵を雇う竜の氏族までいました → 武器を揃えたり傭兵を雇う竜の氏族までいました
2012/03/16 記述結合 神託を告げます。その内容は、信仰を蔑ろにして → 信仰を蔑ろにして
2012/03/16 記述結合 降りかかるであろう、でした。神子はそう告げると、 → 降りかかるであろうと告げると
2012/03/16 記述修正 神託に因る異教徒殲滅を掲げて → 異教徒殲滅を掲げて
2012/03/16 記述修正 彼等竜の氏族達には → 彼等竜の氏族には
2012/03/16 記述修正 初潮を迎えた純血の処女を → 初潮を迎えた処女の娘を
2012/03/16 記述修正 両腕を上げる大袈裟な身振りをした後に → 大袈裟に肩を竦める身振りをした後、
2012/03/16 記述修正 それで不満の感情は捨て置いたらしく → それで気分を切り替えたらしく
2012/03/16 記述修正 貴殿も巫女も死んでいた娘も、皆幻覚を見ていた → 貴殿も巫女も皆幻覚を見ていた
2012/03/16 記述分割 これで決まりです、貴殿の糧が → これで決まりです。貴殿の糧が
2012/03/16 記述修正 見知らぬ存在の話になるからだ → 見知らぬであろう存在の話になるからだ
2012/03/16 記述修正 ひと通りの言葉も → ある程度の言葉も
2012/03/16 記述修正 これだけで会話も可能なのですが → これだけで簡単な会話も可能なのですが
2012/03/16 記述修正 使われない単語は → 伝達する文言は簡略化されると同時に、使われない単語は
2012/03/16 記述修正 煤で真っ黒だったからなのと、恐らくですがこの伝承を信じた竜の氏族は → 恐らくですがこの伝承を信じた竜の氏族には、真っ黒だったと言う巫女の容姿の情報しか伝わらず
2012/03/16 記述修正 見ていないのだと思われます、だからその容姿が正しく判らなかった → 見ていないので、容姿の詳細が判らなかったのだと思われます
2012/03/16 記述修正 属国民として市民権は与えられず → 属州民として市民権は与えられず
2012/03/16 記述修正 解説を再開させた → 解説を再開した
2012/03/16 記述修正 年毎の持ちまわりにでも → 年毎の持ち回りにでも
2012/03/16 記述修正 特に → 特に、目の前に現われて対話もしておきながら
2012/03/16 記述修正 全面的な否定で終わってしまい → 全面的な否定の一辺倒で
2012/03/16 記述修正 余計に苛立ちを → 不敬な態度をされると余計に苛立ちを
2012/03/16 記述修正 そんな儀礼的なものは → そんな表面的なものは
2012/03/16 記述修正 末路を嘆いたのだそうです → 末路を憐れんだのだそうです
2012/03/16 記述修正 漂流する事が → 流浪する事が
2012/03/16 記述修正 程なく占領されて → 他の周辺国と同様に
2012/03/16 記述修正 属国にされて → 属州にされて
2012/03/16 記述修正 純血の竜の巫女を捧げた町は、その年は毎月の供物を免除されていて、毎年の穀物や狩りの成果等に応じて、周辺の都市間で連携して捧げるべき生贄を取り決めて → 毎年の穀物や狩りの成果等に応じて、周辺の都市間で連携して捧げるべき生贄を取り決めており、純血の竜の巫女を捧げた町は、その年は毎月の供物を免除されて
2012/03/16 記述修正 他の者達は全て死に絶えたと言う話です → 他の者達は全てを失い死に絶えたと言う話です
2012/03/16 記述修正 その結果待っていたのは → その後に待っていたのは
2012/03/16 記述修正 彼等は見せしめも兼ねて処刑されて行ったのです → 見せしめも兼ねての竜の氏族全員の処刑でした
2012/03/16 記述修正 貴殿の喜びそうな → 奇しくも貴殿の喜びそうな
2012/03/16 記述修正 信仰を蔑ろにして穢れた生贄を差し出すお前達を、飛竜は許さない → 信仰を蔑ろにするお前達を飛竜は決して許さない
