第九章 初恋 其の二
変更履歴
2011/10/22 記述修正 10も → じゅうも
2011/10/23 誤植修正 強い意思を持っている → 強い意志を持っている
2011/12/04 誤植修正 ソノ、ケン、リヨ、ク、ハ、 → ソノ、ケン、リヨ、ク、ト、
2011/12/04 誤植修正 かわらないのだよ、おっしゃいました → かわらないのだよと、おっしゃいました
2011/12/04 誤植修正 市民権すら持たない選民なんぞ → 市民権すら持たない賎民なんぞ
2011/12/04 誤植修正 ぼうえきょうから → しょうにんから
2011/12/04 誤植修正 はだの、いや、かみの、いろも、 → はだの、いろや、かみの、いろも、
2011/12/04 句読点調整
2011/12/04 詠唱表記 ひらがな → カタカナ
2011/12/04 記述修正 、ハ、 → 、ワ、
2011/12/04 記述修正 、デハ、 → 、デワ、
2011/12/04 記述修正 、トハ、 → 、トワ、
2011/12/04 記述修正 しるしてある → かいてある
2011/12/04 記述統一 ページ → 頁
2011/12/04 記述修正 妖精の秘文字、だろうか、で綴られた手紙は → 妖精の秘文字で綴られた手紙は
2011/12/04 記述修正 きもちが、わからないのです → きもちが、わからない、のです
2011/12/04 記述修正 旅の者、であろうか、それだとすると → 旅の者だとすると
2011/12/04 記述修正 ナイ、カイ、ニ、メン、シタ、 → ガイ、ヨウ、ニ、メン、シタ、
2011/12/04 記述修正 この、ばんさんかいの、ひを、 → この、ばんさんかいを、
2011/12/04 記述修正 難解では無いと思うのだが等と → 難解でも無いのではないかと
2011/12/04 記述修正 私すら → 実に不本意ながら、私すら
2011/12/04 記述修正 術中に嵌ってしまった → 術中に嵌められた
2011/12/04 記述修正 感心していた → 改めて感心していた
2011/12/04 記述修正 非自由民や流民等と言った → 難民や流民等と言った
2011/12/04 記述修正 公爵、或いは侯爵や → 公爵か或いは侯爵や
2011/12/04 記述修正 市民権すら持たない賎民なんぞ → 市民権すら持たない賎民の事を
2011/12/04 記述修正 これ以下とは考えづらく、 → 当然こちらも名のある貴族であろうし、
2011/12/04 記述修正 この先が心配であった → この先が心配になり始めた
2011/12/04 記述修正 わたくしは、しらなくても、 → おまえは、しらなくても、
2011/12/04 記述修正 へいしたちに、よって、とおざけられて、 → へいしたちに、おいはらわれて、
2011/12/04 記述削除 でも、はなし、かけてくる~
2011/12/04 記述修正 リヨ、ウド、デワ、 → リヨ、ウド、ニワ、
2011/12/04 記述修正 秘文字なんぞを書けたものだと → 秘文字なんて書けたものだと
2011/12/04 記述修正 半分程に分けると → 二つに分けると
「ワレ、コソ、ガ、ナン、ジ、ニ、トウ、モノ、デ、アル
ナン、ジ、ノ、モツ、ソノ、チカ、ラ、ヲ、モツ、テ、
ワガ、トイ、ニ、イツ、ワリ、ナク、コタ、エヨ
ワレ、ニ、ワ、フタ、リ、ノ、コン、ヤク、シヤ、ノ、コウ、ホ、ガ、イル」
聴き取り辛い発音で、娘は外套の男から手渡されていた紙を見ながら、何度も繰り返してこの言葉を唱えていた。
