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『誓約(ゲッシュ) 第一編』  作者: 津洲 珠手(zzzz)
第十四章 飛竜
65/100

第十四章 飛竜 其の五

変更履歴

2011/12/15 誤植修正 位 → くらい

2011/12/15 誤植修正 例え → たとえ

2011/12/15 誤植修正 飛竜の意思として → 飛竜の意志として

2011/12/15 誤植修正 して見ると → してみると

2012/03/15 誤植修正 この器がの → この器の

2012/03/15 誤植修正 描き消えていた → 消え失せていた

2012/03/15 誤植修正 それを知る得る力は → それを知り得る力は

2012/03/15 誤植修正 まだ息があっとして → まだ息があったとして

2012/03/15 誤植修正 判断つかなかったが → 判断がつかなかったが

2012/03/15 句読点調整

2012/03/15 記述移動 この広い縦穴の下には~

2012/03/15 記述修正 存在と思われた巨竜からは → 存在と思われた巨竜から

2012/03/15 記述修正 この予期せぬ状況には → この予期せぬ展開には

2012/03/15 記述修正 正体を語った様だったが → 正体について語っていたが

2012/03/15 記述修正 私や“嘶くロバ”と → この世界に属する存在ではないと言う意味で、私や“嘶くロバ”と

2012/03/15 記述修正 どうも完全に同じ → しかし完全に同じ

2012/03/15 記述修正 私も娘も残された時間が多くない → 私や娘の時間が残り少ない

2012/03/15 記述修正 残り少ないと言う言葉で、再び糧の状況を確認すると、いつの間にかかなり消耗している事に気づいた → 残り少ないと言う言葉の意味についてだ

2012/03/15 記述修正 半死霊の魂の気配が → 魂の気配が

2012/03/15 記述分割 薄らいでいるのを感じて、私が動揺して → 薄らいでいるのに気づいた。これは私が動揺して

2012/03/15 記述修正 取り込み続けていたのかと推測した → 取り込んでいたとでも言うのか

2012/03/15 記述修正 延々と繰り返しては → 延々と繰り返して

2012/03/15 記述修正 取り込み続けていたのかも知れないと推測する → 取り込み続けていたのかと推測した

2012/03/15 記述修正 足だけは庇いながら → 足元の娘だけは庇いながら

2012/03/15 記述修正 肺と気管の酸で → 全身に受けた打撲の痛みと、肺や気管が酸で

2012/03/15 記述結合 私は娘の様子を見つめていた。この間、私は → 私は伏した娘の様子を窺いつつ、この間に私は

2012/03/15 記述修正 竜の巫女としての使命を → 竜の巫女の使命として

2012/03/15 記述修正 午後を既に回っていた様で → もう夕方に近づいているらしく

2012/03/15 記述修正 青空は徐々に茜色へと変わりつつあった → 青空は僅かに茜色へと変わりつつあった

2012/03/15 記述分割 他に行く宛ても無いしそれだけの力も残っていない、 → しかし他に行く宛ても無い。

2012/03/15 記述修正 しかし果たして町へと → だが果たして町へと

2012/03/15 記述修正 あの高度まで → 再びあの高度まで

2012/03/15 記述修正 力が残っているだろうか → 力が残っているのか

2012/03/15 記述修正 神が死に行く様を → 神が死に果てる様を

2012/03/15 記述修正 巫女が言った祭壇へか、祭壇の前か、そこまで → 巫女が言った祭壇に

2012/03/15 記述修正 見届ける事は出来そうもないが → 見届ける事は出来そうもない

2012/03/15 記述修正 もう少しでも気を抜くと → 少しでも気を抜くと

2012/03/15 記述修正 軋む様に痛み出し → 動く度に軋んで痛み

2012/03/15 記述修正 ここで神たる飛竜の威厳を保たねばなるまい → 最後まで神たる飛竜の威厳を見せなければ

2012/03/15 記述修正 何の為に居るのか → 何を知る為に居るのか

2012/03/15 記述修正 竜の巫女を回収して → 竜の巫女を連れて

2012/03/15 記述分割 私も娘も命が持たない、 → 、私も娘も命がない。

2012/03/15 記述修正 糧が多量に消耗する → 糧を多量に消耗する

2012/03/15 記述分割 感覚は感じなかった、と言うよりも → 感覚は、全く感じなかった。と言うよりも

2012/03/15 記述修正 消費出来ない器だった、つまり単なる → 消費出来ない器だった。それ故に無意識の内に

2012/03/15 記述修正 飛竜と言う生物を作り出す為だけに → この器を生かす為だけに

2012/03/15 記述修正 糧が消費されていたからなのかと → 糧が消費されていたからであり、その決して死なないと言う不死性こそが、この定義の能力だったのではと