2012/03/16 記述修正 他の町でも同様の鱗を送られた、竜の氏族の者達を → 他の町でも同様に鱗を賜った竜の氏族の者達を
2012/03/16 記述修正 新天地を得る為の試練を受ける為に → 新天地を得る為の受難を受けるべく
2012/03/16 記述修正 殆んど無くなっているのだなと感じたが → 殆んど無くなっているのかと思ったら
2012/03/16 記述修正 目を覚ます事になって → 目を覚ます事になり
灼熱の溶岩に体を焼かれる苦痛は思いの他緩慢で、もう痛覚も殆んど無くなっているのかと思ったら、この後すぐに私は目を覚ます事になり、これは夢であったのが判った。
どうやら私は火口の最深部に届く前に、力尽きて既に息絶えており、その続きを夢で見ていたらしい。
「おやおや、雪だるま卿、随分と魘されておりましたがどうされましたかな、具合が優れないのであれば、吾輩が診て差し上げましょう」
そんな言葉が聞こえると共に目の前に現れたのは、白衣を纏い太い首からは聴診器を提げ、頭には額帯鏡をつけている、まさに医師の格好をした“嘶くロバ”だった。
聴診器はロバの長大な頭のサイズに合わせてあるかなり縦に長いもので、装飾品では無く実用に耐え得る様に計算して用意して来た様だ。
額帯鏡がある所からすると、耳鼻咽喉科なのだろうか、そこまで拘っているのかについては、どうも良く判らない。
彼の事だ、きっと正常に使用出来るディテールで作り出しているのだろうが、肝心の診察相手となる私の体は、そんなに精巧には出来ておらず、心音どころか臓器すら無いし、鼻も耳も付いていないのは、一目瞭然なのだが。
私は自分の白色の球体でしかない適当な肉体を思い出して、ふと疑問に感じた。
そんな私のどうでも良い余計な心配を他所に、ロバの紳士は患者に対する医師の心算か、朗らかな笑顔を馬面に貼り付かせたまま、今回の召喚について語る様に私へと促して来た。
彼の態度は恐らく、私が話し終える頃には変わり果てているに違いない、何しろ今回は最も彼が忌み嫌う、きっと彼が見知らぬであろう存在の話になるからだ。
特に、目の前に現われて対話もしておきながら、今回最も大きな謎のままに終わってしまった巨竜に関しては、全面的な否定の一辺倒で、何の情報も得る事は無いのだろうと、この点に関しては早々に見限ってもいた。
私は“嘶くロバ”が不満げに苛立つ姿を想像しつつ、その求めに応じて今回の話を語り始めた。
「判りましたぞ、問診の結果、貴殿には重度の妄想癖が有りますな」
案の定、ロバの医師はとても不機嫌そうにそう吐き捨てながら、その円らな瞳で私を睨みつけた。
「またしても貴殿は、しょうもないトリックに騙されて帰って来たのですな、全く以って嘆かわしい、馬鹿は死なねば治らんと言いますが、貴殿のその単純で目の前に映る物を鵜呑みにして信じる悪い癖も、ちっとも治らんものですなあ。
貴殿自身でも確認されておるでしょう、糧を消耗している気配が無い事も、そんなに巨大な物を物理的に動かすのに、どれだけの糧が必要かについても、かの炎の悪魔になった時に理解した筈では無いのですかな。
街を半壊させて、数千人の魂を喰らってもあの程度の大きさと力なのです、それが巨大な島程もある塊の図体をした竜なんぞ、そんな物は幻覚以外に有り得ませんぞ。
巫女の小娘がどうして衰弱して死んだのかや、何故貴殿が大量の糧をいつの間にか消耗していたのかについては、誰でも気づきそうな推測を敢えて申し上げれば、地下洞穴内は有毒な成分の火山性ガスが充満しておって、地底湖の水にもその成分が多量に溶け込んでいたに違いありません。
更にその有毒物質には、中毒になると幻覚症状を引き起こす成分が含まれており、貴殿も巫女も皆幻覚を見ていた、これで決まりです。
貴殿の糧が無くなった様に感じたのも気の所為で、元々大量の糧なんぞ無かったのですよ。
貴殿の召喚に関しては、もう御覧になっているでは無いですか、あの巫女は同じ竜の巫女を殺して貴殿に捧げたのでしょうよ、生き残りの巫女は混血の巫女なのだから、純血の巫女への妬みからだとすれば、動機も十分ですしねえ」
