第13話 おバカ1人ゲットだぜ~!
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「ああ、そうそう……馬……兄上。
一つ言っとくけど、
エルフィナはもう、俺のものだからな?」
「な、なんだと?お前達いつの間に!
エルフィナ、お前、浮気してたのか?」
「はあ?それ本気で言ってるのか?
兄上が一方的に婚約破棄して1年半も経つんだぞ?
婚約者でも何でもないのに浮気?
あんまり笑わせるなよ?
な?エルフィー?」
エルフィナが言う。
「いつ私が貴方のものになったの?」
「昨日」
マックスは即答した。
「婿に来いって言ったじゃん」
「もー……」
エルフィナが呆れる。
「たわいのない冗談でしょ?まあ……」
少し頬を赤くして言った。
「マックスの事、
小さい頃から結構好きだったから……
それはそれで……」
「よっしゃ~!」
マックスがガッツポーズ。
「婚約ゲットだぜ~!」
エルフィナが慌てる。
「ちょっと……
それは未だ確定じゃないって言ってるのに……
ちゃんと両親とか皆んなと、
相談しなきゃならない事なんだから……
それは又、落ち着いたら話しましょ?」
「うん!」
マックスが笑う。
「よっしゃ~嫁さんゲットだぜ~!」
「何も分かってないわ……
おバカ1人ゲットだぜ~!」
ーーーー
〝コンコン!〟
「母さん入るよ?」
「あら、マックスじゃない?」
ベッドの上から、優しい声が返ってくる。
だがその声は弱々しかった。
「貴方一昨日帰国したんですって?
何故すぐに顔を見せないのよ?」
そして、マックスの後ろに立つ少女に気づいた。
「あらっ?」
次の瞬間、ぱっと表情が明るくなる。
「まあ!エルフィナちゃん?
来てくれたの?久しぶりね!」
「あっ!」
エルフィナが思わず声を上げる。
「私がエルフィナだって、すぐ分かってくれた!」
「何を言ってるの?」
王妃マリーアンは、くすりと笑った。
「その可愛らしい顔……
貴方は昔から、私の可愛い娘よ?
分かるに決まってるじゃない」
エルフィナの胸が、じんわりと温かくなる。
「母さん」
マックスが口を挟む。
「エルフィナはもう兄上の婚約者じゃ――」
「知ってるわよ」
マリーアンは即答した。
「あのバカ息子のことは。
それでもーー」
優しくエルフィナを見つめる。
「エルフィナちゃんは、
今でも私の可愛い娘よ」
「だが母さん!喜べ!エルフィナは俺の嫁になる」
マックスが得意げに胸を張る。
「ちょ、王妃陛下にまで……」
エルフィナが慌てる。
「まだ決定じゃないんだからね」
「まあ、そうなの?」
光を失っていた瞳が、
輝きを取り戻していた。
「なんて嬉しいのかしら……」
嬉しさのあまり、
むくりとベッドから起き上がる。
それだけで驚きだった。
ここしばらく、
彼女は自分一人で起き上がる事すら、
出来なかったのだから。
「起き上がって大丈夫なのか?」
マックスが慌てる。
「母さん?」
「平気みたい……」
マリーアンは自分の体を見て、不思議そうに呟く。
「ここ最近は、
助けを借りなければ、
起き上がれなかったのに……」
そして、少し寂しそうに笑った。
「でもね……残念だけど……
多分、エルフィナちゃんの、
花嫁姿を見る事は出来ないわ」
――余命、一月。
侍医から告げられた、残酷な宣告だった。
エルフィナはその事を、マックスから聞いていた。
だからこそ――
どうしても会いたかった。
「あ、あの……王妃陛下……」
エルフィナが少し緊張した様子で口を開く。
「私……ただお会いしたかっただけじゃなくて……
えっと……その……」
言葉に詰まる。
「王妃陛下に、試したい事があるんです」
「まあ」
マリーアンが微笑む。
「王妃陛下だなんて他人行儀よ。
もうお母様って呼んで?」
「えっ」
エルフィナが戸惑う。
「で?試したい事って?
私に出来る事なら、何でも言ってね」
「その……」
エルフィナは意を決した。
「マックスが言うには……
私……心で強く思った事が、
現実になるかもしれない……そうなんです」
前世の女神エルフローラの魔法。
それは、あまりにも異質だった。
魔法理論も何も無い。
ああしたい、こうしたい。
あんな事良いな、出来たら良いな……
それが、思っただけで、実現する。世界が応える。
それがエルフィナのポケット……
じゃなかった……魔法だった。
ーーーー
「失礼しますね?」
女妃マリーアンを、
優しく抱きしめるエルフィナ。
「え~と……大好きな……お母様?
(ちょっと気恥ずかしいわ……)
の病気……良くなれ……
お願いどうか……元気になって下さい……」
その瞬間――
ふわり、と。
二人の体が、淡い光に包まれた。
「お、おい……どうなってる?光ってるぞ?
エルフィー……そして母さんも……」
マックスが驚く。
「な、何?この光?エルフィナちゃん……」
マリーアンも驚く。
「そしてこの光……とっても暖かい……」
まるで、春の日差しに包まれているようだった。
「大丈夫なのか?2人共?」
「大丈夫よ?マックス」
マリーアンは穏やかに微笑んだ。
「むしろ、とっても気持ち良いわ……
ちょ……ちょっと……こ、これは……
な……なんて事なの?エルフィナちゃん!」
「どうしたんだ?母さん?」
「あれ程の痛みが……息苦しさが……消えていくわ……」
「マ、マジか?」
「ま、まさか……もしや……私の病……治っている?」
マリーアンは震える声で言った。
「でも……こんな事出来るのは、
神様しかいないんじゃ?」
信じられないという顔をする。
ゆっくりとエルフィナを見る。
「エルフィナちゃん……貴方は一体何者なの?
……もしや神……女神様?」
その瞬間――
部屋の空気が、わずかに震えた。
「……ほう。
ついに、目覚め始めたか」
遥か遠い雲の上ーー
「だが――まだ早い」
創造神は静かに空を見上げた。
エルフィナちゃん?貴方は一体何者なの?
……もしや神……女神様?」
「やだ、そんな訳ないじゃないですか?
お母様。私は貴方の娘なんでしょ?」
(本当に出来た……これが私の魔法?)
心で思うだけで発動する魔法。
そんなもの、聞いた事がない。
でも今は――
そんな事どうでもよかった。
王妃の病が綺麗に消えた。
それだけで、十分だった。
「これで、私の花嫁姿を見て頂けますね?」
「おっ。もうその気じゃん?エルフィー」
「グッッ……貴方の花嫁とは言ってない……」
エルフィナが頬を膨らませる。
でも顔は、ほんのり赤く染まっていた。
エルフィナ本人は、まだ半信半疑だった。
だがこれは紛れもなく――
エルフィナの魔法。
前世で、他の世界の神々に、
疑懼の念を抱かせる程、異質で強力なな魔法……
思うだけで魔法が発動し、思った様な結果をもたらす。
そしてその範囲は極大。魔力量は無限のよう。
前世、女神だった少女――
エルフィナ。
その物語は、
まだ始まったばかりだった。
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