最初は何を言っているのかが全く理解出来ずに困惑したのだが、どうやら娘はこの一節をつっかえずに言おうとして、失敗する度に最初から言い直していた為に、私には何を言おうとしているのかが判らなかったのだ。
これは恐らく、私が理解出来る妖精の言葉を娘が使っている言葉の発音に変換したものが、あの紙に記載してあるのだろう、だからやたらと文節を無視して引っかかっていて、途切れ途切れにしか聞こえず、非常に理解に苦しむ詠唱となっていた。
この内容にしたら大して長くもない文字数の詠唱を、何度も最初から言い直しているのだが、それにしても良く咬むものだなと私は呆れつつ、その耳障りな詠唱を聞いていた。
それ程は難解でも無いのではないかと思っていた時に、娘が単に紙を見ながら読んでいるだけでは無い事に気付いた。
娘は拙い詠唱を繰り返しながら、読んでいる紙の束を二つに分けると、右手に持った紙の束を見て呪文を読み上げつつ、左手で分けた紙をこちらへと向けて突き出して来た。
その左手の紙の束の一枚目には、私が理解出来る文字が記されていて、そこにはこう書かれていた。
『わたくしが、くちに、している、しつもんには、こたえなくて、かまいません
これから、てがみを、おみせ、いたします
こちらに、かいてある、しつもんに、こたえて、ほしいのです
わたくしの、ねがいを、かなえて、もらえるのなら、うなづいて、ください』
娘は私が左手の手紙に目を向けたのが判ると、その瞳は期待と不安を混ぜた様な、緊張したものに変わっていた。
そうか、これがあの時の違和感の正体だったのか。
娘はしゃがんだ時に、自分のドレスの中に隠していた手紙を取り出していたらしい。
何か違和感を感じたのは、手にしていた紙の厚みが若干増えていたからで、良く見ていれば気づきそうなものであったのだが、紙が増えるとは予測しておらず、あっさり見落としていた様だ。
実に不本意ながら、私すら術中に嵌められたあの召喚者を、この幼い娘は欺いて見せた訳だ、これにはとても驚いた。
その努力に敬意を表してその願いを叶えてやろう、私は娘へと頷いて手紙の質問へと回答する事を伝えると、娘の表情は明るくなってその途端に詠唱が中断されたが、あくまでこの詠唱をし続けていなければ、あの術者に感づかれるのだろうか、娘は出来るだけ途切れる事の無いように、すぐにまた最初から読み直し始めていた。
だが、先程とは明らかに変わった、その期待に満ちた表情を見せる娘は、詠唱の次の紙へと切り替えるのと同期を取りつつ、手紙の次の頁をこちらへと見せた。
「ヒト、リ、ワ、コノ、チ、ヨリ、ホツ、ポウ、ニ、イチ、スル、
コウ、ダイ、ナ、ヤマ、ト、モリ、ノ、リヨ、ウド、ヲ、モツ、
コウ、シヤ、ク、ケ、ノ、ゴシ、ソク、デ、ダイ、ニ、コウ、シ、デ、アル
コウ、シヤ、ク、ケ、ワ、ダイ、ダイ、オウ、ケ、ノ、ソツ、キン、ト、シテ、
ヘイ、カ、ノ、チカ、ラゾ、エ、ヲ、シテ、キタ、メイ、ケ、デ、アル
オウ、ケ、トワ、オナ、ジ、セン、ゾ、ヲ、モツ、イチ、ゾク、デ、アリ、
イエ、ガラ、ト、シテ、ワ、モウ、シブ、ン、ナイ、モノ、デ、アル
コウ、ダイ、ナ、リヨ、ウド、ニワ、ヒヨ、ク、ナ、
コク、ソウ、チタ、イ、ヲ、モチ、ソノ、ユタ、カサ、ニ、オイ、テモ、
タ、ノ、ドノ、ダイ、キゾ、ク、トモ、ヒケ、ヲ、トラ、ナイ」
拙い詠唱は、次の文節へと変わって続いているが、それは無視して、私は娘の差し出す二枚目の紙へと目を通す。
『ものいわぬ、はかなき、いのちの、じょうおうよ、わたしの、ねがいを、かなえて、ください