私としては、彼が何と説明しようとも、巨竜や大量の糧が幻覚症状での思い違いとはとても思えず、巨竜は確かに存在していたし、糧については、想像し得るところでは埋葬された事に因り、浄化されて消失したのが多少はあったとしても、それで全てが消えるとはとても思えないと考えていた。
召喚時の糧は何処から出たのかと考えてみても、ロバの紳士の言う殺害したとする仮設では、動機部分の純血混血云々と言うのは良く判らないので、これは置いておくとして、飛竜を召喚する為には相当な生贄が必要であろうから、あの娘一人で数百人を殺さなければならず、これは現実的では無いし、娘の様子からしてもあんな問い掛けの為だけに、大勢の仲間達を殺すとも考えにくい。
やはり糧はあの浮遊していた魂の塊から宛がわれたもので、どうして生き残りの巫女の為に充てる事が出来たのかは謎のままだが、これは多分、生き残りの娘も死んだ娘達も同じ感情を抱いていて、その願望が同調したからではないかと思えた。
そんな風に考えを纏めつつある私の心中など知る由も無く、彼は呆れ果てたと言わんばかりに、大袈裟に肩を竦める身振りをした後、大きく溜息を吐き出すと、それで気分を切り替えたらしく、態度を改めて姿勢を正し再び語り出した。
「さあて、もう幻覚に関する話はここらにしておいて、その他の吾輩も理解出来た点に対する、まともな事実についてお話し致しましょうか。
先ずは貴殿の器となった飛竜についてですが、該当する伝承は吾輩の知る年代から四百年程前の、大陸北部の山間の地方に伝わっていた、飛竜信仰の伝説に当たります。
飛竜はこの地方の土地神であり、貴殿が徘徊していた活火山の主でもありまして、怒りを買えば火山は大噴火を起こすとされ、この国の人間達は町毎に飛竜に対して供物を捧げていました。
この地方では王族や貴族等の支配者層の血筋を辿ると、神の化身であった飛竜に通ずるとされていて、それらの一族の名には竜の末裔である証のミドルネームが入っており、竜の氏族のみが神官であり支配階級たる権利を有するとされていました。
彼等竜の氏族には、特権だけが与えられた訳では無く、年に一度、氏族の血を継ぐ初潮を迎えた処女の娘を、生贄の竜の巫女として飛竜の元へと捧げる風習もあったのです。
これは純血であればあるほどその貴き犠牲には価値があり、神たる飛竜もより満足するとされていましたが、時代が進むに連れて信仰心は薄らぎ儀式は形骸化して、信仰よりも親達の利己的な欲望を優先し、純血のより美しい自分達の娘を、何かと理由をつけて差し出さなくなっていきます。
その結果、純血の娘一人を差し出す代わりに、私生児である混血の娘二人を出すと言った様な、質より量で済ます様になりました。
純血の竜の氏族の容姿とは、貴殿も埋葬されていた娘を御覧になったからお判りかと思いますが、この陽射しの弱い地域の人種の特徴でもある、輝く金髪に白い肌と碧眼なのです。
一方、平民は元々ここより南部の地からの移民であり、竜の氏族よりも色素が濃く、栗毛に焦げ茶色の瞳と有色の肌をしていました。
流石に全員がそんな劣った生贄ではまずいと考えて、純血の巫女を差し出すのを、年毎の持ち回りにでもしていたのだと思われますな。
毎年の穀物や狩りの成果等に応じて、周辺の都市間で連携して捧げるべき生贄を取り決めており、純血の竜の巫女を捧げた町は、その年は毎月の供物を免除されていた様です。
この地方で末期に流行っていたのは、貧困層の平民の娼婦が富民層である氏族の男と交わり、生んだ娘を売る商売で、後は貞操さえ守らせておけば、立派な混血の竜の巫女の出来上がりと言った様な、お粗末な対処方法が罷り通る程に、信仰は軽視されていた様ですな。
貴殿の召喚者であった竜の巫女の小娘も、その容姿からして恐らく生贄用の混血児だったのでしょうよ」
ここで一旦話を切った“嘶くロバ”は、侮辱の心算なのかわざとらしく額帯鏡を下ろして、私の顔を中央の穴から覗く様に眺めていた。
恐らく私が娘の事を気にしているのを見透かして、敢えて解説に耳障りな表現を用いる事で、私の苛立つ様を見てやろうと言う算段だろうが、そんなあからさまな手には引っかかる事も無く、私は平静を演じてみせた。