2012/03/15 記述削除 何故ならそれは~

2012/03/15 記述追加 何故ならそれは~

2012/03/15 記述修正 糧が消費されていたから → 糧が無意識に消費されていたから

2012/03/15 記述修正 かなりふらつきながらも輝く地底湖から、 → 強い眩暈と虚脱感に襲われながらも、輝く地底湖から

2012/03/15 記述修正 元の洞穴へと滑空して突っ込んでいく → 歩いてきた洞穴へと滑空して突入する

2012/03/15 記述修正 大地に着地した後 → 地面に着地した後

2012/03/15 記述修正 背を預けて座りながら → 背を預けて座り

2012/03/15 記述修正 ぼんやりと見ている娘を → ぼんやりと眺めている娘を

2012/03/15 記述修正 それを聞くのは後回しにして → それには耳を傾けず

2012/03/15 記述修正 突き出したところ、私も焦っていた所為で、掴まる様に意思表示をしようとして、娘の体に足を軽くぶつけてしまった → 突き出す

2012/03/15 記述分割 これで果たして通じるのか、通じなければ → これで果たして通じるのか。通じなければ

2012/03/15 記述修正 私の出した足にしがみついて掴まった → 私の出した足に座り、両腕で脛に抱きついて掴まった

2012/03/15 記述修正 消費してしまったとは思い難く → 消費してしまったとは信じ難く

2012/03/15 記述修正 埋葬された事に因って浄化でもされて → 若しかすると埋葬された事に因り、浄化されて、

2012/03/15 記述修正 自然消滅したのかも知れないと、新たな憶測をしつつ → 多少は自然消滅したのかも知れないと思いつつ、

2012/03/15 記述修正 行く → 向かう

2012/03/15 記述修正 叫び声が聞こえていて → 叫び声が聞こえ

2012/03/15 記述修正 縦穴は若干前方に傾斜しつつ → 縦穴は前方に傾斜しつつ

2012/03/15 記述修正 するほどに、角度が増して行っているのが判った → するほどに角度が増して、垂直に近づいていく

2012/03/15 記述修正 飛び込んでしまうのではないか、 → 飛び込んでしまうのではないか。

2012/03/15 記述修正 かなり厳しいこの場所で → かなり厳しいこの状況で

2012/03/15 記述修正 私には取れる手段が無い → 私には手が無い

2012/03/15 記述修正 中央に一つ最も大きな噴火口があって → 中央の最も高くなっている山頂に大きな噴火口があって

2012/03/15 記述修正 更にその周囲にも → 更に山腹から山麓に掛けて

2012/03/15 記述修正 目を離すと周囲の麓は暗い森に覆われていて → 目を離すと、麓の周辺一帯は暗い森に覆われていて

2012/03/15 記述修正 町らしきものが見えていた → 町らしきものが見える

2012/03/15 記述修正 平地を見つけて → 草原を見つけて

2012/03/15 記述修正 着陸を試みたのだが力尽きてしまっているのもあって → 着陸を試みたが

2012/03/15 記述修正 薄汚れたのだろうかと思いつつ → 汚れたのだろうかと思いつつ

2012/03/15 記述修正 翼を動かしてみると → 最も心配していた翼を動かしてみると、

2012/03/15 記述修正 大地で一回転してから → 大地で転がってから

2012/03/15 記述修正 転がって倒れているのが見えた → 倒れているのが見えた

2012/03/15 記述修正 娘の望みは達成された、とも捉えても → 娘の望みは、達成されたと捉えても

2012/03/15 記述修正 これは、随分身勝手な解釈だとは我ながら思えたが → これは随分身勝手な解釈だと我ながら思えたが

2012/03/15 記述修正 この状況では → 現状で

2012/03/15 記述修正 死に行く娘を看取る事と → 死に往く娘を看取る事と

2012/03/15 記述分割 何かを察するだろうか、いや → 何かを察するだろうか。いや

2012/03/15 記述分割 良いのでは無いか、そう考えて → 良いのでは無いか。そう考えて

2012/03/15 記述修正 擦り付ける様にしてから → 擦り付ける様にして拭ってから

2012/03/15 記述修正 草むらへと両腕を落とした後 → 草むらに両手をついた後

2012/03/15 記述修正 周囲を見渡す様に頭を左右へと動かしていた → 周囲を見渡していた

2012/03/15 記述修正 更に地面に垂らしていた両腕を上げて → その後地面についていた両手を上げて

2012/03/15 記述分割 娘の態度の異変に気がつき、それと同時に → 娘の異変に気がついた。それと同時に

2012/03/15 記述修正 不安げな言葉が聞かれた → 不安げな言葉が零れた

2012/03/15 記述分割 私の進むべき道を示した時は見えていたのか、それとも既に → 私へと進むべき道を示した時はまだ見えていたのか。それとも既に

2012/03/15 記述修正 あの場所に連れて来られた時の → あの場所に来た時の

2012/03/15 記述修正 道程を覚えていたのか → 道を覚えていたのか

2012/03/15 記述修正 「行く、祭壇、真ん中 → 「向かう、祭壇、真ん中

2012/03/15 記述修正 我は竜の巫女」 → 我は竜の巫女。

2012/03/15 記述修正 「どうか願いを叶え給え → どうか願いを叶え給え

2012/03/15 記述修正 あれから変わりもせずに → あれからも変わらず

2012/03/15 記述修正 全身に覆い被さる様に広がる → 全身に圧し掛かる様に広がる

2012/03/15 記述修正 慢性的な疲労感は → 慢性的な疲労感がかなり強く

2012/03/15 記述修正 恐らく巨竜の近くにいた致死の影響であり、本来の意味の疲れでは無い → これは本来の意味の疲れでは無く、恐らく巨竜の近くにいた致死の影響だろう