にんげんの、こころを、しる、ことが、できる、その、ちからで、わたしの、しつもんに、どうか、こたえて、ください
わたくしには、とても、きに、なっている、ひとが、おります
それは、いまから、はんとしまえに、おとうさまと、いっしょに、いった、ばんさんかいへ、でかけた、ときに、みかけました
その、かたの、すがたを、みてからと、いうもの、ずっと、その、かたの、ことが、きになって、しまい、おもい、ださない、ひは、ありません
いままで、こんなに、どなたかの、ことが、きになったり、おもいだして、しまったり、したことは、ありません
わたしは、もう、じぶんで、じぶんの、きもちが、わからない、のです』
娘の用意して来た、妖精の秘文字で綴られた手紙は、多少見づらくはあるが、あの酷い詠唱とは比べ物にならない程判りやすいものであった。
どうやらあの詠唱は、私の手紙を読む時間と、手紙の紙を入れ替える時間稼ぎの為に、敢えてあれ程下手に唱えている様だ。
それにしても、まだ子供だと言うのによく秘文字なんて書けたものだと、改めて感心していた。
今のところの文面の内容は、色恋沙汰と言ったところで、他愛もないものに感じられるものの、手紙の枚数からするとまだまだ先は長そうだ。
そんな事を考えながら、私は読み終えた合図に娘へと頷いて見せると、娘も僅かに頷き返して、この紙の詠唱を終えて次の紙の詠唱へと切り替えて行く。
「ソレ、ト、コウ、シヤ、ク、ワ、キヨ、ウカ、イ、ニ、タイ、シテ、モ、
ハツ、ゲン、リヨ、ク、ヲ、モツ、テ、オリ、ソノ、ケン、リヨ、ク、ト、
エイ、キヨ、ウリ、ヨク、ワ、ゼツ、ダイ、デ、ゼツ、タイ、テキ、トモ、イエ、ル
シカ、シ、ナ、ガラ、コウ、シヤ、クケ、ノ、サカ、リ、ワ、スギ、テ、イル、トモ、
カゲ、デ、イワ、レテ、オリ、イマ、ヤ、ケイ、ザイ、リヨ、ク、ヲ、
ハイ、ケイ、ト、シタ、ナン、ブ、ノ、エン、ガン、チ、ホウ、ニ、スム、
キゾ、ク、タチ、ノ、チカ、ラ、ヲ、オサ、エ、キレ、ナイ、ノ、デワ、トノ、
ウワ、サ、モ、アル」
次の詠唱へと入ったのと同時にめくられた、三枚目の手紙へと目を通す。
『わたくしは、いままで、うまれてから、こんなに、とおくまで、きた、ことが、なかったもので、とても、この、ばんさんかいを、たのしみに、して、おりました
こくおうへいかの、しゅさいする、ばんさんかいには、とても、おおぜいの、かたがたが、きて、いました
その、なかで、おとうさまから、しょうらい、わたくしの、けっこんあいてに、なるかも、しれない、おあいての、かたを、ふたり、しょうかい、されました
ひとりは、わたくしよりも、じゅうも、としうえの、とても、せが、おおきくて、たくましい、かたでした
このかたは、いつも、けんと、じょうばの、けいこで、きたえて、いらっしゃっていて、トーナメントでは、まけた、ことが、ないと、おっしゃって、いました
その、あと、この、かたは、ちいさな、わたくしを、みてから、あなたならば、かたてで、もちあげることが、できますぞ、などと、おっしゃって、いました。
それから、この、かたの、しゅみは、きつねがりだとも、おっしゃって、いて、こんど、おあいする、ときには、ごじぶんで、しとめられた、うつくしい、ぎんいろの、きつねの、けがわを、くださると、おやくそくして、くださいました』
どうやら晩餐会にて政略的な婚姻の相手を紹介された話の様だが、この娘はその相手に対して、それ程悪い印象も抱いてはいないらしい。
同時に行われている詠唱もよくよく聞いてみると、娘の書いた手紙の相手と同じ人間の事を語っている様だ。