そんな私の期待外れな態度を見た彼は、若干の不満を感じている様子であったが、あまりに効果が無かったからか、比較的あっさりとふざけた態度を正し、額帯鏡を元に戻してから解説を再開した。
「ここまでが、飛竜信仰の歴史でして、次に貴殿の行いに因って広まった、最後の伝承をお話し致しましょう。
実は、最後の伝承は広まった地域が幾つかに分かれている所為で、内容もかなり変化してしまい、大きく三つの系統に分かれています。
今回は時間もありますので、その三つの伝承全てをお話しする事にします。
先ず最初は、最も史実に近い、『帰還の巫女』と『黒鱗の飛竜』の話からです。
ある日、竜の巫女を捧げた町へと、緑色では無く黒い鱗をした飛竜と共に、生贄として捧げた筈の竜の巫女の一人が戻って来ます。
そして黒い飛竜は、怒号を上げて民衆を集めると飛び去り、その後に竜の巫女は語り始め、飛竜はもう生贄も供物も求めない、それを伝える為に私は生きてここへと戻って来たと神託を告げてから、巫女は倒れて息を引き取ります。
この町の人間達は、この奇跡を目の当たりにして信じた結果、供物も生贄も止めるべきだとする者達と、直接それを見ておらずこれを信じていない為に、今まで通りに続けるべきだとする者達とで、二分しました。
しかし、結果的には止めるべきだと主張した側が少数であった事から、その奇跡を見た者達は、生贄や供物を出し惜しむ背信者の烙印を押されて、町から追放されます。
当然背信者として追放されたのですから、飛竜信仰は国教でもあったのでこの国に居場所は無く、追放者達は国外へと散って行き、その大半は新天地を求める流民へと身を窶したのです。
その後もこの国では、供物と生贄は今まで通りに供されて、それに因る神罰と言った事も全く起きず、この件は背教徒達の反乱だったとして、次第に忘れ去られて行きました。
そしてそんな出来事もすっかり忘れ去られた十年後に、この国に災いが訪れます。
近年新王朝へと変わった隣国が、周辺諸国に対して異教徒殲滅を掲げて、侵略戦争を始めたのです。
この隣国は国土も広大で資源も兵力も多く、軍事力では全く歯が立たずに、他の周辺国と同様に属州にされてしまいました。
その後に待っていたのは、異教徒の元凶は先祖を竜だと語る竜の氏族であるとして、見せしめも兼ねての竜の氏族全員の処刑でした。
比較的外見も大国の人間と似通っていた平民達は、処刑こそはされずに済んだものの、属州民として市民権は与えられず、奴隷同然の扱いを受け続けました。
そんな迫害が始まって十年後、供物も生贄も捧げられなくなった、飛竜の住むと云われた火山が大噴火を起こして、属州の国土は大半が溶岩流と大火災に飲み込まれてしまい、属州民も殆んどが命を落としました。
この状況を知った大国は属州の価値を無くしたこの土地を捨て去り、最後は焦土と廃墟が全て森に侵食されて、未開の地へと変わり果てました。
ここまでが一つ目の伝承でして、要は帰還した巫女の言葉を信じた事に因って追放された、この国の一部の人間達だけが生き残り、他の者達は全てを失い死に絶えたと言う話です。
これを広めている元飛竜信仰者の末裔達は、竜の氏族も平民も混在した、貴殿と巫女が飛来した町の者達の子孫で、自分達の先祖は帰還の巫女の言葉を信じたから救われた、流浪する事が神たる竜の意志だったのだと信じている様です。
しかしそれは結果論で、実際には巫女は伝承でも土地を捨てろとは言っていませんし、もし巫女や貴殿を信じた住人達が半数以上だったらこうはなっておらず、逆に内乱に発展して、もっと早くに攻め滅ぼされていたかも知れませんな。
ま、遥か遠い過去の出来事で仮定の話なんて無意味ですから、ここら辺で切り上げる事に致しまして、次の伝承へと参りましょう。
次は、『黒衣の巫覡』と『哭す黒竜』の話です。
ある日ある町へと、全身黒衣の巫覡が、憂える様な声で泣き叫ぶ黒い飛竜と共に現れます。
町へと現われた黒衣の巫覡は、深く頭巾を被った姿で顔も見えず、男とも女とも判らない声で審判の日の到来を告げた後に、翌日に選ばれた者の元には輝く竜鱗が与えられるだろう、それを得た者こそが新たな試練を受ける者だと語ります。
