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第2話 解けない呪い

オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。

その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。

神々が道を外れた時――

世界は一人の少女を呼び覚ます。

 「エルフィナ。先日のテスト、

 又、全校一番だったそうじゃないか?」

 校舎に入った瞬間、後ろから優しく頭に手が置かれた。


「しかも全科目満点……凄いな、エルフィナは。

 どれほど努力を重ねているのか……

 わしは、お前を誇りに思うぞ」

 振り返ると、そこには一人の老人が立っていた。

 エスティア王国王立学園――学園長アルガルド。

 彼は極度の近眼で、眼鏡を掛けていても、

 近付かないと、ものを認識出来ない程だった。

 だがそれは、彼にとって欠点ではなかった。

 目で見えるものは、時に真実を隠す。

 だから彼は、

 見えないものを見るようになった。

 その為、普段から、目で見えるものだけに頼らず、

 ものの本質を見る様に心掛けていた。

 エルフィナの事も、呪いには囚とらわれず、

 美少女である事も、

 優しい心を持っている事も認識していた。

 アルガルドはエルフィナの、

 数少ない理解者だったのだ。


「おはようございます。アルガルド先生」

 エルフィナは深く頭を下げた。

「……ん?」

 アルガルドは眉をひそめる。

「どうした?目に涙を溜めて……

 又嫌な事でもあったのかな?」

「アルガルド先生……違うのです……」

 エルフィナは慌てて目元をぬぐった。

「昔のことを……少し思い出してしまって……」

「それだけでもあるまい?」

 アルガルドは小さく息を吐いた。

「あれ程皆に言い聞かせても……理解されず……

 わしがいくら解呪(かいじゅ)してみても、解けない……

 その呪いは……

 この世の者が掛けたとは思えん程、強い物じゃな……

 これ程迄に、身も心も美しい()なのに……」

 (先生がおっしゃる通り、

 本当に私の醜い顔は呪いなのかしら……)

「何もしてやれず、辛い思いをさせて申し訳ないの」

「アルガルド先生……先生は何も悪く無い……

 何いつもお気遣い頂き有難うございます」

 エルフィナはアルガルドの優しい言葉に、

 涙が止まらなくなってしまった。

「おやおや……」

 アルガルドは困ったように笑う。


「そう言えば、最近剣の授業で、お前を見んのだが、

 どこか怪我でもしているのか?」

「いえ……」

 エルフィナは視線を落とした。

「誰も私と稽古したがらなくて……

 相手がいなく、稽古ができないもので……」

「教師とやればよかろう?」

「……断られました……」

「なに?」

「邪魔にならないように、

 裏庭で自主練でもしていなさいと……」

「なんて奴じゃ……!」

 アルガルドの声が低くなる。

「それでも教師か……

 わしから……」

「いえ、いいのですアルガルド先生。

 みんなの気持ちも、理解できます」

「そんなもの理解する必要はないんじゃよ?」

 アルガルドはきっぱりと言った。

 そして、ふと何かを思い出したように笑う。

「そうじゃ。学園の隣に騎士団の訓練所がある。

 あそこの団長はわしの教え子じゃ。

 頼んでみよう」

「本当ですか?」

 エルフィナの顔がぱっと明るくなる。

「ありがとうございます!」

「ただしじゃ……」

 アルガルドは意味深に言った。

「くれぐれもやり過ぎんように……」

「えっ?騎士団相手にそんな……」

 エルフィナはきょとんとする。

「お前が入学した時は度肝を抜かれたんじゃよ?」

 アルガルドは懐かしそうに笑った。


 ーー1年前

「あの……こんな華奢な女子を相手に、

 手合わせしろと?」

 男子生徒が鼻で笑った。

「俺、騎士団長の息子ですよ?

 今までどれだけ剣の修行してきたと思ってるんです?」


「嘘でなければ……」

 剣の教師は疑うように言った。

「この子はジェイク剣道場で免許皆伝だということだ」

「は?」

 男子生徒は吹き出した。

「ジェイク剣道場って、あの超名門ですよね?

 ありえないでしょう?」

 そしてエルフィナを睨む。

「おい。いい加減顔上げろよ」

「……」

「何とか言え」

「免許皆伝は……嘘じゃ……ありません……」

 ゆっくり顔を上げるエルフィナ。

「うわっ!? なんだその顔!!」



 ーーしかし……結果は一方的だった。


「相手に掠らせもせず、立て続けに3本先取……

 あれを、騎士団長も見ておったのじゃよ」

 アルガルドは笑う。

「目を丸くしておったよ」

「騎士団長ーーあの方のお父様が……それで……」

「知っていたのかな?彼は修行のやり直しを命じられ、

 辺境にある祖父の道場へ……」

「はい、聞いておりました。

 私の顔が原因で調子が出なかっただけだと……

 皆さまから……」

「そうじゃったか……責められたのか?」

 アルガルドは苦い顔をした。


ーー

「あんな気持ち悪い子が同級生になるの?」

「側にあの子がいると思っただけで……私……」

「それにしても、よく平気で人前に出れるわね……」

 わざとエルフィナに聞こえるように話している。



「だが、試合結果だけではなく、

 剣騎士にあらざる態度だと言って、

 怒っておった」

「……そうですか」

「逆にエルフィナのことは随分と褒めておったの」

「私の剣を褒めてくださったのですか?」

「剣だけじゃないぞ。〝なんて可愛い子なんだ〟

 とか言っておった。

 あやつ、学生の頃から面食いじゃったからな」

「め、面食いなのに……私を……ですか?」

「筋金入りの面食いだからじゃよ?

 呪いもやつの筋金は切れんかったということじゃ。

 わっははは……」

 アルガルドは豪快に笑った。

「こ……光栄です?」

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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