2012/03/15 記述分割 死んで行くのであろうか、程度と進行速度の → 死んで行くのであろうか。程度と進行速度の

2012/03/15 記述修正 死んで行くのだろう → 死んで行くのであろうか

2012/03/15 記述修正 体を蝕まれている筈だ → 体を蝕まれているに違いない

2012/03/15 記述修正 娘ももうそれを察している → 娘ももう察している筈だ

2012/03/15 記述修正 もう持ちはしまいし → 持ちはしないし

2012/03/15 記述分割 察している筈だ、私はその後どうすべきだろう → 察している筈だ。その後私は、どうすべきであろうか

2012/03/15 記述修正 聞き慣れない獣の絶叫を → 未だ嘗て聞いた事の無い幻獣の叫声を

2012/03/15 記述修正 外へと出たりして来て → 屋外へと出て

2012/03/15 記述修正 数回叩いてから → 指で数回不規則に叩いてから

2012/03/15 記述修正 私の足から櫓へと飛び降りたのが判った → 足から離れて櫓へと飛び降りた

2012/03/15 記述修正 無事に上空高くまで → 無事に空高くまで

2012/03/15 記述修正 咆哮を繰り返しながら → 咆哮を繰り返しながら上空を旋回し

2012/03/15 記述修正 その場に留まって、この娘を見届ける事は → その場に留まり、この娘の事を見届けるのは

2012/03/15 記述修正 出来そうもない、残念だが仕方ないだろう → 残念だが諦めざるを得ない

2012/03/15 記述修正 今飛び上がった際、私に残された力はもう残り僅かで → これではもう一度飛び立つ際に力尽きてしまい

2012/03/15 記述修正 次に平地から飛び上がるだけの体力は残されていないと → 、火山に戻るまで持ちそうも無い

2012/03/15 記述修正 こう考えると下手に私が人間達の前には → こう考えると、やはり私が

2012/03/15 記述分割 無い様な気がする、だとすると最期は → 無い様な気がする。だとすると最期は、

2012/03/15 記述分割 人間達はどう思うだろう、それも若しかすると、人間達の前で私も → 人間達はどう思うだろう。それも若しかすると人間達の目の前で、神たる私も

2012/03/15 記述修正 一部は吹き上がる高熱で焦げている様にも見えているものの → 一部は高熱で焦げている様に見えるものの

2012/03/15 記述修正 焼ける様に苦痛を発して → 焼ける様な痛みを発し

2012/03/15 記述修正 純粋に疲労の所為では → 疲労や高温の所為だけでは

2012/03/15 記述修正 軽減して来ている様に → 軽減した様に

2012/03/15 記述修正 引き起こされていたのだと把握した → 引き起こされていたのか

2012/03/15 記述修正 楽観していたのだが → 楽観視していたのだが

2012/03/15 記述修正 飛竜としても威厳を保ち → 飛竜としての威信を保ち

2012/03/15 記述分割 無事に果せたであろうか、少なくとも私は → 無事に果せたであろうか。少なくとも私は

2012/03/15 記述分割 振る舞いはしていない筈だ、後は神か → 振る舞いはしていない筈だ。後は神か

2012/03/15 記述修正 再び大空目掛けて力強く飛び上がった → その力を誇示する様に突風を巻き起こしつつ、再び大空目掛けて舞い上がる

2012/03/15 記述修正 人間が集まって来ていて → 人間が集まっており

2012/03/15 記述修正 皆私を見上げて口々に叫び、周囲の人間と怒鳴りあったり囁き合ったりして → 皆こちらを見上げて口々に叫び

2012/03/15 記述分割 どうしたいのだろうか、私は娘の手が → どうしたいのだろうか。私は娘の手が

2012/03/15 記述削除 或いは両者なのか、

2012/03/15 記述修正 しかし内臓に対して → いずれにしても内臓に対して

2012/03/15 記述修正 そう考えて火山の方を眺めていた時 → そう思いつつ脱出して来た火山の方を再び眺めた時

2012/03/15 記述修正 視線を娘へと戻した → 私は視線を娘へと戻した

2012/03/15 記述修正 その場合に私は → その時に私は

2012/03/15 記述修正 ついて来なかったとしても → 付いて来なかったとしても

2012/03/15 記述修正 ついて来させなければ → 付いて来させなければ

2012/03/15 記述分割 保持していたと言う訳か、この状況からして → 保持していたと言う訳か。この状況からして

2012/03/15 記述移動 つまり私は死に至る場所で~

2012/03/15 記述修正 糧を消費してこの肉体に宿る命を保持していたと → 糧を費やしてこの死に続ける肉体を、蘇生させ続けていたと

2012/03/15 記述修正 だが今はそんな事を悔やんでいる → だが今は、それを悔やんでいる

2012/03/15 記述修正 すっかり茜色に染まり → 夜の帳が下り始め

2012/03/15 記述修正 大地へと沈み始めていた → 大地へと沈みつつあった

2012/03/15 記述修正 娘は自分の血で染まった → 巫女は自分の血で染まった

2012/03/15 記述分割 巫女は死んでしまったのだろうか、今回の私の器では → やはり巫女は噴煙と高熱に耐え切れず、死んでしまったのだろうか。今回の私の器では、