そして巫覡は、選ばれた者達に与えられる新たな試練とは、新天地を開拓する事だと告げてから、新たな新天地に辿り着いた時、我らはもう一度降臨すると言い残して、再び黒い飛竜に乗って飛び去ります。
翌日に選ばれた者達の枕元には、自分達の金髪と同様に光り輝く竜の鱗が落ちていました。
選ばれた者達とは、竜の氏族の中の一部の者達だったのです。
彼等は手にした途端に消え失せた竜の鱗を見て、神たる飛竜の連れて来た巫覡の言葉を信じ、各々自分が支配してきた町を出て行きます。
その道すがら、他の町でも同様に鱗を賜った竜の氏族の者達を招き入れながら、選ばれた者達の一団は、新天地を得る為の受難を受けるべく、この国を出て行きました。
そして放浪の民として新天地を求める旅の途中、後にして来た土地が火山の噴火に因って滅んだ事を聞き、選ばれなかった者達の末路を憐れんだのだそうです。
こうして選ばれた竜の氏族の流民は、今も新天地を求めて彷徨い続けている、これが第二の伝承です。
この伝承を信じる者達は、貴殿が訪れた町以外に居た元竜の氏族の末裔でありまして、彼等は今の流民の立場を、飛竜が与えた真の竜の氏族を選定する為の試練だと捉えており、信仰と誇りを失わずにこの試練を耐え抜けば、その先には再び飛竜の恩寵を賜る事が出来るのだと、信じているのだそうです。
しかし四百年経ってもまだ新天地が見つからないと言うのは、吾輩からすればもう神に見放されている様に感じてしまいますが、どうなんでしょうなあ、とにかく彼等は気が長く辛抱強かったと言うのは、間違いありません。
巫女の部分が性別も判らない巫覡へと変わったのは、恐らくですがこの伝承を信じた竜の氏族には、真っ黒だったと言う巫女の容姿の情報しか伝わらず、誰も近くで巫女や貴殿を見ていないので、容姿の詳細が判らなかったのだと思われます。
で、判らないところは自分達に都合良く改竄したか、継承するうちに変わってしまったのでしょうなぁ、きっと彼等の事だから、この巫覡の黒衣の下は自分達と同じ血統の、金髪碧眼に白い肌をした者だったに違いないとでも、信じているのでしょう。
最後は最も尾ひれがついて変わっている、『黒き竜の神子』と『哮る火竜』の話です。
ある時火山から、黒い装束を纏った黒い神子を首に乗せた大きな黒い飛竜が、連日空を飛び回っては咆哮を上げつつ炎を吐いて、国中の者達を恐れさせます。
暴れる飛竜は一週間程近隣の町や村を次々と襲った後に、ある町へと降り立ちました。
哮る飛竜の背から降りた、服も髪も肌も目も浅黒い色をした神子は、畏怖の念を持って黙って見つめる民衆へと、信仰を蔑ろにするお前達を飛竜は決して許さない、直ちにこの土地から出て行け、さもなくば災いが降りかかるであろうと告げると、突然煙と化して姿を消し、黒い飛竜もまた同様に一筋の煙へと姿を変えて消え失せます。
これを聞いた町の者達は話し合いますが、竜の氏族達はこれを一蹴して相手にせず、平民達も大半の町の者は出て行く事も無く、そのまま留まる事を選びました。
その中にはあれはまやかしの一種だと否定する者や、更には黒ずんだ怪しい飛竜を迎撃しようと、武器を揃えたり傭兵を雇う竜の氏族までいました。
こうして一部の平民達だけが、神子の神託に従ってこの土地を後にしたのです。
その後間も無くして、飛竜の住む火山は大噴火を起こし、周辺の町を溶岩流が飲み込み全てが失われました。
この時火山噴火と共に、前に姿を現した黒い飛竜が大量に姿を現し、まるで溶岩流や噴煙を誘導するかの様に、その流れの先頭に立って大空を舞い、鋭い咆哮と共に炎を吐いて町や森を焼いて回ったのだそうです。
これが最後の伝承でありまして、この伝承を信じる元飛竜信仰者の末裔の考えは、災厄を逃れた者達こそ神の意向に従った正しき者であり、従わずに滅んだ者達は信仰心を失った愚か者であるとしています。
彼等の言い分は、長きの間権力を占有して来た竜の氏族は、もう神への信仰心も腐り果てていて、そんな堕落した竜の氏族に代わって、新たに神に選ばれた一族が自分達なのだと信じています。
この言葉が全てを表しておりますが、この伝承を信じる者達は、勿論竜の氏族の生き残りは居らず、全て周辺の町に居た平民の末裔です。