詠唱の方は、父親の主観での相手の説明であり、それに対して手紙の内容は、この娘が実際に接して感じた感想と言う事か。
まあ、詠唱の方は参考程度には聞いておく事にして、再び私は娘へと頷いて、読み終えた合図を送り次へと進む様に促す。
詠唱は先程から変わらないまま、娘は次の手紙を出し、私は四枚目の手紙へと目を通す。
『もう、ひとりは、わたくしよりも、とししたで、せも、わたしの、ほうが、たかい、ちいさな、かたでした
でも、わたくしよりも、すらすらと、むずかしい、ことばも、はなされていて、とても、あたまの、よい、かた、なのだと、おもいました
ふなのりたちや、がいこくの、しょうにんから、きいたと、いう、いろいろな、ふしぎな、でんせつや、いいつたえなどの、とても、おもしろい、おはなしを、して、くださいました。
こちらの、かたは、つぎに、おあいする、ときには、がいこくから、ぼうえきで、てに、いれた、うつくしい、ほうせきを、さしあげましょうと、やくそくして、くださいました
おとうさまは、この、おふたがたの、どちらに、たいしても、とても、にこやかに、おはなしされて、おられました
どちらの、かたも、とても、すばらしい、かただとは、おもいましたが、でも、わたくしの、こころに、いるのは、その、どちらの、かたでも、ありません
わたくしが、きになった、かたは、ばんさんかいに、おられた、かたでは、ありません
わたくしが、きになった、かたは、まちの、なかに、いた、かたでは、ありません
わたくしが、きになった、かたは、まちの、そとに、いた、かたです』
父親から紹介された婚姻相手の男達には、どちらにも悪い印象を持ってはいないのか、或いはこの若さでお世辞を書いているのか。
いや、この手紙は私に対してだけに書かれたものなのだから、嘘を書く意味など無いだろうから、やはりこれは娘の本心か。
まちのそと、と言うと、市壁の外側、つまり貴族やその都市の自由市民以外、と言う事だろうか。
晩餐会へ向かう道中に道ですれ違った旅の者だとすると、探索もままならないかも知れない。
まだ相手を特定する情報はあるかも知れないと、私は期待しつつ、読み終えた合図に娘へと頷いて見せると、娘も僅かに頷き返して、この紙の詠唱を終えて次の紙の詠唱へと切り替えて行く。
「モウ、ヒト、リ、ワ、コノ、チ、ヨリ、ナン、ポウ、ニ、イチ、スル、
エン、ガン、チホ、ウ、ヲ、シヨ、ユウ、スル、シ、シヤ、クケ、ゴシ、ソク、デ、
ダイ、イチ、コウ、シ、デ、アル
リヨ、ウチ、コソ、ワ、ソレ、ホド、ヒロ、ク、ワ、ナイ、モノ、ノ、
ガイ、ヨウ、ニ、メン、シタ、ミナ、ト、マチ、ワ、コノ、クニ、ノ、ナカ、デモ、
ゴホ、ン、ノ、ユビ、ニ、ハイ、ル、ボウ、エキ、コウ、デ、アリ、
ソコ、カラ、モタ、ラサ、レル、リエ、キ、ワ、ハカ、リ、シレ、ナイ」
次の詠唱へと入ったのと同時にめくられた、五枚目の手紙へと目を通す。
『この、ばんさんかいへと、むかう、とちゅうで、とおった、おおきな、まちに、はいる、まえに、みた、しもんの、そとに、あった、そまつな、ちいさい、たくさんの、いえに、いた、ひとびとです
そこに、いた、ひとたちは、とても、そまつな、ふくを、きていて、みんな、とても、やせて、いました
そして、いえの、まえに、すわって、いたり、みちに、たおれて、いたり、しているのが、ばしゃの、まどから、みえました
その、ひとたちは、わたくしや、おとうさまとは、はだの、いろや、かみの、いろも、ちがって、みえました