2012/03/15 記述修正 それを知り得る力は保持していないので → それを知り得る力の有無すら把握出来ていないので

2012/03/15 記述修正 たとえまだ息があったとして → たとえまだ息があったとしても

2012/03/15 記述分割 死んでいただろう、娘の判断が正しかった事を → 死んでいただろう。娘の判断が正しかった事を、

2012/03/15 記述修正 上昇を続けながら朦朧とし始めた頭で → 朦朧とし始めた頭で

2012/03/15 記述修正 落下しない事を願いつつ → 落下しない事を切に願いつつ

2012/03/15 記述修正 上空を目指して飛んだ → 上空を目指して飛び続けた

2012/03/15 記述修正 二の舞になるのは避けて → 二の舞になるのを避けて

2012/03/15 記述修正 ここから脱出を遂げて → ここから脱出し

2012/03/15 記述修正 今に至るまでこの器の定義を → 今に至ってもこの器の定義に関して、能力等の詳細を

2012/03/15 記述修正 巨竜の元へと向かおうとして → 巨竜の元へ向かおうとして

2012/03/15 記述修正 不安げに両手は何かを探って周囲に → 両手は縋る様に周囲へと

2012/03/15 記述削除 肺をやられて更に失明した娘は~

2012/03/15 記述修正 まだ荒い呼吸ではあったが喘息の様な咳は治まり → まだ荒い呼吸ではあるものの発作の様な咳も治まり

2012/03/15 記述修正 体を起こして地面に座り直して、自分が助かった事を自覚も出来た様子に見えた → 体を起こして地面に座り直していた

2012/03/15 記述修正 自覚も出来た様子に見えた → 理解したらしい

2012/03/15 記述修正 巫女の容態が気になり始めた → 巫女の様子が気に掛かり出した

2012/03/15 記述移動 少なくとも巨竜が~

2012/03/15 記述修正 動き出す前までは → 動き出す前には

2012/03/15 記述修正 やはりあれが覚醒してからしか無い → やはり、巨竜が覚醒してからしか無い

2012/03/15 記述分割 使命は果せる筈だ、私がそこで → 使命は果せる筈だ。私がそこで

2012/03/15 記述修正 私がそこで出来るのはその時に出来るだけの観衆を集めて → 最後に私がしてやれるのは、より多くの観衆を集め

2012/03/15 記述修正 生贄の巫女の言葉を → 竜の巫女の姿と言葉を知らしめて

2012/03/15 記述修正 神の言葉として信憑性の高い物へとしてやる事だけだ → この日の出来事を忘れられない奇跡とする事だ

2012/03/15 記述修正 痛む体、特に翼の状況を確認すべく → 全身が痛む体の状況を確認すべく

2012/03/15 記述修正 その言葉に従う必然性は無いとも → その言葉に従う義務は無いとも

2012/03/15 記述修正 娘の願望だった行動の → 娘の願望であった行動の

2012/03/15 記述修正 だがその視線はどこか私には合っておらず、 → 妙に呆けた様な

2012/03/15 記述修正 私は櫓の真上の位置で → 私は櫓の真上の位置から

2012/03/15 記述修正 降りる様に合図を送った → 降りる様に合図を送る

2012/03/15 記述修正 ガスも噴出している様で → ガスも噴き出している様で

2012/03/15 記述修正 その内容から推測する立場は → その内容から推測すると

2012/03/15 記述修正 顔の部分には手で覆っていたらしく → 顔の部分には何かで覆っていたのか

2012/03/15 記述修正 凄まじい速度で死に瀕して行き、それを糧を消費する事で → 速やかに死に瀕して行き、それに対し糧を消費する事で、

2012/03/15 記述修正 とても墓を作ってやるのは → 弔ってやるのも

2012/03/15 記述修正 濃度の高い噴煙が → 高温で濃度の高い噴煙が

2012/03/15 記述修正 声色で再び発した → 声色で再び口を開いた

2012/03/15 記述修正 かつて見た“隠者”と → 嘗て見た“隠者”と

2012/03/15 記述修正 ついに私は失速した → 遂に私は失速した

2012/03/15 記述修正 体を折り曲げて → 体を屈めて

2012/03/15 記述修正 同意を表すべく → 承諾を表すべく

2012/03/15 記述修正 今まで長時間かけてひたすら歩いて来た道程を、何とか墜落する事無く一気に戻って行く → 低空飛行で四方の岩壁を掠める様に飛びながら、今まで長時間かけてひたすら歩いて来た道程を、比較にならない速度で戻って行く

2012/03/15 記述修正 残り僅かな未来の予定を → 残り少ない未来の予定を

2012/03/15 記述分割 急降下すべきなのか、しかしこれは → 急降下すべきなのか。しかしこれは

2012/03/15 記述追加 いや、巨竜が眠りについても~

2012/03/15 記述修正 響き渡りながら遠ざかるのを確認しつつ → 響き渡るのを確認しつつ

2012/03/15 記述修正 死に場所を目指して飛翔した → 死に場所を目指して飛び去った

2012/03/15 記述修正 しかしそれで、 → それで、巫女の最期の使命は果たされると信じたい

2012/03/15 記述修正 縦穴を墜落して行き → 噴火口を墜落して行き

2012/03/15 記述修正 巨竜の言っていた時間には → 巨竜には

2012/03/15 記述修正 別種の期限があった様だ → 眠りにつくまでの期限が存在したのか

2018/01/14 誤植修正 そう言う → そういう


この時私は、大きな失態を犯したのでは無いか、そんな失意の念に襲われながら、再び静寂に覆われた地底湖の上空で、今や透明度も完全に失って石炭の様に変貌しつつある、巨竜の背に当たる島を呆然と眺めていた。

やっと話の流れがこちらの思惑通りに向けられたかと思ったところで、唐突に会話は打ち切られてしまった。

少なくとも私との話に興味を抱いている間は、会話は継続されるだろうと楽観視していたのだが、どうやら甘かったらしい。

巨竜には、私との会話や巨竜自身の意思とは関係の無い、眠りにつくまでの期限が存在したのか。

“隠者”と関わりのあった存在と思われた巨竜から、もっと様々な情報を聞き出そうと考えていたのに、この予期せぬ展開にはかなりの落胆を感じていた。

巨竜は最後に自らの正体について語っていたが、その内容から推測すると、この世界に属する存在ではないと言う意味で、私や“嘶くロバ”と近い様な気もするが、しかし完全に同じ境遇の存在では無い様に思われた。