竜の氏族だけが信じている前の伝承とは逆に、神の怒りを伝えた神子は全身黒い姿であるとするのは、これは巫女の薄汚れた姿を伝え聞いた際の拡大解釈で、白色の竜の氏族ではなく、有色の自分達平民の姿をしているとしたかった、願望から来たものであると思われますな。
この様にどの伝承も、元の土地は火山噴火で滅んでいる訳なのですが、この点は事実の様でして、飛竜信仰の土地には火山があり、その周辺は一度大きな噴火が起きた後に棄てられて、その後は新たに広がった若い森林地帯になっています。
貴殿が連れて来たあの瀕死の巫女は、果たして聴衆へ何と語ったのか、最初の伝承の通りだったのか、それとも実は全く別の事を語り町を二分させ、更には国をも滅ぼす結果を招いたのか、これはもう判りませんなあ。
最後に、奇しくも貴殿の喜びそうな情報をお知らせしておきますよ。
瀕死の巫女を町の櫓へと下ろした時、巫女の娘が貴殿の足を数回叩いたと言いましたな、それを正確に再現して頂けますかな?」
ロバの紳士にそう言われて、私は娘の叩いた拍子を思い出して、彼へと伝えた。
そう長い節ではないそれを聞いた“嘶くロバ”は、先程のこれ見よがしな自信は何処へ行ったのか、頭を抱えて悩み始めていた。
「うむむむ、はて、おかしい、吾輩の勘が外れたのか、それとも死に損ないの小娘が打ち間違えたのか、うむむむ……」
暫く頭を抱えて悩んでいた馬面の紳士だったが、やがて唐突に飛び上がって、満面の笑みを浮かべた後に再び語り出した。
「ああ、そうか、やっと思い出した、こんな単語なぞ古語に等しいから忘れておったわ、いやはや、してやられたなあ。
失礼、雪だるま卿、随分とお待たせしてしまった、いやあ巫女の単語がもう使われていないものでして、と言う前に説明致すとですねえ、あれはこの地方の種族に伝わる一種の信号なのですよ。
元々は、火山の様子をいち早く町にまで伝える為の、信号として発達した言語でして、叩いた音の間隔を変えたひと塊で単語を形成して、意思を伝えるのです。
火山の近くから町まで、一定の間隔で配置された小屋に、音程の異なる鐘や太鼓を用意しておいて、火山の状態を音で町まで連携して伝えると言う訳でしてね。
この信号には、ある程度の言葉も網羅されていて、これだけで簡単な会話も可能なのですが、必要な単語の集まりを最短で伝達するのが最も重要であるから、伝達する文言は簡略化されると同時に、使われない単語は廃れておりまして、巫女の使ったのはその廃れた単語の一つだったものだから、思い出すのに苦労致した訳ですよ。
恐らくこれを聞いても貴殿は怒りも苛立ちもしないのでしょうなあ、寧ろ喜んでしまったりするのでしょう、全く以って愚かしいまでにお人好しですなあ、雪だるま卿よ、伝える前から顔に感情が滲み出る姿が想像出来ますぞ。
全く、もし吾輩が言われたのなら、その様な言動を自らが信仰する神へと用いるとは、とんでもない冒涜であろうと、激昂しておったでしょうよ。
その娘の表した単語、それはですねえ、『ごくろうさま』、ですよ!」
“嘶くロバ”は苦笑いで呆れた様にそう言い放つと、馬鹿丁寧な仕草で挨拶をして消え去った。
馬面の紳士の言葉は確かに正しかった。
私は彼の言葉を聞いて怒るどころか、寧ろ笑い出しそうであったのだから。
娘の最期に抱いていた感情を知る事が出来たのは、私にとっては何よりであった。
彼は神経質なまでに対面を気にするし、それに向こう側の人間を卑下しているから、不敬な態度をされると余計に苛立ちを感じるのだろうが、私からしてみれば、伝えるべき内容が正しければ、言葉自体の貴賎や言い回しなどと言った、そんな表面的なものはどうでも良い事だ。
でもきっとあの巫女は、巨竜との対峙の前と同様に、最後もずっと私に返すべき単語を考えていて、結局それしか思いつかず、何も伝えないで別れるよりはと思い、それを伝えてきたのだろう、私はそう捉えていた。
それにしても、めちゃくちゃな言葉遣いだったあの娘らしい、極めて端的な表現だと、思わず一人で苦笑したのだった。
第十四章はこれにて終了、
次回から第十五章となります。