なかには、この、ばしゃへと、ちかづいて、きて、たべものを、めぐんで、ほしいと、こえを、かけてくる、ひとびとも、いましたが、そういう、ひとたちは、ばしゃを、まもる、へいしたちに、おいはらわれて、いました
そうしたら、それを、みていた、ひとりの、わたくしと、としも、かわらない、くらいの、おとこのこが、じっと、こちらを、にらんで、いるのが、みえました
その、おとこのこは、なにかを、さけびながら、こちらへ、むかって、ひろいあげた、いしを、なげて、きました
それを、みた、おとうさまは、たいへん、おこって、ばしゃの、けいごを、していた、そばの、へいしに、あの、こどもを、ころせと、めいじて、いました
へいしは、すぐに、その、こどもの、ところへと、むかって、いって、サーベルを、ぬいて、きりつけようと、しているのが、みえました
そこで、おとうさまに、まどを、しめられて、しまい、この、あとは、どうなったのか、わたくしには、わかりません』
まちのそと、と言うのが、市壁の外側と言う意味であり、そこに建てた粗末な小さいたくさんの家であるバラックを住居とする者達、それはつまり市民権を持たない、難民や流民等と言った、賎民に当たる人間であるのは、間違いなさそうだと判断した。
外見の違いを書いてあるところからすると、見た目から来る偏見や人種差別もあるのだろう。
それにしても、随分と身分違いの相手に心奪われたものだ。
もう少しこの娘が大人であれば、気に入った賎民の男なんて奴隷としてでも、市民権やちょっとした金銭と引き換えに、いくらでも買えそうなものだが。
それとも、この娘の家柄は相当に高い爵位の名門で、そんな低俗な真似など出来ないのであろうか。
その辺のところははっきりとは判らないが、とにかくその相手の子供はもう既に殺されているかも知れないとなると、私に死者を生き返らせるのは恐らく無理だろうから、これは非常に対応に困る事になりそうだと思えて来た。
まだ手紙は続いているから、もう少し望みのある展開をしてくれる事を期待しつつ、娘へと合図して次を促し、詠唱の途中でめくられた六枚目の手紙へと目を通す。
『おとうさまは、あの、ひとたちの、ことを、ひどく、ののしって、おられました
そして、わたくしに、あの、ものたちとは、すむ、せかいが、ちがうのだと、おっしゃいました
あれらと、われわれは、ちがう、いきものなのだと、おっしゃいました
あれは、いってみれば、かちくに、たかる、はえと、かわらないのだよと、おっしゃいました
この、せかいに、いきる、かちの、ない、ものたちだと、わたくしに、おっしゃいました
そして、おまえは、しらなくても、いい、ものたちなのだと、わたくしに、おっしゃいました』
これは、当然と言えば当然であろう、と私は感じた。
娘の父親の爵位は判らないが、国王主催の晩餐会に招待されて、公爵か或いは侯爵や、子爵と血縁を結ぼうとするのなら、当然こちらも名のある貴族であろうし、それ程の地位を持つ人間からすれば、富も地位も名誉も市民権すら持たない賎民の事を、別世界の存在で一生関わる事は無いと表現した、父親の言葉は至極正しいと言えよう。
この手紙がまだ続いているところを見ると、父親の言葉に同意したのではないのだろう、出来るだけ穏便な思想でいてくれれば良いのだが。
この娘は、大人に対してこれだけの大芝居を打って来るところからして、見た目とは違って強い意志を持っている様だから、余計にこの先が心配になり始めた。
そんな事を思いながら、私は読み終えた合図に娘へと頷いて見せると、娘も僅かに頷き返して、この紙の詠唱を終えて次の紙の詠唱へと切り替えて行く。