その正体は、嘗て見た“隠者”と同じ世界の存在だったのでは無いだろうか。

しかしそれを確認すべく、発した問い掛けの思念には答える事無く、私の想定を超える存在だった巨竜は沈黙し、『上位世界の民』とは何者なのか、『探求者』とは“隠者”と同じ存在なのか、巨竜が名乗った『傍観者』とは何を知る為に居るのか、多くの謎は全て判らないままに対話は終わってしまった。

だが今は、それを悔やんでいる場合では無く、もっと切実な問題が発生している。

それは巨竜が警告していた、私や娘の時間が残り少ないと言う言葉の意味についてだ。

先程と比べると体調の不良は軽減している様に感じられ、これらの症状は心因性のものでは無く、覚醒した巨竜に接近する事に因って引き起こされていたのか。

いや、巨竜が眠りについても、覚醒している巨竜よりは影響が少ないだけで、各症状は完全には治まっていない。

確か巨竜は自分の近くに生物がいる事を驚いていたのと、巨竜は生贄として人間を求めてはいなかったとの言葉を合わせると、それは即ち巨竜には近づくと死に至る何かがあり、この地底湖に沈む白骨は、巨竜の元へ向かおうとして息絶えた巫女達の、変わり果てた姿なのではないかと思えて来る。

この状況からして、残念ながら巨竜の言葉に偽りは無さそうだ。

そういう意味ではあの娘も、地底湖の近くまで来る道中で苦しげにしていたのは、疲労や高温の所為だけでは無かったのだろう。

こんな事なら付いて来させなければ良かったと、今更ながら後悔するが、地底湖までの道程に遺体が見当たらなかったのを考えると、それらも全てあの娘が片付けたのだとすれば、今回付いて来なかったとしても、恐らくもう既に手遅れであったのかも知れない。

今はそれがどちらであろうとどうでも良い、とにかく竜の巫女を連れて、この場所から一刻も早く離れなければ、私も娘も命がない。

特に娘は距離は多少離れているものの、只の人間に過ぎないのだから、この状況に耐え得る許容量は、私よりもずっと小さい筈だと危惧しつつ、私は娘の元へと戻り始めた。

戻る最中、来る前はあれだけ大量にあった魂の気配が、すっかり薄らいでいるのに気づいた。

少なくとも巨竜が動き出す前には糧の流れも確認したのだから、何かが起こったと言うならやはり、巨竜が覚醒してからしか無い。

これは私が動揺して糧の方に気を掛けなかった間に、私の肉体は速やかに死に瀕して行き、それに対し糧を消費する事で治癒するのを延々と繰り返して、体内の糧が尽きる度に、洞穴内の魂を取り込んでいたとでも言うのか。

つまり私は死に至る場所で生存し続ける為に、糧を費やしてこの死に続ける肉体を、蘇生させ続けていたと言う訳か。

しかし、糧を多量に消耗する感覚は、全く感じなかった。

と言うよりも、この器では私は糧の制御を一度もしていないし、それを試してもいない。

何故ならそれは、今に至ってもこの器の定義に関して、能力等の詳細を知る機会は無かったからであり、私自身が意図的な糧を使う手段は、存在維持以外に無かったとも言える。

それ故に無意識の内にこの器を生かす為だけに、糧が消費されていたからであり、その決して死なないと言う不死性こそが、この定義の能力だったのではと仮説を立ててみるが、どうも釈然とはしない。

それを考えつつ、もう力尽き始めているのか、それとも巨竜に長く近づき過ぎた代償なのか、強い眩暈と虚脱感に襲われながらも、輝く地底湖から歩いてきた洞穴へと滑空して突入する。

若干転倒気味に地面に着地した後、その勢いのまま曲がりくねる上り坂を駆け上がって行くと、洞穴の壁に背を預けて座り、こちらの様子をぼんやりと眺めている娘を見つけた。

妙に呆けた様なその様子に違和感を覚えるが、それが何なのかを確認するのは脱出した後だ。

私がかなり近づいてから、やっと戻って来たのに気づいた緑衣の娘は、すぐに立ち上がると何かを言おうとしているのが判ったが、それには耳を傾けず、私は娘の傍らまで近づいて片足を娘の前に突き出す。

巨竜の言葉を信じれば娘は状況を把握している筈なのだが、これで果たして通じるのか。

通じなければ口で咥えるかそれとも足で掴んででも、ここから運び出すしか無いと危惧していると、娘は理解したらしく私の出した足に座り、両腕で脛に抱きついて掴まった。

それを確認した私は減退し始めている力を振り絞って、片足で飛び跳ねつつ何とか舞い上がると、一気に洞穴の出口を目指して飛び立ち、飛翔した。




飛んでいる間、足は極力動かさない様にしなければならず、滑空時のバランスを取るのに苦労したものの、低空飛行で四方の岩壁を掠める様に飛びながら、今まで長時間かけてひたすら歩いて来た道程を、比較にならない速度で戻って行く。

飛行時の体勢制御の際、特に舵となっている尻尾と重心を調整する足にはかなりの力が入ってしまい、娘を掴んで飛ばずに済んだのは幸いだったと感じた。

やがて墓標地帯まで戻ったが、やはりあれだけあった魂の雲は、まさに雲霞の如く消え失せていた。

全て私が消費してしまったとは信じ難く、若しかすると埋葬された事に因り浄化されて、多少は自然消滅したのかも知れないと思いつつ、一気に墓標の一帯を飛び去った。

墓標地帯も越えて更に飛行し続けると、やがて縦穴にぶつかったのが判り、飛行速度を落として近づいて行く。

「向かう、下!」

その時、竜の巫女の指示であろう叫び声が聞こえ、噴火口なら上に向かうのが正しいのではと疑問を感じたが、娘の発言が向かうべき正しい方向だろうと信じ、指示された方向である下へと向かって縦穴を下る。

縦穴は前方に傾斜しつつ下に行く程に広くなる構造で、縦穴の傾斜は下降すればするほどに角度が増して、垂直に近づいていく。

火口へと近づいている為だろうか、周囲の温度は地底湖よりも高く、火山性のガスも噴き出している様でかなり息苦しい。

このまま行くと、本当に火口へと飛び込んでしまうのではないか。

娘が騙したとは思わないが、間違いや勘違いをして判断を誤るのは十分起こり得る事だと、半ば死を覚悟しながらも下降を続けると、傾斜していた縦穴は更に別の大きな縦穴へと合流した。

「向かう、上、空!」

この広い縦穴の下には火口が有るらしく、下を見ると煙で良くは見えないが僅かに赤い光も見えていて、今まで居た場所は本当に地の底だったのだと、これでようやく理解出来た。

竜の巫女の悲鳴にも近い指示を受けて、私は降下から一転して急上昇へと切り替えると、全力で羽ばたきながら小さな点にしか見えない、空を目指して上昇し続けた。

この縦穴には先程とは比較にならない程の、高温で濃度の高い噴煙が充満しており、まともに呼吸も出来ない程だ。

生物である以上ずっと息を止めてはいられず、已む無く黒く煙る熱気を吸い込むと、口内には何とも形容しがたい苦々しい味覚が広がり、更に喉や気管の粘膜は焼ける様な痛みを発し、それが肺を満たして、肺全体に痺れる様な苦痛と悪心を齎した。

これは明らかに有毒な成分だと確信して、足に掴まっているのだけは判るが、詳細が判らない巫女の様子が気に掛かり出した。

飛竜の体でもかなり厳しいこの状況で、どれだけ娘は耐えられるのか。

しかしこれはもう生きている事を期待して、いち早く空へと抜けるしか私には手が無い。

もし、娘が途中で力尽きてしまい、私の足から落ちた場合、その時に私はどうすべきなのだろうか。

召喚者の娘を救うべく、火口へと向かって急降下すべきなのか。

しかしこれはどう考えても、自殺行為でしか無いだろう。

それとも、もう死んでいるに違いない娘の事よりも、自分も娘の二の舞になるのを避けて、この身だけでも生きてここから脱出し、巨竜の依頼をどうにか達成すべく行動すべきなのか。

巨竜は召喚者では無いから、その言葉に従う義務は無いとも言えるが、娘にとっての巨竜は崇拝対象だった飛竜なのだから、その言葉はつまり娘の願望であった行動の指針とも言える。

噴煙に覆われて呼吸困難で窒息して行く中、朦朧とし始めた頭でこの葛藤を感じながらも、竜の巫女が落下しない事を切に願いつつ、私は全力で上空を目指して飛び続けた。




どの程度の時間が掛かったのか、どうも意識が途切れ途切れになってしまい良く判らなかったが、私は噴火口を脱してこの器で初めて空を見ていた。

何度か岩壁に体がぶつかった記憶があるが、足元の娘だけは庇いながら体勢を立て直しつつ、無我夢中で飛んでやっと見る事が出来た空は、雲一つ無い青空だった。

空まで出るとすぐに立ち上る噴煙から脱出して、すぐに滑空して下降し始めつつ、着陸出来る場所を求めて周囲を見渡した時に、今私が抜けて来た背後の火山の全貌が見えた。

中央の最も高くなっている山頂に大きな噴火口があって、更に山腹から山麓に掛けて小さな地割れの様な火孔が点在しており、娘が下に行く様に指示したのは、あの小さな火孔の内の何れかだったのだろうか。

もし娘の言葉に従わず上に向かっていたら、私の体では通り抜けられない狭い火孔へと突き進み、そこで二人揃って死んでいただろう。

娘の判断が正しかった事を、私は改めて実感した。

この火山から目を離すと、麓の周辺一帯は暗い森に覆われていて、森を超えた向こうに町らしきものが見える。

私は足にしがみついている巫女の状況が気になり、まず様子を見るべく着陸出来そうな草原を見つけて、そこへと着陸を試みたが、半ば失速して墜落に近い形で地面へと落ちた。

着地と同時に転がって体を地面に打ち付けた私は、眩暈を感じながら体を起こして、全身が痛む体の状況を確認すべく、首を後ろへと向けてみる。

煤塗れの自分の体を見て、これは噴煙で汚れたのだろうかと思いつつ、最も心配していた翼を動かしてみると、どうやら無事らしいのが判り、次に足から存在が無くなっている娘を探して周囲を見渡した。

どうやら私は大地で転がってから止まったらしく、その衝撃と反動で巫女は放り投げられる様に、少し離れた場所に倒れているのが見えた。

巫女の様子は、私と同様に火山の黒煙で燻されて全身煤で黒く変色し、一部は高熱で焦げている様に見えるものの、傍目に見て大きな怪我を負ってはいない様に思える。

かなり厳つい形状である巫女の装束は、地下の洞穴では相当に暑苦しかったろうが、殆んど素肌を晒していなかった点は、少しは生存確率を上げたのではと期待出来た。

顔の部分には何かで覆っていたのか煤の付着は少なく、あの噴煙をそれ程は吸い込んでいない事を、多少は期待していたのだが、娘に動き出す気配は無い。

やはり巫女は噴煙と高熱に耐え切れず、死んでしまったのだろうか。

今回の私の器では、それを知り得る力の有無すら把握出来ていないので、外見から判断するしかなく、たとえまだ息があったとしても、瀕死の状態であるならそれを救う術も無い。

倒れたままの小柄な巫女の傍らで、全身に受けた打撲の痛みと、肺や気管が酸で焼かれるかの様な痛みに耐えながら、私は伏した娘の様子を窺いつつ、この間に私は巨竜が命じた指示の事を考察していた。

あれは、娘の望んだ飛竜の意志として、娘に伝わったのだろうから、これは言ってみれば、巫女の願いは達成されたと言う風に捉えても良いのだろうか。

たとえもう娘は死んでいたとしても、完全とは言えず部分的でしか無いかも知れないが、或る意味為すべき事を確認すると言う娘の望みは、達成されたと捉えても良いのだろうか。

これは随分身勝手な解釈だと我ながら思えたが、現状でこの後出来るのは、まだ死んでいないのなら死に往く娘を看取る事と、先程見えた町へと向かう事くらいであろう。

あの町に死んだ娘の亡骸を運べば、人間達は何かを察するだろうか。

いや、それだけでは巨竜の意思が伝わるとは、とても思えない。

それに唐突に信仰対象の飛竜が現れたら、人間達はどう思うだろう。

それも若しかすると、人間達の目の前で、神たる私も息絶えるかも知れないのだ。

こう考えると、やはり私が出ていくべきでは無い様な気がする。

だとすると最期は、この娘諸共火口へと飛び込むべきか。

この器では弔ってやるのも無理であろうし、私自身も死んだ後に骸が残って、それが人間達に見つかるのも望ましいとは思えない。

ならば、全てを火山の炎で焼き尽してしまう方が良いのでは無いか。

そう思いつつ脱出して来た火山の方を再び眺めた時、目の前の娘が僅かに動き、小さく呻き声を上げるのが聞こえて、私は視線を娘へと戻した。

娘は意識を取り戻した様で、やはり私と同様に肺と気管もやられているらしく、片手で口を押さえて、もう一方の手で胸を押さえながら激しく咳き込み、体を屈めて暫く苦痛に呻いていた。

口元を押さえた手は次第に朱色に染まり、指の隙間や顎の脇から鮮血が滴り落ちていく。

この喀血は、噴煙を吸い込んだ事に因るものなのか、巨竜の近くに長くいた事が原因なのか、私には判断がつかなかったが、いずれにしても内臓に対して相当な痛手を負っているのは明白だろう。

私は為す術も無く、苦しみ悶える娘を見守り続けた。




時間が経つに連れて多少は楽になって来たのか、巫女の様子は落ち着いて来て、まだ荒い呼吸ではあるものの発作の様な咳も治まり、体を起こして地面に座り直していた。

巫女は自分の血で染まった手を見ても何の反応も示さず、ここまで肝の座った娘だったのかと少々驚いたが、あの状況を考えれば命があるだけ幸運だったと、納得したのであろうかと判断した。

娘はその後、手についた血を着ていた服に擦り付ける様にして拭ってから、座っている草むらに両手をついた後、この場所に見覚えでもあるのか、しきりと周囲を見渡していた。

その後地面についていた両手を上げて、前や横へと動かし始めた時、私は娘の異変に気づいた。

それと同時に娘の口から聴き取り辛い嗄れた声で、異変の確証となる不安げな言葉が零れた。

「何処、小さな飛竜様……」

娘の双眸は確かに開かれている、だがその目は白く濁り、目の前に居る私にすら焦点は合わずに微妙に揺れ動いていて、両手は縋る様に周囲へと伸ばされていた。

一体いつから見えなくなっていたのか、少なくとも火口を上昇する前に、私へと進むべき道を示した時はまだ見えていたのか。

それとも既に失明していたが、あの場所に来た時の記憶で道を覚えていたのか、疑問に感じるもののそれを問う手段は無い。

もはや満身創痍であろう娘は、この先私を求めてどうしたいのだろうか。

私は娘の手が届くところまで歩み寄ってやり、自分の存在を知らせる。

私の足に手が当たったのに気づいた娘は、両腕を回して抱きつくと、相変わらず嗄れてはいたが、先程とは変わって安心した様な声色で再び口を開いた。

「あった、小さな飛竜様」

この後暫く無言で、私の足に身を預ける様にしていた竜の巫女は、私の足から体を離すと、先程よりも確りした声で語り掛けて来た。

「向かう、祭壇、真ん中、町、務めを果しましょう、我は竜の巫女。

 どうか願いを叶え給え、最後、小さな飛竜様」

そう言い終えると、娘は私の足へと再び掴まって来た。

瀕死であろうこの娘は、最期まで竜の巫女の使命として、巨竜からの言葉を伝えるべく、行動するつもりらしい。

巫女の最期の意志を理解した私は、承諾を表すべく劈く様な咆哮を上げて、残り少なくなって来た力を使って再び空へと飛び立ち、町を目指して飛翔した。




今の時刻は、もう夕方に近づいているらしく、青空は僅かに茜色へと変わりつつあった。

そんな移りゆく空模様を眺めながら、私は疲弊していく体に鞭打って滑空を続けていた。

気管の苦痛はあれからも変わらず続いていたが、それよりも全身に圧し掛かる様に広がる慢性的な疲労感がかなり強く、これは本来の意味の疲れでは無く、恐らく巨竜の近くにいた致死の影響だろうと感じた。

これが段々と進行して、その内全く動けなくなり死んで行くのであろうか。

程度と進行速度の差はあれ、娘もまた同様に体を蝕まれているに違いない。

娘は恐らくあの町で死ぬだろう、そこまでしか持ちはしないし、娘ももうそれは察している筈だ。

その後私は、どうすべきであろうか。

そのまま娘と同様に、町の中央で神が死に果てる様を、人間達に見せる訳には行かないが、しかし他に行く宛ても無い。

やはり火山へと戻るべきか、だが果たして町へと着いた時点で、再びあの高度まで上昇するだけの力が残っているのか、それがかなり気掛かりだった。

これではもう一度飛び立つ際に力尽きてしまい、火山に戻るまで持ちそうも無い。

町に辿り着いても、巫女が言った祭壇に運ぶまでしか出来ず、着陸してその場に留まり、この娘の事を見届けるのは残念だが諦めざるを得ない。

最後に私がしてやれるのは、より多くの観衆を集め、飛竜と共に生還した竜の巫女の姿と言葉を知らしめて、この日の出来事を忘れられない奇跡とする事だ。

それで、巫女の最期の使命は果たされると信じたい。

残り少ない未来の予定を考えている間に、町は確実に近づきつつあり、中央にある大きな広場が見え始めていた。

広場の中央には、この町の中でも最も高い尖塔が伸びる神殿の様な建物が建っており、その神殿の前には丸太で作られている、二階程度の高さがある大きな櫓があって、他にそれらしい物が見当たらないところを見ると、どうやらこれが祭壇の様だ。

私は肺の痛みを堪えて大きく息を吸い込むと、喉も千切れんばかりの咆哮を発した。

その悲鳴にも似た雄叫びは思いのほか響き渡り、未だ嘗て聞いた事の無い幻獣の叫声を耳にした住民達が、建物から顔を出したり屋外へと出て、上空の私を見て動揺しているのが判った。

私は広場の櫓に近づくまで、渾身の咆哮を繰り返しながら上空を旋回し、慎重に高度を下げて行く。

中央広場の上空に到達する頃には、もうかなりの人間が集まっており、皆こちらを見上げて口々に叫び、騒然としていた。

私は櫓の真上の位置から出来るだけゆっくりと櫓へと近づいて、巫女の掴まっていない足で軽く娘を小突き、降りる様に合図を送る。

私の意図を理解した娘は、別れの挨拶か私の足を指で数回不規則に叩いてから、足から離れて櫓へと飛び降りた。

少しは軽くなったとは言え、体中の関節は動く度に軋んで痛み、少しでも気を抜くと墜落しそうな程に疲弊していたが、娘の言葉に箔をつける為にも、最後まで神たる飛竜の威厳を見せなければ。

私は残る力を振り絞って、最後の咆哮を上げてから、その力を誇示する様に突風を巻き起こしつつ、再び大空目掛けて力強く舞い上がる。

そして、具現化した神の咆哮に因って静まり返った群集に向かって、こちらも死力を尽くしているのであろう、竜の巫女たる娘に因る、理解出来ない言語の神託を告げる声が、朗々と響き渡るのを確認しつつ、私は死に場所を目指して飛び去った。




再び戻った空はもう、夜の帳が下り始め、夕陽は大地へと沈みつつあった。

幸運にも上昇気流に乗って、無事に空高くまで上昇した後は、もう羽ばたく力も殆んど残ってはおらず、この後は火山の方へと向かって滑空し始める。

火山は町から見て丁度太陽の沈む側に見えており、私がどの様な落下の仕方をしたかまでは、人間の視力では確認出来ないだろう。

時折意識も遠ざかる中で、更に視界も霞み始めていて、これは若しかすると、娘と同じ失明の症状の途中段階ではないかと思えた。

かなり朧げにしか周囲も見えなくなりつつあったものの、正面には必死で逃げ出して来た噴火口も見えており、このまま意識を失っても失速さえしなければ、中央の火口に届く筈だ。

いよいよ視界も白い霞に覆われて狭まり、肉体の感覚も痛みから痺れへと代わった頃に、私は火山の中央にある噴火口へと突入した。

巫女の娘は、最期の使命を無事に果せたであろうか。

少なくとも私は飛竜としての威信を保ち、娘の言葉を貶める様な振る舞いはしていない筈だ。

後は神かロバのみぞ知ると言ったところか。

これで竜の巫女の面目は守れただろうと安堵した時、遂に私は失速した。

その後は、重力に身を任せて噴火口を墜落して行き、やがて幾度と無く岩壁に体を弾かれながら、その度に鱗は剥がれ、足や翼の脆い所から順にへし折れて行く。

そして最後は、首も折れて殆んど意識も無い状態で、火口の最深部へと到達し、溶岩の中で私の肉体は燃え尽きたのだった。





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